会社設立の流れとは?手続方法や必要書類・費用をわかりやすく解説

会社設立により、個人事業主よりも社会的な信用力が向上し、税負担なども軽減されます。

ただ、会社設立に向けて手続を進めたくても、何の書類を準備するべきか、かかる費用はどのくらいかわからなければ迷いが生じます。

この場合、前もって会社設立における流れや、設立した後で何の手続を行うべきかなど把握しておくと安心です。

そこで、会社設立の流れについて、手続方法や必要書類、かかる費用などわかりやすく解説します。

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会社設立の流れ

会社設立に向けて、具体的な手続の流れは以下の6つです。

  1. 会社概要の決定
  2. 法人実印の作成
  3. 定款の作成
  4. 定款の認証
  5. 資本金の払い込み
  6. 会社設立登記の申請

それぞれ説明します。

1.会社概要の決定

会社設立にあたり、たとえば株式会社であれば以下の基本事項を「概要」として定めることが必要です。

  • 会社形態
  • 商号(会社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 資本金
  • 発起人(出資者)
  • 発起人の出資額
  • 発行可能株式総数
  • 設立時の発行株式数
  • 株式譲渡制限の有無
  • 会社設立日
  • 事業年度
  • 役員や株主の構成
  • 公告の方法

上記の項目は、後で必要となる定款にも記載する内容であるため、明確に定めておきましょう。

2.法人実印の作成

会社設立にあたり法人実印が必要となるため、社名が決まったら「印鑑」作成の手続をします。

法改正により、2021年2月15日からのオンラインによる登記申請においては、印鑑は任意とされていますが、書面申請の場合は必要です。

一般的に会社設立において作成する法人の印鑑は以下の3種類といえます。

  • 代表者印(実印)
  • 銀行印
  • 角印

上記の3つの印鑑は、セットでオンライン注文・購入できるケースも少なくありません。

ただし、手元に届くまで1週間程度かかるため、余裕を持って注文することが必要です。

3.定款の作成

会社設立において、会社運営のおいて守るべきルールをまとめた「定款」の作成が必要です。

定款には、会社の目的・事業内容・役員の任期などが記されます。

必ず記載が必要である次の「絶対的記載事項」が記されていなければ無効となるため注意しましょう。

  • 商号
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名および住所

なお、定款は以下のとおり3部製本します。

原本 公証役場で保管
謄本 法務局へ提出
保存用 会社で保管

4.定款の認証

会社設立において、作成した定款を公証人役場で「認証」する手続が必要です。

公証人役場で行う認証手続は予約制となっているため、本店所在地の公証役場に連絡し、公証人と訪問日時を事前に決めます。

なお、定款認証の手続で必要な書類は以下のとおりです。

作成した定款 3部
発起人全員の3か月以内に発行された印鑑登録証明書 各1通
発起人全員の実印 各1
認証手数料(資本金により異なる) 30,000〜50,000円
謄本代 250円×定款の枚数
収入印紙(紙媒体の場合) 40,000円
委任状(代理人申請の場合) 1通
実質的支配者となるべき者の申告書 1通

公証人役場を訪問するタイミングに合わせて、事前に郵送など定款を送付しておけば、当日スムーズに手続できます。

定款認証は、株式会社・一般社団法人・一般財団法人の3つの会社形態で必要な手続あり、合同会社では必要はありません。

なお、オンラインで定款認証する電子定款もあり、その場合は40,000円の収入印紙代がかからないことがメリットです。

5.資本金の払い込み

会社設立における定款認証が完了した後は、資本金の払い込みが必要です。

ただし定款認証後の段階ではまだ会社設立登記が完了していません。

会社の銀行口座は開設できないため、振込先は発起人の個人口座になります。

なお、登記申請の際には資本金の払い込みを証明する書類が必要です。

通帳の表紙と1ページ目と、振り込み内容が記載されているページの写しをとっておきましょう。

6.会社設立登記の申請

会社設立の登記申請手続を、法務局で行うことが必要です。

そのため登記申請で必要な以下の書類を準備しましょう。

  • 登記申請書
  • 登録免許税の貼付台紙
  • 定款
  • 発起人の決定書
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 設立時取締役の印鑑登録証明書
  • 資本金の払込があったことを証する書面
  • 印鑑届出書
  • 印鑑カード交付申請書
  • 「登記すべき事項」を記載書面または保存CD-R

