新型コロナウイルス感染症の拡大により、経済活動が停滞したことから、多くの中小企業や個人事業主の売上が大きく減少しました。
そこで、政府が実施した資金調達のための制度が、ゼロゼロ融資(無利子・無担保融資)です。
そこで、この記事では「ゼロゼロ融資(無利子・無担保融資)」について、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
ゼロゼロ融資(無利子・無担保融資)とは
ゼロゼロ融資(無利子・無担保融資)とは、新型コロナウイルス感染症の拡大により売上が大きく減少した企業を対象に実質無利子・無担保で融資する制度のことです。
ここでは、ゼロゼロ融資の特徴や仕組みについて解説します。
ゼロゼロ融資の特徴
ゼロゼロ融資の主な特徴として、次の点が挙げられます。
- 日本政策金融公庫(日本公庫)などの政府系金融機関だけでなく、民間金融機関も融資可能
- 実質無利子・無担保融資
- 主な対象者は中小企業や個人事業主
- 複数回の利用可能
日本政策金融公庫(日本公庫)などの政府系金融機関だけでなく、民間金融機関も融資可能
2020年のゼロゼロ融資開始当初は、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)などの政府系金融機関が融資に対応していました。
しかし、利用者が多かったため、2020年5月からは民間金融機関も融資可能となりました。
実質無利子・無担保融資
ゼロゼロ融資が実質無利子・無担保融資なのは、中小企業などを対象として、利子分が補給されるとともに、信用保証協会により債務が保証されているからです。
ゼロゼロ融資の仕組み
ゼロゼロ融資の仕組みを表にまとめると、次のようになります。
無利子上限 | <日本政策金融公庫> 中小企業:4億円 個人事業主:6,000万円 <商工組合中央金庫> 中小企業:3億円 |
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無利子期間 | 当初3年間 |
資金使途・貸付期間 | 設備資金20年以内(うち据置期間は5年以内) 運転資金20年以内(うち据置期間は5年以内) |
対象者 | 売上が(5%以上)減少した中小企業、個人事業主 |
融資期間 | 2020年3月~2022年9月 |
ゼロゼロ融資が実質無利子・無担保なのは、中小企業基盤整備機構が実施している特別利子補給制度が適用されているからです。
本来新型コロナウイルス感染症特別貸付によって融資を受けた場合、5年の据置期間があるため、その期間元金を返済する必要はなく利子を支払う必要があります。
しかし、特別利子補給制度を利用することで、当初3年間は実質無利子になります。
ただし、次のような条件があります。
中小企業者 | 売上高▲20%以上(最近1ヵ月、3ヵ月間のうちのいずれかの1ヵ月で比較) |
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小規模企業者※ | 売上高▲15%以上(最近1ヵ月、3ヵ月間のうちのいずれかの1ヵ月で比較) |
個人事業主 | 要件なし |
※小規模事業者とは、常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業は5人)以下の商工業者のことです。
ゼロゼロ融資の種類
ゼロゼロ融資には、いくつかの種類があります。
ここでは、次の5種類のゼロゼロ融資について解説します。
- 新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)
- セーフティネット貸付(日本政策金融公庫)
- 新型コロナウイルス感染症特別貸付(中小企業向け制度)(商工組合中央金庫)
- 新型コロナウイルス感染症対応資金(民間金融機関)
- 特別利子補給制度
新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)
新型コロナウイルス感染症特別貸付は、日本政策金融公庫が実施していました。
無利子上限 | 中小企業:4億円 個人事業主:6,000万円 |
---|---|
無利子期間 | 当初3年間 |
資金使途・貸付期間 | 設備資金20年以内(うち据置期間は5年以内) 運転資金20年以内(うち据置期間は5年以内) |
対象者 | 新型コロナにより、売上が減少した中小企業、個人事業主 |
融資期間 | 2020年3月~2022年9月 |
融資限度額は、中小企業6億円、個人事業主8,000万円ですが、利子補給制度により無利子となる融資限度額は、それぞれ4億円、6,000万円になります。
無利子になるのは、融資開始から3年間です。
融資対象者は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、売上が減少した中小企業、個人事業主ですが、もう1点要件があります。
その要件とは、中長期的に業績が回復し、発展する見込みがあることです。
セーフティネット貸付(日本政策金融公庫)
セーフティネット貸付とは、社会的、経済的環境の変化などの影響により売上が減少しているものの、今後業績の回復や発展が見込まれる中小企業、個人事業主に対する融資制度です。
融資限度額 | 中小企業:7.2億円 個人事業主:4,800万円 |
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資金使途・貸付期間 | 設備資金15年以内(うち据置期間は3年以内) 運転資金 8年以内(うち据置期間は3年以内) |
対象者 | 一時的に売上が減少しているものの、今後業況の回復が見込まれる中小企業、個人事業主 |
セーフティネット貸付は、正確には無利子・無担保融資ではないため、ゼロゼロ融資ではありません。
しかし、新型コロナウイルス感染症特別貸付などとともに利用できるため、ここで解説しました。
新型コロナウイルス感染症特別貸付(中小企業向け制度)(商工組合中央金庫)
新型コロナウイルス感染症特別貸付(中小企業向け制度)は、商工組合中央金庫が実施しています。
無利子上限 | 中小企業:3億円 |
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無利子期間 | 当初3年間 |
