リースバックの会計処理・仕訳方法|消費税や注意点について解説

リースバックとは、物件を売って現金化した後でも、引き続き物件を使用し続けることができる資金調達の方法です。

短期間で資金調達が可能になることなどいろいろなメリットがありますが、リースバックで資金調達したときや、その後の会計処理方法がよくわからないということも少なくありません。

そこで、リースバックの会計処理や仕訳処理方法、注意点について解説していきます。

リースバックとは

リースバックとは、不動産を売った後でも賃貸物件として賃料を支払い、引き続き使用できる仕組みです。

一般家庭の持ち家だけでなく、企業などが所有する不動産なども対象であり、資金調達の方法として活用しつつ一定期間物件を利用し続けることができます。

不動産の管理にかかる費用を削減できる方法ともいえますが、リースバックについて次の2つを説明していきます。

リースバックの種類
リバースモーゲージとの違い

リースバックの種類

リースバックはリース取引に関する会計基準をもとにして、次の2つの種類に分けることができます。

  1. ファイナンスリース
  2. オペレーティングリース

それぞれのリースバックについて説明します。

ファイナンスリース

ファイナンスリース取引とは、リース適格物件から選んだ物件を、リース会社が購入した後に賃貸物件として使用する取引です。

オペレーティングリース

オペレーティングリース取引とは、リース期間満了後の物件の残存価額により、見積もりどおりにならない場合のリスクを貸主が負担する取引で、物件代金から残存価額を差し引いた部分をベースにリース料が決定します。

リバースモーゲージとの違い

リバースモーゲージは、不動産を担保に融資を受けることのできるサービスであり、物件所有者が亡くなったときには不動産を売って返済する仕組みです。

主に自宅が所有する持ち家などの不動産が対象であり、リースバックは法人所有の不動産も対象になる点に違いがあります。

また、リースバックは不動産を売るときに所有権が買主に移転されますが、リバースモーゲージは所有権移転はありません。

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リースバックの会計処理と仕訳

 

リースバックの会計処理は次の2つの種類によって分けられます。

  1. ファイナンスリース
  2. オペレーティングリース

それぞれの会計処理について説明します。

ファイナンスリースの会計処理

ファイナンスリースの会計処理は以下のとおりです。

【例】期首に取得価格5千万円の建物(期首の減価償却累計額3千万円で間接法による減価償却)をリースバック取引で売却し、1千500万円が当座預金へ入金された。
借  方 貸  方

当座預金1,500万円
減価償却累計額3,000万円
固定資産売却額50万円

長期前払費用50万円

建物5,000万円

 

固定資産売却損50万円

通常の不動産売却の会計処理とほぼ同じですが、売却損は長期前払費用、売却益は長期前受収益で計上します。

なお、物件をリースした場合の仕訳は以下のとおりです。

【例】リースバック取引で売った物件のリースを開始し、1回目の家賃30万円を当座預金から支払った。(毎月30万円前払い5年契約の前払総額の割引現在価値は1千500円)
借方 貸方

リース資産1,500万円 

リース債務30万円 

リース債務1,500万円

当座預金30万円

リースが開始されたときにはリース資産とリース債務のどちらの会計処理も必要となり、支払いの際にリース債務を取り崩す仕訳となります。

また、リース料は前払いで支払うため1回目の支払いでは利子は発生しないものの、2回目の支払い以降は支払額とリース債務の差額が支払利息として計上されます。

さらに期末には、売ったときに計上された長期前払費用(長期前受収益)と合算し、リース資産の減価償却も必要です。

オペレーティングリースの会計処理

オペレーションリースの会計処理は以下のとおりです。

なお、ファイナンスリース取引に該当しないリースバック取引はオペレーティングリース取引で処理することになります。

オペレーティングリース取引の場合、不動産売却とリースのそれぞれを単独の契約として扱います。

【例】期首に取得価格5千万円の建物(期首の減価償却累計額3千万円で間接法による減価償却)をリースバック取引で売却し、1千500万円へ当座預金に入金された。
借  方 貸  方
当座預金1500万円
減価償却累計額3000万円
固定資産売却損50万円
建物5000万円

一般的な不動産売却の仕訳と同じであるといえますが、物件のリースでは次の仕訳となります。

【例】リースバック取引で売った物件のリースを開始し、1回目のリース料を当座預金から支払った。(毎月30万円前払いの5年間のリース契約)
借  方 貸  方
リース料30万円 当座預金30万円

オペレーティングリース取引の場合、リース料を支払ったその都度、費用として計上することになります。

リースバックの消費税

消費税とは、商品の販売やサービスの提供などの取引に対し、広く公平に課税される税金であり、消費者が負担し事業者が納付する仕組みになっています。

教育・医療・福祉など限定された一部のサービス提供を除き、国内のほぼすべての物品販売やサービス提供などに対し課税されますが、次の要件を満たす場合が課税対象されます。

  • 国内の取引であること
  • 事業としての取引であること
  • 対価が発生する取引であること
  • 資産譲渡や貸付などの取引であること

これらすべての要件を満たす場合に課税されるため、不動産会社などが事業として行う取引に対しては課税対象ですが、一般個人は事業者ではないため課税対象になりません。

リースバックの会計処理の注意点

リースバックは、ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引のどちらに該当するかによって、会計処理やその仕訳方法は異なります。

ファイナンスリース取引の条件は、解約不能に準ずる取引を含む解約不能であることと、(解約不能に準ずる取引を含む)であることと、取得価額・金利・固定資産税・保険料など物件の維持管理にかかる費用のほぼすべてを借主が負担するフルペイアウトであることです。

そのためリースバックの会計処理の注意点として、どの取引区分に該当するか確認した上で行うようにしてください。

また、リースバック取引で子会社などへリース物件を第三者に転貸借する場合、会計処理方法が少し変わります。

リース料の受け取りと支払いを相殺した差額が手数料収入になることや、次の条件をすべて満たす場合には物件を売ったときの損益を長期前払費用や長期前受収益で処理しなくてもよいとされています。

  • おおむね同じ条件で転貸借している場合
  • ファイナンスリース取引である場合
  • 取引実態で売買損益が実現されたと判断される場合

まとめ

リースバックの最大のメリットは、売った不動産をそのまま使用し続けることであり、資金調達目的の一般的な不動産売却と異なり新たな物件手配の必要がないことです。

リース料は毎月発生しますが、それまで物件管理にかかっていた費用は削減でき、新たな物件契約にかかる敷金・礼金・仲介手数料・移転費用など大きな出費もありません。

ただリースバックで資金調達したときや、その後物件を使用し続ける上での会計処理がわからず、複雑な取引に感じるからこそ迷うこともあるでしょう。

しかし実際には物件売却とリース契約を同時に行うだけであるため、それほど難しい会計処理は必要ありませんが、ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引のどちらに該当するかによって会計処理方法が異なることだけは注意しておきましょう。