営業キャッシュフローは、企業の本業である営業活動によって生じた現金の収支を示す重要な指標です。適切に把握・管理することで、経営の健全性や成長性を評価できます。
「営業キャッシュフローって何だろう」
「営業キャッシュフローの計算方法が分からない」
などのお悩みをお持ちの方も、企業の財務分析や経営判断の参考として、ぜひ最後までご覧ください。
目次
営業キャッシュフローとは
営業キャッシュフローとは、企業の営業活動によって生じた現金の収支を示す指標です。
具体的には、商品の販売やサービス提供による収入から、仕入や営業活動に必要な諸費用を差し引いた金額を指します。
この指標は、企業の経営状況を把握するために重要な役割を果たします。現金同等物も含めて計算されることが一般的です。
営業キャッシュフローは、キャッシュフロー計算書の3項目のうちの一つです。他の2項目には、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローがあります。
3項目の中でも営業キャッシュフローは、企業の本業の健全性を示す指標です。例えば、営業キャッシュフローがプラスの場合、企業が健全な営業活動を行っていると分かります。
反対にマイナスの場合、現金不足や経営の見直しが必要であることを意味します。
投資キャッシュフローとは
投資キャッシュフローとは、設備投資や有価証券の売買など、投資活動によって発生する現金の流出入を示す指標です。具体的には、土地や建物、機械設備の購入と売却、または企業買収などの長期的な資産取得や売却に関する現金の動きを計上します。
これにより、企業が将来の成長や利益向上を目的に、どのような投資活動を行っているかを把握することが可能です。
例えば、新しい工場を建設するための土地購入や最新設備の導入は、投資キャッシュフローにおける現金の流出に該当します。一方で、不要になった設備や資産を売ることによって得た現金は流入となります。
投資有価証券の買い入れも、投資キャッシュフローの重要な要素です。
結果として、短期的にキャッシュフローがマイナスになることがあっても、企業の状況が悪いとは一概にいえません。企業が積極的に投資を行うことで、将来的に収益を増加させられると期待できるからです。
企業の健全な成長には、適切な投資キャッシュフローの管理が不可欠です。過剰な投資は企業の資金繰りを悪化させる可能性がありますが、逆に投資を怠ると成長機会を逃すことになるでしょう。
投資キャッシュフローの詳細な分析と管理は、企業経営の重要な要素となります。
財務キャッシュフローとは
財務キャッシュフローとは、企業の資金調達活動および返済活動に関連する現金の流入と流出を示す指標です。この指標を分析することで、企業の資金調達における戦略や資金繰りの状況を把握でき、健全な経営が行われているかを評価できます。
財務キャッシュフローに含まれるのは、借入金の返済や社債の償還、配当金の支払いなどです。具体的には、財務キャッシュフローがプラスの場合、企業が借入金や社債による資金調達を通じて財務状況を強化していることが示されています。出資による資金調達もここに含まれます。
一方、財務キャッシュフローがマイナスの場合、借入金や社債の返済が進んでいることが言えますが、一方で資金調達ができず企業の財務状況が悪化している可能性がある可能性もあります。
また、財務キャッシュフローは企業の成長段階や経営戦略によって大きく変動します。
成長期にある企業は積極的な資金調達を行うため、財務キャッシュフローの流入が大きくなる傾向があります。一方で、成熟期にある企業は得られる利益から借入金や社債を返済し、安定した配当金支払いを重視し、流出が多くなるのが特徴です。
企業の財務状況を総合的に理解するためには、営業キャッシュフローや投資キャッシュフローと併せて、財務キャッシュフローを分析することが重要です。
営業活動によるキャッシュフローの重要性
営業キャッシュフローは、企業における財務の健全性を示す重要な指標です。
以下の4つの観点から、その重要性を詳しく説明します。
- 日々の資金繰りへの影響
- 事業の持続可能性の指標
- 銀行融資の際の重要な判断材料
- 経営判断のための重要なツール
日々の資金繰りへの影響
営業キャッシュフローは、企業の日々の資金繰りに直接影響を与えます。
十分な営業キャッシュフローがあれば、給与支払い、仕入、家賃などの経常的な支出を滞りなく行うことが可能です。逆に営業キャッシュフローが不足すると、これらの支払いが困難になり、事業運営に支障をきたす可能性があります。
具体例は以下の通りです。
- 商品の納期が遅れた場合、営業キャッシュフローがマイナスになり、資金繰りが悪化する可能性がある。
- 顧客からの回収が滞った場合、営業キャッシュフローがマイナスになり、資金繰りが悪化する可能性がある。
