ファクタリングの乗り換えとは、契約しているファクタリング会社を変更することです。
支払い負担が重くなる月末までに、ファクタリングの乗り換えを検討するケースはめずらしいことではありません。
そこで、厳しい月末を乗り切るためにファクタリングを乗り換えるとき、どのようなことに注意すればよいのか解説します。
中小企業経営者向け!

目次
ファクタリングの乗り換えのメリット
ファクタリングで発生する売買手数料は、銀行融資で負担する利息よりも重く、長期利用で資金繰りが悪化しがちです。
そこで検討したいのがファクタリングの乗り換えであり、売買手数料を引き下げられることがメリットといえます。
ファクタリングの乗り換えでは、今契約しているファクタリング会社から新しいファクタリング会社に契約を切り替えることになります。
たとえば、売買手数料15%のファクタリング会社と5か月に渡り契約する場合において、1か月目は500万円、2か月目以降は100万円ずつ下げた金額の売掛金を売却するとしましょう。
この場合、発生する売買手数料は以下のとおりとなります。
買取金額 | 売買手数料 | |
1か月目 | 500万円 | 75万円 |
2か月目 | 400万円 | 60万円 |
3か月目 | 300万円 | 45万円 |
4か月目 | 200万円 | 30万円 |
5か月目 | 100万円 | 15万円 |
5か月間の売買手数料の合計は225万円となり、大きな負担です。
しかし契約2か月目から売買手数料10%で契約できるファクタリング会社に乗り換えた場合、次のように発生する費用は変わります。
買取金額 | 売買手数料 | |
1か月目 | 500万円 | 50万円 |
2か月目 | 400万円 | 40万円 |
3か月目 | 300万円 | 30万円 |
4か月目 | 200万円 | 20万円 |
5か月目 | 100万円 | 10万円 |
10%の場合、5か月間で支払う売買手数料は150万円となり、75万円もコストをカットできます。
仮に利益率10%の事業であれば、利益30万円を生み出すには300万円売上を必要とするため、できるだけ売買手数料の料率が低いファクタリング会社を利用したほうがよいといえます。
他社利用中におけるファクタリングの乗り換え
ファクタリングの乗り換えを検討するとき、他社利用中なのに別のファクタリング会社と契約しなおしても大丈夫なのだろうか?と不安を感じる経営者もいるようです。
しかしファクタリングの契約には、乗り換え禁止といった他社との契約を制限する決まりは設けられません。
そのためすでに契約しているファクタリング会社がいても、自由に新しいファクタリング会社と契約しなおすことが可能です。
そして他のファクタリング会社へ乗り換えしたからといって、今までのファクタリング会社を利用できなくなるわけでもありません。
仮に乗り換えしたファクタリング会社と合わないと感じるときには、元のファクタリング会社を利用できます。
ファクタリング会社が乗り換え顧客と契約したい理由
ファクタリングを利用する経営者にとって、乗り換えをすることでキャッシュフローを改善できることは大きなメリットです。
そしてファクタリング会社側にとっても、乗り換え顧客は歓迎したい相手といえます。
ファクタリング会社は、乗り換え先に選んでもらうために、売買手数料を安く設定することになるため利益は削られます。
しかし、すでに他社で利用実績がある顧客は、約束通り回収した売掛金を入金してくれる優良顧客です。
他社で複数か月に渡りファクタリングを利用した実績のある顧客は、今後も取り決めを守ってくれる可能性が高く、安全で優良な顧客と判断できます。
売買手数料を引き下げたとしても安心して取引できる相手であり、優良顧客として扱われます。
ファクタリングの乗り換えにおけるポイント
ファクタリングを資金調達するときには、まず数多く存在するファクタリング会社から、どの会社と契約するか選ばなければなりません。
仮に選んだファクタリング会社を変更したいと考えるときには乗り換えもできますが、ファクタリングに利用済の債権の取り扱いや新しく契約するファクタリング会社選びには注意が必要です。
契約中のファクタリング会社から新しいファクタリング会社に乗り換えるときには、次の5つのポイントを重視しましょう、
