未払金とは?未払費用との違いや会計処理方法をわかりやすく解説

「未払金」とは、商品以外のものを後払いで購入したときの仕訳処理で使用する勘定科目です。

貸借対照表の負債の部に記載されますが、代金をまだ支払っていないことを意味する勘定科目には「未払費用」や「買掛金」などもあるため、未払金とはどのようなときに使うのかよくわからないという方もいることでしょう。

そこで、未払金とはどのようなときに使用する勘定科目のか、未払費用との違いや会計処理の方法についてわかりやすく解説していきます。

未払金とは

「未払金」とは、営業取引以外の単発的な取引で発生した債務を対象とした勘定科目です。

営業活動以外で支払わなければならない代金について、まだ支払っていないときに使用します。

支払期限まで1年を超えたときには「未払金」ではなく「長期未払金」を使います。

また、未払金と同じく代金をまだ支払っていないことを意味する他の勘定科目との違いを理解し、正しく仕訳処理に使うことが大切です。

そこで、次の勘定科目と未払金との違いを押さえておきましょう。

  1. 未払費用との違い
  2. 買掛金との違い
  3. 長期未払金との違い

それぞれ説明していきます。

未払費用との違い

「未払費用」とは、一定契約に従って継続した役務が提供されているものの、その代金が未払いのときに使用する勘定科目です。

たとえば水道光熱費などのように、継続して発生する費用のうちまだ代金を支払っていないときに使用します。

後で支払わなければならないことは未払金や買掛金と同じですが、この2つのどちらにも含まれない継続した契約で発生する費用の未払い分に対して使います。

たとえば次のような費用の未払い分において未払費用で処理します。

  • ガス・電気・水道代
  • 土地の賃借料・地代家賃
  • 保険料
  • 車・設備のリース代金
  • 借入金の返済利息

未払金と異なるのは、支払期日の到来後であるかです。

どちらも代金の未払いですが、未払金は支払確定しているもののまだ支払っていない代金ですが、未払費用は支払期日が到来していないことで支払っていない代金といえます。

以上のことから、未払費用は途中経過において使用する勘定科目ともいえるでしょう。

買掛金との違い

「買掛金」とは、掛け取引で商品やサービスを購入したときの未払い分の代金です。

ただし買掛金を使うのは、掛け取引のうち「仕入」に関する「仕入債務」に対してのみであり、具体的には次の仕入れなどの仕訳処理で使用します。

  • 商品の仕入れ
  • 原料・材料の仕入れ
  • 外注加工の依頼にかかった費用

未払金と異なるのは発生する原因であり、どちらも支払いが確定している未払い分ではありますが、買掛金は売上原価や製造原価になる費用の未払い分です。

長期未払金との違い

「長期未払金」とは、営業以外の活動で役務の提供は受けているものの支払いが完了していないときに使用する勘定科目であり、決算翌日から起算して1年を超えるときに使用します。

