会社法とは、企業の設立・運営・管理・清算などに関するルールや手続について規定している法律です。
株式会社以外にも、会社法ではいろいろな種類の会社の詳細な規定を設けており、8つの編で構成される条文も多岐に渡ります。
会社経営や設立において、会社法に関する基本的な知識を押さえておくことは欠かせないといえるでしょう。
そこで、会社法について、要点・目的・ルールなど法律の基本をわかりやすく解説していきます。
目次
会社法とは
「会社法」とは、会社設立・組織運営などについて定めた法律であり、2005年成立・2006年5月1日から施行されています。
実は会社法制定まで、会社に関する固有の法律は存在せず、たとえば商法や有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律など複数の法律のルールを総称して「会社法」としていました。
しかし新たに会社法が制定・施行され、バラバラだった法律が統合され一元化されています。
会社法について、以下の2つを説明します。
- 役割
- 条文
役割
会社法の役割は、会社経営の柔軟性を高めることで、法律を活用し機動力を上げることといえます。
自社と取引先との法律関係などが明確化され、自社と取引先の保護や、利害関係者の利益確保などにつながります。
適切に会社を経営するためのルールがまとめられた法律であるため、利益を上げるために把握しておくことは欠かせないといえます。
条文
会社法は全部で8つの編で構成されており、それぞれ以下のとおり多岐に渡る条文が記載されています。
編 | 条文 | 内容 |
第1編 | 総則(第1~24条) | 会社法の全体に共通する一般的もしくは包括的な規定や事項 |
第2編 | 株式会社(第25~574条) | 株式会社の設立・株式発行の手順・会計方法・取締役機関の設置や解散などに関するルール |
第3編 | 持分会社(第575~675条) | 持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)の会社形態に関する設立・解散・清算などのルール |
第4編 | 社債(第676~742条) | 会社が発行する公募社債の発行・譲渡・社債権者集会などのルール |
第5編 | 組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転(第743~816条) | 会社組織の再編・変更・合併・会社分割・株式交換などのルール |
第6編 | 外国会社(第817~823条) | 外国の法令に準拠して設立された法人等(外国会社)が日本国内で事業活動を行う際に適用される各則 |
第7編 | 雑則(第824~959条) | 会社の解散命令・訴訟手続・非訟手続・登記・公告など幅広い分野のルール |
第8編 | 罰則(第960~979条) | 取締役等の特別背任罪・代表社債者等の特別背任罪・虚偽文書行使等の罪・取締役等の贈収賄罪・株主等の権利の行使に関する贈収賄罪など会社関連の罪に関する規則 |
なお、第2編「株式会社」には、株式会社の設立の手順をはじめ、株式発行の手続き、株主総会、会計方法など、株式会社の経営に関わる詳細な規定が記載されています。株式会社を設立するときはもちろん、会社を運営するうえでもしっかり確認しておきたい項目です
会社法における会社の種類
会社法では、新設できる会社を以下のとおり定めています。
- 株式会社
- 持分会社
それぞれの会社形態について説明します。
株式会社
「株式会社」とは、発行した株式を投資家が買い取り、出資という形式で資金を集めて経営を行う会社形態です。
日本国内では最も多い会社形態であり、出資して株式を保有する株主は、利益分配を受けたり間接的に経営に参加したりできます。
しかし実際に会社を動かし経営するのは経営者や取締役といえるでしょう。
株主と法人経営者の役割が切り離されていることが特徴といえますが、同一であることも認められています。
持分会社
「持分会社」は、株式会社と異なり所有と経営が同じ会社です。
経営権や決定権を持つ出資者と社員が同じ会社形態であり、出資者間で合意すれば会社経営における意思決定に関与できます。
持分会社は出資者の責任の範囲によって、次の3つに分類されます。
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
それぞれの持分会社について説明します。
合同会社
「合同会社」とは、会社の負債に対する責任の範囲が限定されている「有限責任社員」のみで構成される会社形態です。
2006年に会社法が施行されたことで新たに生まれた会社形態であり、出資者は社員として会社の負債について限られた範囲で責任を負います。
