法人の確定申告とは?期限や流れ・やり方をわかりやすく解説

法人の確定申告は、会社の事業活動による所得に対して課税される税金を申告するために行います。

会社経営をしていれば、事業年度ごとの決算書作成のもと、税務署へ申請手続を行う法人確定申告が必要です。

仮に個人事業主を法人化した場合など、個人の確定申告との違いに戸惑うことも少なくありません。

そこで、法人の確定申告について、期限や流れ、やり方などをわかりやすく解説していきます。

法人の確定申告とは

法人の確定申告とは、企業が事業活動で得た所得に対して納める税金を申告する手続です。

個人事業主の確定申告と異なり、対象となる税金は以下のとおり4つの種類があります。

  1. 法人税
  2. 法人事業税
  3. 法人住民税
  4. 消費税

それぞれの税金と申告手続について説明します。

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法人税

「法人税」とは、企業活動で得た益金から損金を控除した額を課税とする税金です。

事業年度終了日の翌日から2か月以内に、法人税申告書で法人税及び地方法人税の確定申告を行うようにしましょう。

国内の普通法人では、事業年度の所得を課税対象とします。

ただし収益から損益を差し引いた額を課税所得とするのではなく、利益算出後に「税務調整」で算出します。

「税務調整」は、会計上の利益と税務上の課税所得のズレを調整する手続です。

決算上の利益を、税金を計算するための利益に修正する作業といえます。

税務調整で算出した課税所得に税率をかけて、計算した税額から税額控除額を差し引き、法人税額とします。

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法人事業税

「法人事業税」は、事業に対する税金であり、国税である法人税と違って地方自治体の課税する地方税です。

事業年度終了日の翌月から2か月以内に行うことが必要であるため、特別法人事業税と合わせて申告・納税しましょう。

会社が事業所を置いている自治体で事業活動するために利用する各種行政サービス費用を負担するために納める税金であり、以下の計算式で算出できます。

所得×法人事業税率=法人事業税

税率は資本金や所得により異なります。

なお、公共法人・公益法人・人格のない社団は公共事業に関する所得には課税されず、収益事業のみを課税対象とします。

法人住民税

「法人住民税」は、事業所を置く地方自治体に納める税金であり、「都道府県民税」と「市町村民税」をそれぞれ納めます。

事業年度終了日の翌日から2か月以内に申告が必要となるため、法人都道府県民税は県税事務所、法人市町村民税は市町村で手続しましょう。

法人住民税は「均等割」と「法人税割」の2つを合わせた額を納付しますが、このうち均等割は資本金や従業者数に応じて定額で課されます

法人税割は法人税額に応じて課税されるため、法人税が課税されていなければ税負担はありません。

消費税

「消費税」は、モノやサービスを消費するときに納める税金ですが、納税義務は課税事業者のみにあります。

消費税は、基準期間(2年前の事業年度)の課税売上高が1,000万円超の場合などに申告が必要となります。

課税期間の終了日翌日から2か月以内に申告・納税しましょう。

法人は商品やサービスを顧客へ販売するときに顧客から消費税を受け取り、受け取った消費税から仕入れ先などに支払った消費税を差し引き、納税額を算出します。

受け取った消費税から仕入れ先などに支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいます。

2023年10月以降はインボイス制度が導入されたため、適格請求書発行事業者の登録をした事業者発行の請求書・領収書でなければ仕入税額控除を受けることはできません。

ただしインボイス導入後6年間は経過措置として、適格請求書以外の請求書または領収書でも、一定の仕入税額控除が認められています。

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法人の確定申告の期限

法人の確定申告は、個人の確定申告のように一律で期限は設けられていません。

決算日は会社よって異なり、会社ごとの決算にもとづいて確定申告が行われるからです。

そのため法人の確定申告の期限は、課税期間(事業年度)の終了した日の翌日から2か月以内とされています。

地方自治体に納める法人事業税や法人住民税も、事業年度または連結事業年度の終了した翌日から2か月以内が期限です。

申告期限や課税期間などに関する特別な届出など行っていない場合は、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税とすべての税金の確定申告・納税の期限が、事業年度終了日の翌日から2か月以内となります。

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法人の確定申告の提出書類

法人は、以下の帳簿を備え付けて取引を記録し、帳簿と取引に関して作成・受領した書類を事業年度の確定申告書の提出期限翌日から7年間保存することが義務付けられています。

帳簿 総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳・売上帳・仕入帳など
書類 棚卸表・貸借対照表・損益計算書・注文書・契約書・領収書など

また、法人の確定申告では、以下の税金ごとに提出書類などが異なります。

  1. 法人税
  2. 消費税
  3. 法人事業税・法人住民税

それぞれ説明します。

法人税

「法人税」は、1~20まである別表のうち、必要な書類を選んで確定申告を行います。

必要書類は、会社の決算内容によって異なりますが、国税庁のサイト「令和5年4月から令和6年3月の間に提供した法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)」からダウンロードできます。

消費税

「消費税」は、一般課税(本則課税)または簡易課税のどちらか、課税期間の取引税率によって必書類が異なります。

なお、還付を受けたいときには消費税の還付申告に関する明細書の提出が必要です。

申告における必要書類は、国税庁のサイト「消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等」からダウンロードできます。

