家賃滞納は個人の借主に限らず、テナント賃料を支払わない事業者などにおいても問題視されています。
事業者がテナント賃料などを支払わない家賃未払い状態が続けば、未払い賃料を督促される恐れがあります。
仮に支払いに応じてなければ、立ち退き交渉の上、最終的には法的手続による強制退去を求められます。
そこで、事業者の家賃滞納のリスクや、強制退去までの流れや解消方法を徹底解説します。
中小企業経営者向け!

目次
家賃滞納の実情
事業者が家賃滞納した場合、損害の拡大ペースが速めといえます。
貸主は、損害を最小化に抑えたいため、無理に問題を解決しようとするケースも見られます。
しかし家賃滞納による契約終了とその後の明渡しに借主の同意が得られなければ、裁判所による明渡判決を得ることが必要です。
そのため正式な手続を取らず、借主の意思に反する権利の実現(自力救済)は、法律上認められていません。
以下の自力救済をした貸主は、違法行為となり民事・刑事の責任を負うことになるといえます。
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事業者を相手とする自力救済行為は営業妨害となる場合もあります。
そのため家賃滞納による貸主側から上記の行為を受けた場合には、刑事責任(業務妨害罪・信用棄損罪)を問うことや、営業上の損害を請求することになるでしょう。
しかし本来は、テナント賃料などの家賃は毎月の期日までに遅れず支払うことが原則とされており、滞納するべきではありません。
家賃滞納が発端で貸主側が自力救済行為に及ぶことがあれば、仮に刑事責任や営業上の損害を請求できた場合でも、取引先や周囲からの信用力は低下すると考えられます。
数か月に渡る家賃滞納で法的手続を講じられれば、いずれ正規の方法による強制退去を求められてしまいます。
家賃滞納のリスク
事業者がテナント賃料などを支払わず、家賃滞納の状態が続くことは避けなければなりません。
家賃の滞納があれば、以下の5つのリスクを発生させます。
- 契約を解除される
- 風評被害に遭う
- 事業を継続できなくなる
- 保証人に責任が及ぶ
- 強制退去を求められる
それぞれ説明します。
契約を解除される
家賃滞納の状態が続いてしまうと、賃貸借契約を解除される可能性があるといえます。
実際、賃貸借契約の解除においては、家主と賃借人との間で信頼関係が破たんしているかが法的な争点となります。
そのため家賃滞納が一度または二度程度で、信頼関係を破たんさせたと認められない程度であれば、契約解除は認められないしょう。
信頼関係を破たんさせたと認められるのは、目安として3か月以上家賃滞納が続いているといった状態です。
契約更新できなくなる
家賃滞納が続いていると、契約期間満了後の更新を断られる可能性があります。
普通借家契約における賃貸借契約の更新方法は、次の2つです。
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借主が突然、更新を断られれば対応できずに困ってしまいます。
その状況を考慮した契約となるため、貸主が更新を拒絶できるのは正当な理由があるときだけです。
契約更新を拒絶できる正当な理由とは、以下に該当するケースといえます。
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契約更新を断られれば、契約期間満了とともに退去せざるを得なくなります。
風評被害に遭う
家賃滞納が続けば、テナント賃料も支払うことができない事業者であると取引先などに知られ、風評被害に遭う可能性があります。
すでに仕入れ先や販売先にも従業員などから家賃滞納に関する事実が伝わっている場合など、取引を断られてしまう可能性も否定できません。
事業を継続できなくなる
家賃滞納が続けば、取引先も離れていくため事業を継続できなくなります。
現場の士気も低下し、新規事業を起こすことも難しく、結果的に既存の事業を中断せざるを得ません。
従業員の給与なども支払うことができなくなり、退職者が増えて労働力までも失い、会社として活動ができなくなります。
保証人に責任が及ぶ
家賃滞納が続くと、保証人にも責任が及びます。
会社が借主となりテナント契約を結んでいる場合でも、多くは経営者が連帯保証人として、万一の責任を担保しています。
そのため家賃滞納により、貸主から連帯保証人である経営者へ請求が及び、会社が支払うべき賃料を自腹で負担することになるでしょう。
強制退去を求められる
家賃滞納が続き、度重なる請求にも応じない状態が続けば、法的手続のもと強制退去を求められます。
ただし借主には物件を利用する権利があるため、家賃を滞納していても貸主による一方的な鍵の付け替えや追い出し行為は違法行為となります。
そのため未払いのテナント賃料が溜まっていても、鍵を付け替えられることや出入りできないように施錠されることはありません。
賃貸借契約を有効に解除し、明渡義務があることが認めさせた上での強制退去となります。
家賃滞納による強制退去までの流れ
家賃滞納が続いたテナントなどでは、まず滞納分の賃料を請求されることになります。
仮に賃貸借契約書に「賃料を1度でも遅滞すれば催告なしで直ちに契約解除が可能」といった無催告解除特約が付されていても、実際には賃貸借契約の解除において催告が必要です。
そのためテナント賃料を払わず、家賃滞納の状態が続けば、強制退去に向けて次の手続を進められます。
- 督促
- 催告
- 法的手続
- 強制執行
それぞれて説明します。
督促
家賃滞納があった場合、以下の方法で支払いを催促されます。
- 訪問
- 電話
- 郵送
- 電子メール
- SNS
上記のいずれの方法でも、法律上は有効とされています。
催告