- 売買手数料
- 債権買取下限・上限の範囲
- 売却したい債権の種類
- 現金化までの日数
- ファクタリング会社の対応
それぞれのポイントについて説明していきます。
売買手数料
一般的なファクタリングの売買手数料相場は、以下のとおりです。
・2社間ファクタリング 10~20%
・3社間ファクタリング 1~10%
ファクタリング会社によって大きく差があるため、できるだけ売買手数料の低い業者を選ぶようにしましょう。
債権買取下限・上限の範囲
ファクタリング会社により、債権買取の下限額や上限額は異なります。
そのため売掛債権の額面が10万円から買取可能とするファクタリング会社もあれば、最低でも300万円の債権でなければ買取しないというファクタリング会社もあります。
少額の債権でも買取可能とするファクタリング会社のほうが、中小企業などに親身に寄り添い対応してくれることが多いといえます。
売却したい債権の種類
債権にもいろいろな種類があり、医療債権や建設業債権などに分けることもできます。
ファクタリング会社により、債権の種類ごとに買取額が異なるケースも多いため、より有利な契約ができる業者を選ぶとよいでしょう。
現金化までの日数
ファクタリングを利用して資金調達する多くは、早く手元の資金を増やしたいというケースといえます。
そのため現金化するまでの時間がかかりすぎるファクタリング会社は、ファクタリングを利用する上でのメリットを生かしきれない業です。
一般的に2社間ファクタリングなら即日から遅くても3営業日以内、3社間ファクタリングなら1週間程度で現金化できます。
無理に手続を進めなければならないときには売買手数料が高めに設定されることもあるため、急いで手続しないで済むような計画を立てておいたほうがよいでしょう。
ファクタリング会社の対応
ファクタリング会社の窓口となる担当者の対応も、新規で契約する判断材料となります。
重要な説明をしっかり行ってくれているか、横柄な態度ではないかなど確認し、安心して相談できる担当者のいるファクタリング会社を選ぶようにしてください。
ファクタリングの乗り換えのタイミング
月末は支払いが重なっており、できるだけコストを抑えたいと考えるものですが、その1つとしてファクタリングの乗り換えが挙げられます。
ファクタリングの乗り換えを検討するタイミングは会社によって異なり、月末がいいのか月初がいいのか迷ってしまうものです。
厳しい月末を乗り切るためにも、ファクタリングの乗り換えを検討するタイミングは主に次の4つと考えられます。
- ファクタリング会社から誠実に対応してもらえない
- 手続にかかる時間が長い
- 買取金額が思ったよりも低い
- 売買手数料の負担が重いと感じる
それぞれて説明します。
ファクタリング会社から誠実に対応してもらえない
ファクタリングに限らずどのような取引でも、不誠実であると感じたときには安心して取引を続けることは難しくなります。
特にファクタリングは双方の信頼関係が重要となる取引のため、もし誠実に対応してくれないのであれば早めに乗り換え先を探したほうがよいでしょう。
手続にかかる時間が長い
手続や審査に時間がかかるファクタリング会社では意味がありません。
実際に現金化までかかる日数はファクタリング会社によって異なりますが、特に債権譲渡登記を必須とするファクタリング会社の場合、登記にかかる時間も必要です。
現金化まで時間がかかると感じるときには、たとえば債権譲渡登記を必要としないファクタリング会社などを選んだほうがよいでしょう。
インターネット上の公式サイトなどには、各社が「最短◯日」とおおよそかかる日数などを表示しています。
ただし実際かかる日数は状況によって異なるため、事前に問い合わせしたほうが安心です。
買取金額が思ったよりも低い
ファクタリング会社によっては、担保としての評価率といえる掛け目を設定することがあり、売掛債権の額面全額を買取対象とせず掛け目分目減りする場合があります。
たとえば100万円の売掛債権をファクタリングで利用するとき、A社の掛け目が80%ならそのときの買取対象となる金額は80万円です。
しかしB社は90%の掛け目で対応できるという場合には、90万円が買取対象となります。
