社会保険料とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の5つ保険に対して支払う保険料です。
少子化対策の財源としても使われていますが、社会保険料が上がれば会社の負担も増えるため、事業継続に影響を及ぼさないとも言い切れません。
そこで、社会保険料について、計算方法や負担割合と控除の対象、さらにボーナスが支払われたときの対応について解説していきます。
目次
社会保険料とは
「社会保険料」とは、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つの保険に対して支払う保険料の総称です。
国や自治体が運営する公的な保険制度へ加入している方が、相互扶助の精神で社会保険料を負担し合うことで、ケガ・病気・高齢・失業などのサポートを必要とする方を補償します。
社会保険料の種類と内容はそれぞれ以下のとおりです。
健康保険料 | 労働災害以外のケガ病気に備える健康保険に対する保険料 |
厚生年金保険料 | 老後・障害・死亡などに備えるための厚生年金に対する保険料 |
介護保険料 | 要介護・要支援認定で介護サービスを利用できる介護保険に対する保険料 |
雇用保険料 | 失業・育児休業などに備えるための雇用保険に対する保険料 |
労災保険料 | 通勤中や就労中のケガや事故に備える労災保険に対する保険料 |
社会保険料とは?種類や計算方法・免除されるケースをわかりやすく解説
社会保険料の計算方法
社会保険料のうち、健康保険と厚生年金保険料は、事業主と従業員で半額ずつ負担する労使折半が基本です。
ただし、従業員に毎月支払われる給与と、夏季と冬季などの時期に定期的な給与と別で支給する賞与とでは、社会保険料の計算方法が異なります。
そこで、以下の2つに分けて社会保険料の計算方法を説明していきます。
- 給与
- 賞与
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給与
「給与」の社会保険料は、毎月支払う給与に保険料率を掛けて算出します。
保険料率は社会保険の種類によって変わりますが、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料では標準報酬月額(給与の平均をもとに算出)を利用します。
社会保険料は以下の5種類がありますが、それぞれの計算方法は次のとおりです。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
- 労災保険料
健康保険料
「健康保険料」の計算式は以下のとおりです。
健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率 |
健康保険料率は、健康保険組合の種類などで異なります。
たとえば協会けんぽの場合、適用事業所の所在地で保険料率は変わりますが、東京の適用事業所所属の東京支部の2024年3月からの保険料率は9.98%です。
詳しくは、全国健康保険協会のホームページ「都道府県毎の保険料額表」で確認できます。
なお、健康保険料は事業主と従業員が折半で負担します。
厚生年金保険料
「厚生年金保険料」の計算式は以下のとおりです。
厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率 |
現在の厚生年金保険料率は18.3%であり、算出した保険料は事業主と従業員の労使折半で負担します。
介護保険料
「介護保険料」の計算式は以下のとおりです。
介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率 |
40~64歳までの第2号被保険者の介護保険料は、勤務先の給与から健康保険料と一緒に差し引かれますが、第1号被保険者である65歳以上の方は給与から天引きされません。
そのため65歳になる前の月までは健康保険料で支払い、65歳になった月からは住まいの市町村に納めます。
介護保険料率は健康保険組合の種類や事業所所在地で異なります。
協会けんぽを例に挙げると、2024年3月からの介護保険料率は1.60%となっており、事業主と従業員が労使折半で負担します。
雇用保険料
「雇用保険料」の計算式は以下のとおりです。
雇用保険料=毎月の給与支給額×雇用保険料率 |
健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料は標準報酬月額に基づいた算出となるのに対し、雇用保険料は残業手当や通勤手当などの各種手当を含む毎月の給与支給額を基準とします。
雇用保険料率は事業の種類によって異なりますが、たとえば一般の事業であれば2024年4月から2025年3月は事業主負担1000分の9.5、従業員負担1000分の6となっています。
令和6年度の雇用保険料率は、令和5年度から変更されていません。
詳しくは厚生労働省が公表している「令和6年度の雇用保険料率について」を参考にしてください。
労災保険料
「労災保険料」の計算式は以下のとおりです。
労災保険料=全従業員の1年分の賃金総額×労災保険料率 |
労使折半で負担する保険料ではないため、事業者が全額負担することになります。
労災保険料率は、事業の種類によって1000分の2.5から1000分の88までの範囲で区分されています。
詳しい労災保険料率については、厚生労働省のホームページ「令和6年度の労災保険率について」で確認できます。
賞与
「賞与」の社会保険料は、社会保険料の種類によって以下の計算式で計算できます。
健康保険料 |
健康保険料=標準賞与額×健康保険料率 |
厚生年金保険料 | 厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率 |
介護保険料 | 介護保険料=標準賞与額×介護保険料率 |
雇用保険料 | 雇用保険料=賞与支給額×雇用保険料率 |
