企業が資金を調達するために、銀行からの融資や株式の募集などが真っ先に頭に浮かぶと思いますが、他にも社債を発行する方法があります。
社債は企業が発行する債券で、投資家から資金を集めることができる手法ですが、金利の定めがあり償還も必要になることを理解しておくことが必要です。
そこで、社債発行による資金調達について、メリットとデメリットを簡単に解説します。
中小企業経営者向け!

社債発行が可能な会社
改正前の商法において、株式会社以外の会社における社債発行は認められていませんでした。
しかし新会社法が制定されたことで、株式会社以外の会社も社債発行が可能となっています。
なお、会社とは、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社のことです。
社債の種類
社債には、以下の種類があります。
- 公募債
- 私募債
それぞれ説明します。
公募債
公募債は、発行する金額に制限はありません。
ただし広く募集するため、発行できる会社は限られます。
また、発行においては以下の要件を満たすことが必要です。
- 有価証券報告書の提出
- 社債管理者の設置
- 格付けの取得 など
要件を満たすにはコストもかかることから、上場企業の募集に広く使われています。
私募債
私募債には、以下の種類があります。
- プロ私募債
- 少数私募債
- 銀行引受私募債
プロ私募債は、適格機関投資家に限定して発行する社債であり、多額の資金を必要とする大規模な会社向けといえます。
そのため中小企業では、銀行引受私募債や少人数私募債を使用します。
少人数私募債は、数百万からの資金調達が検討できる方法です。
発行人数50名未満(適格機関投資家を含まない)、発行金額1億円未満などの制限があります。
私募債発行の流れ
私募債発行の流れは以下のとおりです。
- 募集事項の決定
- 社債発行の決定
- 募集の開始
- 社債の発行
1.募集事項の決定
会社が社債の募集をするときには、募集社債について、会社法676条に掲げられた以下の事項を定めなければなりません。
- 募集社債の総額
- 各募集社債の金額
- 募集社債の利率
- 償却方法と期限
- 利息支払いの方法と期限
- 各募集社債の払込金額または最低金額、算定方法
- 社債引き換えの金銭払い込みの期限
- その他法務省令で定める事項
また、社債をスムーズに引き受けてもらうために社債の返済計画も立てておきます。
2.社債発行の決定
取締役会設置会社では、取締役会で承認をして社債発行を決定します。
設置会社でない場合、取締役の多数決(株式会社以外は業務執行社員の多数決)、または株主総会での決議が必要です。
3.募集の開始
投資家に対して、法に則って募集要項などの募集社債の情報を開示します。
少人数私募債は対象者を選定した募集です。
選定した投資家に対して必要な情報を提供します。
4.社債の発行
募集社債の申込者が決定したら、社債の割り当てを行い、申込者に通知して、期日までに払い込みます。
なお、募集要項の期日には、発行会社に利息を支払うことと、償還期限に償還する義務が生じます。
社債発行による資金調達のメリット
社債権者は株式ではありませんので経営に参加する権利はありません。
そのため社債発行による経営への干渉を受けないことや、資金の使途は限定されないことはメリットといえます。
また、社債は負債として扱われるため、調達におけるコストを税務上の損金へ算入でき、必要経費として計上できることもメリットに含まれます。
社債発行による資金調達のデメリット
社債を発行することで事務手続は増え、管理や作業の負担が発生します。利息の支払いにはコストもかかるほか、発行方法によっては発行手数料なども必要です。
また、社債は法に則った手続が必要なことから、発行までに時間がかかる可能性があります。
さらに、社債は株式とは違い借金ですので、債権者に弁済をしなくてはなりません。償還のための積み立ても必要です。
社債発行以外の資金調達方法
社債発行による資金調達が資金ニーズに合っていないときは、その他の方法を検討しましょう。
たとえばファクタリングも方法の1つです。
ファクタリングは、売掛金などの債権を買い取ってもらう方法で、取引先の信用力があれば早期に現金化できます。
まとめ
資金調達の方法は1つではありません。
迷った時には専門家などに相談して自社に合う方法を見つけることも大切です。
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