マル経融資の審査落ちする理由|基準・必要書類・流れを解説

マル経融資は、政府系金融機関の公的融資です。

日本政策金融公庫などの政府系金融機関が貸し付けを行うため、民間銀行よりも借入れやすいことが特徴といえます。

ただし、マル経融資で資金調達する際には、申し込みの条件や審査基準などを事前に把握し、準備しておかなければ審査に落ちる場合もあります。

そこで、マル経融資の審査落ちの理由や、審査基準や流れを解説します。

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資金調達ガイドブック

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9つの資金調達方法のメリットデメリットから申請方法、さらに審査落ちした時の対処法までをまとめた経営者必見のガイドブックです。

マル経融資とは

マル経融資は正式名称を小規模事業者経営改善資金といい、資金面で苦労しやすい小規模企業を経済的に支援することを目的とした制度です。

商工会議所などから経営指導を受けた小規模事業者を対象に、政府系金融機関である日本政策金融公庫が資金を貸し付けています。

最大2000万円までを無担保・無保証で借りることができ、金利も令和5年8月1日現在年利1.09%とかなりの低金利であることが特徴です。

返済期間も運転資金7年以内(据置期間1年以内)・設備資金10年以内(据置期間2年以内)で、小規模事業者や個人事業主でも利用しやすい融資制度といえるでしょう。

日本政策金融公庫が管轄となっている制度ですが、申し込みは最寄りの商工会議所を通して行います。

そのため商工会議所で独自審査が行われ、将来性や返済能力に問題ないと判断されれば、日本政策金融公庫に推薦してもらえる仕組みです。

マル経融資を申し込む前に、次の2つを理解しておきましょう。

  1. マル経融資のメリット
  2. マル経融資のデメリット

マル経融資のメリット

マル経融資で資金調達するメリットとして、主に次の4つが挙げられます。

  1. 低金利で借入れが可能
  2. 資金使途が幅広い
  3. 赤字でも融資可能な場合がある
  4. 追加融資はすぐに資金調達しやすい

それぞれ説明します。

低金利で借入れが可能

マル経融資のメリットは、低金利で借入れできることです。

マル経融資は、最大2000万円までを無担保・無保証で借りることができます。

また、令和5年8月1日現在の金利は年利1.09%であり、一般的な銀行融資や他の日本政策金融公庫の融資制度と比較してもかなりの低金利です。

担保や保証人を必要としないため登記費用や保証料なども必要なく、借入れにおける費用負担をかけず資金調達できます。

資金使途が幅広い

マル経融資のメリットは、資金使途が幅広いことです。

運転資金や設備資金などに対応できるため、具体的には仕入れ・人件費などの必要な運転資金や、土地・建物・車両など高額な設備導入資金として使えます。

ただし店舗付き住宅購の住宅部分や会社設立の資本金・増資の出資金などは対象にはなりません。

赤字でも融資可能な場合がある

マル経融資のメリットは、赤字でも融資可能な場合があることです。

経営を改善するために必要な資金を補填するための融資であるため、適切に経営指導を受けた後で必要とされる資金を調達できます。

そのため直近の決算が赤字だったときや、一時的な経営悪化などでの赤字で、経営改善させ黒字化できると判断されれば融資可能と判断されることもあります。

追加融資はすぐに資金調達しやすい

マル経融資のメリットは、追加融資はすぐに資金調達しやすいことです。

初回融資ではなく追加融資では、初回申し込みの情報を担当者が把握しているため、短期間で完了する傾向が見られます。

1~2週間程度で融資可能となるケースもあるため、通常の銀行融資よりもスムーズな資金調達が可能となるでしょう。

マル経融資のデメリット

マル経融資で資金調達することにはいろいろなメリットがありますが、最近1年以上、商工会議所地区内で事業を行っている方が対象です。

創業して間もない場合などが、創業資金を調達する目的では申し込みできません。

また、資金使途は運転資金や設備資金など幅広いですが、借り換え目的で利用することはできず、商工会議所から6か月以上経営指導を受けていることも必要です。

マル経融資の審査基準

マル経融資は公的機関による融資制度であるため、民間銀行の融資よりも審査の難易度は低めといえます。

審査基準は公開されておらず、事業の状況・現在の借入状況・今後の見通しなどで総合的に判断されるようです。

ただ、信用情報機関に登録されている信用情報が悪化しているときには審査落ちすると考えてよいでしょう。