印鑑届書には法人印と個人印を押印します。

申請書類に不備がなければ約10日で手続は完了します。

司法書士に手続の代理を依頼する場合には、別途、委任状と報酬が必要です。

会社設立における費用

会社設立において必要な費用は、主に公証役場で行う定款認証の手続費用や、法務局で行う登記申請の費用です。

登記申請等を司法書士に依頼する場合には、別途報酬が発生します。

会社形態を株式会社と合同会社のどちらにするかによって、以下の通り費用に差があります。

項目 株式会社 合同会社
定款用収入印紙代 40,000円(電子定款は不要) 40,000円(電子定款は不要)
定款の謄本手数料 約2,000円(250円/1ページ) 不要
定款の認証料
  • 資本金100万円未満…30,000円
  • 資本金100万円以上300万円未満…40,000円
  • 資本金300万円以上…50,000円
不要
登録免許税 150,000円または資本金額×0.7%のいずれか高い金額 60,000円または資本金額×0.7%のいずれか高い金額

会社設立後に必要な手続

会社を設立した後は、それで手続が終わりではありません。

税金や社会保険、労働保険など、他にも次の手続を行うことが必要です。

  1. 税金関連
  2. 社会保険関連
  3. 労働保険関連
  4. 許認可関連
  5. 銀行関連

それぞれ説明します。

税金関連

会社設立後は、事業運営において納める必要のある税金関連の手続も必要です。

登記完了後、法人設立届出書など必要書類を税務署に提出し、都道府県税事務所や市町村役場でも届出を行います。

税務署で行う手続は、法人税・消費税・源泉所得税に関連する以下の届出です。

  • 法人設立届出書(会社設立時に提出)
  • 青色申告の承認申請書(青色申告を選択し適用条件に該当する場合に提出)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(従業員を雇用する場合に提出)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(特例適用の場合に提出)

都道府県税事務所や市町村役場で行う手続は、法人住民税・法人事業税・固定資産税などに関することです。

設立届出書や法人登記簿謄本などの書類を求められます。

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社会保険関連

会社設立後は、健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入する手続や、年金事務所での届出が必要です。

