債権回収とは?方法や違法性・消滅時効との関係をわかりやすく解説

債権回収とは、事前に取り決めた期限を守られず支払われなかった債権を、具体的な行動を起こし回収することです。

売掛金や貸付金など債権には種類はあるものの、いずれも期日どおりに入金されなければ、自社の資金繰りにも悪影響を及ぼします。

消滅時効が完成すれば貸し倒れのまま回収不能となり、事業継続にも支障きたす恐れが高いといえます。

そこで、債権回収について、方法や消滅時効との関係を解説します。

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債権回収とは

「債権回収」とは、まだ回収できていない債権を債務者に支払ってもらうための債権者側の活動です。

たとえば商品を販売したときの代金や工事を行ったときの代金などが対象となります。

本来入金される予定だった期日に支払いがないのは、取引先の資金繰りや経営状態の悪化などが挙げられます。

未入金のままで何もアクションを起こさず、ただ待っていても回収不能のリスクを高めるだけです。

また、交渉や催促などの行動を起こさず放置すれば、消滅時効で請求ができなくなる恐れもあるため、すみやかに支払いを求めることが必要です。

違法な取り立て代行に注意

ただし注意したいのは、「違法」な取り立てを有料で行うサービスです。

取立屋や探偵事務所などの業者が、弁護士よりも安い費用で債権回収をするサービスは、正規の業者ではありません。

弁護士法では、弁護士以外が法律事務である債権回収を行うことは禁止しているため、有料で債権回収の代理人にはなれません。

弁護士以外で認められているのは、法務大臣より許可を受けた「債権回収業者(サービサー)」だけです。

違反すれば2年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となる違法行為であり、依頼側も共犯として処罰される恐れがあるため注意してください。

債権回収の方法

債権回収の方法は、大きく分けると次の2つです。

  • 債務者と交渉し回収する方法
  • 訴訟など法的手段で回収する方法

さらに細かく分けると、次の8つになります。

  1. 電話などで直接交渉
  2. 内容証明郵便の送付
  3. 民事調停
  4. 支払督促
  5. 少額訴訟
  6. 仮差押と仮処分
  7. 通常訴訟
  8. 強制執行