この買取対象となる金額から手数料を引いた金額が現金化され、手元に資金として調達できることになることを認識しておきましょう。
掛け目が設定されていることにより利用できる金額が低いと感じるときには、他のファクタリング会社への乗り換えを検討してください。
売買手数料の負担が重いと感じる
売買手数料の負担が重いと感じるときも、ファクタリングの乗り換えのタイミングといえます。
1%でも売買手数料が安いファクタリング会社を選ぶためにも、相見積もりを取って比べることをおすすめします。
相見積もりのときには、発生する売買手数料だけでなく回答の早さや担当者の人柄なども評価対象とし、信頼できるファクタリング会社選びの参考とするとよいでしょう。
ファクタリングを乗り換えるときの注意点は5つ
ファクタリングの乗り換えでは、売買手数料や条件以外にも次の5つの注意しておくことが必要です。
- 債権の二重譲渡はしない
- 複数社で利用しない
- 悪質なファクタリング会社を見極める
- 債権譲渡登記は避ける
それぞれ説明していきます。
債権の二重譲渡はしない
ファクタリング会社の乗り換えで、絶対にしてはいけないこととして挙げられるのは売掛債権の二重譲渡です。
二重譲渡とは、すでに売却している売掛債権を他社に売ることで、ファクタリング利用中の売掛債権を他のファクタリング会社でも取引することといえます。
すでに売掛債権がファクタリング会社に渡っている状態では、その債権を乗り換えの対象にすることはできません。
別の売掛債権を新しいファクタリング会社との契約に使うようにしてください。
売掛債権は目に見える資産ではないため、権利関係がわかりにくいですが、二重譲渡は違法行為です。
複数社で利用しない
ファクタリングを新たに申し込むときにはファクタリング会社の審査を受けることが必要ですが、複数の業者を利用中の場合には審査で不利になる可能性もあります。
ファクタリングは資金調達で利用されるサービスですが、何社でもファクタリングによる資金調達が必要な状況なのか、ファクタリング会社が不安材料と判断する可能性もあるからです。
複数のファクタリング会社で利用しすぎるとかえって自社の首を絞めることになりかねないため、注意してください。
悪質なファクタリング会社を見極める
ファクタリング会社の中には悪質な取引を行おうとする業者も存在しています。
仮に悪質な業者と契約してしまった場合、資金繰りが悪化するだけにとどまらず、大きな損失を被ることになるでしょう。
悪質なファクタリング会社か見極めるときの目安として、次の特徴に該当する業者ではないか確認してください。
- 償還請求権のあるファクタリング契約である
- 高額な買取手数料や費用が発生する
- ファクタリングなのに担保や保証人が必要な契約である
- 業者の所在が不明または架空
- 法人用口座を保有していない業者
- 契約書がなく控えを渡してもらえない
1つでも該当する場合は、契約を見送るべきです。
必要な説明をしっかり行い、親身な対応をしてくれるか判断しましょう。
債権譲渡登記は避ける
取引先に知られずにファクタリングで資金調達したときには、ファクタリング会社と自社のみで契約を完結できる2社間ファクタリングを利用します。
このとき、債権譲渡登記が必要になると、登記にかかる費用を別途請求されます。
また、登記情報として記録されるため誰でもその情報を閲覧できるようになり、取引先や銀行に債権譲渡の事実を知られてしまうかもしれません。
取引先や銀行などにファクタリングを利用して資金調達することを知られたくないときには、債権譲渡登記を必要としないファクタリング会社を選ぶことをおすすめします。
まとめ
ファクタリングを乗り換えて厳しい月末を乗り切ろうと考えるのなら、一社だけからではなく複数の会社から相見積もりなど取得し、しっかりと比較・検討したほうがよいといえます。
比較するときには売買手数料だけでなく、担当者の対応やコンサルティング能力など様々なことを加味した上で判断しましょう。
また、ファクタリングの乗り換えにおいて、債権の二重譲渡だけはしないように注意してください。
正当な方法で、ファクタリングのメリットを十分に生かすことのできるファクタリング会社への乗り換えを実現させましょう。
中小企業経営者向け!

