新型コロナウイルスは建設業の売上高にどのような影響を与えたのか

コロナ禍で売上が伸びず悩んでいる建設業も少なくありませんが、東京商工リサーチが公表した2020年2月~2021年3月までの新型コロナウイルス感染症の影響を確認するとよくわかります。

調査によると、前年同月比で売上高が減少した減収企業率は緊急事態宣言が発出されていた2020年5月が最も深刻で、建設業者の84.6%が減収していました。

そこで、新型コロナウイルス感染拡大により建設業の売上高にどのくらい影響があったのか、業種別の結果なども踏まえてご紹介します。

 

新型コロナウイルス感染拡大による建設業の売上高への影響

東京商工リサーチが行った調査は、建設会社などを対象としたインターネットによるアンケート形式のもので、2020年2月から2021年3月まで毎月1回・全14回に渡り行われました。

その結果、新型コロナウイルスによる影響は建設業界内で二極化していることが確認できます。

アンケートで、

「新型コロナウイルスの発生は企業活動に影響を及ぼしているか」

という問いに対し、感染拡大の影響が拡大し始めた2020年2月時点(第1回)のアンケートでは「既に影響が出ている」と答えた建設業全体の5.8%でした。

62.3%の建設業「影響はない」と答えていたのです。

しかし2021年3月(第14回)のアンケートでは、「影響が継続している」と答えた建設業は全体の47.1%

「影響はない」と答えた建設業は7.3%で、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」36.5%でした

ただ、影響を受けていない建設業も43.8%存在していることから、業界内で二極化していることが確認できます。

建設業の売上高にはどのような影響があったのか

続いて、

「前月売上高は前年同月を100とした場合、どの程度だったか」

という問いに対しては、2020年2月で売上高が半減したという建設業は全体の3.4%でした。

しかし3月になると65.0%まで一気に増え、4月に緊急事態宣言が発出された後には79.3%にまで上がり、5月になると84.6%に到達しています。

その後、6月には緊急事態宣言が一時解除されたことで、8月には減収したという建設業は約70%になりました。

そこから緊急事態宣言が再発出され、2021年1月には72.0%、2月は73.8%と売上減の建設業が増えています。

 

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建設業の業種別減収企業率は?

建設業といっても様々な業種がありますが、業種ごとに見たときにはゼネコンなど「総合工事業」の減収企業率が大きな変動見せています。

2020年2月は50.9%でしたが、5月になると82.4%にまで上がり、10月には63.4%まで減少したものの2021年2月に73.1%になるなど再度右肩上がりです。

内装工事や鉄骨工事など「職別工事業」では2020年3月に76.4%と減収企業率が高めですが、これは資材の納入が遅れたことや顧客計画を見直ししなければならなかったことが影響したと考えられています。

管工事や電気工事など「設備工事業」は2020年3月時点で53.8%ですが、4月には78.8%まで急増しており、不安定な状況が続いているようです。

 

廃業を検討した建設業や倒産してしまった建設業も増加

減収した建設業が多い中、事業を継続できないと断念した業者も少なくありません。

悪化する資金繰りを何とか改善させようと、

  • 新型コロナウイルス感染症特別貸付
  • セーフティネット貸付・保証
  • 民間金融機関の各種融資
  • 国の各種給付金

など支援策を利用した建設業も多くあるはずですが、実際に利用したのは2020年4月時点では3.2%程度であり、5月も8.6%など1割に満たない割合でした。

2020年6月には22.0%まで上昇し、7月になると40.2%、さらに2021年3月は57.9%と約6割の建設業が利用しています。

しかし資金繰りが改善されず、

「コロナ禍の収束が長引いたとき廃業を検討する可能性はあるか」

という問いには、2021年3月時点で4.9%の建設業「ある」と答えています。

建設業の廃業検討率は他の産業よりも低めと考えられますが、社数が多い建設業の場合には地域のサプライチェーンを形成しているため、廃業することで地域経済に与える影響も大きくなってしまいます。

廃業を検討する理由は、本来であればコロナ禍で資金繰りをサポートするはずだった支援策により、過剰債務の状態を作ってしまっていることも含まれているでしょう。

2020年の建設業の休廃業・解散は前年比で16.8%増の8211社であり、コロナ関連破たんも増えています。

2021年3月時点は104件の建設業コロナ関連破たんに至っており、長期に渡り先行きの見えない新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、経営体力を消耗している建設業が増えているといえるでしょう。

今後、建設業が休廃業を検討したり倒産したりという流れは、さらに大きくなる可能性も十分あります。

 

資金調達の方法は借入れだけではない

コロナ禍で厳しい状況に置かれている建設業も、手元の資金さえ尽きることがなければ倒産することはありません。

国などが準備した支援策で債務が過剰に増え、今よりも借金を増やすことはできないと資金調達の方法に悩む経営者もいることでしょう。

そのような場合、まだ回収できていない売掛金を売却し、現金化することで資金調達できるファクタリングも検討してみてください。

借金を増やす方法ではないため、今よりも債務が増えることは避けたいという建設業にもぴったりの方法です。