2020年03月27日

中小企業とファクタリングについて

春風の候、平素は格別のご高配を賜り、心から感謝いたしております。

3月初頭の金融庁の発表に次いで、先日司法からも給料ファクタリングは貸金に該当すると見解が示されており、

昨今ファクタリングに対するイメージが悪く、私の所にも大丈夫なのか?と問い合わせがきます。

 

弊社の事業は事業者向けのファクタリングであるため、給料ファクタリングとは性質が違うものであります。

しかし、事業者向けファクタリングにも悪質な業者は存在し、そんな悪質な業者の手口から
ファクタリング=貸金業との見解をされることもあります。

そこでこの機会に、ファクタリングについて主観ではございますがまとめてみたので是非ご拝読頂ければと思います。

中小企業とファクタリング

1 事業者における資金調達事情

(1) 資金調達の理由と方法
企業経営者が資金調達を必要とする理由は、様々であるが、その中でも、主な理由として、

① 新たに設備投資をするため

② キャッシュフローの不足を補うため

が多いとされる。

一般に、①の新たな設備投資をする理由とは、新たな設備を導入し、生産力を向上させることで、

売上規模を拡大させることを目的とするケースが多い。

このような資金調達は、企業の将来性にも有益であるため、事業計画に不備がなければ、

銀行等の金融機関としても前向きに対応してくれることが多い。

問題なのは、②のキャッシュフローの不足を補うための資金調達である。

一般的な企業活動では、何らかの商品や役務を提供し、その対価として金銭を得るまでに、

数ヶ月を要することとなり、その間に商品や役務を提供するために要した費用は、

自社で捻出し、立て替えることとなる。

そのため、事業活動では、常時、一定額の現金を保有している必要が生じることとなる。

つまり、現在の商取引制度では、一定額の現金が不足し、調達できなければ、

商品や役務の提供ができず、新たな事業活動をすることが困難となる。

しかしながら、このようなキャッシュフローを補うための資金調達は、

あまり企業の将来性に有益であるとはいえず、また、売掛金を回収すれば、

解消してしまうため、調達を要する期間も短期間となる場合が多い。

金融機関にとって、このような短期間の資金調達は収益面から敬遠されることが多いため、

キャッシュフローの不足を補うための資金調達は、事業活動を維持するための障害となることが多い。

(2) ファクタリングの活用と有益性
そうした状況の中で、売掛金を先に現金化することができれば、キャッシュフローの不足を補うことができるということで、ファクタリングという制度の活用が推奨されることとなった。

 

2 ファクタリングの問題点と解決方法

(1) ファクタリングの定義と問題点
ファクタリングとは、主に事業活動で生じた売掛債権を売却し、その対価を得ることで、

資金調達することをいうものであるが、近年、一部の悪質な業者によって、様々な問題が生じてしまっている。
具体的には、

①ファクタリング業務が貸金業に該当するため、貸金業登録をしなければ、法令違反になること

②法外な手数料を徴収することで顧客の事業が立ち行かなくなること

上記に集約されるものと思われる。

 

以下では、それぞれについて、具体的に省察していく。

(2) ファクタリング業務が貸金業に該当する理由
貸金業界では、売買対象となった売掛債権の債務者が支払不能に陥った場合に、

売掛債権相当額の買戻し義務が生じるならば、貸金業法で規定する貸金に該当するとされている。

したがって、ファクタリング会社の中には、売掛先を含めた三者間契約であれば、

貸金業に該当しないといわれているようであるが、たとえ三者間契約であっても、

債権の売主に買戻し義務を課せば、貸金業に該当することとなるため、この説は誤りである。

なお、民法第569条では、「債権の売主が債務者の資力を担保したときは、

契約の時における資力を担保したものと推定する。」と定められており、

契約当事者間で特段の合意がなければ、売掛先に弁済の資力がない場合には、

ファクタリング会社において、買戻しを請求することができない。

そのため、金融業界における定義では、契約書に債権の買戻しを

義務づけるという特約を設けていなければ、

貸金業法に該当しないということになってしまうため、いささか的外れである感が否めない。

これに対し、金融庁などでは、売掛債権売買契約において、

債権の売主が譲受人から売掛債権を回収する業務の委託を受け、譲受人に支払う仕組みになっている場合は、

ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性があるとしている。

この意味するところを考察すると、ファクタリング会社において、

売掛債権の回収を売主に義務付けることにより、売掛債権が回収不能となった場合には、

売主に弁償する義務が生じることとなり、売主がファクタリング会社に対して、

売掛債権相当額の支払義務が生じ、貸金業に該当するということではないかと思われる。

確かに、債権の売主に対し、売掛債権の回収を義務付ける業務委託契約を締結すれば、

民法569条の規定とは関係なく、売主は、売掛債権を回収し、譲受人に支払わなければならず、

仮に、回収できなければ、未回収相当額の損害賠償を支払う必要が生じるため、

事実上、貸金業であるということになる。

したがって、業務委託契約のあるファクタリング業が貸金業に該当するのか否かは、

委託者(譲受人)が売掛債権の回収義務を課し、あるいは、回収業務の達成ができなかった場合に、

どのような義務を定めているのかという点が重要になると思われる。

 

(3) 法外な手数料を徴収することで顧客の事業が立ち行かなくなること
私見であるが、ファクタリング業務において、最も重要なのがこの点であると考える。

およそ、ファクタリング取引のみならず、いかなる商取引であっても、取引による損失が多く、

継続することが困難であるなど、一方的に搾取するだけであれば、商取引としては欠陥であり、

そのようなファクタリング事業は、もはや、商取引とはいえないのではないだろうか。

では、ファクタリング事業における適正な手数料について考察する必要があると考える。

上述のとおり、そもそも、利用者にとって、ファクタリングとは、売掛債権を資金化することで、

事業者におけるキャッシュフローの不足を補うことを目的としている。

企業活動において、売上高から売上原価を差し引いた金額を売上総利益(粗利)といい、

その収益を元に利益を得ることを目的としているが、ファクタリング事業における手数料は、

この売上総利益を圧迫させることとなる。

例えば、100万円の売掛債権に対し、売上原価を差し引くと、10万円しか粗利が残らない場合、

ファクタリングの手数料として5万円を支払ってしまうと、粗利が5万円しか残らないこととなる。

一方で、同じ100万円の売掛債権に対して、売上原価を差し引いても30万円の粗利が残るのであれば、

ファクタリング手数料として20万円を支払っても10万円が粗利として残ることとなるため、

上記の例よりも手数料は高いものの、結果として粗利は多いということになる。

要するに、ファクタリングの手数料は、利用者の事業形態によって有益になることも、

また、結果として、法外になってしまう場合もあるということを認識することが重要であると考えられる。

したがって、今後のファクタリング事業は、単に手数料の高い低いだけでなく、利用者の事業内容を見極め、

顧客の事業に支障のない適正な手数料を算出することで、持続可能な取引を模索することが

必要になっていくのではないだろうか。

 

ピーエムジー株式会社

佐藤 貢

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