法人事業税・法人住民税

「法人事業税」と「法人住民税(都道府県税)」の確定申告では、申告書第六号様式および第六号様式(その2)の提出が必要です。

特別法人事業税も法人事業税と同じ書類で手続を行います。

法人住民税のうち市町村民税に関する申告では第二十号様式を使いますが、東京23区内の事業者は第六号様式で市町村民税も申告可能であるため不要です。

なお、確定申告の必要書類はそれぞれの都道府県または市区町村のホームページからダウンロードできます。

法人の確定申告の流れ

法人の確定申告では、以下の流れで準備・申告などの手続を行います。

  1. 決算残高を確定させる
  2. 税金を計算する
  3. 決算書を作成する
  4. 申告手続をする
  5. 提出書類を保存する

それぞれの流れについて説明します。

1.決算残高を確定させる

法人の確定申告では、まず決算残高を確定させることが必要です。

帳簿内の勘定科目の残高を以下の方法で比較・確認します。

現金や小口現金 手元の金庫の額と合致するか確認
預金・借入金 金融機関から決算日時点の「残高証明書」を取得し合致するか確認
買掛金・未払金 決算日時点で経費計上しているものの未払いの分を集計して残高を確認
在庫商品・材料 棚卸後に実際の在庫を算出し残高を確認
固定資産 年度内の新規取得や除却・売却を確認し、減価償却費の計算後に帳簿残高を確定

残高確定後は、「勘定科目内訳明細書」を作成しましょう。

2.税金を計算する

法人の確定申告で決算残高を確定させた後は、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税を計算します。

納税額の計算方法は下記のとおりです。

法人税 法人税=課税所得×税率
法人住民税 法人住民税=法人税割(法人税×住民税率)+均等割
法人事業税 法人事業税(納付税額)=所得×法人事業税率
消費税 消費税=売上に対する消費税額(課税期間の課税売上高×10%または軽減税率8%)−仕入れ等の消費税額(課税期間の課税仕入高×10%または軽減税率8%)

3.決算書を作成する

法人の確定申告で税額を計算したら、損益計算書や貸借対照表など決算書を作成しましょう。

作成した決算書は、取締役会・監査役・会計監査人などの承認を受けて、定時株主総会に提出することが必要です。

4.申告手続をする

法人の確定申告で決算書を作成したら、税務申告に必要な申告書を作成し、各種税金の確定申告を行います。

申告・納付の期限は、申告期限や課税期間などの特別な届出など行っていない場合、事業年度終了日翌日から2か月以内ですが、税金の種類によって申告先が異なる点に注意してください。

期限を過ぎると延滞税など余計な負担が増えるため、期限内に申告と納税を済ませましょう。

なお、法人税確定申告等はe-Taxも利用できます。

令和6年3月25日(月)から、令和5年4月1日以後終了事業年度等分の申告手続の新様式の受付が可能となっているため、詳しくは「国税電子申告・納税システム e-Tax」を参考にするとよいでしょう。

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5.提出書類を保存する

法人の確定申告で作成した貸借対照表や損益計算書などの書類は、原則、税法上は7年・会社法10年保存しなければならないとされています。

税務申告書や税務届出書などの税法上の保存期間の定めはないものの、決算書と一緒に保存しておくとよいでしょう。

法人税申告のやり方

法人税は、以下の3つのやり方で申告します。

  1. 税務署に持参する
  2. 郵送で提出する
  3. e-Taxで電子申請する

それぞれの申告のやり方を簡単に説明します。

税務署に持参する

法人税は、税務署に書類を持参して申告することができます。

会社の本社や本店所在地を管轄する税務署で手続しましょう。

税務署に確定申告書類を持参する場合、提出書類に不備があったときすぐに担当者から指摘されるため、提出後のミスを防ぐことができます。

郵送で提出する

法人税は、郵送や信書便で法人税申告書を送る方法でも申告できます。

この場合、消印日付が申告書を提出した日として扱われるため、期限前は余裕をもって送ることが必要です。

消印日のズレで、期限後申告とならないようにしてください。

e-Taxで電子申請する

法人税は、「e-Tax」で電子申請することもできます。

e-Taxは正式名称を「国税電子申告・納税システム」といい、インターネット環境のある場所であればパソコンから申告書の提出手続が可能です。

税務署の開庁時間にかかわらず24時間いつでも書類提出できるため大変便利といえます。

ただしe-Taxの利用は、前もって市区町村などで電子証明書を発行し代表者のマイナンバーカードを登録しておく手続が必要となるため、忘れないようにしましょう。

まとめ

法人の確定申告は、法人税・法人事業税・法人住民税・消費税など税金の種類ごとに手続が異なります。

確定申告に必要な書類は、国税庁の公式サイトなどからダウンロードできますが、経営者や経理担当者が独自で手続するには負担の重い作業といえます。

税務調整など特殊な作業も必要となるため、税の専門家である税理士などに任せたほうが安心です。

税理士など専門家とのネットワークのあるコンサルタントなどに相談することで、多角的な問題解決にもつなげることができます。

なお、修正申告などによって追徴税額が発生した場合や、納期限を過ぎた申告などで延滞税や重加算税が発生した場合、会社が想定していなかった支出が発生します。

この場合、会社の資金繰りにも悪影響を及ぼす恐れがあるため、必ず期限を守って申告手続を行うようにしましょう。