会社の業績を上げるためには、低い状況である現状を把握し、その理由を改善させることが必要です。
従業員の働き方や業務の効率化だけでなく、会社全体で明確な目標に向けて売上を向上できる体制を構築するために、現場のモチベーションをアップさせる制度導入なども求められます。
中小企業の約7割が赤字経営といわれているため、業績を上げる方法がわからずに悩む経営者は少なくありません。
そこで、業績低迷の理由と高い会社の特徴、業績アップに向けて改善する方法を解説していきます。
目次
業績とは
「業績」とは、事業を運営した結果として得られる成果です。
売上や利益を指す意味として使われることが多いといえますが、部門・部署・個人などの単位でも、仕事の成果を表現する意味で使用されています。
ただし次の3つと業績は、違う意味の言葉です。
- 売上との違い
- 成績との違い
- 成果との違い
それぞれ説明していきます。
売上との違い
「売上」とは、事業活動による収益の総額であり、商品やサービスを販売したことで得る対価です。
製品やサービスごとの金額ではなく、一会計期における収益の合計額であるため、積み重なった仕事の結果である業績と厳密には意味が異なります。
成績との違い
「成績」とは一定の目標達成度であり、期待目標のうち達成された部分といえるでしょう。
対する業績は達成度だけではなく、期待成果の高さと達成度を掛けた広さともいえます。
そのため業績は、高い役割をクリアできれば上がるものの、低い目標を達成できても上がったとは判断されません。
たとえば賃金査定において、能力主義であれば成績のみ考課すればよいといえるものの、業績も踏まえて検討するのであれば、成績と業績の違いを明確にした上での業績評価が必要です。
成果との違い
「成果」とは、成し遂げたことにより得られた良い結果です。
「数値成果」とは、個人や部門の業績を全体的に総合した結果といえるため、広域には業績も成果に含まれるといえます。
企業の業績を上げるためには、数値的な達成度だけでなく、数年後の期待成果も踏まえた判断が必要となるでしょう。
たとえば賃金査定において成果主義を導入するのなら、業績や役割などの新しい概念を整備していかねばなりません。
業績が低い理由
業績を上げることができない会社は、低迷したままの状態について悩みを感じていることも少なくありません。
今の状況を改善させるためには、まずは業績を上げることができない原因を把握することが必要です。
業績を上げることができない会社は、主に次の4つの特徴が見られます。
- 経営力が低い
- 組織力が低い
- 時代の変化に対応できていない
- 明確なビジョンを持っていない
当てはまる特徴はないか、1つひとつ確認してみましょう。
経営力が低い
業績を上げることができない会社は、会社全体の経営力が低いことが挙げられます。
中小企業の場合、会社の経営力は経営者の経営能力であることが多いといえるため、業績を上げることができない原因の多くは経営者にあるともいえます。
経営状況を客観的に把握した上ではなく、経験や勘に頼ったどんぶり勘定の経営を続けることで、正しくない方向へと進んでしまうでしょう。
判断方法を見直さず、従来までの経営方法や方針を転換できなければ、業績を上げることのできない状態が続くと考えられます。
組織力が低い
業績を上げることができない会社は、経営陣と従業員が同じ方向を向いていない状況であるなど、組織力が低いことが挙げられます。
現場の声が上層部に届かず、何か問題が起きても隠ぺいするなど、風通しの悪い会社であるといえます。
経営側と従業員で情報を共有し、協力できる体制が整備されていなければ、信頼関係が構築されず組織力は低下します。
時代の変化に対応できていない
業績を上げることができない会社は、社会情勢や市場の変化に対応できていないことが挙げられます。
経済や市場、ニーズなどは常に変化していきます。
業績が良好な会社は、時代の変化に対応できているのに対し、業績悪化の傾向が見られる企業は刻一刻と変化する社会情勢や市場に対応できていません。
環境変化に対応できなければ時代に取り残されてしまうため、時代や消費者ニーズの変化にアンテナを張っておくことが必要です。
明確なビジョンを持っていない
業績を上げることができない会社は、業績や社会的な貢献度など、将来的な目標やなりたい姿について明確なビジョンがありません。
会社のビジョンがなければ、社内で何を目標に事業を進めていけばよいか判断できなくなるでしょう。
