架空債権を使ったファクタリングや、売掛金の二重譲渡は犯罪です。
資金調達の方法であるファクタリングは、売掛金をファクタリング会社へ売却し、現金化することで手元のお金が増えます。
悪徳業者と契約しないことが重要といえる反面、利用者が架空債権を持ち込むケースや債権の二重譲渡を行う行為で、ファクタリング会社が被害者になる事例も少なからず存在します。
節度を守りファクタリングを有効な資金調達の方法として利用できるように、どのような行為が架空債権や二重譲渡に該当するのか、そのリスクを説明していきます。
架空債権や二重譲渡トラブルになりやすい契約
ファクタリングを利用する方ではなく、売掛金を買い取るファクタリング会社が被害者になるケースは、売掛先を介さず契約を結ぶ2社間ファクタリングで発生しやすいといえます。
2社間ファクタリングとは、利用者とファクタリング会社で契約を結ぶファクタリングです。
3社間ファクタリングとは異なり、売掛先に債権譲渡の事実を通知したり承諾を得たりなどは行いません。
この売掛先に対する債権を譲渡する旨の通知や承諾を得るという行為は、ファクタリング会社が売掛金を買い取り、新しく売掛債権の権利を保有することになったことを証明するために行われます。
2社間ファクタリングでは通知や承諾を得て新しく権利を保有していると証明できないため、ファクタリング会社によっては債権譲渡登記を求められることがあります。
2社間による契約がほとんどの理由
2社間ファクタリングは売掛先を取引に加えない形の契約のため、主に、売掛先との関係を悪化させたくないと考える事業者が多く利用します。
3社間ファクタリングを利用すると、売掛先に対して通知や承諾を得る手続が必要であるため、手間がかかり資金調達までのスピードも遅くなります。
また、売掛金の譲渡を売掛先に伝えることになるため、資金繰りが悪化を懸念されるなど、余計な不安を与えたくない場合は利用を避ける傾向が見られます。
手間や時間をかけず、売掛先にも知られることなくスムーズに資金調達ができる2社間ファクタリングのほうが、3社間の契約よりもメリットを感じる利用者が多いといえます。
売買手数料は3社間より高め
現金化までが素早く、売掛先に知られず契約が可能となるのが2社間ファクタリングです。
3社間ファクタリングとは違い、2社間のほうがメリットは高いと考える経営者は多いことでしょう。
先に前倒しで売掛金を回収できる上に売掛先にも知られることがないなら、利用者側からみればメリットは高く感じられる反面、ファクタリング会社の立場になるとリスクの高い取引となります。
3社間ファクタリングであれば、売掛先から承諾を得た上での契約となるため、売掛金の支払いも売掛先からファクタリング会社へ直接行われます。
2社間ファクタリングでは売掛先を取引に加えないため、支払期日には利用者が売掛先から代金を回収し、回収分をファクタリング会社へ支払わなければなりません。
しかし利用者が仮に資金難に陥っていた場合、回収した代金を使い込む恐れがあります。
回収代金を使い込みされてしまうリスクやデメリットといえる部分を踏まえ、2社間ファクタリングでは手数料が高めに設定されます。
2社間ファクタリングでトラブルが起こりやすい背景
2社間ファクタリングでトラブルが起こりがちなのは、ファクタリングがそもそも融資を受けることができない事業者が多く利用する手法であることが背景にあります。
銀行審査に通らず利用する事業者が多い
銀行やノンバンクに借り入れを申し込んだけれど審査にとおらず、資金調達の方法に迷ってファクタリングを選ぶケースもあります。
融資を受けることが難しく、限られた選択肢の中で資金調達を行う必要がある状態では、冷静さに欠ける行動をとってしまうことも少なくないといえるでしょう。
ファクタリング業界の法整備が十分でない
ファクタリングのスキームや制度そのものに対して、まだ法的な整備が十分ではないこともトラブルの原因です。
特に2社間ファクタリングの場合、利用者だけでなくファクタリング会社の安全も十分に確保できない状況となりやすいため、信用取引という言葉がぴったりの状況で契約を結ばなければなりません。
ファクタリング会社が被害者になる行為
以上のことを踏まえた上で、ファクタリング会社が被害者となるトラブルとはどのような状況なのか確認しておきましょう。
資金を何とかして調達しなければならない状況下の中、銀行融資の審査に通らず、焦りを感じている状態で魔が差してしまうケースに起こりがちです。
焦りを感じていても、次の行為は訴訟を起こされ、犯罪の対象となるため絶対に行わないでください。
虚偽の申告
ファクタリング会社に安心して取引を行ってもらいたいと考えるあまり、審査の際に虚偽の申告をしてしまうことがあるようです。
たとえば売掛先の経営状況や自社の与信関係の質問に、本当のことを伝えると買取金額が下がると考え、嘘の申告をしてしまうケースが該当します。
