資金繰りとは、仕入れ代金・従業員の給与・その他経費などを遅れず支払うことができるように、入金と出金などお金の流れを把握し管理することです。
もしも資金繰りが悪化してしまえば、支払いのタイミングでお金が不足することとなり、慌てて何らかの方法で資金調達しなければならなくなります。
そのため資金繰りとは、経理担当者にすべて任せるのではなく経営者自身も把握しておかなければならないことといえますが、具体的にどのような原因で悪化するのか、改善する方法などについて解説していきます。
目次
資金繰りとは
「資金繰り」とは、会社の収支を管理し、資金が不足しないように調整することです。
「資金」とは、現金・預金など、すぐに支払いに充てることができる金銭であり、たとえば数か月先に入金される売掛金や不動産など固定資産は「資産」に分類されます。
理想的な資金繰りとは、本業の売上で生み出された儲けを新規事業や設備に投資し、そこからさらに資金を生み出す流れを作ることです。
そのため経理担当者にすべて任せてしまわず、経営者自身が資金繰りを管理することも大切なことといえるでしょう。
仮に手元の資金が不足してしまえば、仕入れ代金や固定費などの支払い、借入金の返済ができなくなってしまいます。
利益が出ていても倒産してしまう「黒字倒産」のリスクも高まるため、適切な資金繰りで手元の資金を枯渇させないことが重要です。
資金繰り悪化の原因
手元の資金を枯渇させないためにも資金繰りは適切に行うことが重要ですが、資金繰りが悪化してしまう原因として主に次の6つが挙げられます。
- 赤字経営
- 急激な売上上昇
- 売掛金回収サイトの長期化
- 仕入債務支払サイトの短期化
- 借入返済額の増加
- 在庫の増加
それぞれの原因について説明していきます。
赤字経営
資金繰りが悪化する原因として、赤字経営であることが挙げられます。
赤字経営では、収入よりも支出が上回っている状態であるため、収支はマイナスです。
新規に事業を開始したばかりのときなど、初期投資分が回収できていなければ、一時的に赤字になる場合もあります。
実績を積むことで黒字転換できれば、赤字経営であることが資金繰り悪化の原因にはなりにくいでしょう。
しかし長期の赤字経営により、将来現金化される売掛金も少なくなり、資金不足に陥りやすくなります。
赤字経営から脱却するには、赤字事業や取引を縮小・撤退することや、経費削減などを徹底して行うことも必要です。
赤字経営とは?会社が潰れない理由と黒字化する方法をわかりやすく解説
急激な売上上昇
資金繰りが悪化する原因として、急激に売上が上昇することが挙げられます。
事業が好調で売上が向上していれば、経営者も売上と利益の数値を確認し、すっかり安心しきってしまいがちです。
しかし、いくら売上があがったとしても、その代金が入金されなければたちまち会社は資金不足の状況に陥ります。
また、売上が増えれば仕入れ代金やコストも増加するため、支払いに充てるお金が手元になければ資金繰り悪化の原因になってしまいます。
売掛金回収サイトの長期化
資金繰りが悪化する原因として、売掛金回収サイトの長期化が挙げられます。
回収できていない売掛金は、1~2か月待てば現金化されることになるでしょう。
しかし売掛金回収までの期間が長いと、決算書上は利益が出ていても手元の資金が底をつくことになり、資金繰りは悪化します。
最悪の場合、黒字倒産してしまう可能性もあるため、売掛金が入金されるタイミングと買掛金を支払うタイミングのズレには注意が必要です。
仕入債務支払サイトの短期化
資金繰りが悪化する原因として、仕入債務の支払サイトが短期化していることが挙げられます。
売掛金が入金され、回収した代金を買掛金の支払いに充てることができれば資金繰りは悪化しにくいといえます。
しかし実際には、買掛金の支払いである仕入債務は、売掛金回収よりも前に発生してしまいます。
そのため仕入債務の支払サイトが短いほど、資金繰りは悪化しやすいといえるでしょう。
借入返済額の増加
資金繰りが悪化する原因として、借入返済額の増加が挙げられます。
金融機関などからの借入金が増えれば、返済金額も増加します。
返さなければならない金額が大きくなるほど、手元に残るお金は少なくなるため、資金繰りは悪化しやすくなるといえるでしょう。
在庫の増加
資金繰りが悪化する原因として、在庫の増加が挙げられます。
仕入れた商品が予定通りに売れなかった場合、在庫として保管することになりますが、長期滞留させれば価値も低下していきます。
在庫管理には倉庫代や人件費など管理費も必要となるため、支出の増える現金化されない商品を手元に置くことは資金繰り悪化の原因といえるでしょう。
定期的に棚卸しを行い、不要な在庫は処分することも必要です。
資金繰りを改善する方法
経理担当者だけに資金繰りを任せていた場合、資金が不足している状況の深刻さを把握できておらず、知らない間に倒産に追い込まれてしまう可能性も否定できません。
そこで、資金繰りを改善するために、次の6つを実行していきましょう。
