法人として会社経営する上で、どのような税金を納めるべきか把握しておくことは需要です。
主に法人の税金は、法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税の5種類に分けることができます。
経費として計上できる範囲は個人事業主よりも広いため、法人として会社経営したほうが節税につながるケースもあるといえますが、申告や納税漏れがあればペナルティの対象となるため注意が必要です。
そこで、法人の税金について、種類や申告・納税漏れによるペナルティなど解説していきます。
目次
法人の納税時期
法人が納めなければならない基本的な税金は、法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税の5つです。
ただ他にも納めなければならない税金はあるといえますが、以下の納税時期や納めるタイミングによって分かれます。
- 事業年度終了日から2か月以内が納付期限 法人税・法人住民税・地方法人税・法人事業税・特別法人事業税・消費税・地方消費税
- 毎月または半年ごとに納付 源泉所得税・住民税(特別徴収)
- 都度納付 印紙税・登録免許税・固定資産税・自動車税
上記の税金について、以下の章から詳しく説明していきます。
法人の税金の種類(事業年度終了日から2か月以内が納付期限)
法人が納める税金のうち、事業年度終了日から2か月以内が納付期限で、1年に1度支払う税金は以下の6種類です。
- 法人税
- 法人住民税
- 地方法人税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
- 消費税・地方消費税
それぞれ説明します。
法人税
「法人税」とは、法人の事業年度ごとの所得に対する税金であり、国税の1つです。
益金から損金を差し引いた所得金額に、所定の税率をかけ、税額控除額を差し引いて計算します。
所得金額に対する税金のため、赤字であれば課税されません。
事業年度は会社法で1年以内との定めがあり、1年半まで延長する例外措置を適用させることも可能ですが、税法上の区切りは1年です。
法人税の税率は原則23.2%ですが、資本金1億円以下の中小法人に関しては令和7年3月31日までに開始する事業年度分の年800万円以下の所得金額の部分は15%に軽減されています。
法人税の軽減税率とは?中小企業に対する優遇措置についてわかりやすく解説
法人住民税
「法人住民税」とは、地域社会の費用として、個人同様に構成員である法人にも負担を求める税金です。
地方税の1つであり、法人が事業所のある都道府県および市町村に納付します。
地域で商売などをしている法人が納める税金であり、「法人税割」と「均等割」の2つで構成されています。
法人税割は法人税額を基準に算出・課税される住民税で、以下のとおり定められた税率を掛けて算出されます。
都道府県の法人税割=法人税額×1.0%・市町村の法人税割=法人税額×6.0% 東京23区の法人税割=法人税額×7.0% |
そのため赤字のときには法人税割が課税されることはありません。
均等割は法人であれば等しく納める義務がある税金であり、同一区分内で同一の額を納付する仕組みとなっています。
税額は資本金の額や従業者数などで変わり、都道府県民税は法人資本金額、市町村民税は資本金額と従業者数で区分されます。
地方法人税
「地方法人税」とは、法人の所得に対して課税される税金であり、消費税率8%段階及び10%段階に地域間の税源の偏在の是正や財政力格差の縮小を図るために徴収されます。
地方法人税額=法人税額×税率(10.3%) |
名称は「地方」とあるものの、地方税ではなく税率は10.3%の国税です。
法人事業税
「法人事業税」とは、法人の事業そのものに対して課税される税金です。
事業活動を行うときには、地方団体の各種行政サービスの提供を受けるため、必要経費を分担するべきという考えのもとで課税されます。
法人事業税額=所得×法人事業税率 |
たとえば東京都では、資本金1億円以下の普通法人・公益法人等・人格のない社団等の法人事業税率は所得金額によって区分されますが、標準税率適用の税率は以下のとおりです。
- 課税所得年400万円以下の部分…3.5%
- 課税所得年400万円超年800万円以下の部分…5.3%
- 課税所得年800万円超の部分…7.0%
地方税であるため、事業所所在の都道府県に納めます。
資本金1億円超の普通法人は、以下の税金が課されます。
- 付加価値割(付加価値額に応じた額)
- 資本割(資本金等に応じた額)
- 所得割(所得に応じた額)
対する資本金1億円以下の普通法人等は、所得割のみの課税です。
