コーチングとは、相手の話に耳を傾けつつ、本人からいろいろな考え方や行動の選択肢を引き出すことです。
観察しながら、質問や提案などをして、目標達成に向けた本人の内面にある答えを引き出します。
あくまでも気づいてもらうことに重きを置き、目標達成に向けたサポートをするという手法です。
そこで、コーチングの意味や種類、ビジネスに活かすコツを詳しく解説していきます。
コーチングの意味
「コーチング」とは、対話を重ねるコミュニケーションを通し、相手のスキル・知識・考え方を活かして行動し、目標達成の支援をする手法です。
「コーチ」とは「馬車」のことであり、大切な人を望む場所まで送り届ける意味として使われていました。
そのためコーチングは、目標達成までのプロセスを支援することを意味します。
コーチングをする人がコーチとなり、以下を目指した対話を作っていきます。
- 新たな気づきを増やす
- 視野を広げる
- 考え方や行動の選択肢を増やす
- 目標達成への行動を促す
先導や強制はせず、主体性を持って実現してもらう対話を行います。
基本的に教えたりアドバイスしたりではなく、問いかけて聞き、本人からいろいろな考え方や行動の選択肢を引き出していきます。
会社組織においてもリーダーやマネージャーとして活躍する人材に求められる能力といえますが、以下の2つを説明します。
- ティーチングとの違い
- カウンセリングとの違い
ティーチングとの違い
「ティーチング」とは、知識や身につけてもらうための指導方法の1つです。
目的を達成するための知識とスキルを教えるため、たとえば教師と生徒、上司と部下のような指導の場で実践されることが多いといえます。
本人に正解に気づいてもらい、答えを導き出してもらうのではなく、先に回答を教えて学んでもらいます。
コーチングは管理職育成や部下へのマネジメントで実践されるのに対し、ティーチングは新人社員への教育や若手に対する指導などで実践されることが違いです。
カウンセリングとの違い
「カウンセリング」とは、抱える悩みや不安を克服・解決するための心理的なサポートです。
コーチングはまず、達成したい目標の確認や現状と課題の分析、必要な要素などを洗い出してサポートします。
そのため目標は決まっているのものの、その道筋や手段がわからない人や、理想と現実にギャップを感じている人に対する手法です。
その一方で、カウンセリングも現状分析から始めるものの、目標を明確に設定するわけではありません。
不安や悩みを抱えていたり自信が持てなかったりといた人への手法に適していることが違いです。
コーチングの種類
コーチングは、主に以下の6つの種類に分けることができます。
- ライフコーチング
- ビジネスコーチング
- セルフコーチング
- エグゼクティブコーチング
- メンタルコーチング
- NLPコーチング
それぞれ簡単に説明します。
ライフコーチング
「ライフコーチング」とは、生き方や人生に関するコーチングです。
理想的な人生を送るためにどうすればよいか、生きていく上で障害となる部分を取り除くにはどうすればよいかなどをテーマとしてコーチングを行います。
ビジネスコーチング
「ビジネスコーチング」とは、ビジネスにおける目標を達成するためのコーチングです。
自発的に行動できる従業員を育成することや、組織の目標を達成するなどのビジネスにおける成果に重点を置いたコーチングといえます。
セルフコーチング
「セルフコーチング」とは、自分がコーチになって目標達成に向けた行動を考えるコーチングです。
誰を頼るわけではく、自分自身と向き合うためいつでもスタートできるメリットはあるものの、挫折の回避の判断などが難しいことがデメリットといえます。
エグゼクティブコーチング
「エグゼクティブコーチング」とは、組織の経営陣を対象としたコーチングです。
幹部候補者の育成や意思決定の質向上、チームビルディングなどの目的で実践されるコーチングといえます。
メンタルコーチング
「メンタルコーチング」とは、パーソナリティ形成を支援するコーチングです。
精神面に着目し、苦手意識を克服することや、セルフコントロールする方法を身につけるためのコーチングといえます。
NLPコーチング
「NLPコーチング」とは、日本NLP能力開発協会の商標「NLP」を応用したコーチングです。
卓越したコミュニケーション体系を、心理学・言語学の観点でコーチングに融合させたコミュニケーション技術といえます。
顕在的または言語的に理解している領域だけでなく、思考・感情・行動の無意識の連鎖に関する領域にもアプローチします。