- 資金繰り表を作成する
- 売掛金台帳を作成する
- 売掛債権を早期回収する
- 棚卸資産を圧縮する
- 仕入債務の支払期限を見直す
- 資金調達方法を多様化する
それぞれの改善方法を説明します。
資金繰り表を作成する
資金繰りを改善するために、資金繰り表を作成しましょう。
資金繰り表とは会社のお金の入出金を記した表ですが、企業の収益と費用で損益を示す損益計算書とは異なったものです。
あくまでも、売上代金の入金や仕入れ代金の支払いなど、実情に合う現金の流れを記すものなので、損益計算書上では把握できない実際のお金の出入りを確認するために作成します。
いつ入金があり、どのタイミングで支払いが発生するのか、事前に把握できるため資金不足の兆候を予測することができます。
資金不足に陥りそうになる前に資金調達を検討するタイミングも把握できるため、早い段階で対策を立てることにつながります。
資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違いとは?経営分析で活用するためのポイント
売掛金台帳を作成する
資金繰りを改善するために、売掛金台帳を作成しましょう。
売掛金台帳があれば、売掛金の発生を正確に把握することができ、請求遅れや回収漏れも防ぐことができます。
売掛先ごとに回収予定日に遅れず入金されているか定期的に確認することで、入金不足や遅れを早期発見でき、資金繰りを改善させることに繋がります。
売掛債権を早期回収する
資金繰りを改善するために、売掛債権を早期回収しましょう。
売掛債権が発生してから回収するまでの期間が長ければ長いほど、資金繰りは悪化します。
そのため新規契約する取引先との交渉では、できるだけ売掛金の回収条件を有利に進めることが必要です。
すでに入金サイトが決まっている売掛先の場合、交渉による短期化がのぞめないときには、ファクタリングを利用して短期化する方法も検討できます。
棚卸資産を圧縮する
資金繰りを改善するために、棚卸資産を圧縮しましょう。
売掛金回収よりも先に発生するのが仕入代金の支払いですが、そのために必要な運転資金は次の計算式で算出されます。
運転資金=売掛債権+棚卸資産-仕入債務
そのため資金繰りで悩まないためには、商品の在庫といえる棚卸資産を徹底して管理し、圧縮を進めることが必要です。
在庫を寝かせる滞留期間が長ければ長いほど、資金繰りは悪化します。
単品ごとの回転期間など把握し、仕入水準を適正化していくようにしてください。
仕入債務の支払期限を見直す
資金繰りを改善するために、仕入債務の支払期限を見直しましょう。
仕入先ごとに買掛金台帳を作成し、漏れなく遅滞なく支払うことができる管理を徹底することが必要です。
遅れず支払いを続けることで、仕入れ先の信用・信頼を獲得することができれば、支払サイトの延長を交渉することも可能となるでしょう。
売掛金の回収を早める一方、買掛金の支払いを延ばすことができれば資金繰りは改善されるはずです。
買掛金とは?未払金・未払費用との違いや会計処理方法をわかりやすく解説
資金調達方法を多様化する
資金繰りを改善するために、資金調達方法を多様化しましょう。
中小企業の資金調達方法といえば、真っ先に思い浮かぶのが「銀行融資」といえます。
しかし実際には、赤字経営で審査に通らない企業や、担保に差し入れる不動産など所有していない企業も少なくないため、銀行融資が有効な資金調達方法として機能していません。
銀行融資に依存しすぎていると、銀行からの借入れを頼ることができなくなったとき、たちまち資金調達方法を失うことになります。
そのため資金調達方法を多様化することは必要といえますが、たとえば次のような方法が挙げられます。
- 政府系金融機関からの融資
- 民間銀行からの融資
- 国や自治体の補助金・助成金
- クラウドファンディング
- ファクタリング
- 新株発行
この中で中小企業が利用しやすく、すぐに手元の資金を増やせる方法が「ファクタリング」といえます。
ファクタリングとは、保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、早期現金化する資金調達方法です。
審査では売掛先の信用力が重視されるため、赤字経営のときや債務超過の場合でも利用でき、最短即日資金を調達できます。
ただし手数料が発生するため、本来受け取る売掛金額は少なくなることを留意した上で、できるだけ手数料を安く抑えることのできるファクタリング会社を選ぶことが必要です。
資金調達の方法とは?種類ごとのメリット・デメリットをわかりやすく解説
まとめ
会社経営において資金繰りは悩ましい問題ですが、売上や利益の数値だけ把握していればよいわけではなく、実際のお金の流れを把握しておくことが大切です。
経理担当者だけに資金繰りを任せず、経営者自身がしっかり実際のお金の管理を行うようにしましょう。
経営者自身が資金繰り表を確認し、これまでの入出金の実績と今後の予定を把握しておくことで、資金不足になる手前に資金を調達することができます。