会社設立の登記など、法人として事業を営むときには法務局で登記申請を行うと同時に会社の印鑑登録も必要です。
法人の印鑑証明書が必要となる場面はいろいろありますが、事前に登録しておかなければ取得できません。
法人格には株式会社・合同会社・合名会社・合資会社など複数の種類がありますが、いずれの形態でも法人の印鑑証明書を取得できるように登録手続を行いましょう。
そこで、法人の印鑑証明書を取得するまでに必要な登録の方法や、取得する方法の種類とその流れについて解説していきます。
目次
法人の印鑑の種類
登記所で登録する印鑑の大きさは、辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形の中に収まるものです。
これは商業登記規則第9条第3項で定められているため、この範囲に収まらない大きさの印鑑では登録できません。
さらに印鑑は照合に適するものでなければならないという決まりもありますが、素材は木材やチタンが利用されることが多いものの、厳格な制限はありません。
文字も必ずしも商号と同じ社名でなく、「代表取締役印」以外の文字でも問題ありませんが、一般的には「会社名」と「代表取締役印」または「代表者印」とすることが多いといえます。
これが代表者印と呼ばれる会社の実印であり、法務局で登録する印鑑です。
この代表者印を含め、法人の印鑑の種類は主に次の5つがあります。
- 会社実印(代表者印)
- 会社銀行印
- 会社角印
- 会社認印
- ゴム印(住所印)
それぞれどのような印鑑か説明していきます。
会社実印(代表者印)
「会社実印」とは代表者印ともいい、法人登記で登録する印鑑です。
法人の印鑑証明書を取得する場合、この会社実印の証明書となります。
個人の実印と同じく、登録をした印鑑は実印としての法的な効力を持つことになり、重要な書類に押印するときに使います。
一般的に丸い形の印鑑のため、丸印と呼ばれることもあり、法人格によって次のとおり呼び方が異なる場合もあります。
- 株式会社・有限会社…代表取締役印
- 合同会社・合資会社…代表者印
いずれも中央に役職名(代表取締役または代表者など)が記載され、囲むように社名が彫刻されることが多いといえます。
複数の代表者がいる場合には、各代表者用の印鑑登録が可能です。
ただし共同代表者A・Bといる場合において、Aの代表者印をBが使用することはできませんので注意しましょう。
会社銀行印
「会社銀行印」とは、法人の銀行口座開設のときに金融機関に届出する印鑑です。
小切手や手形など、金銭の取引で使用することが多い印鑑といえます。
会社実印と同じく丸い形のものが多いですが、少し小さめで中央に「銀行之印」と記載され、それを囲むように社名が彫刻されることが一般的です。
会社銀行印を別途作成せず、会社実印を使うこともできますが、紛失や盗難などのリスクを考えれば別に作成しておいたほうが安心といえます。
会社角印
「会社角印」とは四角の形状の印鑑で、認印としての役割がある印鑑で、印面には社名のみ彫刻されることが一般的です。
役所や銀行など機関に届出せず、たとえば請求書や領収書、社内文書などで使います。
会社認印
会社角印を認印として使用せず、たとえば郵便物の受け取りのときやあまり重要でない社内文書などに使う印鑑が「会社認印」です。
簡易的な業務など役職者用として準備することが多く、丸い形状に役職名と社名が彫刻されることが一般的といえます。
ゴム印(住所印)
「ゴム印」とは、社名・所在地・電話番号などのゴムでできた印鑑です。
現在はパソコンなどで文書を作成することが多く、ゴム印を使用する機会も少なくなっているといえますが、社名や住所など記載しなければならない書類などに押せば手記入の手間を省くことができます。
業務効率化のために作成しておくと便利です。
法人の印鑑登録の流れ
個人でも法人でも、実印として印鑑を登録しておくことは様々な手続きにおいて必要なことです。
個人であれば実印登録は自治体で行いますが、法人は本店所在地の法務局で登録手続きを行います。
実印として登録した印鑑は代表者印として、会社の様々な手続きで必要となることがあります。
印鑑の登録から印鑑証明書取得までには次の2つの段階を踏んでいくことが必要です。
- 代表社印の届出
- 印鑑カード交付申請書の提出
それぞれ説明していきます。
①代表者印の届出
法人の印鑑登録は、設立登記を申請するタイミングで同時に行います。
たとえば代表者が手続きを行う際に必要なものは、
代表者印(会社の実印として使用する印鑑)
届出を行う代表者個人の実印
代表者個人の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
です。
代表者個人の印鑑証明書は会社設立の登記申請でも必要となりますが、登記申請に使用した印鑑証明書をそのまま利用できます。
②印鑑カード交付申請書の提出
印鑑登録後は印鑑カードの交付を申請します。