営業キャッシュフローを定期的に把握することで、企業は将来の資金不足を予測し、適切な資金調達を行えます。
事業の持続可能性の指標
安定した営業キャッシュフローは、事業の持続可能性を示す重要な指標です。
継続的にプラスの営業キャッシュフローを生み出せる企業は、外部からの資金調達に頼ることなく、自社の事業を維持・拡大できる可能性が高いといえます。逆に、長期間にわたりマイナスのキャッシュフローが続く場合は、経営改善が必要となるでしょう。
投資家や株主にとっても、この指標は企業の長期的な成長性を判断する上で重要な材料となります。
銀行融資の際の重要な判断材料
銀行が融資を検討する際、判断材料として営業キャッシュフローが欠かせません。
安定した営業キャッシュフローは、企業の返済能力の高さを示すため、有利な条件での融資を受けやすいです。逆に、営業キャッシュフローが不安定または赤字の場合、融資を受けることが困難になったり、高い金利を要求されたりする可能性があります。
また、銀行が重視するのは営業キャッシュフローだけではありません。決算書全体や事業内容などを総合的に判断して、融資の可否を決定します。特に、営業利益や経常利益の状況も重要な判断材料となります。
以下に例を示します。
- 創業して間もない企業は、営業キャッシュフローがマイナスであっても、事業計画や経営者の経験などが評価されて融資を受けられる場合もある。
- 業績が安定している企業であっても、営業キャッシュフローが突然悪化した場合、銀行は融資に慎重になる可能性がある。
経営判断のための重要なツール
営業キャッシュフローは、経営者が意思決定を行う際の指針となる重要なツールです。
例えば、新規事業への投資や設備投資、人員増強などの判断を行う際、営業キャッシュフローの状況を考慮することで、より適切な判断が可能になるでしょう。また、営業キャッシュフローの推移を分析することで、事業の問題点や改善すべき点を早期に発見し、対策を講じられます。
このように、営業キャッシュフローは企業の財務状況を多角的に評価する上で欠かせない指標です。経営者はもちろん、投資家や金融機関にとっても、企業の実態を把握する上で重要な情報源となります。
企業の財務状況を総合的に把握するためには、営業キャッシュフローを他の財務指標と併せて分析することが必要です。これにより、経営陣は適切な意思決定を行い、企業の成長を支えられます。
営業キャッシュフローと営業利益の違い
営業キャッシュフローと営業利益は、どちらも企業の収益性を評価する指標ですが、異なる概念であり、計算方法も異なります。
営業キャッシュフローは、企業の日常の営業活動によって実際に得られた現金の増減額を表す指標です。一方で営業利益は、損益計算書に記載されている営業活動による利益の総額を表す指標です。
営業キャッシュフローは、現金という実体に基づいて計算されるため、企業の財務状況をより正確に把握できます。一方で営業利益は、会計上のルールに基づいて計算されるため、必ずしも現金の増減を反映しているわけではありません。
具体例を以下に示します。
- 商品を販売した場合、売上が発生する。しかし代金の回収がまだであれば、売掛金として計上され、営業キャッシュフローはマイナスになる。
- 減価償却費は減価償却として営業利益を減少させるが、現金の支出ではないため、営業キャッシュフローには影響しない。
営業キャッシュフローと営業利益の両方の指標を併せて分析することで、企業の経営状況をより正確に把握できます。また他の財務要素も考慮することで、より包括的な財務分析が可能となります。
営業キャッシュフローの計算方法
営業キャッシュフローの計算方法には、直接法と間接法があります。どちらの方法も、企業の営業活動による現金の流れを明確にするために用いられます。
それぞれの計算手順は以下の通りです。
直接法
直接法では、現金の収入と支出を直接的に集計します。
この方法では、営業活動による現金収入(売上収入など)から現金支出(仕入、人件費、経費など)を差し引くことにより、営業キャッシュフローを算出します。
具体的な手順は以下の通りです。
- 現金収入を集計する(例:商品やサービスの販売による現金収入)
- 現金支出を集計する(例:仕入、人件費、経費など)
- 現金収入から現金支出を差し引く
直接法は、現金の流れが明確に把握できるため、資金繰りの管理に役立ちます。また、現金同等物の動きも含めて把握できるため、より詳細な資金管理が可能です。ただし、詳細な現金収支のデータが必要となるため、手間がかかるでしょう。
間接法
間接法では、損益計算書の税引前当期純利益をベースに調整を行い、営業キャッシュフローを計算します。直接法よりも簡単に計算できるため、財務状況を把握するのに便利です。
この方法では、税引前当期純利益に対して非現金支出項目(例:減価償却費)や運転資本の変動を加減して計算します。