資金使途・貸付期間 | 設備資金20年以内(うち据置期間は5年以内) 運転資金15年以内(うち据置期間は5年以内) |
対象者 | 新型コロナにより直近1ヵ月の売上が、前年又は前々年の同期比5%以上減少している中小企業 |
融資限度額は20億円ですが、無利子・無担保融資になるのは3億円です。
なお、「中小企業向け制度」の他に「中堅企業向け制度」もありますが、無利子・無担保融資ではありません。
新型コロナウイルス感染症対応資金(民間金融機関)
都道府県の制度融資として、民間金融機関を通じて新型コロナウイルス感染症対応資金が実施されました。
補助上限額 | 3,000万円 |
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無利子期間 | 当初3年間 |
貸付期間 | 10年以内(うち据置期間は5年以内) |
その他、保証料の減免措置があります。
特別利子補給制度
特別利子補給制度とは、日本政策金融公庫や商工組合中央公庫などが実施している新型コロナウイルス感染症関連融資の利用者のうち、一定の要件を満たす利用者を対象に融資開始から3年間、助成により実質的な無利子化を図る制度です。
ゼロゼロ融資の効果
ゼロゼロ融資の効果は、とても大きかったと言えます。
というのは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、企業倒産件数が大きく増加すると予想されていましたが、2021~2022年の企業倒産件数はかなりの低水準だったからです。
具体的には、2021年の企業倒産件数は、高度経済成長期における1964年の4,212件に次ぐ6,030件という低水準になりました。
さらに、バブル期における1990年の6,468件を下回るという結果になったのです。
そのため、ゼロゼロ融資の効果は十分にあったと言えます。
ちなみに、2019年~2022年の企業倒産件数を見ると、次のようになります。
企業倒産件数
2022年 | 6,428 |
---|---|
2021年 | 6,030 |
2020年 | 7,773 |
2019年 | 8,383 |
2020年4月~2022年3月までの期間、ゼロゼロ融資の政府系・民間金融機関の貸出総額は56兆円にも及びました。
参照:中小企業庁「ウィズコロナ・ポストコロナの間接金融のあり方について」3ページ
ゼロゼロ融資のリスク
ゼロゼロ融資により多くの中小企業が、新型コロナウイルス感染症拡大による危機を乗り越えることができましたが、リスクもあります。
というのは、ゼロゼロ融資を受けてから4年目以降は、無利子ではなく基準金利が適用されるため、融資を返済できない中小企業が出てくるおそれがあるからです。
さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大が落ち着いたことによる原材料価格の高騰や円安、ロシアによるウクライナ侵攻などにより物価が急上昇しています。
そのため、融資を返済できず、倒産してしまう中小企業が続出するリスクもあります。
しかも、無利子・無担保融資は、中小企業にとって借りやすい条件だったため、返済能力以上の融資を受けてしまった中小企業もあります。
それゆえ、融資を返済できずに倒産してしまう企業が続出するリスクがあるのです。
返済負担軽減のための「コロナ借換保証」
ゼロゼロ融資は、多くの中小企業にとって大きな役割を果たしましたが、多くの中小企業が返済に不安を抱えているというリスクもあります。
そのため、政府は返済負担軽減のための「コロナ借換保証」制度を創設しました。
そこで、ここでは「コロナ借換保証」について解説します。
コロナ借換保証とは
コロナ借換保証とは、一定の要件に該当する中小企業がゼロゼロ融資を受けたときの信用保証料を大幅に引き下げる制度のことです。
ただし、コロナ借換保証を利用するには「経営行動計画書」の作成と金融機関による継続的な伴走支援を受ける必要があります。
保証限度額 | 1億円(100%保証の融資は、100%保証での借換え可能) |
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保証期間(据置期間) | 10年以内(据置期間 5年以内) |
金利 | 金融機関所定 |
保証料率(事業者負担) | 0.2%等(補助前は0.85%等) |
要件 | ・売上または利益率が5%以上減少など ・金融機関による継続的な伴走支援 ・「経営行動計画書」の作成 |
取扱期間 | 2023年1月10日~2024年3月31日(予定) ※信用保証協会に保証申込がなされたものが対象 |
「コロナ借換保証」制度については、金融機関または最寄りの信用保証協会に問い合わせてください。
コロナ借換保証の流れ・手続き
コロナ借換保証制度を利用するには、一定の手続きをする必要があります。
そこで、コロナ借換保証の流れ・手続きについて解説します。
1.「経営行動計画書」を作成する
2.必要書類を準備し、金融機関に融資を申し込む
3.与信審査
4.市区町村にセーフティネット保証の認定申請をする
5.保証審査を依頼し「経営行動計画書」を提出する
6.融資
7.金融機関による継続的な伴走支援
「経営行動計画書」を作成するにあたっては、次の点を検討しなければなりません。
- 自社の現状認識・財務分析
- 計画終了時点における将来目標
- 具体的なアクションプラン
- 収支計画及び返済計画
融資が決まったら、「経営行動計画書」に従い、金融機関から継続的に支援してもらうことになります。
まとめ
この記事では、「ゼロゼロ融資(無利子・無担保融資)」について、初心者にもわかりやすく解説しました。
ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルス感染症対策として、政府が実施した無利子・無担保融資です。
ゼロゼロ融資は、政府系金融機関から始まりましたが、利用者が多かったことから民間金融機関も加わりました。
その効果は絶大なものでしたが、融資を返済するのが難しい中小企業が続出するリスクがあります。
そこで、新たに創設した制度が、返済負担軽減のための「コロナ借換保証」です。
この記事が、ゼロゼロ融資を返済するため、コロナ借換保証制度を利用する際の参考になれば幸いです。
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