コーチングの流れ
コーチングにより高い効果を期待するのであれば、以下の4つの流れで進めていきましょう。
- 課題の確認
- 目標の明確化
- 計画の策定
- 経過の観察・フォロー
それぞれの手順を説明します。
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課題の確認
コーチングの前に、まずは仕事上において部下にどのような課題があるのか確認しましょう。
上司は部下との対話がしやすい雰囲気をつくるため、まずは雑談から始めることも必要です。
考えや感情を整理した上で、抱えている悩みや不満などを本音で話ししてもらえるように、色々な内容について尋ねていきます。
目標の明確化
コーチングにより、最終的にどのような状況を望んでいるのか、達成したい目標を明確化しましょう。
何が目標達成の妨げになっているのかを明確にし、できる限りモチベーションを下げたり否定したりないようにヒアリングしていきます。
計画の策定
コーチングにより達成したい目標に向けて、取り組むべき行動の計画を策定します。
行動して成果につなげることができるように、段階ごとの計画を立てていくとステップを踏みやすくなります。
現実的な視点と前向きな批判を交えつつ、計画の精度を高めていけば集中して取り組みやすくなるでしょう。
経過の観察・フォロー
コーチング後も放置せず、定期的に部下への声掛けをしながら、経過の観察やフォローを行います。
部下の様子を見守りつつ、声掛けなども必要ですが、その際は達成状況や方向性の確認を踏まえたフォローを行っていきます。
コーチングのメリット
コーチングのメリットは、相手の考える力を育み、自発性・主体性・応用力・再現性などを高められることです。
個性や内に秘めた可能性を存分に引き出し、活かすことにつながります。
特に自主的な行動を求めたいときに機能する手法といえるため、実践することによるメリットは以下の3つと考えられます。
- 人材育成に役立つ
- 信頼関係を築ける
- スキルが身につく
それぞれ説明します。
人材育成に役立つ
コーチングのメリットは、相手の考える力を伸ばし、自主性を高めるなど人材育成に役立つことです。
仕事の流れや環境にまだ慣れていない人にコーチングを行うことにより、抱えている疑問や悩みを解決してもらいやすくなり、自発的な行動につなげることができるでしょう。
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信頼関係を築ける
コーチングのメリットは、積極的にコミュニケーションを取るため、信頼関係の構築につながることです。
意見を交換したり悩みを打ち明けたりなど、頻繁にコミュニケーションを取ることで上司と部下の間で信頼関係を築くことができれば、仕事上の課題や問題も迅速に解決しやすくなるでしょう。
スキルが身につく
コーチングのメリットは、現状把握や目標設定による行動などのスキルが身につくことです。
たとえばセルフコーチングを行うことで、目標設定・実行・評価・見直しのPDCAサイクルを迅速に進めることができ、成長しやすくなります。
さらにコーチを付けてコーチングしてもらいつつ、軌道修正できればセルフコーチングの効果を向上させ、自身のスキルアップ効果が高まるでしょう。
コーチングのデメリット
コーチングにはいろいろなメリットがある反面で、個別対応が求められるため多人数へ一度に行うことは難しいと考えられます。
また、相手に知識や経験、能力がなければ効率も下がります。
そのため新入社員の集合研修のような、経験や知識がまだない多人数の方へのコーチングは効率的といえません。
以上を踏まえたコーチングのデメリットは、主に以下の2つです。
- 効果が出るまで時間がかかる
- 専門的スキルが必要になる
それぞれ簡単に説明します。
効果が出るまで時間がかかる
コーチングのデメリットは、自主性を促す手法のため、効果が出るまでに時間がかかることです。
実践しても効果が出なければ、何を目的に行っているのかわからなくなってしまいます。
そのため時間に余裕を持って、長期的な視点ではじめることが必要です。
専門的スキルが必要になる
コーチングのデメリットは、専門的なスキルが必要であることです。
まず、コーチの知識やスキル、経験が足りていなければ期待していたような効果があらわれにくいといえます。
非効率的な手法となる恐れがあるため、コーチの専門的スキルを高めることが必要です。
コーチングで必要なスキル
コーチングで必要となるのは、以下の3つのスキルです。