具体的な手順は以下の通りです。
- 当期純利益をベースにする
- 非現金支出項目(例:減価償却費)を加算する
- 運転資本の変動(例:売掛金の増減、在庫の増減、買掛金の増減)を調整する
直接法と間接法の違い
直接法と間接法の計算方法は前述の通りですが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
まず直接法は、実際の現金収支を直接集計する方法です。具体的には、顧客からの現金収入や仕入先への現金支払いなど、営業活動に関連する現金の動きを個別に集計します。
直接法の特徴は以下の通りです。
- 現金の流れが明確に把握できる
- 詳細な現金取引の情報が得られる
- 資金繰りの管理に適している
- 計算に時間がかかる
一方で間接法は損益計算書の税引前当期純利益をベースとし、非資金項目を調整して算出する方法です。具体的には、減価償却費の加算や売掛金・買掛金の増減などを調整します。
この方法の特徴は以下の通りです。
- 損益計算書のデータを利用するため、計算が簡単にできる
- 多数の企業が採用している
- 現金の流れが直接的に示されない
- 詳細な現金取引の情報が得られにくい
- 減価償却の影響を反映しやすい
両方法とも営業キャッシュフローの合計金額は同じになりますが、計算過程や得られる情報が異なります。
企業の規模や目的に応じて、適切な方法を選択することが重要です。
簡易的な営業キャッシュフローの計算方法
営業キャッシュフローを簡易的に計算する方法があります。損益計算書のみを使用するため、初めての方でも簡単かつ手軽に計算できるでしょう。
計算方法は以下の通りです.
営業キャッシュフロー=当期純利益(または経常利益-法人税など)+減価償却費
減価償却費を加算するのは、これが実際の現金支出を伴わない費用だからです。
例えば、当期純利益が2,000万円で、減価償却費が400万円の場合、簡易的な営業キャッシュフローは以下のように計算されます。
営業キャッシュフロー=2,000万円+400万円=2,400万円
この簡易的な方法は、正確な営業キャッシュフローを算出するものではありませんが、企業が現金をつくり出す能力を素早く把握するのに役立ちます。
ただし運転資本の変動や営業外収益など、他の要因も考慮する必要がある場合は、より詳細な計算方法を用いることをおすすめします。
エクセルを使用した営業キャッシュフローの計算
エクセルを使用すると、費用をかけなくとも営業キャッシュフローを計算できます。ここでは、多数の企業で採用されている間接法の計算方法を紹介します。
キャッシュフロー計算表(間接法)
項目 |
金額(単位:万円) |
1.営業活動によるキャッシュフロー |
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税引前当期純利益 |
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減価償却費 |
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(▲)受取利息及び受取配当金 |
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支払利息 |
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売上債権の減少額 |
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棚卸資産の減少額 |
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仕入債務の増加額 |
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その他資産の減少額 |
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その他負債の増加 |
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未払法人税等の増加額 |
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小計 |
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利息及び配当金の受領額 |
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(▲)利息の支払額 |
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(▲)法人税等の支払額 |
