ファクタリングの審査は甘いと一般的にはいわれています。
銀行融資と比較した場合はもちろんのこと、同じ売掛債権でも手形を割り引くことで資金を調達できる手形割引と比べても、ファクタリングの審査は甘いといえるでしょう。
しかしこれは、ファクタリングが銀行融資や手形割引とは異なり、お金を借りて手元の資金を増やす方法ではないからです。
審査が甘いと認識されているものの、落ちてしまう場合もあるため、必ずしも利用できるわけではありません。
むしろ審査が過剰に甘いとされるファクタリング会社と契約すると、思わぬトラブルに巻き込まれるリスクが発生します。
そこで、ファクタリング審査の甘い業者について、審査の基準や落ちる理由、通るために押さえておきたいコツなどを紹介していきます。
目次
審査の甘すぎるファクタリング会社の危険性
審査の甘いファクタリング会社のほうが、スムーズな資金調達につながるといえます。
しかし甘すぎる審査には注意してください。
ファクタリングで資金を調達する際、ファクタリング会社に支払う売買手数料は、審査で様々なことを加味して決定されます。
審査なしで契約を結ぶことは、ファクタリング会社にとって大きなリスクになるため、正規の業者であれば必ず必要書類提出のもとで審査が行われるはずです。
仮に審査なしの甘すぎるファクタリング会社の場合、法外な表向き売買手数料とする利子を請求される恐れや、償還請求権付きの契約を結んでしまうリスクが高くなります。
「償還請求権」とは、ファクタリングにおいては売掛先の倒産で回収できなくなった売掛金の責任を、ファクタリング会社から利用者へ求めることです。
この償還請求権が付いたリコース契約は、法律上、「貸付け」として扱われるため、銀行免許や貸金業免許がなければ取り扱いできません。
貸金業登録をしていない業者が表向きはファクタリング契約であることを主張し、償還請求権付きの契約を結ぼうとする場合には、悪質なヤミ金融業者と判断できるため契約しないでください。
ファクタリング審査の基準
ファクタリングは、売掛金を売ってお金に換える方法であるため、審査は銀行融資などの借入れ審査とは異なる基準で行います。
そのためファクタリング審査においては、主に以下の3つの基準を重視し、買取可否や買取金額が決定していきます。
- 売掛先の信用力
- 代金回収の確実性
- 申込者の信頼性
それぞれの基準について説明します。
売掛先の信用力
ファクタリング審査の基準として、最も重視するのが売掛先の信用力です。
銀行から融資を受けるときなど、お金を借りるときに審査では申込者の信用力や返済能力が重視されます。
しかしファクタリングの審査では、申込者の信用力よりも確実に売掛金が回収できるのか、売掛先の信用力を重視します。
そのため借入れの審査では不利となる赤字経営や税金滞納、債務超過のケースでも、ファクタリングなら審査に通ることもめずらしくありません。
申込者の信頼性
ファクタリング審査の基準として、申込者の信頼性もある程度重視されます。
なぜファクタリングの審査で売掛先の信用力を重視するのかというと、売掛金の回収の見込みが重要だからです。
しかし信頼できない申込者と2社間ファクタリングで契約してしまうと、回収した売掛金をファクタリング会社に渡すことなく、別の支払いに流用するなど使い込む恐れがあります。
自転車操業を繰り返しているケースや、ヤミ金融業者などから借入れがある場合などは、特に警戒され審査に落ちる可能性が高いと考えられます。
仮にファクタリングの審査にとおり、契約できた場合でも、手数料は高めに設定されると留意してください。
代金回収の確実性
ファクタリング審査の基準として、需要とされるのが代金回収の確実性です。
信用力の低い売掛先の債権をファクタリング会社が買い取った場合、期日に回収できず大きな損失を負う恐れがあります。
そのため申込者と売掛先の取引履歴などから、これまで支払い期日に遅れず入金されているかなど確認し、確実に回収できる売掛金か判断します。
申込者と売掛先の取引履歴がない場合や浅い場合は、代金回収の確実性が低いと判断され、審査に落ちてしまうこともあります。
審査が甘いファクタリングの特徴
審査の甘いと感じるファクタリングは、主に以下の4つに該当するケースと考えられます。
- 必要書類が少ない
- オンラインで手続が完結する
- 売買手数料は高い
- 買取できる債権額面の範囲が広い
それぞれ説明します。
必要書類が少ない
