新たに取引をはじめようとする企業が、どのような会社なのか確認するときには、法人登記簿謄本を閲覧しましょう。
法人登記簿謄本を閲覧するには、インターネットを使う方法と直接法務局に出向く方法があります。
なお、どちらを活用して法人登記簿謄本を閲覧するべきか迷ったときには、それぞれのメリットやデメリットを踏まえた上で判断することをおすすめします。
法務局で法人登記簿謄本を閲覧・取得する方法
不動産などの登記された情報は法務局に行けば閲覧できますが、法人の登記簿謄本も同じです。
直接最寄りの法務局に行けばよいだけであり、手数料を支払えば代表者でなくても誰でも閲覧できます。
閲覧または取得しようとする方の資格を証明する書面や印鑑なども不要です。
法務局に出向き、次の2つのいずれかを選択します。
- 登記事項要約書
- 登記事項全部証明書
それぞれの違いを説明します。
登記事項要約書
現在登記事務がコンピュータ化されている登記所の場合、登記簿は磁気ディスクで調整されます。磁気ディスク登記簿の登記情報についてはコンピュータ内部に蓄積されるため、従来までの閲覧方法でその情報を公開されることはできなくなっています。
そこで、閲覧に代わる方法として磁気ディスク登記簿に記録されている事項の概要が記載された登記事項要約書の交付請求が可能となっています。
閲覧制度に代わるものが要約書なので、現在効力のある事項のみが記載されることから、認証文や作成年月日などの記載はありません。商号・本店・会社成立年月日の他、所定の請求事項(請求できる区数は3個まで)の記載はされます。
登記事項全部証明書
コンピュータ化された登記簿に記録されている事項のすべて、または一部を証明する書面です。
登記事項証明書には次の4つがあります。
- 現在事項証明書
- 履歴事項証明書
- 閉鎖事項証明書
- 代表者事項証明書
それぞれ説明します。
どの証明書が必要なのか、閲覧または取得の目的に合わせて選ぶようにしてください。
現在事項証明書
「現在事項証明書」とは、現に効力を有する現在の登記事項が記載されている証明書です。
大企業や登記変更履歴が多い会社などでは、履歴事項全部証明書の枚数が100枚以上に及ぶこともあり、50枚ごとに手数料が加算されてしまいます。
そのため変更履歴を含めすべての情報が必要であれば履歴事項証明書を取得することになりますが、現在の情報のみが必要なときには現在事項全部証明書を取得したほうがよいと考えられます。
履歴事項証明書
「履歴事項証明書」とは、現在効力がある登記事項と一定期間内に抹消された登記事項が記載されており、従前の登記謄本に相当する証明書です。
履歴事項証明書には請求する日よりも3年前の日が属する1月1日以降の情報のみが記載されるため、それ以前の情報が必要なときには閉鎖事項証明書を取得することが必要となります。
閉鎖事項証明書
「閉鎖事項証明書」とは、過去に閉鎖した登記記録事項が記載されている証明書です。
閉鎖事項証明書が必要になるケースとして次のような場合が考えられるでしょう。
- 履歴事項証明書に記載されている期間よりも前の情報が必要なとき
- 会社の合併や本店移転前の内容を証明することが必要なとき
- 会社の解散・清算結了や特例有限会社から株式会社に商号を変更した場合、持分会社から
他にも株式会社に組織変更したときなども閉鎖されるため、その証明を目的として閉鎖事項証明書を取得するケースがあります。
代表者事項証明書
「代表者事項証明書」とは、代表者に関する情報が記載されており、資格証明書として使うことができる証明書です。
会社の代表者の代表権を証明するときに使用する証明書のため、たとえば契約などの手続で会社代表者の資格証明書を提出するように求められたときに取得します。
法務局で法人登記簿謄本を閲覧するメリット・デメリット
法務局の開庁時間であれば、即日すぐに取得(閲覧)が可能であることはメリットです。
また、閲覧する方法がわからなくても窓口に尋ねれば丁寧に教えてもらうことができるでしょう。
ただし閲覧のみ希望する場合でも登記事項証明書または登記事項要約書を取得することとなることが多いことはデメリットです。
その場合、登記事項証明書は1通600円、登記事項要約書の取得は1通450円の手数料がかかります。
オンラインで法人登記簿謄本を閲覧する方法
近隣に法務局がない場合などは、時間や交通費をかけて法務局に出向くのは面倒に感じることもあるかもしれません。
その場合、法務局が提供するインターネットを使った「登記情報提供サービス」を利用するとよいでしょう。
紙媒体として必要とせず、早く登記内容を確認したいときに利用できるのが「登記情報提供サービス」であり、PDF形式で提供されています。
対応している時間内なら登記情報をインターネット経由で閲覧できる便利なサービスです。
登記情報提供サービスを利用して法人登記簿謄本を閲覧する場合、次の2つをポイントとして押さえておきましょう。
- 事前の申し込みと登録が必要
