接待交際費とは、事業と関係のある取引先や人物などを接待する目的で支払った費用です。
事業活動を行う上で販売先や仕入れ先、金融機関などいろいろな利害関係者との関係を構築し、良好に保つためには接待交際費を支出することも必要といえます。
ただし法人の接待交際費は、経費として計上できる金額などに上限などがあるため、無制限に損金として算入できるわけではありません。
そこで、接待交際費について、経費計上の範囲や該当費用と上限、仕訳方法などを解説していきます。
目次
接待交際費とは
接待交際費とは、事業と関連のある企業や人物へ、接待目的で支払った費用です。
取引先と業務上の関係を維持するための経費であり、たとえば販売先や仕入れ先などをもてなしたときや、金品をふるまったときに用います。
税法上の法人の接待交際費は「交際費等」とされており、国税庁の公式サイトにも「交際費等の範囲」として以下のとおり定義されています。
措置法第61条の4第6項に規定する「交際費等」とは、交際費、接待費、機密費、その他の費用で法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいうのであるが、主として次に掲げるような性質を有するものは交際費等には含まれないものとする。 (1) 寄附金 (2) 値引き及び割戻し (3) 広告宣伝費 (4) 福利厚生費 (5) 給与等 |
得意先や仕入先などを食事に招待したりお中元やお歳暮を贈ったりしたときの費用は接待交際費として計上できます。
接待交際費に計上できるのは事業に必要とされる飲食代などであり、事業と関連のない会社や人との会食費用などは該当しません。
また、接待を目的とした移動の費用を旅費交通費で計上していたのに、接待交際費と判断されることもあります。
法人税法上は接待交際費以外の勘定科目で計上していても、税務上は交際費に含まれるケースには注意してください。
接待交際費と会議費との違い
接待交際費と会議費は、費用として使った目的に違いがあります。
まず接待交際費は取引先などをもてなす目的でかかった費用であるのに対し、会議費は打ち合わせを目的とした費用です。
令和6年度税制改正の大綱で、令和6年4月1日から、接待飲食費の上限が1万円に引き上げられています。
従来までは1人あたりの飲食代制限は5千円だったのに対し、2倍に増えました。
なお、1万円を上限とした接待交際費の損金算入は、令和6年4月1日以後に支払った飲食費を対象とします。
接待交際費と福利厚生費との違い
福利厚生費は、給与や賞与以外に、会社が社員のために使う費用です。
法人税の計算において収益から差し引くことができる費用であり、損金算入できるため、福利厚生費が増えれば利益は減少します。
健康診断費用・社員旅行・忘年会・残業食事代など、労働環境や生活の向上を目的とした支払いです。
飲食代を支払った場合でも、取引先などは参加せず、社内の従業員だけに限定された飲食については福利厚生費で計上します。
なお、特定の取締役や社員のみの会食や旅行であれば、社内交際費に該当するケースもあるため注意しましょう。
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接待交際費の範囲
接待交際費として計上できる範囲は、事業者が個人事業主または法人なのか、法人であればその規模によって異なります。
経費計上できる範囲が広いほうが課税所得額は少なくなり節税につながりやすくなるため、以下4つの損金算入限度額を確認しておきましょう。
- 個人事業主
- 資本金1億円以下の法人
- 資本金1億円超100億円以下の法人
- 資本金100億円超の法人
それぞれの範囲について説明していきます。
個人事業主
個人事業主は、交際費の損金算入限度額はありません。
事業に必要な接待交際費なら、上限を気にすることなく必要経費に計上できます。
ただし事業とは関連のない飲食代などを、過大に交際費として計上すると、税務調査で指摘される恐れがあるため注意しましょう。
資本金1億円以下の法人
資本金1億円以下の法人(ただし資本金または出資金が5億円以上の法人の100%子会社は除く)は、次のいずれかの金額を接待交際費で計上できます。
