社会保険料を滞納すると差し押さえられる?払えないときの対処法を解説

安定した会社経営において、社会保険料を滞納してしまうことは大きな妨げになる行為といえますが、手元の資金が足らず支払いできないことに悩みを抱えるケースもめずらしくありません。

社会保険とは相互扶助を基本理念とする制度であり、社会保険料は会社と雇用されている労働者が折半する形で公的機関へ納めます。

公的機関に納める費用であるため、社会保険料を滞納すればそれ相当のリスクを負うことは理解しておくことが必要といえますが、実際支払いができなければどうなるのでしょう。

そこで今回は、社会保険料を滞納したらどうなるのか、支払うことができなかった場合のペナルティと対処方法について解説していきます。

社会保険の加入義務と支払期限

社会保険の概要として、以下の3つを説明します。

  1. 社会保険の加入義務
  2. 社会保険料未加入の罰則
  3. 社会保険料の支払期限

社会保険の加入義務

社会保険は一般的に厚生年金保険と健康保険のことです。以下に該当する事業者は社会保険加入の義務があります。

  • 株式会社や合同会社などの法人
  • 農林漁業・サービス業など一部業種を除き常時雇用する従業員が5人以上の個人事業所

上記に該当しないものの、半数以上の従業員が社会保険の適用事業所になることに同意しており、申請で認可を受ければ社会保険適用事業所となります。任意で社会保険に加入することになるため、健康保険と厚生年金保険のいずれか一方のみの申請が可能です。

社会保険加入の義務がある適用事業者は正社員、法人の代表者や役員を社会保険の被保険者として加入させなくてはなりません。パートやアルバイトなど正社員以外の社員も一定の条件に該当するときは加入させる義務があります。

パートやアルバイトの社会保険の加入は、以前は従業員数501人以上の企業に限られていましたが、法改正により加入義務の範囲が拡大しました。

2022年10月からは従業員数101人以上の企業、2024年10月10月からは従業員数51人の企業で、以下に該当するときに社員の加入義務が生じます。

【パートやアルバイトなどの加入対象者(すべてを満たす)】

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金月額88,000円以上
  • 2雇用見込みが2ヶ月を超える
  • 学生でない

社会保険の加入にともない生じる社会保険料の負担は、会社と社員の折半です。基本的には被保険者負担分を給与天引きして会社がまとめて支払います。

社会保険料未加入の罰則

社会保険未加入であることが極めて悪質と判断された場合には、保険の種類により罰則の対象になってしまいます。

健康保険と厚生年金保険の場合には6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金、雇用保険では6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象です。

仮に社会保険未加入であることを指摘されたときには、速やかに加入手続を行うようにしましょう。

社会保険料の支払期限

社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)の徴収を行うのは日本年金機構です。事業者からの届出(資格取得や喪失など)により、翌月の10日頃に前月分の社会保険料が確定します。

その後、毎月20日を目途に事業者宛てに日本年金機構から保険料納入告知書が届く流れです。保険料納入告知書を受け取った事業者は、その月の末日(納付期限)までに支払います。

翌月末日が休日や祝日のときは翌営業日が社会保険料の納付期限です。事業者は従業員負担分とともに社会保険料を納付します。口座振替の他、金融機関での窓口納付、電子申告による納付が可能です。

社会保険料を滞納したらどうなる?

社会保険料を滞納した場合の滞納処分を受けるまでの流れを説明します。

  1. 電話により督促される
  2. 督促状が届く
  3. 延滞金が発生する
  4. 滞納処分を受ける
  5. 罰則の対象になる

それぞれのペナルティについて説明します。

電話により督促される

社保滞納によるペナルティとして、電話による督促を受けることが挙げられます。

社会保険料を納付しなければならない期限を過ぎても支払いがなければ、年金事務所から電話がかかりすぐに納めるように催促されることになります。

年金事務所への来所を求められることもあれば、事務所職員が会社を訪問することもあり、滞納分を一括支払いできなければ、早期滞納解消に向けた納付指導で納付計画が作成されます。