審査が甘いと感じるファクタリングとは、必要書類が少ないケースです。
一般的に、ファクタリングでは銀行融資のように多岐に渡る書類を求められることはありません。
その中でも特に必要書類が少ないファクタリング会社の場合、審査が甘いと感じることが多いようです。
ただし何の書類も提出不要とする場合や、請求書や売掛先との取引履歴を確認できる通帳の写しなども不要とするケースにおいては、本来行われるはずの審査が実施されていない恐れもあります。
無審査でファクタリング契約を結ぼうとする業者は、表向きファクタリングを装う悪徳業者の可能性もあるため、十分に注意してください。
少ない書類で対応するファクタリング会社のほうが審査は甘いと感じやすいものの、安易に契約することは危険を伴います。
オンラインで手続が完結する
審査が甘いと感じるファクタリングとは、オンラインで手続が完結するケースです。
近年では全国規模で営業所を設けるファクタリング会社なども増えつつあるものの、多くは首都圏を中心としたエリアに本社や営業所が存在しています。
そのためファクタリングを利用したくても、窓口まで出向くコストや時間、手間などが気になり諦めてしまうケースも少なくありません。
ただ、申し込みや契約、入金までの一連の手続をオンラインで完結できるファクタリングサービスなども登場しており、わざわざ窓口まで出向く必要がないことで審査が甘いと感じることもあるようです。
オンラインによるファクタリングは、インターネットを通じてファクタリング会社のホームページにある専用フォームから、必要項目を入力したり必要書類をアップロードしたりといった方法で申し込みます。
そのため対面による確認はないため、審査も甘いと感じやすいと考えられますが、入力ミスや提出書類に不備があれば審査に通らなくなるため注意してください。
オンラインファクタリングとは?完全非対面のその実態について解説
売買手数料が高い
審査が甘いと感じるファクタリングの場合、売買手数料は高いことが多いといえます。
ファクタリング契約において、設定される売買手数料は、ファクタリング会社の負うリスクの高さに比例します。
そもそも売買手数料の上限が高めに設定されているファクタリング会社の場合、審査が甘いため通りやすいと考えられるでしょう。
反対に売買手数料の上限が低いファクタリング会社では、未回収となるリスクを回避するために審査を厳しくする傾向が強いといえます。
審査が甘いファクタリング会社の方が望ましいものの、売買手数料が高すぎれば受け取る現金も少なくなり、長期利用で資金繰りは悪化してしまうため注意してください。
買取できる債権額面の範囲が広い
審査が甘いと感じるファクタリングとは、ファクタリング会社が買取可能な債権額面の範囲が広いことが多いといえます。
ファクタリング会社により、買い取りできる売掛債権について、下限と上限を設けていることがあります。
たとえば50万円の少額債権を保有していても、ファクタリング会社が買取可能とする債権の下限が100万円であれば、買い取ってもらえません。
個人事業主の場合、額の小さい売掛債権を保有しているケースが多いため、ファクタリング会社の買取可能とする債権額面の範囲は必ず確認が必要です。
ファクタリングの審査に落ちる理由
審査が甘いとされているファクタリング審査ですが、落ちてしまうこともあります。
もしもファクリング審査に通らなかったときは、次の9つのいずれかの理由に該当しないか確認してみましょう。
- 売掛先の信用力が低い
- 売掛先との関係が浅い
- 売掛先が個人事業主である
- 売掛債権の入金サイトが長い
- 売掛債権の額面が低い
- 債権の性質に問題がある
- 架空債権や二重譲渡が疑われる
- 申込者との取引実績がない
- 申込者の信用力が低い
それぞれどのような理由で落ちてしまうのか説明します。
ファクタリング審査に落ちる12の原因と3つの審査基準を徹底解説
売掛先の信用力が低い
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、売掛先の信用力が低いことが挙げられます。
先にも説明したとおり、ファクタリングの審査では売掛先の信用力を重視します。
期日に売掛金が支払われ、回収できる債権でなければファクタリング会社は買い取りをしません。
財政状況が悪化している会社や経営難に陥っている企業の売掛債権を買い取ると、期日に支払いされず未回収となり、ファクタリング会社が大きな損失を負うからです。