仮に経営者1人のみの会社を設立した場合でも、会社設立における社会保険への加入は必須とされています。

役員や従業員の人数に関係なく忘れずに手続しましょう。

手続は、会社設立から原則として5日以内に所轄の年金事務所で行います。

ただし届出には会社設立における商業登記簿謄本が必要となるものの、会社設立から5日以内に入手できない場合が多いため、実務上は期限を過ぎてしまい違いです。

そのため事前に年金事務所などに連絡を入れておくとよいでしょう。

労働保険関連

会社設立後に、従業員を雇用するときには労災保険と雇用保険の加入手続が必要です。

社会保険の加入状況・労働条件・給与の支払いに関する規程などの届出を行いますが、その際に社会保険に関する資料や労働条件に関する規程などを提出します。

労働基準監督署で手続を行い、ハローワークで雇用保険の手続も済ませましょう。

許認可関連

会社設立において、一部の業種では行政機関の許認可が必要となります。

開業の際に許可や認可が必要とされている業種の場合、個人事業主で事業を始めるときに取得しているケースも見られます。

しかし多くの場合、個人事業主で取得した許認可は、法人成りにより会社へ引き継ぐことはできません。

法人として、新たに許認可を申請し、取得する必要があるため注意してください。

新たに許認可が必要となる代表的な業種と、申請先は以下の通りです。

業種 申請先
飲食店 保健所
建設業 都道府県庁
酒類販売業 税務署
理・美容業 保健所
医療法人 保健所等
人材派遣業 労働局
リサイクルショップ 警察署

許認可を取得せずに事業を営むと、罰則が課されます。

なお、法人として許認可を取得する場合、個人事業主で使っていた許認可の廃業届も同時に必要です。

銀行関連

会社設立後は、代表者個人の銀行口座で資金を運用するのではなく、法人名義の銀行口座を開設しましょう。

法人カードを発行する場合、引き落とし口座に指定できるのは原則、法人名義の銀行口座です。

法人名義の銀行口座開設においては、金融機関で所定の審査を行うため、個人名義の銀行口座より開設まで時間がかかる傾向が見られます。

そのため口座開設の申し込みは余裕を持って行うことが必要です。

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会社設立のメリット

会社を設立することは、個人事業主で事業を運営するよりも以下の9つのメリットがあります。

  1. 有限責任で経営できる
  2. 社会的信用を得ることができる
  3. 資金調達しやすくなる
  4. 税金を抑えることができる
  5. 経費計上できる費用が増える
  6. 自由に事業年度を設定できる
  7. 個人と法人の資産を分離できる
  8. 赤字による欠損金を10年間繰り越しできる
  9. 相続税対策になる