この指導や督励に従わず、完納の見込みが立たないと判断されれば滞納処分へ移行することになります。

督促状が届く

社保滞納によるペナルティとして、会社に督促状が届くことが挙げられます。

年金事務所から電話で納付を求められるだけでなく、日本年金機構からも督促状が届きます。

督促状にはいつまでに社会保険料を納めなければならないか指定期限が記載されています。

督促状を発行日から起算して10日以上経過した日が指定されるため、その期日までに支払うことが必要です。

なお、督促は滞納処分が前提条件となるため、支払いがなければ財産の差し押さえが行われると留意しておいてください。

延滞金が発生する

社保滞納によるペナルティとして、延滞金が発生します。滞納分の利息のようなもので、対象となる期間は滞納保険料の納付期限翌日から納付日の前日までです。

滞納日数に応じて、保険料額に一定の割合を掛けて計算します。原則は、納付期限翌日から3ヶ月経過までの期間は年7.3%、以降は年14.6%です。

なお、令和3年以降は、延滞税特例基準割合を基準に計算します。令和3年1月1日以降は3ヶ月を経過するまで延滞税特例基準割合+ 1%、以降は延滞税特例基準割合+ 7.3%です。

例えば、令和5年度の延滞税特例基準割合は1.4%であるため、3ヶ月を経過するまでの割合は2.4%、以降は8.7%になります。延滞税特例基準割合は、銀行の短期貸出約定平均金利をもとに算出した割合のことです。

滞納処分を受ける

社保滞納によるペナルティとして、滞納処分を受けることが挙げられます。

督促状を送ったり催促したりしても、滞納者から何の連絡もなかったり支払いもされなかったりした場合には、次の流れで滞納処分が行われます。

  1. 財産の調査・捜査
  2. 財産の差し押さえ

それぞれの滞納処分について説明します。

財産の調査・捜査

まず滞納処分を行う上で、会社が所有している財産の調査や捜査が開始されます。

滞納した社会保険料を回収するためには、会社が所有する財産を差し押さえ、換金して保険料の支払いに充てることが必要です。

そのため、どのくらいの財産を所有しているのか、聴取調査や取引金融機関に対する預金残高の確認、取引先企業全般に対する売掛債権の有無などが調査されます。

不動産などその他財産全般に関しても同様です。

財産の差し押さえ

次に滞納処分として、調査した財産の差し押さえが行われます。

財産調査の結果、不動産・預金・売掛債権などの差し押さえが行われ、換価された後は滞納した社会保険料や延滞金に充てられることになります。

不動産が差し押さえ対象になると、生産基盤を失う可能性があり事業継続が困難になるでしょう。

預貯金が対象になった場合、取引金融機関に差し押さえの事実を知られるため、信用を失い今後の追加融資は難しくなってしまいます。

さらに売掛債権の差し押さえでは、取引先から信用を失うため、その後の取引や契約を打ち切られてしまい、やはり事業継続が困難になると考えられます。

罰則の対象になる

社保滞納によるペナルティとして、罰則の対象になることが挙げられます。

社会保険未加入であることが極めて悪質と判断された場合には、保険の種類により罰則の対象になってしまいます。

健康保険と厚生年金保険の場合には6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金、雇用保険では6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象です。

仮に社会保険未加入であることを指摘されたときには、速やかに加入手続を行うようにしましょう。

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社会保険料滞納による影響

社会保険料は税金ではないものの、国や自治体の財源となる資金であり、国民が納めることが必要とされているお金です。

そのため社会保険料を支払わず滞納すると、会社には次の5つの影響が及ぶことになるでしょう。

  1. 社会的な信用を失う
  2. 従業員の離職率が上がる
  3. 銀行融資で資金調達できなくなる
  4. 取引先との関係が悪化する
  5. 商売自体できなくなる

それぞれの影響について説明していきます。

社会的な信用を失う

社保滞納による会社への影響として、社会的な信用を失うことが挙げられます。

社会保険料を納めず財産を差し押さえられれば、取引金融機関や取引先に知られることになり、さらに従業員などにも広く伝わってしまいます。

多くの関係者に知られることで社会的な信用を失ってしまい、融資や取引の打ち切り、従業員の離職などその後の事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

特に知名度の高い企業の場合、社会保険料滞納に関する事実は広く公表されるため、イメージ低下は免れることはできません。

顧客離れにもつながるため、さらに厳しい状況に追い込まれることになるでしょう。

従業員の離職率が上がる

社保滞納による会社への影響として、従業員の離職率が上がることが挙げられます。

社会保険を支払っていないことで、会社に財務調査が入り差し押さえられることで、将来性が期待できない会社と従業員も不安を感じることになるでしょう。

そもそも社会保険料は労使折半で負担する費用であるため、従業員の保険サービス利用や将来受け取る年金にも関わる保険料を未納する企業を信頼し、働き続けたいとは思えません。

