事業を立ち上げてからすべての会社が生き残れるわけではなく、10年経過すると約10%未満、20年後は約0.4%未満の企業しか生き残れないといわれています。
特に最近では新型コロナウイルス感染拡大の影響により、赤字経営が続きこのままでは事業を続けることができないため、立て直しするために何が必要か頭を悩ましているケースも少なくありません。
しかし会社経営はいつでも順調というわけではあく、市場や経済の変化、災害などにより黒字から赤字に転落することもあれば、立て直しができず廃業や倒産してしまう例もあります。
そこで、今窮地に立たされている状態の中小企業が、コロナ禍を乗り切り立て直しを図るためには何が必要か、赤字経営を続け倒産してしまわないための方法について解説していきます。
目次
そもそも「赤字経営」とはどのような状況か
「赤字経営」とは、売上よりもそれ対する支払いが多い状態であり、利益を生み出すことができていないまま経営を続けていることです。
国税庁が2021年3月26日に公表している「2019年度 国税庁統計法人税表」によれば、赤字法人(欠損法人)の割合は65.4%で、前年度よりも0.7ポイント改善したとされています。
赤字法人率はリーマンショック後である2010年度、75.7%という高い割合でしたが、その後は改善傾向がみられていました。
しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた中小企業は少なくないため、2020年度は深刻な本業悪化に対する給付金や助成金が収益にどの程度寄与できたかによって結果が変わってくると考えられます。
今後、赤字で苦しむ企業はますます増えることが予想されますが、日本の全企業の99.7%は中小企業です。
中小企業の経営が停滞してしまうことは、日本の経済そのものが衰退することにつながるとあらためて留意しておくべきといえるでしょう。
ただ、赤字の企業がすべて倒産危機に陥っているというわけではありません。
赤字経営すべてが「悪」というわけではない
そもそも「赤字」とは、収入よりも支出が多い状態ですが、赤字または黒字のどちらかだけで経営を存続させることができるか判断できるわけではありません。
収入が多いほうがよいといえますが、赤字か黒字かだけが経営存続を左右するわけではありません。
そして赤字だったとしても、「欠損繰越金控除」を使えば翌年度以降10年間は、発生した黒字と損失と相殺できます。
仮に赤字から黒字化できたときでも、欠損金により利益を相殺できれば、節税につなげることも可能です。
ただし経営状況に悪影響を及ぼす赤字には注意しておくことが必要といえます。
注意しておきたい「赤字」とは
赤字だからすぐに倒産するわけではありませんが、経営状況に悪影響を及ぼす赤字は早めに解消させることが必要です。
そのためにも次のポイントを確認しておきましょう。
- 長期的に見た売上傾向(今後は売上を回復させる見込みはあるか)
- 財産や資産(万一のときに現金化できる資産はないか)
- 取引の状況(倒産リスクの高い取引先はないか・与信は適切にできているか)
- 売掛金(遅れず回収できているか)
- 在庫(過剰な在庫が発生していない)
いずれも数字だけで判断せず、その内訳にも注目しておくことが必要です。
また、単に売上よりも経費が多い状態である損益計算書上だけの問題なのか、手元のお金自体が不足していないかについても注意しておくようにしましょう。
赤字続きで倒産・廃業してしまう会社は実はごく一部
赤字の状態にも次のような種類があります。
- 営業利益(収支)がマイナスに陥っている営業赤字
- 営業外収支もマイナスに陥っている経常赤字
- 現金収支がマイナスに陥っているキャッシュフロー赤字
日本では6割を超える企業が赤字のまま経営を続けていますが、赤字の企業が多くてもそのすべてが倒産しているわけではありません。
東京商工リサーチが実施した2019年度の「休廃業・解散企業」についての調査を見ると、全企業の1.4%が市場から「撤退」「消滅」しており、そのうち「倒産」したのは0.2%でした。
しかし赤字が倒産に直結するのなら、本来であれば6割を超える企業が撤退・消滅していなければならないはずです。
そのため赤字なら倒産してしまう、反対に黒字なら儲かっていると判断することはできないと考えられます。
赤字でも倒産しない経営と倒産リスクの高い経営の違い
赤字経営が長期化すれば、いずれは倒産してしまうリスクも高くなりますが、「一過性の赤字」というケースもあります。
「一過性の赤字」とは赤字が一時的なものであり、いずれは回復することが見込まれる場合に該当します。
その内部的要因となるのは、たとえば次のようなケースです。
- 役員に退職金を支給したため多額の損失を計上した
- 固定資産の除却・売却を行ったため多額の損失を計上した
- 棚卸資産の廃棄処分を行ったため多額の損失を計上した