しかし虚偽の申告をしても、ファクタリングの審査では以下の信用情報機関で利用者や売掛先の信用情報を確認しています。
登録されている情報と相違があれば、信頼性を失い審査に通りにくくなるため、買取金額が下がるだけでなく場合によっては買取拒否になる恐れもあります。
虚偽の申告を行うことはデメリットでしかないと考えておくべきです。
二重譲渡
二重譲渡とは、物や権利を他者に譲渡した譲渡人が、同じ物や権利を別の第三者にも譲渡することです。
手違いまたは意図的に同じ売掛金という売掛債権を譲渡し、その権利を所有する方が複数になることが二重譲渡といえます。
ファクタリングにおいての二重譲渡とは、すでにファクタリングに利用して売却した売掛債権を別のファクタリング会社に持ち込み、2度ファクタリングを行うことです。
売掛金は、売掛先からその代金を回収する権利という目に見えない特性を逆手にとって、すでにファクタリングに利用している売掛金でも別のファクタリング会社ならバレないと考える事業者も存在します。
しかし、すでにファクタリングでファクタリング会社に譲渡した売掛金はその時点でファクタリングの所有物です。
その売掛金を勝手に譲渡することは、委託物横領罪や詐欺罪とみなされるため、行わないようにしてください。
防止策である債権譲渡登記とは
債権譲渡登記とは、不動産登記や商業登記と同じように、法務局で手続きを行い誰がその債権の所有者か証明する手続です。
公的に所有者であることを証明できるため、ファクタリング会社が買い取った売掛金を別のファクタリング会社に売却されてしまっても、すでにその権利が移転していることを証明することができます。
2社間ファクタリングでは債権譲渡登記を必須とするケースも少なくありませんが、登記にかかる費用は利用者が実費で負担することになります。
また、資金調達後に銀行融資などを検討している場合においては、登記情報は誰でも閲覧可能である点を理解しておくことが必要です。
誰でも閲覧できるということは、売掛先だけでなく融資の審査を行う銀行も内容を把握することが可能ということになります。
そのため、2社間ファクタリングでも債権譲渡登記を行わず取引してくれるファクタリング会社を選ぶことが重要です。
発覚後の業者側の対応
もし実際に二重譲渡が行われた場合、ファクタリング会社は売掛金が回収不能となることを避けるため、売掛先にファクタリングで売掛債権が現金化された事実を伝えざるを得ません。
自社の売掛債権を二重譲渡されたことを知り、誰に支払いが行えばよいかわからない状態にされたと知った売掛先は、利用者を信用できなくなりその後の取引を停止すると考える恐れもあります。
発覚した後のダメージは大きいと考え、二重譲渡は行ってはいけない行為だと改めて認識しておくべきです。
横領(使い込み)
先にも述べたとおり、2社間ファクタリングでは売掛先からの代金回収は利用者が行います。
売掛先からの売掛金回収を利用者に代行すること、利用者に対する信頼を元に成り立っているといえます。
売掛先から回収した売掛金は、ファクタリングを利用して現金化した時点で、すでにファクタリング会社にその権利が移転されています。
そのため、回収した代金をファクタリング会社に渡さず、使い込みや流用することは契約違反であり、ファクタリング会社の所有の資金の横領罪とみなされます。
刑事告訴の対象であるため、横領行為を行わず、代金はスムーズにファクタリング会社に渡さなければならないことを肝に銘じておくことが重要です。
架空債権
ファクタリング会社が被害を受けるケースで、もっとも悪質といえるのが架空債権を用いたファクタリングです。
特に悪質なケースになると、取引先と共謀して架空債権を作り持ち込まれることもあります。
請求書の偽造やねつ造、粉飾した決算書・試算表などをファクタリング会社に持ち込みます。
中には売掛先と継続して取引が行われているように見せかけるため、通帳の写しや履歴を偽造するケースもあるほどです。
持ち込まれた売掛債権が架空のものか、ファクタリング会社でも審査を行うものの、見抜けないケースではファクタリング会社が被害を受けます。
架空請求が発覚した場合、私文書偽造罪や詐欺罪などの刑罰の対象となるため、絶対に行ってはいけません。
正しく使えばメリットの高いず資金調達の方法であるのにもかかわらず、使い方を間違ったために罪に問われることになるの避けるべきです。
絶対に行わないるようにしてください。
まとめ
架空債権のファクタリングへの持ち込みや、債権の二重譲渡は犯罪行為です。
法整備が十分でないファクタリング業界では、利用者が悪徳業者に騙されることがあるだけでなく、業者が被害を受けるケースも見られます。
発覚すれば罪に問われるだけでなく、取引先や社会的信用を失うこととなり、その後、事業を継続できなくなる可能性もありますので絶対に行わないようにしてください。