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営業活動によるキャッシュフロー |
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2.投資活動によるキャッシュフロー |
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(▲)有価証券の取得による支出 |
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有価証券の売却による収入 |
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(▲)有形固定資産の取得による支出 |
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有形固定資産の売却による収入 |
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貸付金の回収による収入 |
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投資活動によるキャッシュフロー |
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3.財務活動によるキャッシュフロー |
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短期借入金の借入による収入 |
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(▲)短期借入金の返済による支出 |
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長期借入金の借入による収入 |
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(▲)長期借入金の返済による支出 |
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(▲)配当金の支払額 |
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財務活動によるキャッシュフロー |
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4.キャッシュの増加・減少額 |
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5.キャッシュの期首残高 |
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6.キャッシュの期末残高 |
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以下に、営業キャッシュフロー計算書をエクセルで作成する5つの手順を説明します。
- 手順1:データを準備する
- 手順2:営業活動によるキャッシュフローを入力する
- 手順3:投資活動によるキャッシュフローを入力する
- 手順4:財務活動によるキャッシュフローを入力する
- 手順5:数値を合計し、キャッシュフローを計算する
手順1:データを準備する
キャッシュフローを計算するためのエクセルを準備します。データの参照元となる決算書(貸借対照表と損益計算書)も用意しましょう。また、会計期間を明確にし、期首と期末の数値を正確に把握することが重要です。
手順2:営業活動によるキャッシュフローを入力する
まず、営業活動によるキャッシュフローを入力します。
営業活動によるキャッシュフローは、企業が1年間の営業活動で稼いだ利益(税引前当期純利益)に、固定資産の価値を年数をかけて費用として計上したもの(減価償却費)などを加えたものです。
さらに自社の状況に合わせて、売上代金の回収や仕入代金の支払いなど、必要な項目を追加して入力します。
手順3:投資活動によるキャッシュフローを入力する
次に投資活動によるキャッシュフローを入力します。
投資活動によるキャッシュフローとは、企業が投資活動によって生じた資金の流れのことです。
具体的には、以下の項目が該当します。
- 固定資産の購入費用や売却収入(固定資産の取得による支出・収入)
- 子会社の株式の購入費用(子会社株式の取得による支出)
さらに、遊休不動産の売却や子会社の株式の売却など、投資活動に合わせて必要な項目を追加して入力します。
手順4:財務活動によるキャッシュフローを入力する
次に、財務活動によるキャッシュフローを入力します。