さらに外部的な要因として次のようなことが関係するでしょう。
- 為替が円安または円高に大きく進んだことによるもの
- 法律の改正によるもの
一過性の赤字であれば、いずれは黒字化など回復が見込めるため、倒産リスクは高くないと判断できます。
ただし新型コロナウイルス感染症の拡大により、日本だけでなく世界的な有事となったため、先を読むことが難しくなりました。
そのため景気の良し悪しにかかわらず、次のことを確認し、今後回復できる赤字なのか判断するようにしましょう。
- 営業・販売状況…営業や販促活動は順調か
- 売上の永続的な増減…売上が増加または下落のどちらの傾向か
- 取引先の件数の増減…新規契約数や倒産・休廃業などによる契約減の推移
- 資本・資産…土地・建物・現預金など保有する資産や資本の厚さ
- 在庫過多・売掛金回収…在庫の増減と売掛金の回収遅れの有無
赤字経営でも倒産しない理由は主に3つ
全企業のほとんどが中小企業であり、その6割を超える会社が赤字経営の状態です。
しかしすべての赤字企業が倒産してしまったが、日本の経済はたちまち立ち行かなくなるといえるでしょう。
実際、東京商工リサーチが公表している2019年の倒産企業の平均寿命は23.7年だったとのデータもあるため、長く経営を続けることができている企業は少なくありません。
平均20年以上の中小企業が経営を続けることができているのは、主に次の3つの理由が関係しているといえるでしょう。
意思決定がスピーディにできる
中小企業は大企業と違って、社員と経営者の距離が近いことが特徴です。
さらに経営者の鶴の一声で物事を決断できる少数精鋭であるため、経営判断がスムーズにできることは大きなメリットです。
小回りの利く意思決定のスピーディさにより、倒産という危機を回避できているケースも少なくありません。
時代の流れにあった事業転換が可能
さらに本年度は赤字だった場合でも、翌年度は黒字化し、さらにまた数年後は赤字というサイクルを繰り返しているケースもあります。
これは時代の流れに合わせたやり方を続けているため、その成果がすぐに出ていないため赤字を出しているとも考えられるでしょう。
小規模であるため、経済の動きや時代の流れに対応しやすいことも、赤字経営でも倒産せずに事業を継続できている理由の1つです。
保有する資産を使いやすい
会社経営をしていれば、有形または無形の何らかの資産を保有しているでしょう。
仮に運転資金がショートし、銀行から融資設けられずどこからも資金調達できなければ、損益計算書上は黒字だったとしても会社は倒産します。
しかし保有している資産を現金化することができる場合や、土地や建物を担保にして銀行からお金を借りることができれば、赤字だった場合でも会社を存続させることは可能です。
中小企業では、経営者自らの土地・建物も資金調達の担保にしているケースが多いといえます。
また、親会社や資本提携先が補填し連結決算の対象企業になっていることもあれば、経営者や株主に現金資産があるため運転資金に充てて経営を回していることもあります。
これらはすべて中小企業ならではといえ、大企業では行いにくい方法ともいえるでしょう。
会社の立て直しはなぜ必要か分析を
会社を立て直したいときには、まず自社の現状を把握し、なぜ立て直しが必要なのか分析することが必要です。
たとえば会社の立て直しが必要な理由として、主に次のようなことが考えられます。
- 利益を生み出せるビジネスモデルになっていない
- 市場の変化による影響を受けた
- 競合が出現したためシェアを占めることが困難になった
- 原材料の高騰の影響を受けた
- 優秀な社員が退職したため売上が低下した
経営難に陥る要因は上記のように様々ですが、会社の立て直しには問題となっている部分を改善させることが必要です。
たとえば利益を生みだすことのできないビジネスモデルであるのなら、現在の事業の続け方を見直すことが必要となります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた中小企業も少なくありませんが、市場の変化によるものなら変化に対応するため、マーケティングによる市場調査も必要です。
飲食店が店内でのサービス提供から、テイクアウトやデリバリーへとシフトしたように、経済や市場などの状況に合わせた対応も必要になるといえるでしょう。
赤字経営のメリットとデメリット
すべての赤字経営が「悪」ではなく、さらに赤字であれば決算申告のときに「欠損繰越金控除」を活用できるメリットがあります。
従来まで、欠損金の繰越期間は繰越期限が切れる9年間でしたが、平成30年4月1日以後に開始する事業年度で発生した欠損金は10年間繰越が可能です。
今年度が赤字でも、翌年度以降は黒字化できたとき、利益と欠損金を相殺できれば課税所得を減少させるため法人税等減額が可能となります。
ただし赤字経営には、次のようなデメリットがあることを留意しておく必要があるといえます。