標準賞与額とは、税引前の賞与給額から、千円未満を切り捨てた額です。
算出した標準賞与額に、健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけると、それぞれの賞与で支払う保険料を計算できます。
なお、標準賞与額には上限があり、たとえば健康保険の場合は毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額が573万円を上限としています。
厚生年金保険であれば、1か月あたりの支給額(同じ月に2回以上支給があったときは合算した額)が150万円までです。
標準報酬月額とは
「標準報酬月額」とは、社会保険料のうち、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の計算で使う金額です。
税金等を差し引く前の報酬をベースとし、基本給・通勤手当・家族手当・住宅手当・役職手当などもすべて含まれます。
標準報酬月額を、健康保険料・介護保険料は50の等級に、厚生年金保険料は32の等級へ分けることによって社会保険料を簡単に計算できます。
標準報酬月額を決定・変更するタイミングは、主に以下の2つです。
- 定時決定
- 随時改定
それぞれ説明します。
定時決定
「定時決定」は、4月・5月・6月に支給する給与を基準として、同じ年の9月からの標準報酬月額を決定することです。
基本給だけでなく、住宅手当や通勤手当など、社会保険料の対象となる各種手当を含む支給額を申告します。
支給回数が年3回以下の賞与や、臨時に支給されたお祝い金や慶弔手当、経費の精算分や退職金などは含みません。
随時改定
「随時改定」とは、昇給または降給などで固定的賃金が変動したため、基本給や各種手当なども大幅に変わったときの社会保険料の見直しです。
社会保険の対象である固定的賃金の変更があった後の3か月間の給与平均から算出した標準報酬月額と、現状の標準報酬月額に2等級以上の差が生じたときには随時改定による見直しが行われます。
たとえ年度の途中でも見直しが行われることが特徴です。
固定的賃金には基本給・役職手当・家族手当・通勤手当などが含まれます。
対する非固定的賃金として、残業手当・能率手当・皆勤手当などが挙げられますが、随時改定には関係しない賃金です。
社会保険料の算出における注意点
社会保険料を算出するときには、計算方法が正しければ問題ないわけではなく、以下の4つに注意が必要です。
- 社会保険料率の改定
- 賞与も社会保険の対象になる
- 社会保険料が免除されるケースがある
- 雇用保険料のみ日割計算がある
それぞれ説明します。
社会保険料率の改定
社会保険料を算出するときには、「社会保険料率」の改定に注意しましょう。
社会保険料率は定期的な見直しが行われているため、気がつかない間に変わっている恐れもあります。
定期的に改定があることを踏まえ、健康保険組合などの保険者や年金事務所の最新の情報を確認するようにしましょう。
賞与も社会保険の対象になる
社会保険料を算出するときには、「賞与」も社会保険の対象になることに注意しましょう。
ただし社会保険で賞与として扱うのは、年3回以下で支給されるケースです。
賞与支給の回数が年4回以上の場合、社会保険では賞与に係る報酬として扱うため、標準賞与額ではなく標準報酬月額の対象となるため、保険料の計算方法も変わります。
社会保険料が免除されるケースがある
社会保険料を算出するときには、「免除」されるケースもあることに注意しましょう。
産前産後休業期間(出産の日以前42日から出産の日後56日までの間で妊娠または出産を理由に労務に従事しなかった期間)の健康保険と厚生年金保険の保険料は、被保険者の産前産後休業期間中に事業者から申し出ることで、被保険者と事業者のどちらの負担も免除されます。
免除された間の資格も失われることはありません。
また、育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するために取得する育児休業等期間中も同様です。
対象となる期間は、産前産後休業期間や育児休業等期間の開始月から終了日の翌日が属する月の前月までです。
なお、育児休業等期間での免除については、休業の開始月に14日以上、育児休業を取得した場合など一定条件を満たす必要があります。
雇用保険料と労災保険料は、支給した給与額に応じた計算となるため、休業により給与が支給されていなければ保険料を支払う必要はありません。
雇用保険料のみ日割計算がある
社会保険料を算出するときには、雇用保険料のみ「日割計算」があることに注意しましょう。
雇用保険料以外、日割計算はないため、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料であれば末日に資格喪失していることで該当月の社会保険料を支払う必要はありません。
労災保険料では、労災保険料率を乗じた保険料が発生します。
雇用保険料については、支給額に保険料率を掛けて算出するため、支給額が日割りになる場合もあります。
そのため雇用保険料以外の社会保険料については、勤務先を退職する日の翌日が属する月の前月分まで、保険料負担が発生するため注意してください。
社会保険料は原則、当月分の給与から前月分の保険料を徴収する翌月徴収です。
退職により翌月の給与から社会保険料が天引きされないケースにおいては、退職月の給与から2か月分保険料を控除する手続が必要になります。
まとめ
社会保険料の計算は、標準報酬月額からそれぞれの社会保険の保険料率を掛けて算出します。
従業員の年齢・収入・扶養家族の有無などで異なるため、収入が同額でも保険料も一致するとは限りません。
社会保険料は、法改正などの要因により、保険料率や加入対象も変わります。
正しい保険料を計算できるように、被保険者や法改正に関する最新の情報を収集し続けることをおすすめします。