財務活動によるキャッシュフローは、企業の財務活動によって生じた資金の流れのことです。
具体的には、以下の項目が該当します。
- 短期借入金の借り入れや返済(短期借入金の増加・減少)
- 長期借入金の借り入れや返済(長期借入金の増加・減少)
- ●新たな株式発行による資金調達(増資)、減資、配当金の支払い
手順5:数値を合計し、キャッシュフローを計算する
それぞれの数値を入力し終えたら、合計します。
以下の項目をそれぞれ計算します。
- 4.キャッシュの増加・減少額
- 5.キャッシュの期首残高
- 6.キャッシュの期末残高
「4.キャッシュの増加・減少額」には、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの合計を入力してください。
「5.キャッシュの期首残高」は貸借対照表を参照して入力します。
以上の4と5を合算すると、「6.キャッシュの期末残高」が算出できます。
営業キャッシュフローの分析と見方
営業キャッシュフローの分析は、企業の財務状況を把握するために欠かせません。この指標を正しく理解し、分析することで、経営判断の質を向上させられます。
ここでは、営業キャッシュフローの基本的な見方と分析方法について解説します。
営業キャッシュフロー項目の詳細
営業キャッシュフローを構成する項目は数多くあり、項目によって、キャッシュフローがプラスまたはマイナスになります。
ここでは、営業キャッシュフローがプラスとマイナスになる項目をそれぞれ説明します。
プラスとなる項目
● 商品の販売やサービスの提供などによる現金収入
● 売掛金の回収
● 保険金の収入
● 利息、配当金の受取
● 受取手形の現金化
マイナスとなる項目
● 商品などの仕入による現金支出
● 買掛金の支払い
● 人件費の現金支出
● 経費の現金支出分
● 法人税の支払い
● 利息の支払い
● 支払手形の決済
これらの項目を確認することで、企業の本業による現金の流れを正確に把握できます。
次に、営業キャッシュフローの見方について説明します。
まず、営業キャッシュフローがプラスであるかマイナスであるかを確認しましょう。
プラスの場合は、企業が営業活動を通じて現金を生み出していることを意味し、健全な経営をしていることを示しています。逆にマイナスの場合は、営業活動が現金流出を引き起こしていることを示し、経営改善が必要な可能性があると分かります。
業績悪化の要因を分析するには、営業キャッシュフローと損益計算書を比較することが重要です。具体的には、営業キャッシュフローが赤字の場合、損益計算書でも赤字が続いている企業では、業績悪化の可能性が高いといえます。
一方、損益計算書で赤字でも売上が増加している企業では、先行投資や在庫増加などの支出内容を分析する必要があります。
営業キャッシュフローと支払利息の関係
営業キャッシュフローと支払利息の関係は、企業の財務状況と資金調達能力を理解する上で重要な観点です。
この関係を以下の3つの視点から説明します。
- 営業キャッシュフローへの影響
- 財務健全性の指標
- 負債返済能力の評価
営業キャッシュフローへの影響
まず、営業キャッシュフローへの影響について説明します。
支払利息の増加は、営業キャッシュフローを減少させる要因です。
例えば借入金が増えると支払利息も増加し、その結果営業キャッシュフローが減少します。逆に支払利息が減少すると、営業キャッシュフローは増加します。
財務健全性の指標
次に、財務健全性の指標として、営業キャッシュフロー対支払利息比率があります。この比率は、営業キャッシュフローを支払利息で割って計算します。
営業キャッシュフロー/支払利息比率=営業キャッシュフロー÷支払利息
比率が高いほど、企業が営業活動から生み出す現金で利息の支払いを十分にカバーできていることを示します。例えばこの比率が2倍であれば、営業キャッシュフローが支払利息の2倍あることを意味し、利息の支払いに余裕があると判断できるでしょう。
負債返済能力の評価
最後に、負債返済能力の評価について説明します。
営業キャッシュフローは、債務返済や投資に使える資金を示します。この金額が大きいほど、企業の財務的な柔軟性が高いと評価されるのです。
この金額が十分にあれば、例えば新規事業への投資や 投資有価証券の買い入れ、借入金の早期返済などの選択肢を広げることが可能です。
経営者や経理担当者は、この関係を常に把握しましょう。
もし、支払利息が営業キャッシュフローを圧迫している場合は、支払利息を減らすことを検討しましょう。
金利を下げるのも有効です。具体的には、利息の高い借入金から、より利息の低い借入金へ借り換えする方法があります。
他にも、経営状況を改善して企業の信用リスクを低減することで、金利を下げられる場合があります。
業種別の営業キャッシュフロー特性
営業キャッシュフローの特性は業種によって大きく異なります。