金融機関の信用は低下する
赤字経営を続けることの一番のデメリットは、銀行など金融機関からの信用が低下してしまうことです。
たとえば役員賞与を増やして決算上は赤字にしたものの、翌年度は黒字になったため欠損金の繰越で相殺する方法をとれば、法人税の節税が可能です。
確かに赤字によるメリットの上手な使い方ともいえますが、その後思わぬ投資が必要になったとき、赤字では銀行など金融機関から融資を受けたくてもできなくなってしまいます。
銀行など金融機関は、決算書の赤字を快く思わず、欠損金で上手くやり繰りしていているとは評価してくれません。
赤字であることが影響し、与信上の融資審査は厳しくなるでしょう。
銀行などは貸し付けた資金を回収できなくなるリスクを最小限に抑えて融資を実行したいと考えるため、赤字ではお金を借りることは難しくなると留意しておくべきです。
経営の立て直しを図るとき実践したい4つの方法
赤字から脱却するために必要なことはいろいろありますが、売上を増やし無駄なコストは削減することは欠かせません。
東京商工リサーチの調べでは会社の平均寿命は20年を超えていますが、その20年には時代の流れや経営を取り巻く環境の変化があったはずです。
そこで、それらを踏まえた上で、次の4つを実践するようにしましょう。
1.リストラクチャリングを行う
「リストラクチャリング」とは、「企業再構築」や「事業再構築」を意味します。
成長戦略の中で、不採算部門を事業縮小したり撤退・統廃合したりという整理を行い、成長事業や高収益事業に経営資源を集中させることです。
リストラクチャリングの是非については、キャッシュフローの最大化が判断基準となります。
今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響などのより、世の中の動きがめまぐるしく変化したときには企業環境にも変化が生じます。
リストラクチャリングにより、
- 事業・財務体質改善
- 不採算部門の縮小・撤退
- 働き方の改革
など事業構造自体を抜本的に組み替え変革させることで、再構築させていくことが必要です。
2.経費を見直す
単純に無駄な経費は削減することですが、コロナ禍でこれまでの働き方や価値観などは大きく変化しています。
テレワークを推進するための投資を行う一方で、抜本的に経費の見直しも並行し実施することが必要です。
地代家賃を減額したりオフィス撤退したりということはすぐに実行できませんが、見直すことのできる一般管理費などはいろいろあるでしょう。
経営者だけで実践しようとせず、現場の社員の意見などにも耳を傾けながら、見直しできる経費はないか洗い出していくようにします。
少しの削減にとどまる場合でも、その積み重ねが大きな経費削減へとつながることもあるため、できる部分から取り組んでいくようにしましょう。
コスト削減で実践したいこと
経費の見直しや削減でまず考えていくことは、本来なら必要のない出費が発生していないかということです。
外注費・人件費・広告費・工数・原材料費などいろいろ挙げられるでしょうが、最初に削りたいのは余分な外注費といえます。
会社の規模が小さく、資金にも余裕がない状態でむやみに外注に頼ることは本末転倒です。
年商1億円以下の場合には仕事を外部に任せる余裕はないとも考えられますが、たとえば対外が損得なしの関係でよい人材に恵まれている会社との付き合いや、外部に頼らなければ仕事が回らないという場合はその限りではありません。
しかしそのような状況でない場合は、必要のない外注を使うことはやめたほうがよいといえます。
反対に外注ではなく社員の人件費の負担が重い場合には、「整理解雇」も視野に入れた人件費の見直しが必要となるでしょう。
3.整理解雇を実行する
「整理解雇」とはいわゆる「リストラ」のことであり、人員を整理するための「解雇」のことです。
会社の一方的な事情で社員を解雇することはどのような経営者でも抵抗があるでしょうが、そのまま雇用し続けても会社が倒産すれば社員全員が共倒れしてしまいます。
そのため残業を抑制することやコスト削減、その他の対策で改善の見込みがないときには、非情な決断といわれても決断しなければならないこともあると留意しておくべきでしょう。
ただしどの会社でも整理解雇が可能になるわけではなく、次の4つの要件を満たしていれば行うことができます。
人員整理の必要性
余剰人員を整理解雇するためには、削減しなければ経営を維持できないなどの企業経営上の高度な必要性が認められることが必要です。
人員を整理するということは、労働者に特別責められるべき理由もなく、使用する側の一方的な都合で解雇されることを意味します。
そのため人員整理の必要性の判断は慎重に行うべきといえるでしょう。
解雇回避努力義務の履行
期間の定めのない雇用契約を結んでいるときには、人員整理による解雇は最終的な選択手段でなければなりません。
