不渡りとは?その意味と影響・不渡りになるとどうなるかわかりやすく解説

「不渡り」とは、何らかの事情や理由により小切手や手形が決済できないことで起こります。

もしも不渡りを出してしまうと、会社の信用力は低下し資金繰りなどで大きな支障をきたすことが考えられ、経営困難に陥るリスクが高まります。

そこで、不渡りとはそもそもどのような状況なのか、起きることによる影響やどのような処分を受けるのかについて、わかりやすく解説していきます。

不渡りとは

「不渡り」とは、小切手や手形による支払いができなくなる状態であり、支払代金が正しく渡されないことです。

企業間取引では、現金決済ではなく小切手や手形を使うことがありますが、当座預金の残高が支払額よりも少ない場合に起こります。

個人が負担から利用する出し入れしやすい「普通預金」と違って、「当座預金」は会社や個人事業主が業務に使う口座です。

手形・小切手を利用するときには、決済用の当座預金口座を開設しなければなりません。

普通預金は本人確認書類を提出したとき、特に問題がなければだれでも開設できます。

しかし当座預金は、金勇機関ごとに決められた審査で認められなければ解説できません。

当座預金の場合、利息はつきませんが、普通預金のように1日に引き出し可能となる金額に制限は設けられていません。

また、銀行が破たんした場合、普通預金なら金融機関ごとに預金者1人あたり1,000万円とその利息が保護されることになっています。

しかし当座預金は全額保護の対象です。

メリットもあればデメリットもある口座ですが、銀行の審査を通り開設できた場合には、銀行から信用力を認められた証明ともいえます。

そのため小切手や手形を使った取引ができる会社は、一定の信用力の高さが認められ、安心して取引しやすいともいえるでしょう。

しかし不渡りを出せば、その信用は一気に落ちてしまいます。

小切手と手形はどちらも企業間取引で使用される「有価証券」であり、紙面に必要事項を書き込んで現金の代わりに支払う相手に渡します。

小切手や手形を受け取った方は、支払いを受けようとそれらを銀行に持ち込みますが、受け取った銀行は小切手や手形を振り出した人の当座預金口座から現金を支払います。

ただし当座預金口座のお金が足らない状態の場合には決済されず、小切手や手形を持ち込んだ人にお金が行き渡らない「不渡り」になってしまいます。

不渡りになった手形は回収不能の有価証券となり、不良債権化します。

不渡りを出すとどうなる

小切手や手形が不渡りになると、銀行は手形交換所に「不渡届」を提出します。

手形交換所は全国銀行協会に不渡りになった事実を報告するため、その事実は全国の金融機関に伝わります。

当座預金のあった銀行だけでなく、他の銀行にも不渡りを出したことが伝えられてしまうと、たとえば融資を受けたいと申し出ても断られてしまいます。

不渡りを出す状況の会社にお金を貸しても、返済の見込みがなく貸し倒れになるリスクが高いからです。

また、一度目の不渡りなら「不渡り処分」を受け「不渡報告」に処分の事実が掲載され、全国の銀行に通知が届くだけですみます。

しかし6か月満たない間に二度目の不渡りを出してしまうと、「銀行取引停止処分」を受けることとなり、2年に渡り当座預金を使った取引や借入れはできなくなります。

小切手や手形を使う取引はもちろんのこと、銀行から融資を受けることもできなくなり、信用力は低下して事実上の倒産とみなされます。

不渡りの種類

「不渡り」には、原因と内容で次の3つの種類に分類されます。

  1. 0号不渡り
  2. 1号不渡り
  3. 2号不渡り

それぞれ説明していきます。

0号不渡り

「0号不渡り」とは、小切手や手形の振出人の当座預金残高不足などとは異なる原因による不渡りです。

「0号不渡り」に該当するのは、

  • 記載ミスなど形式上の不備があった
  • 呈示期間(換金できる期間)を過ぎていた
  • 決済日より前に換金しようした

など、振出人の信用には関係がないことを原因とします。

そのため銀行取引で「不渡り」として扱うことはなく、金融機関も不渡届を作成しないため、銀行取引停止処分になることもありません。

1号不渡り

一般的な「不渡り」といわれるのはこの「1号不渡り」です。

「1号不渡り」とは、当座預金口座の残高不足や口座解約などで取引がない状態になったことを原因とした不渡りです。

「1号不渡り」に該当するのは、

  • 口座残高不足
  • 取引がない(手形上の支払銀行と会社間で取引がない)

などが原因で支払いが行われない不渡りであり、会社の信用に関係することを原因として起きるため、6か月以内に二度目の1号不渡りを出せば銀行取引停止処分の対象となります。