それぞれ説明します。

個人事業主と法人の違いとは?法人化したほうがよいケースを解説

有限責任で経営できる

会社設立により、事業運営を有限責任で行うことができます。

個人事業主の場合、事業における責任はすべて事業者が負うことが必要です。

事業で借りたお金や仕入先への支払い、税金などもすべて個人の負債としてすべての責任を負担する「無限責任」での事業運営となります。

しかし法人では、代表者個人が法人名義の借金などの全責任を負う必要のない「有限責任」での事業運営が可能です。

個人保証で借りた借金以外は、責任の上限は出資金の範囲に留まるため、出資額以上の支払い義務は発生しません。

万一事業が悪化したときのリスクを最小限に抑えることができるのは、会社設立のメリットといえます。

社会的信用を得ることができる

会社設立により、社名・所在・資本金などの情報はすべて法務局で登記することになり、その情報は誰でも閲覧できます。

法人としての責任が発生することで、個人事業主のときよりも社会的な信用力が向上することはメリットです。

取引先や銀行、株主などのステークホルダーから信用を得ることができれば、新規契約や資金調達にもよい影響を与えます。

資金調達しやすくなる

会社設立により、社会的な信用が上がることで、資金調達しやすくなることはメリットです。

たとえば銀行から融資を受ける審査では、事業と個人の線引きが曖昧な個人事業主よりも、代表者と資産が分離・管理されている法人のほうが有利になります。

また、株式会社であれば、新規株式を発行して投資家に出資してもらうことにより、返済義務のないお金を調達できます。

社債発行など、個人事業主では使えない資金調達の方法が、会社設立によって可能になることはメリットです。

税金を抑えることができる

会社設立において、個人事業主と法人では課税の仕組みが異なるため、法人では税金を抑えることができます。

まず個人事業主の所得税は、累進課税であるため所得が増えれば税率も段階的に上がることとなり、最大税率45%が適用されます。

会社に課税される法人税は、資本金1億円以下の法人なら所得800万円以上で税率23.20%、800万円以下で税率15%と一律です。

所得が増えれば税率が上がる個人事業主よりも、会社のほうが節税効果は高くなることはメリットといえます。

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経費計上できる費用が増える

会社設立において、経費計上できる費用が増えることはメリットです。

たとえば個人事業主でも、人件費・地代家賃・消耗品費・交際費・水道光熱費・旅費交通費・修繕費・通信費・租税公課など事業関連の費用は経費として認められます。

法人なら、上記に加え、経営者の受け取る役員報酬も経費として計上できます。

プライベート用と事業用の割合に応じて按分する必要もなく、業務用車両などは全額経費として扱うことが可能です。

自由に事業年度を設定できる

会社設立において、法人なら事業年度を自由に設定できます。

個人事業主の場合、毎年1月1日から12月31日までの1年間が会計期間となり、決算月は12月です。

法人は事業年度の決算時期を自由に設定できるため、繁忙期などを避けて決算月を決めることが可能なことはメリットとして挙げられます。

個人と法人の資産を分離できる

会社設立において、個人と法人の資産を分離できることはメリットです。

たとえば法人名義の銀行口座を開設すれば、経営者との資産を明確に分けることができ、信用度向上や経営状況把握などにつながります。

事業関連の支払いは法人カードにまとめれば、経費管理などの円滑化も可能です。

先にも述べたとおり、会社の負債を経営者がすべて責任として負う必要がないことも、個人と法人の資産(負債)が分離されている証明といえます。

赤字による欠損金を10年間繰り越しできる

会社設立後に青色申告で確定申告していれば、赤字決算により発生した欠損金は10年間繰り越しできます。

将来の一定期間の間に発生した所得と繰り越した赤字を相殺できるため、節税面で効果が見込めます。

個人事業主でも青色申告で赤字になった場合、最大3年間は純損失を繰り越せるため、法人のほうがより長く節税対策につなげられます。

法人の青色申告とは?メリット・デメリットや手続をわかりやすく解説

相続税対策になる

会社の経営者が他界したとき、相続財産の分配や財産評価において、相続税対策につながることは会社設立のメリットです。

個人事業主であれば、事業者が他界したときの財産すべてが相続の対象に含まれます。

相続税は資産の額により、最大55%の税率が適用されるため、個人から個人への相続では半分の価値で渡さなければならない恐れもあります。

しかし会社を設立し、プライベートカンパニーとして活用すれば資産分散や相続財産の評価を通し、相続税を節税できる効果が期待できます。

会社設立のデメリット

会社設立をすることで社会的な信用が上がり、資金調達においてもメリットがありますが、次の3つのデメリットには留意しておきましょう。

  1. 費用や手続が発生する
  2. 事務負担が増える
  3. 税負担が増える

それぞれ説明します。

費用や手続が発生する

会社設立におけるデメリットは、定款作成・認証などの手続や、法務局での登記申請において費用がかかることです。

手続の手間を削減するために、司法書士など専門家に依頼すれば、報酬も発生します。

株式会社と合同会社のどちらを選ぶかによって、会社設立でかかる費用や手間は変わりますが、会社の実印作成の費用などはいずれの場合でも必要です。

設立後も必要な手続が多岐に渡るため、会社設立前後には多くの手間がかかることは避けられません。

事務負担が増える

会社設立において、個人事業主として事業を運営するよりも、会計・税務に関する事務負担が増えることはデメリットです。

個人事業主のときには、単式簿記による会計処理を行っていた場合でも、法人での会計処理は複式簿記に沿った厳密な処理となります。

法人税などの申告業務も必要となるため、事務負担軽減のために税理士へ依頼すれば、顧問料など報酬の支払い負担も増えます。

税負担が増える

法人設立において、決算で赤字になっても、法人住民税の均等割は納めることが必要です。

個人事業主の場合、確定申告で赤字となった場合には所得税の納税義務はありません。

また、所得が一定以下なら、住民税は非課税です。

しかし法人住民税は、均等割と法人税割で構成されており、資本金や従業員数に応じて課税される均等割りは赤字でも納税する必要があります。

まとめ

会社設立は、個人事業主と異なり開業届を提出すれば手続が完了するわけではありません。

スムーズな設立に向けて事前に準備が必要であり、会社設立に向けた手続の後は、届出なども必要です。

そのため個人事業主として事業を営んでいたものの、法人成りで会社を設立する場合などは、必要な手続の流れや費用などを把握しておくとよいでしょう。

会社設立において不安なことがある場合には、経営コンサルタントなどに相談することで、必要資金の準備の方法などのアドバイスも受けられます。

必要な手続は多岐に渡るため、まずは相談してみることをおすすめします。

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