個人の印鑑証明書取得の際にも印鑑カードを使うように、法人でも印鑑証明書を発行してもらうときに必要です。
会社設立の際に印鑑カード交付申請は必ず必要というわけではないものの、後の手続きのためにも申請しておくことをおすすめします。
また、代表取締役など印鑑を届け出た人以外の代理人が印鑑カードの交付申請するときには、「委任状」の欄を記入した上で提出済みの印鑑を押印することが必要です。
印鑑カードを紛失した場合
もしも印鑑カードを紛失してしまったときには再発行の手続が必要です。
手続に費用はかかりませんが、次の書類などが必要です。
・印鑑カード廃止届書
・印鑑カード交付申請書
・会社実印
・申請者の身分証明書
上記の「印鑑カード廃止届書」と「印鑑カード交付申請書」は法務局にあります。
代理人が申請するときには、「印鑑カード廃止届書」と「印鑑カード交付申請書」の委任状欄に会社実印が必要です。
法人の印鑑証明書の受取方法
法人の印鑑証明書を受け取る方法は全部で次の4つです。
- 法務局窓口で申請する方法
- 証明書発行請求機で請求する方法
- 郵送請求する方法
- オンライン申請する方法
それぞれの方法と簡単な流れについて説明していきます。
①法務局窓口で申請する方法
法務局から受け取った印鑑カードと印鑑証明書交付申請書を再度法務局窓口に提出すれば、法人の印鑑証明書が取得できます。
印鑑証明書交付申請書に必要事項を記載し、印鑑カードを添えて法務局の窓口に提出するだけです。
印鑑証明書の請求は代表者本人しかできませんが、委任された代理人でも可能とされており、この際には委任状は不要であるものの印鑑カードの提示は必要となっています。
その場合、印鑑の提出者の役職・氏名・生年月日を記入するようにしてください。
申請は1通450円費用が発生するため、法務局内の印紙売り場で収入印紙を購入し、申請書の指定欄に貼り付け提出しますが割印は不要です。
なお、法人の所在地に関係なく全国の法務局で印鑑証明書の交付請求できます。
②証明書発行請求機で請求する方法
また、法務局の窓口に証明書発行請求機が設置されていれば、機械を使って印鑑証明書の取得が可能です。
証明書発行請求機で請求する場合、交付機に印鑑カードを差し込み、タッチパネルで代表者の生年月日を入力します。
請求後は法務局内の印紙売り場で収入印紙を1通あたり450円分購入し、窓口で印鑑証明書を受け取ります。
③郵送請求する方法
郵送利用で印鑑証明書を請求するときには、法務局のホームページから「印鑑証明書交付申請書」をダウンロード・印刷して必要事項を記載しましょう。
記載した申請書に、1通あたり450円の収入印紙を指定箇所に貼り付け、返信用の封筒(郵便切手貼付済のもの)と印鑑カードを同封して請求します。
最短で投函から3~4日で印鑑証明を取得できますが、混雑状況などにもよります。
申請書・収入印紙・返信用の封筒・返送用の切手が必要となること、印鑑カードを同封することを忘れないようにしてください。
また、印鑑カードを同封するため、普通郵便以外の方法で送るようにしましょう。
④オンライン申請する方法
オンライン申請も可能ですが、事前に法人の電子証明書を取得しておく手続が必要です。
オンラインによる申請後の印鑑証明書の交付方法は、指定した住所に郵送してもらう、または受取先として指定した登記所や法務局証明サービスセンター窓口で受け取るといった方法から選ぶことができます。
ただし、オンライン申請を利用する場合には、事前に専用ソフトウェアである「申請用総合ソフト」をダウンロードし、電子証明書を取得しておくことが必要です。
法務省のホームページにある「オンラインによる印鑑証明書の請求」から詳細を確認しておきましょう。
オンラインで印鑑証明書を請求した場合は、郵送または窓口のどちらで受け取るか選ぶことになります。
郵送なら1通410円、窓口は1通390円が手数料となるため、複数枚必要なときや費用を掛けたくない場合は窓口のほうがよいといえるでしょう。
まとめ
法人の印鑑証明書は、法人設立の登記を行うときにまとめて登録手続します。
会社設立で登記申請を行うときには代表者個人の印鑑証明書が必要であり、法人の印鑑証明書とは別のものです。
会社実印は、たとえば不動産の賃貸借契約締結など重要な取引で必要となります。
会社実印の印鑑登録証明書には有効期限は存在しないので、過去に取得したものでも問題なく使用できます。
ただし不動産の登記申請するときには3か月以内の印鑑証明書が必要となることや、提出先によっていつまでに取得したものと指定されることがあるため注意してください。
印鑑証明書を発行するためには印鑑カードが必要となるため、会社設立の際に手続していなかったときには、できるだけ早く手続を済ませておきましょう。
事前にいつ印鑑証明書が必要かわかっているときには、スケジュールなどに合わせてどの方法で請求するのか決め、遅れることなく手元に準備できるようにしておくことが必要です。