たとえば、
- 役員報酬の削減
- 新規採用の抑制
- 希望退職者の募集
- 配置転換
- 出向
などで回避するといった経営努力を行ったものの、それでも解雇しなければならない状況にあるといった理由でなければ実行できないということです。
被解雇者選定の合理性
整理解雇するための人選の基準が合理的であり、具体的な人選も合理的・公正でなければなりません。仮に勤務・成績を人選基準とするのなら、その基準について客観性・合理性が問題となります。
手続の妥当性
整理解雇される労働者には、会社を辞めなければならない故意や過失はありません。
そのため、信義則上、労働者・労働組合と協議・説明することが必要です。
特に手続の妥当性が非常に重視されることになり、説明・協議や納得を得るための手順を踏まずに整理解雇することは、他の要件を満たしている場合でも無効とされるケースも多くなります。
4.市場調査後に売上と利益率向上に取り組む
市場調査に加え、自社の調査も必要ですが、その際には財務諸表(最低3期分)や税務申告書などの書類だけでなく実際に現地に出向くことが必要です。
選択と集中による利益率を目指す
選択と集中とは、会社のコア事業だけを残しノンコア事業はたとえ黒字だとしても売却・廃止する経営戦略のことです。
たとえばキヤノンや武田薬品工業などは、コア事業に特化し黒字経営の事業を売却するといったことを行っています。
黒字の事業を切り離すことができるのは大手といわれる会社であり、実際にはこのような思い切った判断は容易とはいえません。
中小企業では難しいチャレンジといえるだけでなく、それほど多くの事業を行っているわけではないのに、黒字事業を切り離すことは非現実的だと考える経営者もいることでしょう。
しかし利益の出ているコア事業に特化すれば、一層利益率を向上させることが可能となる場合もあります。
今の商品やサービスを絞ることで、現在の顧客ニーズや将来予測が容易となります。そのため選択と集中を目指した経営を実現させていきましょう。
客単価を上げて売上向上を目指すことが必要
コスト削減だけで黒字化が難しいときには売上を向上させていくことも必要ですが、そもそも売上が低迷しているから赤字になっている会社は少なくありません。
ただ、売上の向上に向けて単に客数を増やそうとしているのなら、その考えを客単価向上に変えていきましょう。
確かに集客は必要なことですが、そのために多大なコストをかけることや、無理な値下げなどは好ましくありません。
結果的に多売薄利となり、仕事は追いつかなくなるだけでなく、赤字をより悪化させる可能性があります。
そのために実践していきたいのが客単価を上げることですが、顧客1人あたりの購入金額を上げることです。
客単価を上げるためには、
- 商品価格を上げる
- バックエンド商品を作る
- 商品の販売方法を工夫する
- リピートしてもらえる仕組みを作る
などを実践していきましょう。
金融機関にリスケジュールを交渉する
赤字経営で最も大きなデメリットとなるのは、銀行など金融機関から信用力が低下し評価を下げることです。
ただし既存の借入金の返済ができない状態で、追加融資はいずれにしても期待できないでしょう。
さらに返済が滞り不能となれば、会社は倒産してしまいます。
そのためまずは既存の借入金を返済できるように、金融機関に「リスケジュール」を相談することも必要です。
「リスケジュール」とは「返済条件変更」のことで、今の返済方法や金額を一時的に変えてもらうことを意味します。
たとえば毎月20万円を銀行に返済している場合、しばらくは返済金額を10万円に変更してもらうことで、返済負担が軽減できます。
銀行など金融機関側も、無理に現在の返済を続け会社が倒産し、今貸しているお金が回収できなくなることは避けたいはずです。
利息のみの返済など、返済額や返済方法を変更してもらうことや、一時的に返済猶予してもらうことで会社が立て直しできれば、再度もとの返済方法で返すことができるようになります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、資金繰りに困りリスケジュールを希望する企業も増えたため、政府も銀行に返済条件変更の相談には柔軟に対応するように指導しています。
そのためもしも既存の借入金の返済負担が重くなっているのなら、借入先の金融機関に相談してみるとよいでしょう。
資金の調達方法を借入れに頼りすぎないこと
手元の資金が枯渇すれば会社は倒産してしまうため、必要なお金が足りなければ何らかの方法で調達することが必要になります。
しかし中小企業の資金調達の方法といえば、銀行から融資を受ける方法に依存してしまいがちです。
赤字経営では銀行から融資を受けることは難しいため、その他の方法を検討することが必要ですが、たとえば保有する固定資産など売却できる資産がなければどのようにお金を準備すればよいか困ってしまいます。