信頼が薄れれば、従業員の離職が進んでしまう可能性は否定できないといえるでしょう。

銀行融資で資金調達できなくなる

社保滞納による会社への影響として、銀行融資で資金調達できなくなることが挙げられます。

社会保険料を滞納し、金融機関にもその情報が伝われば、社会保険料を支払うことができないほど資金繰りが悪化している会社に資金を貸し付けたいとは思わないはずです。

そのためその後の新規融資はもちろん、追加融資についても断られる可能性があり、貸しはがしなど早期回収に乗り出す可能性も否定できなくなるでしょう。

取引先との関係が悪化する

社保滞納による会社への影響として、取引先との関係が悪化することが挙げられます。

商取引を行う相手が、社会保険料を納めることができないほど資金繰りを悪化させていると知れば、いずれ自社に対する支払いも滞ると取引先は不安を感じることになります。

そのため掛け取引は中断し、すべて現金決済による方法でのみ取引可能と変更される可能性もあるでしょう。

また、取引量を抑えられたり、場合によっては取引自体打ち切られたりする可能性があります。

商売自体できなくなる

社保滞納による会社への影響として、商売自体ができなくなることが挙げられます。

差し押さえの対象となる不動産や設備、預貯金などは事業継続において欠かすことのできないものです。

そのため必要な財産が差し押さえられてしまうと、商売自体できなくなる可能性があり、結果として廃業や倒産に追い込まれてしまいます。

社会保険料の時効と未払い分の特例

社会保険料の時効と未払い分の特例について、下記に分けて解説します。

  1. 社会保険料の時効
  2. 厚生年金保険料の時効の特例

社会保険料の時効

加入義務のあるケースに該当するのにもかかわらず、社会保険未加入の場合には加入義務が発生した時点から社会保険料未払いであるといえます。加入手続を行い、過去の社会保険料についても納めることが必要です。

社会保険料の時効は、納期限の翌日から2年を経過した日になります。未納分の時効も2年です。そのため、2年より前の社会保険料に関して支払う義務はないとも考えられます。

ただし実際には、よっぽどのことがない限り時効は成立しません。督促は時効更新の事由になるためです。督促が行われる限り時効が成立しないことから、法的な時効は存在するものの現実的にはほとんど成立しないと考えられます。

厚生年金保険料の時効の特例

社会保険のなかでも、厚生年金保険料の納付額は従業員の将来の年金受給額に関わってくるものです。そのため、厚生年金保険料について、事業者の納付や届出が明らかでないときは特例により以下の行為が認められます。

  • 給付対象とするため日本年金機構が年金記録訂正を行うこと
  • 時効消滅後も事業者は保険料を納付できること

日本年金機構は時効消滅後も保険料の納付を推奨しています。特例対象となる保険料を納付しないときは、事業者の事業所名や役員名が特例法第3条に基づき公表される可能性もあるため注意しましょう。

社会保険料の滞納問題を解決する方法

社会保険料の支払いができず、滞納してしまったままでは健全な会社経営はできません。

督促状や催促を無視し続ければ、最終的に財産を差し押さえられてしまうなど、事業継続は難しくなるでしょう。

そこで、社会保険料を滞納している問題を解決する方法として、次の3つを検討することが必要です。

  1. 行政に相談する
  2. 専門家に相談する
  3. ファクタリングを活用する

それぞれの解決方法について説明します。

行政に相談する

社会保険料が支払えず、滞納状態から抜け出すことができない場合には、年金事務所など行政に相談しましょう。

相談はできるだけ早くすることが必要であり、どれだけ遅くなったとしても督促状が届いた段階では連絡することが必要です。

行政に相談する内容としては、次の2つが挙げられます。

  1. 納付猶予
  2. 分納

それぞれの相談内容について説明します。

納付猶予

社会保険料の支払いが一時的に困難である場合など、納付猶予を申請することを検討しましょう。

災害で財産が相当な損害を受けたことで、厚生年金保険料など納めることが困難になった場合には、申請に基づいて社会保険料納付を猶予してもらえることがあります。

納付の猶予を受けずに社会保険料も納めないままの状態を続けると、納付期限経過による督促状送付を受けます。

さらに督促状の指定期限を経過すれば延滞金が発生するだけでなく、財産を差し押さえられることになるため、はやめに年金事務所へ相談することが必要です。

なお、納付の猶予の制度は、次のような種類があります。

  • 災害により財産に相当な損失を受けた場合の納付の猶予(災害による納付の猶予)
  • 災害等を受けたことにより納付困難となった場合の納付の猶予(通常の納付の猶予)
  • 届出遅延による遡及した月分にかかる保険料に関する納付の猶予(届出が遅延したことによる納付の猶予)

