コロナ融資は企業の倒産の抑止になったものの、返済が始まり倒産する企業も出てくると危惧されています。コロナ融資の返済状況はどのようになっているのでしょうか。
今回はコロナ融資の返済が始まって不安を覚えている経営者向けに、コロナ融資の返済期間の延長などの条件を変更できるか解説します。あわせて借換保証についても紹介します。
目次
コロナ融資とは
「コロナ融資」とは、新型コロナウイルス感染拡大で売上減少に陥った事業者を支援するためにできた融資制度です。
通常、融資を受ければ金融機関に対し利子を払うことが必要ですが、コロナ融資では公的機関が3年間利子を負担します。
さらに返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりする実質無利子・無担保の融資制度です。
利子も担保も「ゼロ」であったため、「ゼロゼロ融資」とも呼ばれました。
コロナ融資は、日本政策金融公庫の融資から始まり、その後、民間のゼロゼロ融資が開始されたため、公庫と民間の2種類が存在します。
日本金融公庫による融資の返済期間は20年以内、民間のコロナ融資の返済期間は10年以内です。民間の方が返済期間は短く設定されています。
公庫、民間、いずれも5年以内の据え置き期間が設けられ、返済開始までに猶予も設けられました。
コロナ融資の返済状況
2023年3月末時点での民間のコロナ融資は、5割近くが返済中です。なかには完済した事業者もあり、2023年3月末までに37,217件(全体の2.7%)が返済を終えました。
一方、返済期間が到来していない据置期間中の事業者も多く存在します。2023年3月末時点では全体の33.7%が据置期間中です。
なお、返済状況については業種でも比率に差が見られます。なかでも返済中の割合が低いのが宿泊業です。返済中の事業者が全体で5割を超えるのに対して、同時期の宿泊業の返済中の割合は33.6%でした。
出典:事務局説明資料(2023年6月29日)|中小企業庁 金融課
他に、帝国データバンクの2023年8月に実施された「新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査」もあります。
調査では、すでに5割以上を返済している企業が24.7%もあることがわかりました。一方、3割未満の返済、未返済、今後返済する予定の企業も多く存在します。合計で全体の6割近くになりました。
また、同調査では、全額返済できると回答する企業も多い一方で、返済に不安を抱える企業が一定数存在することも示されています。特に、飲食料品小売、教育サービス、飲食店で返済に不安を抱える企業が多い傾向が見られました。
出典:新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査(2023年8月)|TDB Economic Online
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コロナ融資は返済免除できる?
コロナ禍が落ち着いたものの、まだコロナ前ほど事業が回復していないという事業者も少なくありません。
また、そもそもコロナ前にすでに資金繰りが悪化していた事業者は、コロナ融資を受けることで延命された状態であったため、もともと返済資金を捻出できる体力もなく事業継続が危ぶまれています。
このような状況下にある事業者の多くは、コロナ融資を返済免除してもらえないかと考えることは仕方のないことといえるでしょう。
しかし、コロナ融資は返済免除が基本的にできません。返済が始まったら、融資を受けたときの条件で返済していく必要があります。
返済に困窮して返済を免除してもらいたいなら、法人の廃業を検討する必要があるでしょう。法人格が消滅すると、自動的に法人に紐づく債務も消滅します。
しかし、個人が連帯保証になっている借入金の返済義務は消えません。コロナ融資は無担保のため返済義務がなくなりますが、その他の融資で連帯保証になっているものは返済義務が残ります。
法人を廃業する方法としては法人破産と特別清算の2つが考えられるでしょう。
法人破産は支払不能や債務超過に陥った企業が、裁判所の選任する破産管財人を通して法人財産を処分する手続きです。特別清算は、株式会社を対象にした手続で、裁判所を通して債務超過に陥った企業の清算を行います。
法人破産よりも手続が厳格でないものの、特別清算は3分の2以上の債権者の同意が必要です。
コロナ融資の据置期間や返済期間は延長できる?
コロナ融資は5年以内の据置期間が設けられています。据置期間とは、元本の返済が猶予される期間です。据置期間中は利息の支払いのみ(実質無利子の3年間は返済なし)で済むため、返済金額が少なく済みます。
コロナ融資の据置期間は、金融機関との交渉で延長が可能です。ただし、限度の5年以内での延長に限られます。政府からは、コロナ融資の据置期間の延長を認めるよう金融支援要請が出されているため、金融機関はできる限り要請に応えなければなりません。
つまり、5年よりも短い据置期間のときは、金融機関との話し合いで延長の余地があるということです。
コロナ融資の返済条件は見直せる
据置期間を延長してもらうこと以外にも、そもそもコロナ融資の返済計画を見直すリスケジュールを交渉することで、返済負担は軽減されるはずです。
コロナ融資に関しては、経済産業省の「新型コロナ特例リスケジュール」制度を活用することが考えられますが、中小企業再生支援協議会による以下のような支援を受けることができます。
- 中小企業に代わり元金返済猶予を要請
- 資金繰り計画立案と債権者との交渉(新規融資を含めた金融機関との調整や債権者との合意形成など)
- 資金繰りに関する継続的なサポート
制度を活用した場合、弁護士などのサポートを受けながら資金繰り計画を立て、金融機関との調整しつつ支援を受けることができる制度です。
ただし公的機関「中小企業再生支援協議会」を通すことが必要となるため、必要書類作成・提出なども必要となるなど、手続は簡単ではないことは理解しておきましょう。
コロナ融資を借り換える方法もある
コロナ融資の返済について、据置期間や返済条件の変更が難しいときは、コロナ融資から借り換える方法もあります。
2023年1月10日に、コロナの影響の長期化や物価高を背景にコロナ借換保証が始まりました。コロナ融資よりも上限額が高めに設定された内容で、コロナ融資の返済や新たな資金需要に対応するための制度です。
この制度について下記2つを確認しておきましょう。
- コロナ借換保証利用のメリット
- コロナ借換保証利用の注意点
コロナ借換保証利用のメリット
コロナ借換保証のメリットは、コロナ融資よりも上限の設定が高いことです。民間のコロナ融資は上限が6,000万円でしたが、コロナ借換保証では上限1億円に拡大されました。
コロナ融資を上限近くまで利用していて資金繰りが改善していない場合でも、追加の融資を受けられる余地があります。
また、コロナ借換保証も、コロナ融資と同じように5年以内の据置期間が設けられました。据置期間により元本の返済を遅らせることができ返済負担を軽減できるため、当面の資金繰りに対応しやすくなります。
コロナ借換保証利用の注意点
注意点は、コロナ借換保証には利用条件があることです。以下のいずれかに該当していないと利用できません。また、加えて、金融機関の伴走支援と経営行動計画書の作成も必要になります。
【事業者の条件(いずれか)】
・セーフティネット4号の認定を受けている
・セーフティネット5号の認定を受けている
・売上高が前年同月より5%以上減少している
・売上高総利益率/営業利益率が5%以上減少している
返済できなくなる前に資金繰りを改善しよう
コロナ融資は返済が必要です。借換先としてコロナ借換保証もありますが、返済の延長はできても、返済の必要があることに変わりありません。
短期的な資金繰り改善ではなく、長期的な視野で財務状況を改善していくことが重要です。
PMGでは、企業の財務支援も行っています。早めの財務改善で根本から不安を解消していきましょう。コロナ融資の返済に不安があるならPMGへご相談ください。
まとめ
手元の資金が枯渇すれば、会社は倒産してしまいます。
資金ショートする前に、たとえば手元の売掛金を現金化し最短即日資金調達に活用できるファクタリングなどを利用するなど、倒産させない資金調達も検討することをおすすめします。