流動比率とは?計算方法や目安・安全性の判断ポイントを徹底解説

流動比率の計算は、流動資産と流動負債の金額が正しいことを前提に行います。

安全性の指標として使われる流動比率は、200%を超えていればかなり安全性が高く、100%を下回ると危険水域と判断されます。

流動負債に対して流動資産がどのくらいあるのか示す数値であるため、短期の支払い能力など確認するためにも計算してみるとよいでしょう。

そこで、流動比率について、計算方法や目安・安全性の判断ポイントを徹底解説していきます。

流動比率とは

「流動比率」とは、会社の短期的な財務の安全性を分析するときの指標であり、貸借対照表の流動資産と流動負債のバランスを示します。

1年以内に現金化できる資産が、1年以内に支払わなければならない負債をどのくらい上回るのか示すため、短期的な支払い能力を確認できます。

会社の規模や業種によって異なるものの、120%以上の流動比率であれば短期的な資金繰りには困らず、100%を下回っていれば不安な状態と判断できます。

安全性が高く健全経営と評価される200%を目指していくべきといえますが、流動比率の計算は次の2つの勘定科目の数値が正しいことを前提に、計算式にあてはめて算出します。

  1. 流動資産
  2. 流動負債

それぞれの勘定科目について説明します。

流動資産

「流動資産」とは、1年以内など短期的に現金化することが見込まれる資産であり、次の資産が該当します。

  • 現金
  • 普通預金
  • 売掛金
  • 受取手形
  • 有価証券
  • 未収金
  • 棚卸資産(商品・製品・原材料など)

1年以内に現金化できるため、流動負債の支払いに充てることができる資産であることを意味します。

流動負債

「流動負債」とは、1年以内など短期的に支払う必要のある債務であり、次の負債が該当します。

  • 買掛金
  • 未払金
  • 支払手形
  • 預り金
  • 前受金
  • 短期借入金

支払期限まで1年以内の負債であるため、支払日の時点に支払額を上回る現金や預金がなければ資金ショートすると留意しておく必要があります。

流動比率の計算方法

流動比率は、以下の計算式により算出します。

流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)

たとえば次の事例の流動比率の計算は以下のとおりです。

流動資産900万円(現金500万円・売掛金300万円)
流動負債700万円(買掛金200万円・未払金300万円)

(500万円+300万円)÷(200万円+300万円)=160%

1年以内に予定されている支払いに充てる資金があるのか判断する指標として使えるため、計算し確認すると安心です。

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流動比率の目安

流動比率の目安は、たとえば大手企業は中小企業よりも低めであることや、業種によっても違いがあるため一律とはいえません。

ただし一般的な中小企業の流動比率の適正水準の目安は以下とされています。

150%以上 優良水準
120~149% 安全水準
100~119% 改善余地
99%以下 危険水準

危険水準の99%以下の場合、資金繰りに影響が出始めるため会社に対する周囲からの心証が悪くなる可能性があります。

銀行融資を受けるときや新規取引先との契約など、安全性を示すことができない状況は様々な取引に影響を及ぼします。

なお、流動比率は会社の支払い能力を示す経営指標ではあるものの、流動資産には棚卸在庫など換金性の低い資産も含まれます。

そのため計算式で算出した数値だけで、安全性を十分に示すことは困難であると留意しておきましょう。

注意したい流動比率の種類

流動比率は短期的な支払い能力など、財務の安全性を判断するときの指標とされています。

流動資産を流動負債で割れば計算できますが、次の流動比率には注意が必要です。

  1. 100%を下回る流動比率
  2. 高すぎる流動比率

それぞれの注意点について説明します。

100%を下回る流動比率

流動比率が100%を下回っていると、流動資産よりも流動負債が大きい状態です。

短期的に現金化できる資産よりも、短期で支払いが必要な負債を多く抱えているため、入金より出金が上回って資金ショートするリスクが高くなります。

取引先に対する買掛金の支払いや、支払手形の決済ができなくなることや、借入金の返済を滞納することになれば信用を失います。

業務停止や倒産という事態を招きかねないため、すぐにでも改善が必要な状態と認識しておくべきです。

高すぎる流動比率

本来、流動比率は高いほうが良いといわれています。

しかし一般的な目安よりも高すぎる流動比率は、流動資産の内容を確認することも必要といえるでしょう。

たとえば流動資産に売掛金など債権が多く含まれている場合、単に回収できていないことや、回収不能の不良債権が含まれていることで流動比率が高くなっている可能性もあります。