一般的には、まずは債務者と交渉を行い、それでも支払われなければ法的手段に移行します。

それぞれどのような方法か説明していきます。

①電話などで直接交渉

まず、債権回収のためには「電話」や「出向く」などで直接「交渉」することが挙げられます。

もしも債務者に支払う意思があるのなら、交渉により債権を回収できる可能性があるからです。

催促をせず放置してしまうと、

「支払わなくても何も言ってこないから…」

と、「後回し」にされる可能性もあります。

入金されないときには、すみやかに交渉しましょう。

②内容証明郵便の送付

電話などで直接交渉してもうまくいかないときに考えられるのが「内容証明郵便」です。

内容証明郵便とは、いつ・いかなる内容の文書を、誰から誰に差し出したのかについて差出人が作成した謄本で郵便局が証明する制度です。

期限までに支払いがなければ法的手段に移行する旨を記載し、内容証明郵便で送ることで心理的な「プレッシャー」をかけることができます。

ただし内容証明郵便に強制力はないため、支払わないときには法的手続へと移行することが必要です。

③民事調停

「民事調停」とは、裁判官や調停委員で構成される調停委員会が当事者双方の言い分を聞いた上で、仲介・あっせんし解決を図る制度です。

一般的な紛争を当事者同士の話し合いで解決するための制度であるものの、和解が成立しなければ訴訟などの手続が必要になります。

④支払督促

「支払督促」とは、入金されない債権の回収を目的として、裁判所を介し債務者に督促を「通知」するための手続です。

支払督促を申し立てることで、簡易裁判所から債務者に支払いを督促してもらえます。

督促後、相手が異議を申し立てないときには、仮執行宣言を得た後に強制執行が可能です。

異議を申し立てたときには効力を失い、通常であれば訴訟へ移行します。

⑤少額訴訟

「少額訴訟」とは、1回の期日で審理を終え判決が出る特別な訴訟手続です。

 60万円以下の金銭支払いを求める場合のみ利用できます。

即日判決が出るため時間がかからないことがメリットであるものの、判決に異議申立てがあれば審理やり直しとなります。

また、相手が通常訴訟を求めた場合は、通常訴訟へ移行します。

⑥仮差押と仮処分

債務者が財産を処分しないように、事前に保全しておく手続を「保全処分」といいます。

判決を得るよりも前に、債務者が財産を散逸していると、債権を回収したくてもできません。

そこで、勝訴判決が出るよりも前に、債務者が財産を散逸することを防ぐために保全処分が利用されます。

本来は債権回収の方法ではないものの、保全処分で債務者に心理的な「圧力」を与えることは可能です。

銀行預金の仮差押で、銀行取引を一旦停止させられるため、弁済を促すことにつながるでしょう。

なお、保全処分には「仮差押」と「仮処分」があり、仮差押とは債務者の銀行預金や不動産の仮差押えなど、金銭債権執行を保全します。

仮処分は、モノの引渡請求権など、金銭債権以外の債権の執行を保全するという違いがあります。

⑦通常訴訟

「通常訴訟」とは、裁判所が当事者それぞれの主張や提出された証拠などを確認し、原告の主張する権利の存在を審理する制度です。

少額訴訟と異なり、通常訴訟では原告と被告の立場となった側が、何度もやりとりや証拠提出が必要になります。

早期解決を図ることは難しく、債権・売掛金を回収する方法としては正攻法といえるものの、時間がかかることがほとんどです。

ただ、相手に争う意志がないときや、相手の主張に明確な理由がないときには、1回目または2回目の裁判期日で判決が出る場合もあります。

また、相手が事実関係を争わずに、

「一括で支払うことは厳しいため分割払いにして欲しい」

といった和解の申し入れをしてくれば、早期解決につながりやすいといえます。

⑧強制執行

「強制執行」とは、勝訴判決を得た場合や和解が成立した後、相手からお金が支払われないときなどに相手への請求権を強制的に実現する手続です。

和解調書・調停調書・確定判決などは、債務者に給付義務を強制的に履行させるときに必要になる文書「債務名義」となります。

債務名義があることで、裁判所に強制執行を求めることができます。

強制執行には不動産執行・動産執行・債権執行の3つがあり、この中の「債権執行」は主に銀行預金の差押えを行うため預金残高から回収可能です。

ただ、銀行に借入金があると、預金と借入金が相殺されて回収できなくなる恐れがあるため注意しましょう。

債権回収と消滅時効の関係

先にも述べたとおり債権には「消滅時効」があるため、法律で定められた一定期間に権利を行使しなければ、請求する権利は消滅します。

債権の消滅時効の期間は次のいずれか早く到達したほうです。

  • 債権者が権利を行使できることを知ったときから5年
  • 債権者が権利を行使できるときから10年

ただし、2020年4月1日に改正民法が施行される日よりも前に発生した債権は、改正前の民法が適用されます。

そのため、以下が消滅時効となります。

  • 債権者が権利を行使できるときから10年

商事債権の場合には、行使することができる時から5年という短期消滅時効が適用されるため注意してください。

さらに消滅時効は、時効期間を経過すれば自動的に完成するわけではありません。

債務者から時効による利益を受けるといった意思を表示する「時効の援用」が必要です。

また、消滅時効の完成を阻止する方法として、次のような方法で時効を猶予または更新できます。

  • 訴訟を提起(時効の完成を猶予)
  • 支払督促の申し立て(時効の完成を猶予)
  • 債務者に債務を承認させる(時効を更新)
  • 債務者に債務の一部を弁済させる(時効を更新)

まとめ

債権回収とは、まだ支払われていない債権を回収するために、入金してほしいと請求できる権利を持つ債権者が何らかの行動を起こすことです。

その方法として、債務者と直接交渉を行うか、法的手続が挙げられます。

弁護士や債権回収が認められたサービサー以外の業者が、有料で債権回収業務を代行することは違法行為であるため、依頼しないようにしてください。

また、取引先が倒産してしまった後で債権を回収しようとしても、未回収のまま貸し倒れになるリスクが高いといえます。

売掛金などはできるだけ早く現金化し、手元の資金を増やしておいたほうが安心です。

資金繰りも改善されるファクタリングを、リスク回避の方法として検討してみてはいかがでしょう。

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