すでに利用しているローンの返済を滞納している履歴があったときや、債務整理などの情報が金融事故として登録されていると、審査には通りにくくなります。

さらに提出した決算書から把握した収支状況とは合致しない資金使途で申し込んだときや、事業計画書の内容が適切ではない場合も、審査落ちの可能性は高いといえます。

マル経融資の審査の流れ

マル経融資を申し込む際、窓口となるのは地域の商工会や商工会議所で、次のような流れで手続が進みます。

  1. 申し込み
  2. 必要書類提出
  3. 審査
  4. 結果通知

それぞれ説明します。

①申し込み

マル経融資で資金調達する際、まずは地域の商工会・商工会議所へ相談し、担当の経営指導員に説明してもらった後に申し込む流れとなります。

経営指導員から受ける説明の内容は、マル経融資の概要や申し込みで必要となる書類、申し込みから融資までの流れです。

説明後に面談が行われ、問題がなければ申請手続を行います。

②必要書類提出

マル経融資で資金調達する際、経営指導員から制度に関する説明を受け面談した後に、申請で必要となる書類など作成し提出します。

必要書類は法人または個人事業者のいずれかにより若干異なるものの、主に以下のとおりです。

  • 前年・前々年の確定申告書または決算書
  • 決算後6か月以上経過している場合は直近の試算表
  • 税金(所得税・法人税・事業税・住民税など)の領収書または納税証明書
  • 履歴事項全部証明書
  • 設備資金の場合は見積書やカタログなど

必要書類提出後に申請書を作成に向けた面談・指導が実施されます。

③審査

マル経融資の申し込みが完了すると、商工会議所の審査会で審査が行われます。

日本政策金融公庫に推薦してよいか判断する審査であり、審査落ちしなければ正式に申し込みます。

商工会議所の推薦のもとで日本政策金融公庫に申し込んだ後は、公庫でも融資可否の審査が行われ、通過すれば融資が決定します。

④結果通知

日本政策金融公庫の審査を通過すれば融資決定となり、指定した銀行口座に借入れた資金が送金されます。

なお、融資後の返済についても経営指導員にフォローアップしてもらえます。

マル経融資で審査落ちする理由

民間銀行の融資よりは難易度が低いとされるマル経融資ですが、それでも審査落ちしてしまうのは次のような理由があるからと考えられます。

  1. 申し込み基準を満たしていない
  2. 事業計画書の内容が薄い
  3. 信用情報に問題がある
  4. 他社借入が多い
  5. 金使途が怪しい

それぞれ説明します。

申し込み基準を満たしていない

マル経融資で審査落ちする理由として、申し込み基準を満たしていないことが挙げられます。

商工会・商工会議所から推薦してもらった上での本申し込みが必要となる制度であるため、まずは商工会議所の経営指導員から経営指導を受けることが必要です。

また、次の条件をすべて満たしていなければ審査に通らないどころか申し込みができません。

  • 原則6か月以上商工会議所の経営指導を受けている
  • 従業員数が20人以下(商業またはサービス業の場合は5人以下)
  • 1年以上に渡り同一の商工会議所の担当地区内で事業をしている

長期的に経過を見ることが重要とされるため、最低でも6か月は指導を受けることが必要です。

事業計画書の内容が薄い

マル経融資で審査落ちする理由として、事業計画書の内容が薄いことが挙げられます。

事業計画書を提出することが必要な場合には、現実的で具体的な戦略・目標値を設定し、説得力のある内容での作成が求められます。

直近の決算が赤字などの場合でも、改善余地があると判断されれば融資を受けることができるため、諦めずに事業計画書作成に関し積極的に指導を仰ぎましょう。

信用情報に問題がある

マル経融資で審査落ちする理由として、信用情報に問題があることが挙げられます。

信用情報機関が管理している信用情報に金融事故情報が登録されていると、マル経融資の審査に通ることはほぼありません。

ローンやクレジットカードなどの返済が遅れたり強制解約されていたり、自己破産など債務整理を手続しているケースが該当します。

具体的には信用情報に異動情報が登録されているケースですが、以下の状況である場合です。

  • 長期延滞(返済期日まで返済せず61日または3か月以上経過した場合)
  • 債務整理(自己破産・任意整理・個人再生・特定調停など手続した場合)
  • 代位弁済(返済不能に陥ったため保証会社または保証人が代理返済を行った場合)
  • 強制解約(契約違反や長期延滞などで著しく信用が低下したため強制解約された場合)