そのためファクタリングを利用する場合は、できるだけ信用力の高い売掛先の債権を売却したほうが審査に通過しやすくなり、設定される売買手数料も安く抑えられる可能性があります。
売掛先との関係が浅い
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、売掛先との関係が浅いことが挙げられます。
申込者と売掛先の取引実績がない場合や浅いときなどは、売掛金の期日に入金されない恐れもあります。
特に新規の取引先の債権で、まだ期日を迎えていない場合は一度も入金された実績がないため、ファクタリング会社も売掛金を確実に回収できると判断しにくいといえます。
そのためファクタリング会社に売却する売掛債権は、これまで期日に遅れず入金された実績のある売掛先の債権を選んだほうが、審査では有利になると考えられるでしょう。
売掛先が個人事業主である
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、売掛先が個人事業主であることが挙げられます。
個人事業主は、法人のように法務局で事業内容など登記されているわけではないため、事業実態を確認しにくいといえます。
一般的に法人よりも社会的な信用度が低いと言われているため、売掛先が個人事業主の場合は買い取りできないとしているファクタリング会社も少なくありません。
業績が好調な個人事業主の場合でも、審査に落ちてしまう恐れはあると留意しておいてください。
売掛債権の入金サイトが長い
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、売掛債権の入金サイトが長いことが挙げられます。
売掛先から売掛金が入金されるまでの期間が長い場合、期日までに売掛先が倒産してしまう恐れもゼロではありません。
倒産すればファクタリング会社は売掛金を回収できなくなるため、入金までの期間は短いほうが審査では有利といえます。
売掛債権の額面が低い
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、売却を希望する売掛債権の額面が低いことが挙げられます。
ファクタリング会社が設定している買取可能とする売掛債権額面の下限に満たなければ、そもそも買い取りはされません。
たとえば買取可能な売掛債権額面の下限が300万円のファクタリング会社に、50万円の売掛債権を買い取ってもらうように申し出ても断られてしまいます。
債権の性質に問題がある
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、売却を希望する売掛債権の性質に問題があることが挙げられます。
「不良債権」とは、財産価値を失い回収できなくなった債権であり、貸し倒れとなった状態の債権です。
回収できない状態の売掛債権をファクタリング会社に提示しても、当然審査には通ることはありません。
架空債権や二重譲渡が疑われる
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、売却を希望する債権が架空債権の場合や、二重譲渡が疑われるケースが挙げられます。
「架空債権」とは、請求書を偽造したり決算書を捏造したりしたことによる存在しない債権です。
そもそも売掛金は目に見えない資産のため、巧妙な手口で請求書や決算書を捏造し、架空債権を作り上げる悪質なケースも存在します。
また、すでに別のファクタリング会社に売却済の売掛債権を別の業者に持ち込む「二重譲渡」が懸念されるときも、審査には通りません。
請求書や決算書の捏造は私文書偽造となり、二重譲渡は違法行為です。
いずれもファクタリング会社を騙す行為であり、詐欺罪に問われることになるため、絶対に行わないでください。
申込者との取引実績がない
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、ファクタリング会社と申込者との取引実績がないことが挙げられます。
特に初回申し込みで2社間ファクタリングを利用する場合、申込者が売掛先から回収した売掛金を、ファクタリング会社に渡した実績がない状態です。
申込者と売掛先が結託し、架空の請求書を作成してファクタリング会社を騙そうとしているとも考えられます。
そのため申込者との取引実績がない場合には、審査に落ちてしまうこともあると留意しておきましょう。