1年以内に支払うときには流動負債である「未払金」で計上しますが、1年を超えるときには固定負債である「長期未払金」で計上することになります。

そのため、支払いが1年以上滞っている債務や、分割代金の支払いが1年以上に渡る場合などには長期未払金で処理します。

流動負債と固定負債のどちらに計上するかによって、財務分析に影響することになることを理解し、間違いなく区別するようにしてください。

未払金の仕訳・勘定科目

未払金を使った仕訳処理では、まだ代金を支払っていないときと支払った後で異なります。

用いる勘定科目も異なるため、それぞれどのような仕訳処理となるのか、次の事例を参考に理解していきましょう。

【仕入れ以外の購入代金をまだ払っていないときの仕訳処理】

事務デスクを5万円で購入し、まだその代金を支払っていないときの仕訳と、一旦未払金で計上した代金を支払ったときの仕訳を説明していきます。

まずは5万円の事務デスクを購入したものの、その代金は後払いという場合の仕訳は以下のとおりです。

借方 貸方
消耗品費 50,000 未払金 50,000

事務デスクは営業取引以外の単発的な購入となるため、まだ払っていない代金は「未払金」の勘定科目を使います。

なお、事務デスクは備品として資産計上するか、10万円未満の場合には消耗品費で費用計上します。

今回は5万円の事務デスクのため、未払金の相手科目は「消耗品費」となります。

【仕入れ以外の購入代金を支払ったときの仕訳処理】

未払金として計上した代金を支払ったときには、以下の仕訳処理となります。

借方 貸方
未払金 50,000円 現預金 50,000円

未払費用の仕訳・勘定科目

未払費用は継続した役務提供を受ける一定契約で、すでに提供された役務に対しまだその代金を支払っていないときに使用する勘定科目です。

継続した役務提供では、期末と期首にまたがり未払い代金が発生しますが、提供されたサービス分だけ費用計上して翌期首に振り戻すことが必要となります。

未払費用を使った仕訳は、役務の提供のタイミングから決算日までの期間でどのくらい費用が発生したかの累計を計上することがポイントです。

たとえば次のリース料の支払いで未払費用を使った仕訳を事例として考えるとわかりやすいといえます。

  • 役務提供は9月1日から翌年度8月31日まで
  • 決算日は3月31日
  • 翌年度の8月31日に1年分(1か月1万円×12か月=12万円)を一括払いする

【役務提供期間の7か月分の費用発生における仕訳処理】

まず、当期の役務提供分(9月1日~翌年3月31日まで)は7か月であり、1か月1万円なので7万円です。

1年分12万円のうち、当期分7か月分の役務債務発生分の7万円を未払費用として計上します。

借方 貸方
リース料  70,000円 未払費用  70,000円

決算日には、役務提供済のリース代7か月分が未払いである処理が成立することになります。

【翌年度に未払費用を保険料に振り戻す仕訳処理】

決算が終わり翌年度に入ったとき、重複して費用計上してしまわないように、機首に未払費用をリース料に振り戻しておきます。

借方 貸方
未払費用  70,000円 リース料  70,000円

【役務提供終了後の保険料支払いの仕訳処理】

翌年度の8月31日には1年分の役務提供が完了し、その代金を支払うことになります。

9月1日~翌年8月31日の1年分(1か月1万円×12か月=12万円)の料金を計上します。

借方 貸方
リース料  120,000円 現預金  120,000円

処理時点で期首に貸方に振り戻した7万円は相殺されることとなり、実質5か月分の5万円のみが費用として計上されます。

未払金が年度をまたぐ場合の注意点

企業会計は、正確に業績を把握して財政状態を適切に処理することが目的です。

そのため未払金が決算書に記載されていても問題はありませんが、未払金が残ったままの状態で決算を迎えるときには次の2つに注意してください。

  1. 補助科目で内容を明確にしておく
  2. 未払金残高を必ず確認する

それぞれ説明していきます。

補助科目で内容を明確にしておく

未払金が残ったままの状態で決算を迎え年度をまたぐときには、必ず未払金の内容を把握しておき、勘定科目を補助する補助科目などで明確にしておきましょう。

たとえばクレジット決済で購入した代金の支払いが未払いの状態で、決済期日未到来のため未払金として処理したまま決算を迎えたのなら、補助科目で「クレジット会社」と設定し何の未払いが残ったままなのか把握しやすくしておきます。

未払金残高を必ず確認する

決算期をまたぐときには、未払金残高が間違っていないか必ず確認しましょう。

たとえば車をローンで購入したときの代金は毎月引き落とされるものの、まだ引き落としになっていなかったローン支払い分を間違って「車両費」で処理したとします。

この場合、本来であれば経費計上できないものが損金算入されるため、所得の過少申告とみなされます。

ローンの残高と比較すればミス発見につながりやすいため、どのくらい未払金が残っているか必ず残高を確認するようにしましょう。

まとめ

未払金は、未払費用や買掛金と間違いやすい勘定科目ですが、使い分け方をわかりやすくまとめると次のとおりとなります。

  • 継続しない単発的な取引による未払い分…未払金
  • 買掛金を除く財貨に対する未払い分…未払金
  • 仕入代金の未払い分…買掛金
  • 継続した役務提供契約に基づいた未払い分…未払費用

それぞれどのような場合に使う勘定科目なのか、違いや仕訳処理の方法などを理解した上で、区別し処理するようにしてください。

用いる勘定科目を誤ってしまうと、財務状況が把握できなくなるだけでなく、所得の過少申告とみなされてしまい税務調査で指摘される可能性もあります。

そのためにも未払金だけでなく他の勘定科目についても正しく理解し、精度の高い会計処理を心掛けるようにしましょう。