- 接待飲食費の50%相当額
- 接待交際費の年間800万円までの金額
接待飲食費とは、取引先や仕入先などを接待したときの飲食費用です。
お中元やお歳暮などは接待交際費に該当しても、接待飲食費には含まれません。
たとえば年間の交際費が1千600万円を超える場合、飲食接待費の50%を選んだほうが経費として計上する額を増やせます。
事業規模がそれほど大きくはない場合は、接待交際費を年間800万円までに抑えて全額経費に計上したほうがよいといえます。
資本金1億円超100億円以下の法人
資本金1億円超100億円以下の法人の場合、接待交際費のうち、接待飲食費の50%相当額を上限に経費として計上できます。
そのため交際費が800万円以下でも、経費として計上できるのは接待交際費の50%までとなります。
資本金100億円超の法人
資本金100億円超の法人は、接待交際費として経費計上できません。
支払ったお金が飲食代やお中元・お歳暮などの交際費などにかかった費用の場合でも、経費にすることはできず、全額経費外支出となります。
接待交際費に該当する支払い
接待交際費は、取引先との食事会費用やお中元・お歳暮などの費用が対象であり、たとえば以下の3つが挙げられます。
- 取引先等との会食費
- 取引先等へのお中元やお歳暮
- 取引先等のイベント招待費用
それぞれ説明します。
取引先等との会食費
接待交際費に該当するのは、販売先や仕入れ先などの取引先や、株主など事業に関係する人等との会食費です。
取引先などを招待して、会食や懇親会を開催するときにかかった費用は、接待交際費として経費に計上できます。
会場費や飲食代、参加した方への手土産、移動や送迎に使った交通費なども接待交際費に含まれます。
取引先等へのお中元やお歳暮
接待交際費に該当する費用として、取引先等へ渡すお中元やお歳暮の購入代が挙げられます。
また、取引先で不幸があった場合の香典、結婚祝いの祝儀なども接待交際費として計上できます。
取引先等のイベント招待費用
接待交際費には、取引先をイベントへ招待したときの費用も含まれます。
取引や交渉などを円滑に進めるため、販売先や仕入れ先などをゴルフや旅行に招待することもあります。
この場合にかかった費用や、相手を送迎するためのタクシーなどの移動手段の手配代も接待交際費に計上します。
接待交際費に該当しない支払い
接待交際費は、事業と関係ない会社や人との食事・贈答などにかかった費用や、広告目的のカレンダーやうちわなどの費用を含めることはできません。
また、飲食にかかった費用でも無制限に経費として認められるわけではなく、該当しない支払いも当然あります。
たとえば次の支払いは、飲食代やイベントなどにかかった費用の場合でも、接待交際費で計上することはできません。
- 従業員のみ参加のイベント費
- 打ち合わせの飲食代
- 記事作成の取材における飲食代
それぞれ説明していきます。
従業員のみ参加のイベント費
接待交際費に該当しないのは、自社の社員や従業員のみが参加するイベントにかかった費用です。
たとえば社内の人のみ参加の社員旅行やバーベキュー大会、スポーツ大会などは社内行事であるため、かかった費用は接待交際費にはなりません。
なお、社内行事の費用は福利厚生費で処理します。
福利厚生費で処理する場合は、行事に関する通知をすべての社員・従業員に行っており、多くが参加していることが前提となります。
打ち合わせの飲食代
接待交際費に該当しないのは、クライアントとの打ち合わせにかかった飲食代が挙げられます。
クライアントとの飲食代は、接待交際費ではなく会議費で計上します。
カフェなどでの打ち合わせでかかった飲食代や、会議の席で提供する弁当代・飲み物代・茶菓子代なども基本的には会議費で計上することになります。
記事作成の取材における飲食代
接待交際費に該当しないのは、記事作成の取材で支払った飲食代です。
雑誌・新聞・放送番組・ウェブサイトなど、メディアに掲載するコンテンツの制作において、第三者への取材や座談会開催に費用がかかることもあります。
たとえば取材や座談会をカフェで行えば飲食代が発生しますが、接待交際費ではなく会議費で処理することが一般的です。