申込者の信用力が低い
ファクタリングの審査は甘いはずなのに落ちてしまう理由として、申込者の信用力が低いことが挙げられます。
たとえば申込者が個人事業主の場合は社会的な信用力が低いと判断されることがあり、経営状況が悪化している中小企業では資金難に陥るリスクが高いといえます。
信用力の低い申込者の場合、売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に渡さずに、使い込んでしまう恐れがあるため審査に通りにくくなります。
ファクタリング審査に通るコツ
甘いとされているファクタリング審査でも、ときには落ちてしまうことはあります。
しかし無事に資金を調達したいのなら、ファクタリング審査に通過するために必要な次の5つのコツを押さえておきましょう。
- 信用力の高さ
- 入金サイトの長さ
- 売上とのバランス
- 譲渡禁止特約の有無
- 債権発生の根拠書類の有無
それぞれのコツを説明します。
信用力の高さ
ファクタリング審査に通るコツとして、売却する売掛債権の信用力の高さを確認しておきましょう。
信用力の高い売掛債権なら、ファクタリング会社も安心して買い取りができます。
たとえば売掛先が公的機関の場合や、上場企業や大手企業であれば、期日に売掛金が支払われないリスクはかなり低いと考えられるため審査では有利です。
入金サイトの長さ
ファクタリング審査に通るコツとして、売掛金を回収できるまでの入金サイトの長さを確認しておきましょう。
売掛先から売掛金を回収できるまでの期間はできるだけ短いほうが、ファクタリング審査では有利になります。
入金サイトが長い売掛債権は、回収までに売掛先が倒産してしまうリスクも高くなるため、期日まで2か月以内の債権を選んだほうがよいでしょう。
売上とのバランス
ファクタリング審査に通るコツとして、売上とバランスの取れている売掛債権を選択することが必要です。
たとえば月の売上300万円の事業者が、3,000万円の売掛金を買い取ってほしいと申し込んでも、売上と売掛金が見合っていないため偽造や捏造を疑われてしまいます。
譲渡禁止特約の有無
ファクタリング審査に通るコツとして、債権譲渡禁止特約が付されていない売掛債権を選びましょう。
「債権譲渡禁止特約」とは、売掛先との契約において、第三者へ債権を譲渡することを禁止する特約です。
法改正により、債権譲渡禁止特約が付された債権でも譲渡はできますが、後のトラブルを避けたいファクタリング会社は買い取りを懸念する傾向が高いといえます。
たとえば法律で有効とされている場合でも、債権譲渡禁止特約の付された債権はファクタリング審査に通りにくくなる恐れがあると理解しておきましょう。
債権発生の根拠書類の有無
ファクタリング審査に通るコツとして、債権が発生したことを示す根拠書類の有無を確認しておきましょう。
審査では、ファクタリング会社に売却する売掛金が架空のものでないことを示すために、請求書や取引実績の確認できる通帳の写しなどを提示します。
売掛金の存在を証明できるのは、たとえば以下の書類などです。
- 売掛先との基本契約書
- 売掛先からの入金が確認できる通帳
- 個別契約書
- 請求書
- 見積書
- 受注書
- 納品書
新規売掛先の売掛債権をファクタリングで利用する場合は、売掛金が発生していることを証明する請求書だけでなく、売掛先との契約書なども準備しておいたほうがよいでしょう。
書類はできるだけ多く準備したほうが、売掛先の存在を証明しやすくなり、審査落ちを回避できる可能性が高くなります。
まとめ
ファクタリングに審査は銀行融資よりも甘いと言われているものの、絶対に落ちないとは限りません。
審査では申込者ではなく、売掛先の信用力が最も重視されるため、信用力の高い債権をファクタリング会社に提示すれば買い取ってもらえる可能性は高くなります。
ファクタリングの審査で落ちてしまうことを防ぎ、スムーズに入金してもらうためには、ファクタリング会社が安心して手続を進めることができる根拠を示すことがポイントです。
そのため売掛金が実在する証明できる多くの根拠書類を準備することや、信用してもらえる対応を意識することをおすすめします。
一般的にファクタリングの審査はお金を借りるときよりも甘いため、資金繰り改善に向けた資金調達にも活用しやすいといえます。
もしも書類が揃えられないときや、ファクタリング利用に不安を感じている場合などは、PMGに気軽にご相談ください。