景気は回復しているといいながらも中小企業の経営状態は厳しさを増している状況ですので、売掛債権の回収に頭を悩ませているという経営者も少なくないでしょう。
取引先からの入金が遅れがちになれば、自社の支払いも遅れることになるなど、影響を受けてしまいます。
売掛金を早く回収するため、支払督促や訴訟などの手続きを行うほうが良い場合もあれば、まずは担保だけ取っておくと良い場合など、状況に応じて対応していくことになります。
売掛相手と今後も付き合いを継続したい場合
しかし中には売掛相手との関係が打ち切られると商品が入荷しなくなり、事業に支障をきたすというケースもあるでしょう。
この場合には全額無理をして回収してしまって取引を打ち切ってしまうのではなく、分割で回収する支払猶予を設けるといったことも検討してみましょう。
売掛金を分割払で回収する場合
売掛金を分割で回収する場合には、売掛相手方と準金銭消費貸借という契約を締結しておきましょう。
準金銭消費貸借契約はこれまで売掛債権だった債権を貸付金に切り替えるという契約になります。
契約内容には、これまでの売掛債権の残額が債務であることを承認させること、その金額を貸付金にすること、分割払いの支払日と支払金額、利息など、項目として定めておくようにしましょう。
準金銭消費貸借を締結は時効の延長に繋がる
商人間の売掛債権は債権が発生してから原則5年経過で時効を主張することができてしまいます。
商品の売買で生じた債権については2年で時効です。
契約を締結しておくことで時効は契約締結時から5年間延長されますので、すぐに時効で債権が消滅することはなくなるでしょう。
売掛債権の時にはなかった契約内容を盛り込める
また、契約締結時に売掛債権の時点では規定していなかった契約内容を盛り込むことができるというメリットもあります。
準金銭消費貸借契約を締結することは支払を猶予することになるので、利息や損害金、連帯保証人といったことについても相手方が了承する可能性も高くなります。
売掛債権のままで回収できることを待つより、有利な内容に変更できると考えられるでしょう。
万一の時に差し押さえなどを迅速に行いたいなら
契約は公証人役場で締結しておいたほうが、支払いが滞った場合など、万一の際に相手の財産を差し押さえることもできます。
相手方の財産を差し押さえたくても通常であれば、支払督促や訴訟などの手続きを先に行い、債務の存在を証明した上で行うことになります。
しかし公証人役場で執行証書を作成しておくことにより、これらの手続きを省いて財産の差し押さえや換価が可能になります。
口頭だけでなく必ず契約書を作成すること
売掛金を分割で回収するということは、売掛相手に支払の猶予を与えることになります。
そのため口頭だけで約束して取り決めるのではなく、契約を締結することにより万一に備えることもできますので検討しましょう。