接待交際費の仕訳例
接待交際費として計上するときの例を2つ紹介します。
取引先に渡すお中元を現金1万円で購入したときの仕訳 | ||
借方 | 貸方 | 摘要 |
接待交際費 10,000円 | 現金 10,000円 | 〇社のお中元代 |
取引先を飲食店で接待し飲食代3万円を現金で支払ったときの仕訳 | ||
借方 | 貸方 | 摘要 |
接待交際費 30,000円 | 現金 30,000円 | 飲食店名 〇社◯◯様会食(他2名) |
接待交際費を計上する際のポイント
接待交際費を経費として計上する場合には、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 計上の上限額に注意する
- 接待情報を記載しておく
- 他の勘定科目と混同しない
- 課税・非課税の区分に注意する
それぞれ説明します。
計上の上限額に注意する
接待交際費を経費として計上するときは、経費として計上できる上限に注意しましょう。
中小企業の場合、接待でかかった費用を経費として計上額は、接待飲食費の50%相当額か交際費の年間800万円までのいずれかです。
どちらが節税につながるのか、接待で支払った費用などを踏まえて判断することが必要となります。
接待情報を記載する
接待交際費を経費として計上するときは、領収書やレシートに、参加者や人数などの情報を記載しておきましょう。
事業で使った経費の領収書は、接待交際費分に限らず、適切に保管することが必要です。
たとえば法人税法における領収書は、事業年度の確定申告書の提出期限翌日から7年間は保存することを義務付けています。
繰越欠損控除を受ける場合には10年間保存しなければなりません。
特に接待交際費は領収書だけでは線引きが曖昧になりやすく、接待目的とプライベート用のどちらか明確に判断しにくいことが特徴です。
領収書を保管する際には、どのような目的で誰に対する接待だったのか、裏面などに以下の情報を記載しておくとよいでしょう。
- 参加者氏名
- 参加人数
- 金額
他の勘定科目と混同しない
接待交際費を経費として計上するときは、会議費や福利厚生費などに該当する費用と区分し、混同して処理しないようにしましょう。
会議費や福利厚生費などは、接待交際費と支出の目的が異なります。
特に飲食代を計上するときは、接待交際費や会議費なのか迷いやすいといえますが、打ち合わせで飲食した場合は会議費で計上しましょう。
なお、接待飲食費は接待交際費の1つであり、すべての接待交際費を含めた上限額に収めることが必要です。
課税・非課税の区分に注意する
接待交際費を経費として計上するときは、課税・非課税の区分に注意しましょう。
たとえば取引先への贈答用の商品券やギフト券などは、購入と使用で二重に課税されないように、消費税は非課税として扱われています。
他にもプリペイドカード・ビール券・旅行券・図書カードなども購入する際に消費税はかかりません。
しかし取引先へお中元やお歳暮などの贈答品を購入したときは、消費税は課税されます。
そのため取引先に贈りものをするときの品物は、種類によって消費税の課税・非課税のどちらの扱いか把握しておきましょう。
また、接待交際費の消費税率は、10%の標準税率と8%の軽減税率の2つの種類があります。
たとえば社内で接待するときの飲食では8%、カフェやレストランなどの外食では10%の税率が適用されます。
どちらも国内で適用される税率であり、海外での接待では課税対象取引に含まれませんので、領収書などと照合し正しい税率で計上することを心がけましょう。
まとめ
接待交際費は、個人事業主であれば特に上限はないのに対し、法人は資本金などによって一定の範囲が定められています。
また、取引先との飲食代などがすべて接待交際費として計上できるわけではなく、会議費などで処理するべき費用もあります。
税務調査が入ると、事業遂行に必要な支払いなのか、個人的な支出が含まれていないかなど確認されます。
接待交際費に該当するかは、支出の内容・参加者・金額などで異なるため、会議費や福利厚生費などと間違わないように把握しておきましょう。