- 閲覧できる登記情報
それぞれ説明していきます。
事前の申し込みと登録が必要
登記情報提供サービスを利用する場合にはあらかしめ申し込み手続を行い、利用登録しておくことが必要です。
申し込み手続するときには次の書類を準備しておかなければなりません。
- 登記情報提供サービス法人利用申込書
- 銀行の預金口座振替依頼書
- 会社の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 会社の実印と印鑑証明書
個人なら300円、法人は740円の登録料がかかり、銀行の口座から引き落とされます。
閲覧できる登記情報
登記情報提供サービスで閲覧できる登記情報は以下のとおりです。
- 不動産登記情報(全部事項・所有者事項)
- 地図・図面情報
- 商業・法人登記情報
- 動産譲渡登記事項概要ファイル情報・債権譲渡登記事項概要ファイル情報
閲覧にかかる手数料は1件335円となっていますので、1件のみであれば法務局で法人登記簿謄本を取得するよりコストがかかることとなるでしょう。
オンラインで法人登記簿謄本を閲覧するメリット・デメリット
オンラインで法人登記簿謄本を閲覧するメリットとして挙げられるのは、一時利用も可能なことです。
事前に申込手続せず、クレジットカードの即時決済ですぐに情報閲覧が可能となります。
ただし登記情報の請求は初回ログインのときだけであり、ログアウトや長時間放置によるセッションタイムアウトで再度ログインすることになったときには、登記情報も請求はできなくなります。
インターネットを使って法人登記簿謄本の情報を閲覧したいのなら、事前登録しいつでも利用できるようにしたほうがよいでしょう。
デメリットとしては、利用登録に手間や時間がかかることです。
利用登録を申請して実際に利用可能となるまで審査があり、1~4週間程度かかります。
法人が利用する場合は、申込書以外に預金口座振替依頼書や自社の登記事項証明書(登記簿謄本)と印鑑証明書も必要です。
登録に手間がかかると感じるでしょうが8時から21時まで利用可能で、複数の法人の情報を取得するときには手数料も法務局に出向くより割安です。
オンラインで法人登記簿謄本を取得する方法
オンラインを使って法人登記簿謄本を取得することもできます。
この場合、インターネットを使って法務局が提供している「かんたん証明書請求」を利用します。
自宅やオフィスのパソコンを使って、オンラインによる申請・請求ができ、郵送で自宅や会社に送ってもらったり最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取ったりできます。
従来の取り寄せ方法は郵送請求するか窓口で直接交付してもらうかを選ぶことが必要でしたが、オンラインで請求し取得できるようになったため多忙な会社経営者も手軽に法人登記簿謄本を取得することが可能です。
「かんたん証明書請求」で法人登記簿謄本を取得する流れは以下のとおりとなっています。
- 申請者情報を登録
- 請求書を作成・送信
- 手数料の納付
- 郵送または登記所や法務局証明サービスセンター窓口で取得
オンラインで法人登記簿謄本を取得するメリット・デメリット
オンラインを使った法人登記簿謄本の取得は、法務局窓口で請求するよりもコストを抑えることができます。
登記所窓口で登記事項証明書を請求したときには600円の手数料が発生しますが、「かんたん証明書請求」を利用し郵送で受け取る手続を取れば手数料は500円、窓口で受け取るなら480円と割安です。
手数料はインターネットバンキングを使った電子納付が可能であり、他にもPay-easy(ペイジー)に対応したATMで納付することもできます。
また、登記所窓口で法人登記簿謄本を取得する場合には、法務局が開庁している17時15分までに窓口まで出向くことが必要ですが、オンラインなら平日21時まで利用することが可能です。
さらに「かんたん証明書請求」で請求できる手続はすべて電子証明書が不要となることもメリットといえるでしょう。
ただし会社・法人の印鑑証明書を請求するときには、電子証明書と申請用総合ソフトをダウンロードしておくことが必要です。
また、パソコンに不慣れな方は使いにくさを感じてしまうことはデメリットといえます。
まとめ
会社・法人の登記簿謄本は契約を結ぶときなどの場面で必要になることが多いといえます。
ある程度時間に余裕があるのであれば、直接法務局の窓口まで出向き請求するとよいでしょう。
しかし多忙な経営者などは、時間を確保することも難しい場合が多いため、インターネットを使って請求できるほうが便利と感じるかもしれません。
現在、法務局が提供する「登記情報提供サービス」を利用すればインターネットを使って閲覧することができ、「かんたん証明書請求」では夜間の落ち着いた時間帯に申請できます。
登記簿謄本の取得方法を増やしておくと、多忙になったときでも自宅やオフィスから利用できるように、事前の登録など済ませておくことをおススメします。