ここでは、建設業、運送業、製造業の3つの業種について、それぞれの営業キャッシュフロー特性を説明します。
建設業
建設業は、工事の規模や期間によりキャッシュフローが大きく変動する特性があるため、キャッシュフローが不安定になりやすい業種です。
工事開始時には前受金を受け取ることが多く、一時的にキャッシュフローが改善されますが、工事が進むにつれてこの効果は徐々に薄れていきます。
また、建設業は気候条件の影響を受けやすく、特定の季節に営業キャッシュフローが集中することにも注意しなければなりません。さらに、多くの下請け業者への支払いが発生するため、そのタイミングもキャッシュフローに大きく影響します。
運送業
運送業は、燃料費の変動が営業キャッシュフローに直接影響します。燃料価格が高騰すると、営業キャッシュフローが減少するため、タイムリーに価格転嫁できるかが重要です。
また、車両や物流設備の定期的な更新が必要で、これもキャッシュフローに影響を与えます。運送業は季節性や景気変動の影響を受けやすく、特に小口配送はeコマースの成長などにより変動が大きくなりやすいのです。
さらに、人件費の比重が高いため、人材確保や効率的な人員配置も営業キャッシュフローに影響する要因の一つです。
他に環境規制や労働規制の変更も、設備投資や運営コストに影響し、キャッシュフローに反映されます。例えば規制が強化されると、設備投資や運営コストが増加し、営業キャッシュフローが悪化するでしょう。
製造業
製造業では、原材料の購入や製品の在庫管理が営業キャッシュフローに大きく影響します。在庫管理が適切でないと、資金繰りが悪化し、営業キャッシュフローが悪化するでしょう。そのため、効率的な在庫管理がキャッシュフローの改善には欠かせません。
また、大規模な設備投資が必要であるため、投資キャッシュフローと営業キャッシュフローのバランスが重要です。
製造業は受注生産と見込み生産の2つに分かれます。
受注生産型企業は顧客から受注を受けてから生産を開始する方式です。そのため、比較的安定したキャッシュフローが期待できます。
一方で、見込み生産型企業は将来の需要を予測して生産を行う方式です。そのため、市場動向の影響を受けた際、キャッシュフローが変動しやすいです。例えば、在庫の過多や市場の需要の減少などのリスクがあります。
さらに、サプライチェーン全体の効率も営業キャッシュフローに影響を与える要因の一つです。サプライチェーンに問題があると、生産が遅延したり、コストが増加したりして、営業キャッシュフローが悪化するでしょう。
前述したように、業種によって営業キャッシュフローの特性は大きく異なります。
自社の業種の特性を理解した上で、適切に管理することが企業の財務健全性を保つために重要です。また、会計期間ごとの比較分析を行うことで、より正確な営業キャッシュフローの傾向を把握することができます。
営業キャッシュフローと企業価値
営業キャッシュフローは、企業が本業でどれだけ現金を生み出しているかを表す重要な指標です。この指標は、企業の財務体質や収益性を判断する上で重要な役割を果たし、企業評価にも大きな影響を与えます。
ここでは、営業キャッシュフローと企業価値の関係について詳しく解説します。
営業キャッシュフローが企業評価に与える影響
営業キャッシュフローは、企業の評価に大きな影響を与える重要な指標です。
以下の3つの観点から、その影響について説明します。
- 中小企業の事業承継時の評価への影響
- M&Aの際の交渉力への影響
- 従業員や取引先からの信頼度への影響
中小企業の事業承継時の評価への影響
中小企業の事業承継時には、重要な評価基準として営業キャッシュフローが欠かせません。
営業キャッシュフローが安定してプラスである企業は、事業承継後も安定した経営が期待できるため、評価が高くなります。逆に営業キャッシュフローがマイナスの場合、事業承継後の資金繰りに不安が生じるため、評価が低くなる可能性があります。
特に、事業承継時には後継者が資金調達を行うことが多いため、営業キャッシュフローの安定性は重要です。また、現金同等物の保有状況や投資有価証券の評価も、事業承継時の企業価値評価に影響を与える重要な要素となります。
M&Aの際の交渉力への影響
営業キャッシュフローは、M&A(合併・買収)の交渉力に影響を与える要素の一つです。安定した営業キャッシュフローを持つ企業は、買収側にとって収益性が高いと評価され、交渉力が増します。営業キャッシュフローが高い企業は、買収価格の交渉において優位に立てるでしょう。
また安定したキャッシュフローの企業は、買収後の経営リスクを低減し、投資回収期間を短縮できるため、買収対象として魅力的です。一方でキャッシュフローが不安定な企業は、買収価格が低く抑えられる可能性が高く、交渉力が低下します。
