ファクタリングが貸金業ではない理由とは?関係しない3つの法規制を解説

ファクタリングは貸金業ではありません。

なぜならファクタリングは、保有する売掛金などの売掛債権を、ファクタリング会社に譲渡して現金化する資金調達の方法だからです。

借入れではないため、ファクタリング会社に支払う費用は利息ではなく、貸金業法・利息制限法・出資法は適用されません。

しかし、過去の判例ではファクタリングに利息制限法が適用された事例や、知らない間に金銭消費貸借契約を結んでしまっていたケースもあるようです。

そこでファクタリングが貸金業ではない理由と、貸金業法・利息制限法・出資法の3つの法規との関係を解説します。

ファクタリングが貸金業ではない理由

貸付

ファクタリングは貸金業ではありませんが、その理由は以下のとおりです。

  1. 債権譲渡契約を締結する
  2. 金銭消費貸借を伴わない契約である
  3. 貸金の定義に該当しない取引である

それぞれ説明します。

債権譲渡契約を締結する

ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社で債権譲渡契約を結ぶ取引であるため、貸金業ではありません。

金銭を貸し借りする契約ではないため、ファクタリング会社に貸金業の登録は必要ないとされています。

ただし、償還請求権や買戻し請求権の付されたリコース契約によるファクタリングは融資とみなされるため、銀行や貸金業者のみが取り扱いできるサービスです。

償還請求権や買戻請求権が付されている契約を貸金業登録していない業者が取り扱う場合、相手はファクタリングを装ったヤミ金融業者であると判断し、契約しないでください。

金銭消費貸借を伴わない契約である

ファクタリングでは、金銭消費貸借を伴わない契約を結ぶため、貸金業ではありません。

消費貸借とはモノを借り受けて、後日、同じ種類や数量で返す契約のことです。

調達したお金を保管して返すのではなく、一旦借りたお金を消費して後で同じ額の金銭で返すことといえます。

金銭消費貸借契約を結ぶ契約を取り扱うことができるのは、銀行や貸金業登録をしている業者です。

そもそもファクタリングはお金を借りて使い、後日返す契約ではなく、売掛金を前倒しで現金化する売買契約を結びます。

そのため金銭消費貸借を伴う契約を結ぶわけではなく、貸金業には該当しないといえます。

貸金の定義に該当しない取引である

貸金業法上の貸金とは、以下のとおり定義されています。

  • 金銭の貸付けまたは金銭の貸借の媒介
  • 手形の割引・売渡担保その他これらに類する方法による金銭の交付または金銭の授受の媒介

ファクタリングは上記の定義に該当しないため、貸金業ではないといえます。

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ファクタリングに関係しない3つの法規制

法律

ファクタリングは貸金業ではないため、貸金業法など以下の法律の規制は適用されません。

    「貸金業法」は、消費者金融など貸金業者や貸金業者からの借入れについて規定している法律です。

    消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者が、金銭を貸し付ける業務を行うときに守らなければならない法律や規制が定められています。

    貸金業法が制定されている目的は、債務者の権利保護です。

    返しきれないほど借金を抱えて「多重債務者」で」苦しむ方が増え、深刻な社会問題となったことをきっかけに、平成18年に従来の法律が抜本的に改正され作られました。

    貸付業務は貸金業登録が必須となっている一方で、ファクタリングは貸金業ではないため貸金業法による規制の対象にはなりません。

    貸金業法で重要なのは、

    1. 総量規制
    2. 上限金利の引下げ

    の2つです。

    それぞれ説明していきます。

    総量規制

    「総量規制」とは、お金を借りることのできる総額へ制限を設けることで、平成22年6月18日から実施されています。

    貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超えると新規の借入れはできなくなるという規制であり、適用されるのは個人です。

