注文書ファクタリングは、2020年の民法改正によりできるようになった一般的な買取ファクタリングとは異なるサービスです。
一般的なファクタリングでは請求書を早期に資金化するのに対し、請求書より一歩手前といえる注文書をファクタリング会社が買取るサービスといえます。
通常、注文書はファクタリングにおいて、確認や参考のために提出を求められる資料です。
注文書の受け渡し段階は、納品完了前で支払いが確定していない将来債権で、ファクタリングでの売買は後々のトラブルにつながりかねません。そのため請求書を買い取る一般的なファクタリングよりも審査基準は厳しくなります。
そこで、注文書ファクタリングとはどのようなサービスなのか、一般的な買取ファクタリングとの違いなどについて解説していきます。
注文書ファクタリングとは
注文書ファクタリングとは、仕事を受注した時点で、まだ受け取っていない代金を資金化するサービスです。
取引先から届いた注文書を資金化するため、請求書をもとに支払いが確定した代金を資金化するファクタリングとは異なるサービスといえます。
早期に現金を受け取ることができることは、運転資金を調達できるなど、メリットが大きいと感じる方もいることでしょう。
注文書ファクタリングを利用できるのは、注文書を請求書と同様の債権として扱うファクタリング会社です。
請求書は商品納品など、業務が完了した段階での発行となるため、契約フローでは最後になります。
それに対し注文書は、見積もりと契約締結後、仕事を請け負った時点で発行されます。
契約フローでも早い段階での発行となるため、商品納品などの前に、代金を大きく前倒しして受け取ることができるといえます。
しかし、一般的な買取ファクタリングにおける注文書は、あくまでも確認資料としての位置づけです。
そもそも債権の売買が法律で可能とされているのは、納品など業務が完了し、支払いが確定している債権だけとされています。
そのため安易に注文書ファクタリングを利用してしまうと、後で思いもよらなかったトラブルが発生する可能性もあると留意しておいてください。
注文書はファクタリングで売掛金を証明する資料
ファクタリングで売掛金を資金化する際、本当に債権が発生しているのか証明することが必要です。
売掛債権の発生とその金額など、内容を根拠として示すための証拠資料が、本来であれば請求書といえます。
注文書ファクタリングでは、支払いが確定していない資料である注文書をもとに資金化するため、後に実際の請求代金と差額が生じた場合などトラブルになりかねません。
通常の買取ファクタリングでは請求書が発行されないケースなどにおいて、代替えとなる書類の1つとして注文書を提出することはあります。
商取引で請求書発行までの間、他にも色々な書類が作成されます。
そのためファクタリングで売掛債権の存在を証明する資料として、請求書以外にも次のような資料提出を求められることがあります。
見積書 | 商品やサービス価格の試算を提案する書類(販売者から購入者に発行) |
注文書 | 見積書の内容で納得した後、取引合意の意味を示す書類(購入者から販売者に発行) |
納品書 | 商品やサービスの納品と同時に発行する書類(販売者から購入者に発行) |
受領書 | 商品やサービスが納品されたことを意味する書類(購入者から販売者に発行) |
請求書 | 納品した商品やサービスの代金支払いを求める書類(販売者から購入者に発行) |
注文書ファクタリングは、見積もり後すぐに発行される注文書を資金化するため、商取引成立から数日で資金調達できるというものです。
請求書が発行される前の段階の注文書はさらに早い段階で資金化できることがメリットといえるものの、確定していない支払いを資金化することのリスクは留意しておきましょう。
注文書ファクタリングのメリット
注文書ファクタリングのメリットは以下の3つです。
- 最大6か月はやく売掛債権を資金化できる
- 取引先に知られない
- 売掛金の未回収リスクを回避できる
最大6か月はやく売掛債権を資金化できる
納品予定が最大6か月先の注文書であっても買い取ることができる場合があります。
建設業界や卸売業界など実際に注文を受けてから納品し入金されるまで、時間がかかることもありますが、注文書の売買をすることで早期に資金化し資金不足を解消することができる場合があります。
取引先に知られない
注文書ファクタリングは2社間契約をおこないます。2社間契約は利用者とファクタリング会社の2社で行う契約形態です。