仮に保有したとしても、固定資産を現金化するには時間もかかるため、すぐに手元のお金を増やすことはできないでしょう。
審査のハードルの低いノンバンクから融資を受ける方法も、赤字では厳しい場合もあるだけでなく、高く設定される金利で返済負担は重くなります。
このような場合、保有する売掛金を現金化してお金に換える「ファクタリング」なら、借金は増やさずに資金を調達できます。
赤字や税金を滞納している場合でも資金調達できる方法であり、将来的に売掛先から受け取る売掛金を前倒しさせる方法のため、中小企業でも不安なく利用しやすいといえるでしょう。
資金調達の方法を借入れに依存しすぎないことも、経営の立て直しには必要なことです。
自社の問題点の洗い出しと方針の打ち出しを
会社が倒産してしまうのは、赤字だからではありません。
確かに赤字状態が続けば、いずれは倒産するリスクは大きくなるでしょうが、すぐに経営破たんしてしまうわけではないといえます。
会社が経営破たんしてしまうことには必ず原因があるため、経営者だけで解決しようとせず現場で働く社員にもヒアリングし、問題点の洗い出しを行いましょう。
何が問題で何に原因があるのかを突き止め、改善するための対策を検討することが再建への道には欠かせません。
社員に協力してもらうためには、
- 再建経営者としての理念と基本方針
- 何のために再建するのか
- どのように遂行するのか
について社員に明確に示すことも必要です。
まずは、
- 現状の認識…なぜ会社が経営破たんの危機に陥ってるのか
- 責任の所在…環境変化に対応できなかった経営陣と危機感を持たずやり方を変えなかった社員など
- 雇用の保証…リストラは避けられないものの辞めたいない社員は辞めさせない希望退職を募るなど
- 就業規則の見直し…総合力発揮のための就業規則の変更など具体的な措置とその時期
などを踏まえた説明を行うようにしてください。
立て直しのときに経営者がやってしまいがちなミス
会社の立て直しを考えるとき、実は多くの経営者が間違った認識をしていることがあり、自身の給料は確保できていないのに黒字になったと勘違いしているケースです。
会社の立て直しをするとき、目標値を設定するはずですが、目標値にしっかりと社長の給料は含める必要があります。
日本人は自己犠牲精神を持っている方が多いですが、社長の給料も確保できなければ何のために会社を経営しているのかあからなくなってしまいます。
そのため会社を立て直すときには、経営者の給料まで確保できる計画を立てるようにしましょう。
経営者の給料を確保するためのヒント
会社の立て直しでは、経営者の給料も確保することを意識するべきですが、そのためには次のことを主に実践していくようにしましょう。
固定費や経費を削減する
経営状態が深刻であるのなら、次のような無駄な出費を抑えるようにしましょう。
固定費やその他の経費など、削ることができる部分はないか細かい部分まで確認し、無駄な部分を削減するために対象となる勘定科目を分析していきます。
その上で、削減するための方法やどのくらいの金額を削ればよいか考えていきましょう。
さらに不採算部門がある場合には、撤退または事業譲渡なども検討が必要です。
企業理念や事業を見直す
企業理念や事業についても、一旦は立て直しを図るため見直しが必要です。
特に経営状態が悪化している場合、まずは目の前の問題を解決しようと集中しすぎてしまい、中長期的な理念が曖昧なままというケースも少なくありません。
社員がその先の方向を見失わないようにするためにも、明確な企業理念や経営方針を打ち出すことができるように、しっかりと見直しをするようにしてください。
まとめ
赤字のままで経営を続けていても、いずれは倒産リスクを高めてしまうため、立て直しを図りたいと考える経営者は少なくありません。
そのために、基本となるのはコスト削減と売上向上の2方向からのアプローチですが、それと同時進行でいろいろと行っておくべきことはあります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてしまった中小企業は少なくありませんが、それよりも前に会社経営がうまくいっていなかった場合、もう立て直しを図ることはできないと考え廃業を決断してしまう経営者もいます。
しかしやり方によっては、大きな資金や労力を使わずに、仕組みを変えて売上や利益を劇的に変化させることはできるはずです。
実はほんの少しの変化により、会社の立て直しが達成できることもあるといえるでしょう。
ただし手元の資金がショートし、支払いができなくなれば会社は倒産してしまいます。
せっかく黒字化できる見込みがあるのに、その前に手元のお金がないことを理由に倒産してしまうことは避けるべきです。
もし赤字続きで銀行から融資を受けることも難しく、調達先がないというときには、ファクタリングも調達方法の1つとして検討してみてはいかがでしょう。