    銀行からの借入れや法人名義での借入れ、住宅ローンなど低金利で長期返済期間の貸し付けは適用されません。

    上限金利の引き下げ

    法律上の上限金利には、

    • 利息制限法
    • 出資法

    の2つによる法律の縛りがあります。

    「利息制限法」とは、金銭消費貸借の暴利を防ぎ債務者を守ることを目的とした法律です。

    借入額に対し、次のとおりに上限金利が設定されます。

    元本の額が10万円未満 年利20%
    元本の額が10万円以上100万円未満 年利18%
    元本の額が100万円以上 年利15%

    この上限金利を超えた利息分は無効とされるため、返済する必要もありません。

    なお、利息制限法の上限金利を超えた分の利息は無効となり元金の返済に充てられますが、利息制限法そのものに罰則規定はありません。

    「出資法」とは違法な経済活動から経済的弱者(国民)を保護するための法律で、刑罰による経済取締法規です。

    • 出資金の受け入れ制限
    • 預り金の禁止
    • 浮貸しの禁止
    • 金銭貸借の媒介手数料の制限
    • 高金利の処罰

    などの規定があり、貸金業として扱われている「給与ファクタリング」も規制対象となっています。

    出資法で定められている上限金利は年利20%です。

    貸金業者が年利20%超の金利で金銭を貸し付けた場合、懲役または罰金、あるいは両方の処罰の対象となります。

    しかしファクタリングは金銭を貸し付けるのではなく、売掛金を現金化する手法のため、利息ではなく売買手数料が発生します。

    そのため出資法による上限金利は適用されません。

    ファクタリングで貸金業法が適用されるケース

    ファクタリングは車や不動産などの資産を売ってお金に換えることと同じく、売掛債権を現金化するサービスです。

    そのためファクタリング会社に支払う費用は利息ではなく「売買手数料」であり、借金を増やす方法ではないことから、貸金業法は適用されません。

    しかし「償還請求権」や「買戻し特約」が付された契約は、債権の売買ではなく債権を担保とした金銭の貸し付けとみなされます。

    そのためこれらの特約がついたファクタリング契約を結ぶことのできるファクタリング会社は、貸金業法登録した会社だけです。

    ファクタリングと似た手法である「手形割引」も、償還請求権のある契約を結ぶため、融資を受けることになり、手形割引で支払う手形割引料は「みなし利息」という扱いになっています。

    もしも契約内に「償還請求権」や「買戻し特約」などが付されている場合は、契約相手が貸金業者であるか確認することが大切です。

    なお、これらの特約が付されている場合、売掛先から売掛金を回収できなければ利用者がその責任を負うことになります。

    その点を踏まえた上で契約を結ぶようにしてください。

    過去にファクタリングで利息制限法が適用された判例

    裁判に使うハンマー

    締結された債権譲渡契約はファクタリングに名を借りたものであり、金銭消費貸借契約に準じるものとして利息制限法の適用と過払金返還請求を認めた判例は、平成29年3月3日、大阪地裁で判決されました。

    その内容は、毎月60万円を借りて翌月100万円を返済するといった金銭授受と返済を、何度も借主ファクタリング会社が行ったというものでした。

    借主となった運送業者(原告)が、ファクタリング会社(被告)に対して行われた運送料債権の譲渡が、実質的には譲渡担保の金銭消費貸借取引であるとした裁判です。

    利息制限法を適用させた場合には過払いが生じることとなり、運送業者からファクタリング会社に対し、過払い金約491万円が請求されました。

    この判例に関して、次の2つからなぜ利息制限法が適用されたのか確認してみましょう。

    1. 裁判の争点となった部分
    2. 利息制限法の適用が認められた理由

    それぞれ説明していきます。

    裁判の争点となった部分

    争点となったのは、金銭の授受を伴った取引の性質が、債権譲渡なのか、それとも債権譲渡担保付の貸し付けなのかという部分です。

    もし、債権譲渡担保の貸し付けであれば、利息制限法が適用されることになります。

    裁判所は、この一件を債権譲渡担保付の貸し付けであると判断し、利息制限法の適用を認めたわけですが、ポイントとなったのはファクタリング会社が債権回収リスクをほとんど負っていないことでした。

    利息制限法の適用が認められた理由

    取引が金銭消費貸借契約であれば、金銭を貸した側は利息制限法所定の制限利率の限度でしか利息を収受することができません。

    もし、今回の取引が債権の売買契約であり、利息を上回る利益を上げることができることを正当化するとすれば、ファクタリング会社主は売買の対象となった売掛債権について、ある程度は回収リスクを負うといった相応の理由があるべきです。

    しかし、ファクタリング会社は、債権回収のリスクをほとんど負っていなかったわけです。

    さらに、債権の額面とは関係なく、金銭の授受が行われていたことや、運送業者が買戻しを行わなかった場合には不利になる条件をつきつけ、買戻しを行わざるを得ない立場にあわせたことなどが決め手となったようです。