従業員や取引先からの信頼度への影響
営業キャッシュフローの安定性は、従業員や取引先からの信頼度にも直結します。
安定したキャッシュフローを持つ企業は、従業員に対して安定した給与支払いが可能であり、従業員のモチベーションを向上させることが可能になるとともに、優秀な人材の確保や維持をしやすくなります。
また営業キャッシュフローが安定していると、取引先に対しても信用力を示すことが可能です。関係の強化も容易で、ビジネスの信頼性が高まるでしょう。
一方でキャッシュフローが不安定な企業は、給与支払いの遅延や取引先への支払い遅延などのリスクが高まります。
金融機関から見た営業キャッシュフローの重要性
金融機関は融資判断のために、企業の営業キャッシュフローを詳細に分析します。
ここでは、金融機関が営業キャッシュフローの何を見ているのか、また融資を検討している場合に何に気を付けるべきかを解説します。
営業キャッシュフローの評価ポイント
金融機関は、営業キャッシュフローの安定性を重視します。安定したキャッシュフローは、企業が持続的に収益を上げ、返済能力が高いことを示します。
具体的な評価ポイントは以下の通りです。
- 継続的なプラスのキャッシュフロー
- キャッシュフローの変動要因
- 売掛金と買掛金の管理
継続的なプラスのキャッシュフロー
企業が安定して営業キャッシュフローをプラスに保っているかを確認します。
これにより、金融機関は企業が日常の営業活動で十分な現金を生み出しているかが分かるのです。
キャッシュフローの変動要因
季節性や一時的な要因によるキャッシュフローの変動がないかを分析します。
安定したキャッシュフローが見られる企業は、金融機関から高評価を得やすいです。
また、会計期間ごとの比較分析も重要な評価ポイントとなります。
売掛金と買掛金の管理
売掛金の回収が遅れていないか、買掛金の支払いが適切に行われているかをチェックします。
これにより、企業の資金管理能力を評価します。
融資を検討する際の注意点
企業が融資を検討する際には、以下の点に注意することが重要です。
● 正確なキャッシュフロー計算
● キャッシュフロー改善の取り組み
● 将来のキャッシュフロー予測
正確なキャッシュフロー計算
営業キャッシュフローを正確に計算し、金融機関に提示できるようにしておくことが必要です。計算方法や数値の根拠を明確に説明できるように準備しましょう。特に、決算書との整合性や減価償却の適切な計上が重要です。
キャッシュフロー改善の取り組み
キャッシュフローが不安定な場合、その改善策を実施していることを示すことが重要です。例えば、売掛金の回収を早めるための施策や、コスト削減の取り組みなどをアピールしましょう。
将来のキャッシュフロー予測
将来的なキャッシュフローの見通しを示すことで、金融機関に対して企業の成長性をアピールできます。
具体的な事業計画や市場予測をもとにした、キャッシュフロー予測を用意しましょう。
営業利益や経常利益の予測も含めることで、より説得力のある予測となります。
営業キャッシュフローを用いた企業間比較
営業キャッシュフローを用いた企業間比較は、企業の財務の健全性や経営効率を評価する上で重要な手法です。
自社と同業他社や競合企業の収益力および資金の創出能力を比較することで、自社の強みや弱みを特定し、改善点を洗い出せます。
営業キャッシュフローを用いた企業間比較では、主に以下の指標を用います。
- 営業キャッシュフローマージン
- 営業キャッシュフロー対流動負債比率
- フリーキャッシュフロー
一つずつ解説します。
営業キャッシュフローマージン
営業キャッシュフローマージンは、企業の収益を現金化する能力を示す指標です。営業キャッシュフローマージンを求めるには、営業キャッシュフローを売上高で割って算出します。
営業キャッシュフローマージン=営業キャッシュフロー÷売上高×100
この指標が高いほど、企業は効率的に現金を生成していることを意味します。
営業キャッシュフロー対流動負債比率
営業キャッシュフロー対流動負債比率は、短期的な債務返済能力を表す指標です。営業キャッシュフローを流動負債で割って算出します。
営業キャッシュフロー対流動負債比率=営業キャッシュフロー÷流動負債
この比率が高いほど、企業は短期的な債務を返済する能力が高いことを示します。
特に、買掛金や支払手形、短期借入金などの流動負債の返済能力を評価する際に有用です。
フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは、事業拡大や配当に使える資金を示す指標です。営業キャッシュフローから設備投資額を差し引いて算出します。
フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー-設備投資額
フリーキャッシュフローが多い企業は、成長のための投資や株主への還元が期待できます。