また、電気供給業(小売電気事業等及び発電事業等を除く)・ガス供給業・保険業を営む法人は、収入金額に応じた収入割が課されます。
特別法人事業税
「特別法人事業税」とは、地方法人課税における税源の偏在を是正するために、法人事業税の一部を分離して創設された税金です。
特別法人事業税=所得割額または収入割額×特別法人事業税の税率 |
法人事業税から分けたられた税金であるため、法人事業税の申告・納税義務のある法人が対象となりますが、税率は法人の種類で異なります。
資本金1億円以下の普通法人であれば、基準法人所得割額の税率は37%、基準法人収入割額の税率は30%です。
消費税・地方消費税
「消費税」とは、商品の販売やサービスの提供に対してかかる税金で、「地方消費税」は消費に対して公平に負担を求める道府県税です。
消費税が課税される取引にはあわせて地方消費税も課税されます。
基準期間の課税売上高が1,000万円超の法人に納税義務があるため、赤字で課税所得がなくても納めることが必要です。
国税分7.8%と地方税分2.2%の合計10%で課税されますが、軽減税率の場合は国税分6.24%と地方税分1.76%の合計8%が課税されます。
期首資本金が1,000万円未満なら設立事業年度から1年間は納税免除の対象です。
さらに特定期間の課税売上高が1,000万円以下か、特定期間の給与支払額が1,000万円以下の法人で、かつ期首資本金額1,000万円未満なら2年目も免除されます。
法人の税金の種類(毎月または半年ごとに納付)
法人が納める税金のうち、毎月または半年ごとに納める税金は、会社が従業員に代わって納める次の2つの税金です。
- 源泉所得税
- 住民税(特別徴収)
本来は従業員個人が納めるべき税金を、会社が給与から差し引いて預かり、代わって納める仕組みです。
ただし特定条件を満たすときは、毎月納付ではなく数か月に一度納めればよいケースもあります。
上記2つの税金について説明します。
源泉所得税
「源泉所得税」は、個人の1年間の所得に課される税金を給与や報酬から天引き・徴収し、事業者が代わりに納めます。
そのため源泉所得税が発生するのは、以下の支払いを行ったときです。
|
詳しくは、国税庁のホームページ「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」を参考にしてください。
なお、源泉所得税は、源泉徴収税額表を使用する方法と、税率による計算方法があります。
給与や賞与などから差し引く源泉所得税は源泉徴収税額表を使用しますが、原稿料や出演料などの報酬に対する源泉所得税は税率をかけて徴収します。
源泉所得税=報酬額×税率 |
たとえば原稿料の源泉徴収税率は10.21%です。
給与等から差し引く所得税については、従業員10人未満で一定要件を満たす場合のみ、納付期限を以下のとおり延長できる特例が適用されます。
- 1~6月までの源泉徴収についての納期…7月10日
- 7~12月までの源泉徴収についての納期…翌年1月20日
住民税(特別徴収)
「住民税(特別徴収)」とは、本来は個人が納付するべき住民税を、雇用する事業者が給与から天引きして納める税金です。
前年度の個人所得に対して課税される税金のため、給与の額によって税額が変わるのではなく、従業員それぞれの前年所得を基準に計算された税額通知が事業者へ届きます。
事業者が特別徴収した住民税は、給与を支払った月の翌月10日までに納めなければなりません。
また、源泉所得税や特別徴収の住民税以外にも、社会保険料などの徴収も必要となるため、忘れず差し引き支払うようにしましょう。
法人の税金の種類(都度納付)
法人が納める税金は、以下のとおり取引などにおいてその都度納めなければならない種類や、所有する資産に対して課税されるケースもあります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 固定資産税
- 自動車税
それぞれ説明します。
印紙税
「印紙税」とは、経済的な取引で作成された契約書や領収書などの書類に課される税金です。
課税される書類に収入印紙という紙片を貼り、消印をして納めます。
貼り忘れると脱税とみなされるため、税務署からペナルティを受けないためにも忘れず納めましょう。
収入印紙が必要な文書は主に以下のとおりです。
- 土地賃貸契約書
- 不動産売買契約書
- 権利に関する契約書(特許権や著作権など)
- 運送契約書
- 貨物運送引受書
- 工事請負契約書
- 広告契約書
など
収入印紙の金額は取引額によって変わるため、確認の上印紙を購入し、張り付けるようにしてください。
登録免許税