また、売れ残りの商品や製品などの不良在庫を長期的に抱えていることで、流動比率が上がっていれば安全性が高い状態とはいえません。

なお、100%を上回っている状態でも資産の現金化のタイミングと負債の支払いのタイミングにズレが生じ、資金ショートすることもあります。

そのため理想的な流動比率は200%程度といわれていますが、毎日現金が入金される小売業と、支払いサイトが長めの建設業などでは目安の割合が違います。

特に注意したいのは買掛金の支払いサイトが売掛金の入金サイトより短い場合で、入金前に支払いが先に発生する業種です。

回収サイトとは?長さの目安や短期化する方法をわかりやすく解説

流動比率を改善する方法

流動比率が100%を下回る場合、流動負債に対する支払い資金が用意できていない状況であるため、資金繰りが悪化するリスクが高いといえます。

短期的な支払いに備えた改善が必要といえますが、方法としては次の4つです。

  1. 債権を早期回収する
  2. 流動負債を減らす
  3. 流動資産を増やす
  4. オフバランス化を図る

それぞれどのような改善方法か説明していきます。

債権を早期回収する

流動比率の計算で100%を下回る場合など、短期的な支払いに備えた改善方法として債権を「早期回収」することを検討しましょう。

流動資産に売掛金などの債権を多く含むときには、早期に債権を回収することで資金ショートを防ぐことができます。

回収が遅れている債権は、早期に取引先に連絡し、入金を促すなどの対応が必要です。

また、単に入金期日までが長い債権の場合、取引先に交渉しにくいケースもあるでしょう。

この場合、売掛金を前倒しで現金化できる「ファクタリング」など活用することをおすすめします。

ファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説

流動負債を減らす

流動比率の計算で100%を下回る場合などは、できる限り流動負債を減らしましょう。

たとえば1年以内に返済期限が訪れる短期借入金などは、手元の資金で早期完済させれば流動負債を減少させることができます。

反対に銀行と交渉し、債務の支払期限を延長してもらうことでも、流動負債を減らすことにつながるといえるでしょう。

流動資産を増やす

流動比率の計算で100%を下回る場合は、流動負債をできる限り減らすだけでなく、流動資産を増やすようにしましょう。

そのためには売上を伸ばし事業の利益率を上げる企業努力が求められます。

オフバランス化を図る

流動比率の計算で100%を下回る場合は、現金化が難しい固定資産を減らす「オフバランス化」を図りましょう。

固定資産を現金化し、減少させることができれば流動資産が増えます。

たとえば使用しておらず遊休資産化している不動産や過剰な設備、長期保有目的で所有している有価証券を売却し、現金化すれば固定資産から流動資産へとシフトできます。

また、販売の見込みが少ない不良在庫の処分など、在庫を適正化も有効です。

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その他安全性の指標の種類

事業の安全性を判断する指標は、流動比率以外にもたとえば次の3つが挙げられます。

  1. 当座比率
  2. 固定比率
  3. 自己資本比率

それぞれの指標について説明します。

財務分析とは?その目的や分析のやり方・重要な指標をわかりやすく解説

当座比率

流動比率以外で事業の安全性を判断する指標として、流動負債に対して当座資産の保有割合を示す「当座比率」が挙げられます。

当座比率は以下の計算式で算出できます。

当座比率=当座資産÷流動負債×100(%)

流動比率よりも正確に短期的な資金繰りを確認したいときの指標であり、当座資産と流動負債の比率から判断します。

なお、流動資産のうち、当座資産に該当するのは以下の資産です。

  • 現金
  • 普通預金
  • 受取手形
  • 売掛金
  • 未収金
  • 営業債権
  • 売買目的の有価証券
  • その他1年以内に回収予定の債権

棚卸資産は短期的に換金できると限らないため、流動資産に含まれるものの当座資産ではありません。

当座比率の目安は、100%を超えていれば安全性が高いと判断されます。

固定比率

流動比率以外で事業の安全性を判断する指標として、固定資産と資本金のバランスを見る「固定比率」が挙げられます。

流動比率は短期的な安全性を判断する指標であるのに対し、固定比率は長期的な安全性を判断するときの指標です。

固定比率は以下の計算式で算出できます。

固定比率=固定資産÷自己資本(純資産)×100(%)

適正割合の目安として、一般的に100%以下であれば安全性が高いと判断できるでしょう。

固定資産は、たとえば土地や機械など短期で現金化する予定のない資産です。

自己資本は株主資本や利益剰余金など返済義務のないお金であるため、固定資産と自己資本のバランスを計算することで、固定資産に対する投資を過剰な負債で行っていないことを確認できます。

固定資産の取得や売却は投資キャッシュフローで確認を

自己資本比率

流動比率以外で事業の安全性を判断する指標として、総資本のうち返済不要の自己資本の割合を示す「自己資本比率」が挙げられます。

自己資本比率の計算方法は以下のとおりです。

自己資本比率=自己資本÷総資本×100(%)

総資本は自己資本と他人資本(借入金や買掛金など負債)を足した数字であるため、自己資本率が高ければ借入金に頼らずに返済不要のお金で経営できていると判断できます。

反対に自己資本比率が低ければ、借入れに頼って経営していると判断できるため、資金繰り悪化のリスクが高い状況です。

自己資本比率の適正割合は業種によって異なるものの、一般的に40%以上で問題ない水準と判断されます。

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まとめ

流動比率の計算は、以下の計算式で算出できます。

流動比率=流動資産÷流動負債× 100(%)

100%を下回るときには短期的な支払い能力を失っている状態であり、流動負債に対する資金が準備されていない状況と判断できるため注意しましょう。

財務分析を行うことにより、現状を把握し解決しなければならない問題を洗い出すことや、適切な意思決定などが可能となります。

財務諸表の数値で評価できないことは分析できないものの、会社の将来予測につなげることはできます。

計算結果による数値が悪化しているとき、改善させずに放置したままでは資金繰りは悪化し、いずれ資金ショートによる倒産リスクを高めることになってしまいます。

改善方法として売掛金の回収期間を早めたいものの、取引先に対する交渉が難しいという場合には、ファクタリングの活用などもぜひ検討してください。