株式会社よりも費用を抑えた会社設立が可能であり、手続も簡素化されているためかかる時間も短いことが特徴です。
出資者は社員であり、会社の経営者となるため、出資者である社員すべてが会社の決定権を持ちます。
株式会社の株主総会に相当する意思決定の場なども必要なく、迅速にビジネスにおける決断などが可能となるでしょう。
合資会社
「合資会社」は、「有限責任社員」だけでなく、会社の負債に対するすべての責任を負う「無限責任社員」の2者で構成される会社形態です。
無限責任社員が事業を行い有限責任社員が出資するため、経営は無限責任社員のみが担当し、有限責任社員は参加しません。
株式会社と比べると設立費用やランニングコストを安く抑えることができるのは合同会社と共通しているものの、会社の負債すべての責任を負う直接無限責任社員が最低1名必要です。
その責任の重さから、次に説明する合名会社と同様、会社形態として選択されるケースはわずかといえます。
合名会社
「合名会社」は、「無限責任社員」のみで構成される会社形態です。
出資者全員が直接無限責任社員になる会社形態であるため、合資会社同様に会社が負債を抱えたときの負担が重く、個人資産を弁済に充てなければならない恐れもあります。
会社法における株式会社の規定
会社法で認められた会社のうち、最も馴染みのある会社形態が「株式会社」といえます。
株式会社は発行した株式を投資家に買い取ってもらい、出資してもらうことで資金を調達できる会社形態です。
意思決定する組織や人など多数のステークホルダーが関与することが多い会社形態でもあるため、会社法ではガバナンス強化の観点から機関設計に関するルールなど細かく規定しています。
会社法における株式会社の規定について、以下の2つを詳しく説明していきます。
- 原則の種類
- 機関の種類
原則の種類
株式会社はスムーズに会社経営を行うため、以下の2つを原則しています。
- 株主平等の原則
- 株式譲渡自由の原則
それぞれの原則について説明します。
株主平等の原則
「株主平等の原則」とは、会社法109条1項に岡野定めがあるとおり、株主はその資格に基づく法律関係について、株式数に応じて平等の取り扱いを受けるべきという原則です。
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。 |
株式の内容が同一であれば、株主への取り扱いも同一であるべきと理解されており、少数株主の権利保護に繋がっています。
また、親会社などによる支配的な株主の横暴や権利濫用から、少数株主や一般株主を保護する作用があるため、安心して投資家が出資できる役割も担う原則といえます。
株式譲渡自由の原則
「株式譲渡自由の原則」とは、会社法127条に定めがあるとおり、株式は原則として自由に譲渡できるという原則です。
株主が投下した資本回収の方法として、会社が解散したときの残余財産の分配や、配当などの場合以外に株式譲渡しかないためと考えられています。
投資者は株式購入後、保有する株式を自由に譲渡できることで投資しやすくなります。
なお、株式譲渡自由の原則の例外として、定款に定めることにより、株式譲渡は会社の承認が必要とする「譲渡制限株式」も存在します。
譲渡制限株式は、株主の参画で円滑な経営を妨げるリスクを防ぐ手段として、信頼できる株主に限定することを目的としています。
機関の種類
株式会社は、多くの利害関係者が関係することが想定されるため、意思決定などに関わる機関を以下のとおり定めています。
- 株主総会
- 取締役
- 取締役会
- 監査役
- 監査役会
- 会計監査人
- 会計参与
- 指名委員会
- 監査等委員会
- 執行役
それぞれ説明します。
株主総会
「株主総会」とは、株式会社の最高意思決定機関です。
株主が会社運営に関する重要事項を決めるための場であり、会社法ではすべての株式会社に株主総会の設置を義務付けています。
出資者である株主が集まり、以下の重要事項などを決めます。
- 会社の基本方針
- 役員や監査役の選任・解任
- 定款の変更
など
取締役
「取締役」は会社の業務執行に関する意思決定を担う役割があり、最低1名以上は必要です。
「代表取締役」は、取締役から選出される最高責任者であり、他の取締役と異なる代表権を持った立場となります。
取締役会
「取締役会」は、株式会社の業務執行に関する決定機関です。
設置するためには、取締役が3名以上必要であるため、設置しないのであれば取締役1名または2名の会社でも問題ありません。
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監査役
「監査役」とは、取締役や会計参与の職務遂行について監査する役割を担う役職であり、株主総会で選任されます。
会社が健全で適正な経営ができるように、業務や会計に関する不正がないか確認し、不正発覚の際には是正します。