「登録免許税」とは、不動産・船舶・航空機・会社・人の資格などに関する登記・登録・特許・免許・許可・認可・認定・指定・技能証明に課税される税金です。
登記や登録などにより、納付の方法や期限は異なります。
たとえば土地の売買では、不動産価額の1000分の20の税率で登録免許税が課されます。
会社の商業登記であれば、株式会社設立においては資本金額の1000分の7の登録免許税が必要とされており、15万円に満たないときは申請件数1件につき15万円が必要です。
固定資産税
「固定資産税」とは、会社所有の土地・建物・機械などの固定資産に課される税金です。
毎年1月1日に資産価値が決定し、評価額ごとで決められた税率が課されます。
固定資産の所在する市町村(東京23区内は東京都)に納める税金であり、税収の使い道が定められていない普通税です。
6月・9月・12月・2月の年4回に分けて納付する方法と、全額を一括で納める方法があり、選択できます。
自動車税
「自動車税」とは、自動車を所有していると課される地方税の1つであり、排気量に応じて納税額は異なります。
4月1日時点で自動車を所有し、車検証に登録されていると納税義務が生じます。
社用車も例外ではなく、4月1日段階で会社名義の車を所有していれば、納めなければなりません。
5月上旬頃には通知書が送付されるため、届いた当月末までに納付しましょう。
個人事業主が支払う税金の種類
個人事業主が支払う税金は、大きく次の5種類に分類されます。
- 所得税
- 復興特別所得税
- 個人住民税
- 個人事業税
- 消費税・地方消費税
それぞれ説明します。
所得税
「所得税」は、個人の所得に対してかかる税金で、1月1日から12月31日までの1年間の所得から、所得控除を差し引いた課税所得に税率をかけて計算します。
国税庁の公式サイト「No.2260 所得税の税率」の速算表を活用すると、課税所得を計算するだけで速算表に当てはめ、税額を簡単に求めることができます。
なお、以下の計算式でも所得税額を算出できます
課税所得=売上-必要経費-所得控除 所得税=課税所得×税率-控除額 |
復興特別所得税
「復興特別所得税」は、東日本大震災の復興で必要な財源を確保することを目的に徴収されている税金です。
2013(平成25)年から2037(令和19)年までの25年間における所得について、所得税を納税する義務があれば納めなければなりません。
復興特別所得税は、通常の所得税に税率2.1%で上乗せされるため、以下の計算式で算出できます。
復興特別所得税=基準所得税額×2.1% |
なお、基準所得税額とは、所得税額から配当控除や住宅ローン控除などの税額控除を差し引いた後の所得税額です。
個人住民税
「個人住民税」は、自治体が住民へ身近な行政サービスとして提供する上で必要な経費を、住民の担税力に応じて広く分担するための税金です。
住まいの都道府県および区市町村へ納める地方税であり、所得割と均等割で構成されています。
所得割は、前年の所得金額に応じて課税される税金であり、税率は都道府県民税と市区町村民税を合わせた10%が標準です。
均等割とは、納税者の所得に関わらず定額で課税される税金です。
所得割額=(事業所得金額-所得控除)×税率-税額控除 均等割額=各地方自治体の定めた税額(定額) |
なお、2024(令和6)年度からは「森林環境税」が年額1000円、追加で均等割額として課税されます。
個人事業税
「個人事業税」は、個人の事業のうち、地方税法等で定められた法定業種に該当する場合に課される税金です。
個人事業主が都道府県に納める地方税であり、個人で事業を行うときに利用する行政サービス運営における経費の一部を負担するために納めます。
業種によって課税対象にならない場合や、所得によって控除されるケースもあるため、すべての個人事業主に納税義務があるわけではありません。
個人事業税を算出するときの計算式は以下のとおりです。
個人事業税=(事業所得額-事業主控除290万円)×税率 |
税率は業種に3~5%の間で設定されます。
事業所得額は、事業の総収入額から必要経費を差し引いて計算します。
事業所得額から事業主控除を差し引いた金額が課税される金額ですが、年290万円の事業主控除が認められているため、事業所得額が年290万円以下であれば課税されません。
消費税・地方消費税
「消費税」は国の税金で、「地方消費税」は都道府県の税金です。
商品販売やサービス提供などの取引で、広く公平に課される税金であり、消費者が負担して事業者が納めます。
そのため商品などを販売したときに受け取った消費税から、仕入れなどの際に販売先に支払った消費税を差し引いて、納める税額を計算します。
納付する消費税等=課税売上高に対する消費税等-仕入れまたは経費で支払った消費税等 |