2号不渡り

0号不渡りや1号不渡りに該当しない不渡りが「2号不渡り」です。

「2号不渡り」に該当するのは、

  • 盗まれた手形
  • 騙され振り出した手形
  • 偽造・変造された手形

などで、たとえば商品代金として手形を振り出したのに、商品は納品されなかったなどの契約不履行を原因とした不渡りも含まれます。

1号不渡りと同じく銀行から「不渡届」が作成されますが、振出人の残高不足など信用状況を原因した不渡りではないため、異議申し立てすることもできます。

この場合、手形金額を預託金として手形交換所に提供することにより、不渡り処分は猶予されます。

また、偽造・変造などを理由とする場合は、事実を証明する資料の提出で預託金は免除されます。

なお、預託金は最長2年経過すると返還されます。

ただし2号不渡りは放置したままでは銀行取引上の不渡り処分の対象になるため、手形を支払わない正当な理由を異議申し立て、処分の猶予や免除を申請しましょう。

不渡りの影響

不渡りを出してしまうと、振出人と受取人、それぞれに影響が及びます。

そこで、

  1. 振出人(債務者)が受ける影響
  2. 受取人(債権者)に対する影響

の2つに分けてそれぞれどのような影響があるのか説明していきます。

振出人(債務者)が受ける影響

振出人の立場で不渡りを出してしまうと、銀行など金融機関だけでなく取引先からも信用を失います。

銀行が手形交換所に「不渡届」を提出し、手形交換所が「不渡報告」にその内容を掲載して加盟銀行に通知するのは、信用力に関する注意を促すことが目的だからです。

不渡りを出す法人が、すでに返済することができない状態で、他行から融資を受けようとすることを防ぐことを目的としています。

そのため新たに銀行から融資を受けることは難しくなり、経営困難な状況に陥ると考えられます。

一度目から6か月以内の二度目の不渡りによって銀行取引停止処分の対象となれば、手形や小切手の使用ができなくなり信用力はさらに低下するでしょう。

二度目の不渡りは事実上の倒産とみなされるため、一度目よりも重い処分の対象となることを留意しておく必要があります。

不渡りの備えとしては、「当座貸越契約」を結ぶことなどが挙げられます。

当座貸越契約を結んでおけば、決済のとき当座預金残高が不足していると、契約金額の範囲内で自動的に貸し付けを受けることが可能です。

資金繰りが予定通りでなかった場合も、借入利息は発生しますが、当座貸越により不渡りを防ぐことができます。

受取人(債権者)に対する影響

手形が不渡りになると、銀行に持ち込んでもお金を受け取ることはできません。

そのため手形に記載された金額相当分の損害を被ることになります。

債務履行を求める訴訟を提起することは可能であり、手形を裏書譲渡されているときには裏書人に遡及し代わりに債務を履行するように求めることもできます。

ただし訴訟を起こしても、相手に支払能力がなければ回収できず、時間や訴訟にかかる費用を浪費するだけになります。

時間や労力から見ても負担が大きいことであり、確実に回収できるとも言い切れず、むしろ回収できない可能性のほうが高いと考えるべきです。

そのため、掛取引の代金として手形を受け取るときには、相手の信用状況など確認する与信管理を行うことが重要といえるでしょう。

手形が不渡りになったときに備えて、手形額面と同等のお金を保持しておくことも必要と考えられます。

手形・小切手は株式と同じく有価証券として扱われるため、相手が倒産すれば価値をなくすことを理解しておいてください。

不渡りと倒産の関係

不渡りとは倒産間近というイメージが強いですが、不渡りがあっても倒産するわけではありません。

一度だけなら当座預金による取引は継続でき、さらに6か月以内に二度目の不渡りを出したとしても銀行取引が停止されるだけなので、すぐ倒産するとも言い切れないでしょう。

ただし銀行取引停止処分は、2年間は当座預金口座を使った取引ができなくなるため、小切手や手形を振り出すことや融資を受けることはできなくなります。

また、銀行からすでに融資を受けている場合、残債を一括返済するように求められてしまう可能性があります。

そのため資金調達や資金繰りに悪影響を及ぼすこととなり、事業継続は困難な状態となってしまうため、不渡りを二度出せば事実上の倒産とみなされます。

二度目の不渡りを出した場合、信用力は大きく低下し存続不可の状態となるため、法人破産手続をとることがほとんどです。

破産ではなく民事再生や会社更生などで存続させるケースもありますが、実取引に影響が出てしまうことで倒産につながることが多くなります。

まとめ

不渡りとは、小切手や手形が決済されず、受取人に現金が渡らない状態を意味します。

たとえ受取人が持ち込んだ小切手や手形が不渡りになっても、効力は失われないため振出人との間で交渉を行うことになるでしょう。

しかしそもそも当座預金に入金しておくお金がないから不渡りを出すため、回収すること自体難しいといえます。

破産手続などの法的整理を始めれば、個別に交渉もできなくなってしまいます。

不渡りを出すことは自社にとっても致命的なことであり、受取人としての立場でも資金繰りに大きな悪影響を及ぼします。

手形による取引は不渡りリスクがあることを踏まえ、事前に対策をしておくことが望ましいといえるでしょう。