- 傾聴
- 質問
- 承認
それぞれ説明します。
傾聴
「傾聴」とは、単に話を聞くのではなく、本音・感情・背景などを読み取るために聴くことです。
深部まで話を聴くことや、話し方・しぐさ・表情・姿勢などに注意を払うことが必要となります。
聴いた話に共感して相手をありのまま受け入れることで心を開いてもらいやすくなり、信頼関係が築ければ自らで道を切り開いてくれるようになるでしょう。
質問
「質問」は、相手の考えを引き出し、自らで答えを導き出してもらうために行います。
状況や心境に応じた適切な質問を投げかけ、自身で考えてもらえるきっかけを与えます。
その結果、本人自身で答えを見い出すことができるでしょう。
仮に間違いを正し指摘したとしても、誰もが素直に他人の言葉を受け入れられるとは限りません。
しかし自身で気がついたことなら、これまでの行動などを反省し、改めやすいと考えられます。
本人が自分で成長できるような気づきの機会やきっかけになる質問をしていくことが必要です。
承認
「承認」とは、長所を褒めたり存在を認めたりなど、相手を承認することです。
お世辞を言うのではなく、相手の良いところを見つけて褒めていくことといえます。
本当にすごいと思っていることでも、言葉や態度に出さなければ相手には伝わりません。
できるだけ言動であらわし、相手に伝わるように言動で示していきましょう。
褒められたり認められたりした相手は、存在を認めてもらえたことで気持ちを前向きにとらえることができ、コーチとの信頼関係も生まれやすくなります。
コーチングをビジネスに活かすコツ
コーチングをビジネスに活かすためには、以下の3つのコツを意識して進めていくとよいでしょう。
- スキルを身につける
- コーチング対象か見極める
- 資格を取る
それぞれ説明します。
スキルを身につける
コーチングを成功させるのなら、コーチにも一定レベルの知識・技術・経験が求められるため、まずはそのスキルを身につけましょう。
相手との対話において、呼吸やリズムを合わせて話し方にも気を配ることが必要です。
たとえばコーチング技術の鍛錬していない上司がコーチになると、部下は何を考えればよいのかわからなくなってしまいます。
混乱を招かないためにも、鍛錬を積んだコーチの存在が不可欠です。
コーチングのスキルは、初心者向けの本やビジネス書を参考にする方法や、教育事業会社などの提供するeラーニングがあります。
視覚的に情報を学ぶことができるため、コーチングを具体的にイメージしやすいといえます。
また、企業や団体などが開催しているセミナーや研修に参加すれば、体系的にコーチングに関して学ぶことも可能です。
コーチング対象か見極める
コーチングは、本人が目標を達成するための行動変容を促す技術であるため、コーチングすべき内容が欠けていると効果はでません。
そのため、目標が定まっていない人や目標達成に対する意欲がない人、さらに達成できる能力を備えていない人を相手に行っても意味がないといえます。
コーチングする内容自体が欠如していると考えられるため、ティーチングを活用したほうが効果は期待できるでしょう。
また、緊急の課題や仕事に対するコーチングも、効果を期待することは難しいといえます。
資格を取る
コーチングに国家資格などはないものの、適した資格を取得することもコツとして挙げられます。
たとえば日本初のコーチ認定制度である一般財団法人生涯学習開発財団の認定コーチ資格では、コーチングプログラムを履修して実践経験を積むことができます。
日本のコーチング資格としては、初心者に適しているため取得を目指すとよいでしょう。
他にも一般社団法人日本コーチ連盟(JCF)の認定コーチ資格では、コーチとして活躍したい人向けの資格と、インストラクターになりたい人向けの資格があります。
また、国際コーチ連盟(ICF)の認定を受けている国際的な資格は、連盟の一定基準を満たし、認定された外部団体や組織でトレーニングを受ければ取得できます。
まとめ
コーチングは、会社経営における人材育成や目標設定で導入することにより、従業員の自己成長や自発的な行動を促すことにつなげられるでしょう。
本人自らが考え、自己を成長させたり目標達成したりといったプロセスを導き出していきます。
そのため知識や経験がある程度高い従業員には有効な手法である一方、新卒社員などの研修では効果が出にくいといえます。
また、それぞれの従業員の知識や経験などを見極めた上で実施しなければ、有効な手法につながらないため、前段階での準備も必要と認識しておきましょう。