また、投資有価証券の買い入れや出資などの戦略的投資にも活用できる余力を示す指標となります。
注意点
企業間比較を行う際には、以下の点に注意しましょう。
● 単年度のみでなく複数年度で傾向を見る:複数年度のデータを比較することで、企業の長期的なトレンドを把握できる。
● 季節変動の影響を考慮する:季節変動によるキャッシュフローの変動を考慮し、正確に比較する必要がある。
● 会計方針の違いに注意する:企業ごとに会計方針が異なる場合があるため、その影響を考慮することが重要。
● 特別利益や特別損失の影響を考慮する:一時的な要因による利益や損失が営業キャッシュフローに与える影響を適切に評価する必要がある。
具体的な活用例
例えば、同業他社と比較して営業キャッシュフローマージンが低い場合、売掛金回収の効率化や在庫管理の見直しを検討します。また、営業キャッシュフロー対流動負債比率が低い企業は、短期的な債務返済能力を強化するための資金管理策を講じる必要があるでしょう。
営業キャッシュフローを用いた企業間比較は、企業の財務健全性や経営効率を客観的に評価するための強力なツールです。主要な比較指標を活用し、注意点を踏まえた上で具体的な改善策を見出すことで、企業の競争力を向上させられます。
また、会計期間や減価償却方法の違いにも注意を払い、適切な比較分析を行うことが重要です。
営業キャッシュフローを増加させる方法
営業キャッシュフローを増加させることは、企業の健全な経営を支えるために重要です。ここでは、具体的な方法について解説します。
単価交渉
単価交渉は、営業キャッシュフローを増加させるための基本的な方法です。取引先との価格交渉を通じて、商品の販売価格を引き上げることで、売上高を増加させられます。
例えば、原材料費や人件費が上昇している場合、そのコスト増加分を販売価格に転嫁することが重要です。また、付加価値の高い商品やサービスを提供することで、単価を上げることも有効な方法です。
しかしながら、売上単価の交渉は高度な交渉スキルを必要とするため、具体的な方法が分からない方もいるでしょう。
ピーエムジーパートナーズは、売上単価の交渉に自信がない方に向けて、交渉に必要なノウハウを提供しています。ぜひご検討ください。
売上(売掛金)の回収を早める
売上(売掛金)の早期回収は、営業キャッシュフローを迅速に改善するための効果的な方法です。売掛金の回収が早ければ早いほど、企業は現金を速やかに手に入れられるため、資金繰りが楽になります。
具体的には、売掛金の回収期間を短縮するために、顧客の支払い条件を見直すことが考えられるでしょう。例えば、支払い期限を短縮したり、早期支払いの割引特典を提供したりする手段が有効です。
また、ファクタリングを利用して売掛金を早期に現金化することも一つの方法です。ファクタリングとは、売掛金を金融機関や専門業者に売却し、現金を早期に手に入れる手法です。これにより、売掛金の回収を待たずに現金化でき、キャッシュフローの改善につながります。
特に、回収期間が長い取引先を多く持つ企業にとって、ファクタリングは効果的な資金調達手段となるでしょう。
ピーエムジー株式会社では、ファクタリングサービスを提供し、企業の資金繰りをサポートしています。
当社は売掛金早期資金化のパイオニアであり、業界No.1の評価と実績を有しています。
蓄積してきた知見と経験をいかして、お客様に寄り添うことを大切にしている会社です。
長期的な目線で資金調達だけでなく、根本的な経営改善までサポートをおこない、企業成長へと導きます。
資金調達の手段としてファクタリングをご検討の際には、ぜひピーエムジー株式会社にご相談ください。
支払い条件を見直す
支払い条件の見直しも、営業キャッシュフローを増加させるための重要な手段です。
仕入先への支払い期限を延長することで、現金の流出を遅らせられます。支払い期限を延長する交渉を行ったり、分割払いを導入したりしましょう。
また、仕入先との関係を強化し、柔軟な支払い条件を確保することも重要です。これにより手元に残る現金を増やし、営業キャッシュフローを改善できます。
これらの方法を組み合わせて実施することで、営業キャッシュフローを効果的に増加させられます。経営者や財務担当者は、常にキャッシュフローの状況を把握し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。
まとめ
営業キャッシュフローは、企業にとって重要な指標であり、経営の羅針盤としての役割を果たします。日常の資金繰りの管理から、事業の持続可能性、金融機関からの信用評価、経営判断に至るまで、さまざまな場面で必要です。
経営者や経理担当者は、営業キャッシュフローの重要性を理解し、適切な管理と分析を行うことで、企業の健全な成長と安定を実現できるでしょう。