地方消費税の税率は消費税額の78分の22です。
国の消費税率7.8%と地方消費税2.2%の合計10%分を支払います。
法人の申告・納税漏れによるペナルティ
法人が税金を申告しなかったときや納税漏れがあった場合には、以下のペナルティが課されると留意しておきましょう。
- 延滞税が課される
- 加算税が課される
- 青色申告の取り消し
それぞれ説明します。
延滞税が課される
法人の申告・納税漏れがあると、延滞税が課されます。
税金の種類ごとに定められた納付期限を守らなければ、原則、期限後から納付日までの日数に応じた追加の税金が課されるため注意してください。
延滞税の額は、納付期限を過ぎて2か月以内に納めるときと、2か月経過以降では以下のとおり税率が異なります。
納付期限から2か月以内に納める場合 | 延滞税=納付額×延滞税(年7.3%または「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合)×期間(日数)÷ 365(年間日数) |
納付期限から2か月を過ぎて納める場合 | 延滞税=納付額×延滞税(年14.6%または「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合)×期間(日数)÷365(年間日数) |
加算税が課される
法人の申告・納税漏れがあると、加算税が課されます。
加算税は、申告義務が適正に履行されないときに課される税金であり、たとえば申告お漏れや内容に不備があるときにおいて、一定事由に該当する場合のペナルティとして追加されます。
課税される要件は、以下の加算税の種類によって異なります。
過少申告加算税 | 納税申告後の税関調査で、申告内容が適正でないとして修正申告または更正が行われたとき、増加した税額の10%相当の額が過少申告加算税として課される。ただし過少申告が正当な理由であると認められるときや、税関調査通知よりも前の自主的な修正申告のときは課されない。 |
無申告加算税 | 期限内に確定申告を忘れた場合は、期限後申告として取り扱われるものの、申告等によって納める税金以外に無申告加算税が課される。各年分の無申告加算税は、原則、納付すべき税額に対して50万円までの部分が15%、50万円超の部分は20%の割合を掛けて算出する。ただし期限後申告が法定申告期限から1か月以内に自主的に行われているときや、期限内申告の意思があったと認められる一定の場合には課されない。 |
不納付加算税 | 事業者が源泉徴収した所得税を、納付期限までに支払わなかったときに課される税金。ただし納付の意思が認められ、正当な理由があるときや法定納期限から1か月以内に納めたときには課されない。 |
重加算税 | 申告内容などの隠蔽や仮装があった場合に課される税金であり、過少申告加算税や不納付加算税などの加算税に加え、納付税額に対し35%または40%の割合で課される。 |
青色申告の取り消し
法人の申告・納税漏れがあると、青色申告を取り消される恐れがあります。
規定する帳簿書類の備え付け・記録・保存がされていない場合、青色申告を提出することにふさわしくないと判断され、承認が取り消されます。
以下の一定の事由に該当した場合には、青色申告の承認が取り消される恐れがあるため注意しましょう。
- 税務調査で帳簿書類の提示を求められたものの提示を拒否した場合
- 帳簿書類を税務署長から提示するように指示されたものの従わなかった場合
- 隠蔽や仮装による所得金額が本来の50%を超えている場合
- 2事業年度連続で提出期限を過ぎているときや期限内に申告しなかった場合
青色申告の承認が取り消されると承認取消通知書が届き、通知から1年間は再申請ができません。
再び申請しても、青色申告が適用されるのは申請翌期であるため、最短でも翌々期からです。
青色申告には、赤字で申告したときの繰越欠損金や、特別控除などの適用など節税対策におけるメリットがいろいろあります。
そのため取り消されることのないように、漏れなく遅れず申告することが必要です。
まとめ
法人の税金は、法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税の5種類に分けることができます。
事業年度終了日から2か月以内が納付期限の税金もあれば、1年に1度支払う税金など納めるタイミングはそれぞれ異なります。
法人が税金を申告しなかったときや納税漏れがあれば、本来納めるべき税金に追加して、高い割合の税金が課されるため注意してください。
ペナルティが発生することを未然に防ぐためにも、経営や資金面での悩みなどは、早めに相談することをおすすめします。