詳しくは、日本年金機構の「厚生年金保険料等の納付の猶予」を参考にしてください。

分納

滞納している厚生年金保険料などを一度に納付すると、事業を継続させることが困難になる場合において、一定要件に該当すれば分割納付できる仕組みも活用できます。

納付すべき厚生年金保険料などの納期限から6ヶ月以内に「換価の猶予」を申請しましょう。

換価の猶予とは、税金を一括納付すると事業継続できなくなる恐れがあると認められる場合、申請に基づき差し押さえ財産の売却が猶予される制度です。

換価の猶予が認められれば、納付しなければならない厚生年金保険料などを一定の猶予期間内に分割して納付すればよいとされ、猶予期間中の延滞金の一部も免除されます。

猶予期間中は毎月分割した社会保険料の納付が必要ですが、通常の社会保険料は継続して支払うことも必要である点には注意しておきましょう。

詳しくは、日本年金機構の「厚生年金保険料等の換価の猶予」を参考にしてください。

専門家に相談する

社会保険料の滞納問題を解決したいものの、事業継続自体難しく破産なども視野に入れるのであれば、弁護士など専門家に相談しましょう。

年金事務所などに相談しても解決に至らず、破産なども検討しなければならない状況においても、従業員の厚生年金の加入期間が短縮されることはありません。

社会保険料の支払いが大きな負担となり、さらに資金繰りも悪化してしまうことが予想されるのであれば、破産を検討することも手段の1つです。

法人破産では、法人の債務は免除されるため、社会保険料の支払い義務も消滅します。

ただし、法人格が持分会社で、その無限責任社員の方については法人破産後も社会保険料を負担する義務が残ります。

また、個人事業者の場合には自己破産しても社会保険料は免責されないため、法人と個人事業主では免除されるか否か異なる点にも注意しておきましょう。

ファクタリングを活用する

社会保険料の滞納問題を解決するには、支払いに充てる資金が必要であるため、ファクタリングを活用することも検討しましょう。

ファクタリングとは、中小企業に近年注目されている資金調達方法の1つですが、売掛債権をファクタリング会社に売って換金するサービスです。

商取引では売掛金が発生しますが、1ヶ月または2ヶ月先にならなければ入金されることはありません。

しかしファクタリングを利用すれば、最短即日現金化することができるため、滞納している社会保険料に充てることができます。

ファクタリングでも審査が行われますが、借入れの審査のように税金滞納や債務超過で通らなくなることはなく、売掛先の信用力が重視されます。

そのため社会保険料を納めることができず、滞納している場合でも利用できる方法であるため、ファクタリングを活用して資金調達し、滞納状態を解消することをおすすめします。

ファクタリングの利用方法とは?仕組みと注意点について簡単に解説

なお、ファクタリングをご利用の際は、PMGへご相談ください。PMGでは、売掛債権早期資金化事業による早期の資金調達をサポートしています。安心できるサービスのみを提供しているのが特長の1つです。コンサルティングによる細やかな相談にも対応しております。

会社解散や倒産後の未払いの社会保険料の扱い

解散とは会社法に定める事由で会社を解散することです。倒産は法的な定義がなく、一般的には会社を運営できなくなる状態を表します。

解散や倒産で消滅した法人に社会保険料支払いの義務はありません。法人の消滅によりすべての債務もなくなるためです。社会保険料の滞納や未払いがあっても消滅した法人が法的支払う義務はなくなります。

ただし、財産を隠す目的で解散した場合などその限りではありません。

まとめ

社会保険料を滞納し続けると、電話や郵送での督促が行われ、放置していたり納めなかったりすれば会社の財産を差し押さえられることになります。

事業用の資産を差し押さえられてしまうと、事業運営に支障をきたすことになり、会社経営を続けることもできなくなるでしょう。

早期に問題解決するためにも、年金事務所などに相談することが必要ですが、社会保険料の支払いに充てる資金を調達するのならファクタリングがおすすめです。

ファクタリングは、税金滞納や債務超過、赤字決算でも利用できる資金調達の方法であり、審査では売掛先の信用力が重視されます。

最短即日で資金調達できる方法であるため、滞納状態を早期に解消したいのであれば、うまく活用することをおすすめします。