他社借入が多い

マル経融資で審査落ちする理由として、他社借入が多いことが挙げられます。

金融からの借入件数・残高が多ければ、すでに返済に追われている状況であると判断され、 返済能力を疑われることになり審査落ちする可能性は高くなります 。

申請の際に嘘をついても信用情報機関に照会をかけられれば発覚し、虚偽の申告をしたことで信用力を失い、審査に通らなくなると留意しておいてください。

資金使途が怪しい

マル経融資で審査落ちする理由として、資金使途が怪しいことが挙げられます。

審査で提出する必要書類から、業績や資金使途を確認しているものの、疑わしい内容の資金使途である場合には審査に通らないと考えられるため注意してください。

マル経融資の審査に通る方法

運転資金や設備資金の調達にマル経融資を活用したい場合には、審査落ちしないように次の4つのポイントを押さえた上で申し込みましょう。

  1. 経営指導員のアドバイスに従う
  2. 入念に事業計画を練る
  3. 他社借入を減らしておく
  4. 信用情報を改善しておく

それぞれ説明します。

経営指導員のアドバイスに従う

マル経融資の審査落ちを回避するためには、経営指導員のアドバイスに従いましょう。

商工会議所の経営指導員から受けた指示やアドバイスなどに素直に従うことで、改善させることへ前向きに取り組む姿勢を見せることができます。

経営指導員は小規模事業者を経営指導することに特化しているため、適切なアドバイスをしてもらえます。

提出した書類や聞き取り調査などを参考に、多角的な視点でアドバイスする専門家であるため、不安や悩みなどがあれば些細なことでも相談してみましょう。

指導を受け入れすぐに行動できる人物だと認めてもらうことで、印象も良くなり審査でも有利になることが期待できます。

入念に事業計画を練る

マル経融資の審査落ちを回避するためには、入念に事業計画を練りましょう。

仮に直近の決算が赤字で一般的な銀行融資での審査では通らない場合でも、マル経融資なら今後改善の余地があると判断されることで融資を受けられます。

そのため改善の余地があると認めてもらうためにも、詳細で実現可能な事業計画を作成することが必要です。

経営指導員には今後の見通しがついていることをアピールし、どのような方向で黒字化させるのか、将来的な戦略など伝えましょう。

具体的な方針や計画が難しいという場合には、経営指導員に指導を仰ぐなど、積極的に相談することも必要です。

積極的に相談や質問し、迅速に行動へつなげることで経営改善に対する姿勢を認めてもらい、評価も上がることが期待できます。

なお、一過性の赤字であると判断されるときなどは、特に審査に大きく響くことはないと考えられるでしょう。

他社借入を減らしておく

マル経融資の審査落ちを回避するためには、他社借入を減らしておきましょう。

すでに民間銀行から事業資金を借りている場合など、残債を少しでも減らしておいたほうが審査では有利になります。

他社借入れの残高が多いと、借入総額も大きくなるため、毎月の返済負担が重くさらにお金を借りても返済できるか疑われます。

日本政策金融公庫の場合、必ず信用情報機関に申込者の信用情報を照会するため、借りているローンの件数や残高、返済履歴などはすべて確認の対象です。

2件以上からお金を借りている場合など、1件でも完済しておいたほうがよいといえます。

たとえ完済できなくても、経営指導を受けている期間中に残高を着実に減らせば評価も上がるはずです。

信用情報を改善しておく

マル経融資の審査落ちを回避するためには、信用情報を改善しておきましょう。

先に述べたとおり、日本政策金融公庫では、審査において信用情報機関に申込者の信用情報を照会します。

そのため他社からお金を借りている状況なども確認されることになりますが、借入金の返済を滞納している場合には、審査では通りにくくなるでしょう。

ローンやカードの返済を滞納したことや、債務整理など手続した情報は、内容により異なるものの5~10年は消えません。

借入れや返済などに関する問題を起こした要注意人物と判断されることになれば、当然、審査に通ることはなくなるでしょう。

もしも過去に返済を滞納したことがあるという場合には、次の信用情報機関で自身の信用情報について開示請求することをおすすめします。

株式会社シー・アイ・シー(CIC)

株式会社日本信用情報機構(JICC)

全国銀行個人信用情報センター(全銀協)

いずれの信用情報機関でも、公式ホームページで、ネット・郵送などで手続することができます。

金融事故扱いとなっている場合には、その情報が消えてから申し込むようにしてください。

まとめ

マル経融資は運転資金や設備投資を調達する際に活用できる制度であり、商工会議所の推薦のもとで日本政策金融公庫からお金を借りることになります。

小規模事業者の経営改善や資金繰りを支援する制度のため、安心して申し込みしやすいことがメリットではあるものの、一定条件を満たすことが必要です。

また、信用情報が悪化していれば審査に通らなくなるため、商工会議所にまずは相談してみることをおすすめします。

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