一般的な請求書ファクタリングには3社間契約もあり、取引先と利用者、ファクタリング会社で契約を結ぶというものです。
しかしファクタリングをしていることが取引先に知られてしまうと、資金繰りに困っている会社という印象を与えかねませんが、2社間契約であればその心配は拭えるでしょう。
さらに3社間契約とはことなり注文書を売買する際に、取引先から承諾を得る必要がないため、よりスピーディーに資金調達することができます。
売掛金の未回収リスクを回避できる
注文書ファクタリングは償還請求権のないノンリコースの契約であるため、取引先の倒産リスクはファクタリング会社が負います。
万一取引先が倒産し入金される予定であった売掛金が回収できなくても、ファクタリング会社に売却した注文書を買い戻す義務はありません。
注文書ファクタリングのデメリット
注文書ファクタリングのデメリットは以下の3つです。
- 売買手数料が高い
- 審査が厳しい
- 注文書ファクタリングに対応しているファクタリング会社が少ない
売買手数料が高い
注文書ファクタリングは一般的な買取ファクタリングに比べ売買手数料が高いことがほとんどで以下の通りです。
その理由として、請求書の発行される前段階である注文書は、より入金サイトが長くファクタリング会社にとって売掛金が回収できないリスクが高まります。そのため注文書ファクタリングは一般的な買取ファクタリングより売買手数料の相場が2%~5%程度高くなります。
そのため、資金繰りを改善させるためにおこなった注文書ファクタリングがかえって、経営を圧迫する可能性があります。
審査が厳しい
注文書ファクタリングの審査が買取ファクタリングに比べ厳しい原因として未回収や入金予定金額より下振れるなどのリスクが懸念されるからです。
審査の基準は買取ファクタリングと同じく利用者の信用度ではなく、取引先の信用度です。請求書の締め日を迎えていない注文書の買い取りは、取引先との過去の取引実績なども審査に関わります。
注文書ファクタリングに対応しているファクタリング会社が少ない
注文書ファクタリングはまだまだ対応しているファクタリング会社が少ないサービスです。
3社間契約もないことから、ファクタリング会社にとってはよりリスクのある契約形態であるため、なかなか注文書ファクタリングを行うファクタリング会社が少ないといえます。
注文書ファクタリングの流れ
注文書ファクタリングは、商取引の流れにおいて、早い段階で将来発生する予定の代金を資金化します。
そのため注文書を資金化するまでは、以下の流れで手続きが進みます。
- 購入者が販売者に注文書を送る
- 審査書類を提出する
- 販売者がファクタリング利用者となり、ファクタリング会社に注文書を売る
- ファクタリング会社から販売者の口座に、注文書記載の金額から売買手数料を差し引いた金額を送金する
- 商品またはサービス納品後、購入者から販売者に代金が入金される
- 販売者からファクタリング会社に購入者から受け取った代金を送金する
審査に必要な書類は基本的に請求書ファクタリングと大差はなく、注文書に加え通帳や決算書、個人事業主の場合は確定申告、身分証明書などがあげられます。
請求書ファクタリングとの違い
前述にもありましたが、一般的な請求書ファクタリングと注文書ファクタリングには、主に以下のような違いが見られます。
通常の買取ファクタリング | 注文書ファクタリング | |
①提出する書類 | 請求書 | 注文書または発注書 |
②前倒しできる期間 | 最大1〜2か月程度 | 最大6か月程度 |
③手数料の割合 | 2〜20%程度 | 通常のファクタリングよりも2~5%高め |
④取引形態の種類 | 2社間・3社間 | 2社間 |
⑤審査の難易度 | 低め | 通常のファクタリングよりは高め |
以上の違いを踏まえ、注文書と請求書のどちらを買い取ってもらうか慎重に判断しましょう。
まとめ
注文書ファクタリングは、一般的な買取ファクタリングとは異なるサービスであり、注文書を資金化します。
一般的な買取ファクタリングでは、ファクタリング会社に対し、売掛金の存在を示す根拠資料として請求書を提出することになります。
しかし注文書ファクタリングでは、請求書より一歩手前の注文書を提出するため、確定していない支払い代金を売却しなければなりません。
法律で債権売買ができるとされているのは、納品業務などが完了し、支払いの確定している債権だけです。
早期に代金を前倒しできることを理由に、安易に注文書ファクタリングを利用してしまうと、後でトラブルになりかねないことは留意しておきましょう。