家賃滞納の解消に向けて支払うように催促しても、入金がなかった場合には借主に催告されます。
賃貸借契約上の連帯保証人にも、未払いのテナント賃料の請求が及ぶことになります。
この後の手続で、強制退去に向けた訴訟が提起されますが、この場合、貸主側が支払い催告した連絡を借主が受け取ったことを証明しなければなりません。
そのため催告に関しては普通郵便ではなく、配達証明付の内容証明郵便で送付されます。
内容証明郵便では書面の内容を、配達証明サービスではいつ書面が届いたか証明されるため、受け取っていないという言い逃れはできません。
法的手続
家賃滞納による催告があっても、期限内に支払いができなかったときには、以下の法的手続を講じられる可能性があります。
- 支払督促
- 少額訴訟
- 通常訴訟
それぞれ説明します。
支払督促
支払督促は、金銭などの請求について債権者が裁判所に申立てることで、支払督促を発してもらう手続です。
債務者が支払督促を受け取って2週間以内に異議申立てをしなければ、支払督促に仮執行宣言を付されるため、強制執行の申立てが可能となります。
少額訴訟
少額訴訟とは、民事訴訟のうち、60万円以下の金銭の支払いを求める訴えなどについて、簡易裁判所で1回の審理により紛争解決を図る手続です。
ただし60万円以下の金銭の支払を求める場合に限られるため、物件の明渡しなどを求めることはできない手続とされています。
通常訴訟
支払督促や少額訴訟で解決が難しい場合、通常訴訟を提起されることになるでしょう。
通常訴訟とは、法的な紛争や財産権に関する争いについて解決を求めて訴えを起こすことです。
滞納中のテナント賃料の支払いを求めるだけでなく、賃貸借契約解除が認められれば強制退去を要求されます。
強制執行
家賃滞納による訴訟判決で、滞納分の賃料の支払いが認められたのにもかかわらず、支払いがなく明け渡しの要求も無視して居座り続けた場合には、強制執行の手続へ移行します。
強制執行は最終手段といえる手続であり、借主の財産(預金・給与・不動産など)を差し押さえて滞納賃料を回収されます。
明け渡しに応じなくても強制的に鍵を開け、実行されることになります。
家賃滞納の消滅時効成立の要件
家賃滞納の消滅時効期間は5年とされています。
金銭請求権は請求できると知ったときから5年で時効です。
仮に2024年4月分のテナント賃料を2024年3月31日までに支払う約束だった場合において、2029年3月31日を過ぎれば請求できなくなります。
ただし消滅時効期間を迎えるのは、既に5年以上の滞納が続いている月分のみです。
1か月ごとに5年前の時効消滅を迎えていると考えられるため、滞納分すべてが消滅時効で請求権を失うわけではありません。
また、消滅時効の完成は以下の方法で阻止できます。
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そのため時効が完成しそうな家賃については、催告後に裁判を起こされます。
家賃滞納の解消方法
家賃滞納があり、支払いの遅れが常態化していれば支払いを促すための措置を取られます。
早急に支払いが遅れているテナント賃料について、滞納を解消することが必要といえますが、その方法は次の3つです。
- 支払いに関する相談をする
- 資金を調達する
- 居抜き売却を検討する
それぞれ説明します。
支払いに関する相談をする
家賃滞納については、期限までに支払うことができないことについて早急に物件の管理会社(または貸主)に相談しましょう。
いつまでに支払いができるか伝えることが必要ですが、次月に2か月分まとめて支払う約束は、無理な支払計画となり資金繰りを悪化させる可能性があります。
少額による分割でも家賃滞納が2か月分に及ばないように、滞納解消に努めることが必要です。
資金を調達する
家賃滞納を解消するために、滞納分の支払いに充てる資金を調達しましょう。
家賃が払えない状況では、すでに固定費の支払いや借入金返済なども行き詰まっている可能性があります。
この場合、発生している売掛金を現金化するファクタリングがおすすめです。
ファクタリングによる資金調達では、売掛先の経営状態を重視した審査が行われるため、借入れよりも時間がかかりません。
最短即日で売掛債権を現金化し、入金されるため本日または明日中に滞納分を支払わなければ法的手続を取られるといったケースでも、窮地を抜け出せます。
ファクタリングの利用方法とは?仕組みと注意点について簡単に解説
居抜き売却を検討する
家賃滞納を解消できず、事業撤退を選択する場合には、居抜き売却も検討できます。
本来、物件を退去するときには、後付けの設備機器などはすべて撤去し、スケルトンにすることが必要です。
しかし居抜き売却は、家具・内装・設備などはそのままで売却します。
旅館・飲食店・店舗経営などで見られがちな方法であり、原状回復や設備を処分する費用がかからないため、コストを抑えた売却が可能となります。
まとめ
事務所の家賃滞納があれば、結果的に事業継続は困難になります。
一度や二度、テナント賃料の支払いが遅れただけで、すぐに強制退去を求められることはありません。
しかし家賃を滞納していることが取引先などに伝われば、信用力を低下させ、その後の取引にも影響を及ぼします。
また、貸主からの請求や催促、法的手続により、立ち退きを迫られることになれば逃れようがありません。
家賃滞納の状態が続く前に、早めに遅れているテナント賃料の支払いを行い、問題を解消させましょう。
そのためにも適切な方法で資金を調達することが必要ですが、ファクタリングであれば速やかな問題解決につながります。
家賃滞納で支払いが困難なときこそ、ファクタリングの検討をおすすめします。
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