監査役会
「監査役会」は、監査役3名以上で構成される機関です。
監査方針の決定や監査報告書を作成するなどの役割を担います。
なお、3名以上の監査役のうち、半数以上は社外監査役で構成されます。
会計監査人
「会計監査人」は、会社の計算書類など会計監査する機関です。
公認会計士または監査法人のみが務め、株式会社の財務諸表などの作成が適切か監査します。
会計参与
「会計参与」は、取締役と共同して貸借対照表や損益計算書などの計算書類等を作成します。
任意設置できる内部機関で、他の機関から独立性を有しており、税理士など会計専門家のみが就任できます。
指名委員会
「指名委員会」は、株主総会に提出する取締役(会計参与設置の場合は会計参与含む)の選任・解任に関する議案について決定する権限を持つ機関です。
取締役会の経営陣の選任・解任を主に議論し、株主総会に提出する取締役選任案の策定を主導し、人選に関する意図や理由をステークホルダーへ説明する責任を負います。
監査等委員会
「監査等委員会」とは、取締役の業務執行の適法性や妥当性を監査する機関です。
株式会社が定款で定めれば設置できる機関であり、設置した株式会社は監査等委員会設置会社と呼ばれます。
監査等委員会の開催は、原則、1週間前までに招集通知を発することが必要とされています。
会計監査人の選任・解任などに関する決定権限を持ち、取締役の職務執行の監査や監査報告の作成なども担当します。
執行役
「執行役」とは、指名委員会等設置会社で会社の業務執行を行う機関です。
執行役は会社法上の役員ではないものの、取締役から委任を受けて、取締役会の権限とされる業務執行の決定などを行います。
ただし経営方針の策定や株主総会の議案決定などの重要事項は、執行役に委任はできません。
会社法における組織再編方法
会社法における組織再編とは、複数の企業が統合することや、特定事業の一部または全部を他社に承継することなどです。
他にも株式取得により、親子会社化することなども含まれます。
会社の組織・体制・形態を抜本的に変えることで、編成し直すことといえますが、経営課題を解決するために実行される手段です。
会社法では、組織再編について以下の4つの方法を定めています。
- 合併
- 会社分割
- 株式交換
- 株式移転
それぞれ説明します。
合併
「合併」とは、複数の会社が1つに合わさるための手続で、次の2種類があります。
吸収合併 | 既存の会社に他の会社が吸収されることによる合併 |
新設合併 | 新設会社にすべての会社が吸収されることによる合併 |
会社が権利・義務のすべてを既存の会社へ承継させることが吸収合併であり、他の会社と共同でそれぞれの権利義務のすべてを新設会社に承継させることを新設合併といいます。
株式が対価となるものの、吸収合併においては金銭を対価とすることもできます。
会社分割
「会社分割」とは、既存の会社の一部を切り離し、切り離した部分を他の会社へ吸収させることで、次の2種類あります。
吸収分割 | 切り離した部分を既存会社へ吸収させることによる分割 |
新設分割 | 切り離した部分を新設会社へ吸収させることによる分割 |
会社が権利義務の一部を分割し、既存会社または新設会社へ承継させる組織再編行為です。
事業譲渡に類似するものの組織再編行為となるため、分割される契約関係は相手方の個別の同意が不要であることが最大のメリットといえます。
株式を対価とするものの、吸収分割では金銭を対価とすることもできます。
株式交換
「株式交換」とは、既存の会社へ他の会社の発行済株式すべてを取得させる手続です。
M&Aにおいて100%親子会社とする方法として使われます。
2社のうち1社が持株会社となり、もう1社は完全子会社化となるケースで、子会社の株主に親会社の株式を交付します。
株式移転
「株式移転」とは、単独または複数で新設の完全親会社を設立し、それぞれが保有する株式を設立した親会社へすべて移転して完全子会社になることです。
代わりに親会社がハックする株式について、割り当てを受けます。
合併のように会社自体を消滅させず、会社分割よりも多額な資金調達や長期間に渡る調整は必要としません。
そのため比較的持ち株会社化しやすいことが最大のメリットといえます。
まとめ
会社法は2006年に施行された法律であり、会社の設立・運営・清算などの規定や手続について規定しています。
制定された目的は、会社経営の柔軟性を高めることで機動力を向上させることです。
取引相手の保護や利害関係者の利益確保、法律関係の明確化などが挙げられます。
会社法上の手続やルールについて、理解を深めておくことは会社経営上、必要不可欠といえます。
経営者は会社組織や事業内容などに応じて適用される会社法の規定やその内容を把握しておくようにしましょう。