    給与ファクタリングが貸金業である理由

    給料

    ファクタリングは原則、利息制限法や出資法は適用されません。

    しかし中には、表向きはファクタリングを装い貸金業を営む悪質なケース確認されています。

    特に、事業者相手ではなく個人を相手とし、給料を賃金債権とみなし買い取る「給与ファクタリング」は、裁判所で実質「貸金業」と認定されています。

    そのため賃金債権を買い取るためには貸金業法上の許認可が必要であり、貸金業登録していない業者は違法な悪徳業者です。

    ファクタリングを装った悪質業者にはくれぐれも注意するようにし、慎重にファクタリング会社を選ぶようにしましょう。

    貸金業の法規制が適用される契約

    通常のファクタリング契約であれば、売掛債権の売買取引のため、貸金業に関する規制を受けることはありません。

    ただ、表向きはファクタリング会社として売掛債権の現金化をうたい営業していても、次のような契約内容のときには貸金業とみなされ、貸金業法・利息制限法・出資法の規制を受けることになります。

    1. 債権譲渡ではない契約
    2. 償還請求権ありの契約
    3. 担保・保証付き契約

    それぞれ説明します。

    債権譲渡ではない契約

    ファクタリングは売掛債権という債権を譲渡することによる資金調達のサービスのため、利用者とファクタリング会社で結ぶ契約は「債権譲渡契約」です。

    しかし契約形式が債権譲渡ではなく、「金銭消費貸借契約」という場合には売掛金を担保とした資金の貸し付けとなります。

    ファクタリングとして勧誘されたのに、契約書には売買契約であることが定められていないケースや、契約書の見出しはファクタリング契約なのに内容が資金の貸し付けになっているケースもあるようです。

    資金の貸し付けは貸金業登録が必要となり、許認可を受けていない業者は悪徳なヤミ金融業者であるため、契約しないようにしてください。

    償還請求権ありの契約

    「償還請求権」とは、債権の買い戻しを求める権利のことです。

    通常のファクタリングでは、売掛先から売掛金が回収できなかった場合、その責任はファクタリング会社が負います。

    利用者は現金化で受け取ったお金をファクタリング会社に返す必要はありませんが、償還請求権ありの契約を結んだ場合は、利用者に弁済義務が生じることになってしまいます。

    償還請求権ありの契約は融資とみなされるため、貸金業登録しているファクタリング会社しか扱うことはできませんので注意してください。

    担保・保証付き契約

    ファクタリングは売掛債権の売買のため、担保や保証人などは必要ありません。

    融資を受けるわけではない以上、利用者に返済義務もないため、万一返済できなくなったときに備えた担保や保証人を準備する必要はないからです。

    しかし担保や保証人を求められた場合、契約自体がファクタリングとはいえず、ファクタリングを装う金銭の貸し付けと判断できます。

    貸金業登録のない業者であれば悪質なヤミ金融業者であるため、契約しないようにしてください。

    ファクタリングを装う違法業者に注意

    正規のファクタリング契約は、貸金業法・利息制限法・出資法は無関係です。

    貸金業とみなされる行為を行うファクタリング会社は、貸金業登録をせずに違法契約を結ぶヤミ金融業者と考えられます。

    以前まで表向きは貸金業で営業していたヤミ金融業者が、取り締まりで行き場を失いファクタリング会社を装うケースが増えたといえます。

    貸金業登録までのハードルは非常に高く簡単に取得できませんが、ファクタリング業界は法規制が十分ではないため目をつけたと考えられます。

    違法業者と契約してしまうと、悪質な取り立て行為などで苦しめられることになるため絶対に契約しないてください。

    まとめ

    ファクタリングは貸金業法による法規制とは関係がありません。

    売掛債権の売買による資金調達のサービスであり、金銭の貸し付けではないため、貸金業法・利息制限法・出資法の規制を受けることもなく貸金業登録は不要とされています。

    しかし、中には表向きはファクタリングを装い、売掛債権を担保として資金を貸し付けるヤミ金融業者なども存在しているため、十分に注意が必要です。

    ファクタリングを利用して資金を調達するときには、ファクタリング会社の見極めを十分するとともに、契約内容を確認した上で契約を結ぶようにしましょう。