そのため、明確な目標を設定し、達成に向けて経営者と従業員が協力できる体制をつくることが必要です。
業績が高い会社の特徴
業績が高い状態をキープできている会社は、次の3つの領域における特徴があります。
- 経営者
- 組織
- 現場
それぞれの領域において、どのような特徴があるのか説明していきます。
経営者
業績が高い状態をキープできている会社の経営者は、強い拡大志向と利益意識を持っています。
新たなビジネスに関するアイデアを次々と生み出すことができ、実現に向けた投資の源泉になる利益を生みだすことも可能であるため、現状に安住することはありません。
組織の能力を集中させることで、業績を拡大・成長させるスピードを加速させることができます。
また、業績の良い会社の経営者は、顧客と社員のどちらの幸せも優先できる利他の精神を持っており、業績を後押ししているといえます。
組織
業績が高い状態をキープできている会社は、従業員の士気が高い組織を構築できています。
社内の雰囲気も明るく元気で、コミュニケーションもしっかりと取れている風通しのよい環境であるといえます。
さらに目標を達成しようとする士気が高いだけでなく、論理的な思考も定着していることが特徴です。
挨拶や電話対応、営業担当者の応対などにおいても顧客や取引先に不満を抱かせることがないため、業績の高さを判別する指標とできるでしょう。
現場
業績が高い状態をキープできている会社は、整理整頓が徹底されている清潔で無駄な働きのない現場を保っているといえます。
商品の在庫を過剰に抱えることもなく、工場なども清潔で品質レベルが高いことがほとんどです。
設備・部品などの管理や、清掃・改装などの計画など、職場環境の管理が徹底されているからこそといえます。
事業所や工場はもちろんのこと、経営者や従業員の身なりも清潔で整っています。
業績を上げるための改善方法
会社の業績を上げるためには、明確なビジョンを持つことはもちろん、時代の変化にも対応できる体制を整備しておくことが大切です。
具体的には、次の7つの改善方法を実践していく必要があります。
- 明確な目標を設定する
- 適材適所の配置を行う
- 人事評価を適切に行う
- 商品やサービスを見直す
- マーケティング戦略を徹底する
- 従業員のスキルアップ制度を導入する
- 業務を効率化する
それぞれどのような改善方法なのか説明していきます。
1.明確な目標を設定する
会社の業績を上げるためには、組織全体で共有できる明確な目標を設定しましょう。
どこを目指して進んでいけばよいのか、明確な目標があることで、現場の意識も高まります。
克服しなければならない弱点や伸ばすべき長所を把握しつつ、成長につなげることができます。
そのため、掲げる目標は難易度がある程度は高いものでありつつ、実現できるものにしましょう。
その上で目標達成の確認方法を決めて、従業員が定期的に自己診断しつつ、振り返ることのできる機会を与えることも必要です。
2.適材適所の配置を行う
会社の業績を上げるためには、人材の得意分野や能力を見極め、適材適所の配置を行うことが必要です。
人には向き不向きがあるため、適切な場所に適した人材を配置することで、最大限のパフォーマンスを発揮してもらえます。
現場の効率化を図ることや、モチベーションを維持することにもつながるため、離職率低下にも効果が期待できます。
3.人事評価を適切に行う
会社の業績を上げるためには、従業員が納得して労働に見合う賃金を受け取ることができるように、適切な人事評価を行いましょう。
従業員に対する人事評価は、やる気やモチベーション維持に直結する要素です。
公平で適切な人事評価がなされなければ、不満を抱えた従業員が退職してしまいます。
優秀な人材は高く評価し、待遇に反映することでさらにやる気を出し、現場のモチベーションも向上するでしょう。
その結果、会社の業績を上げることにつながります。
4.商品やサービスを見直す
会社の業績を上げるためには、現在販売している商品やサービスについて、見直しを行いましょう。
業績が悪化している状況で、同じ商品やサービスを販売し続けていても何も変わりません。
高い品質の商品やサービスを販売していたとしても、顧客ニーズに合っていなければ、売れることはないでしょう。
また、ニーズは高くても価格が高すぎれば、消費者に受け入れてもらえない可能性もあります。
そこで、自社の強みをさらに活かすことのできる商品またはサービス提供への見直しや、既存商品のターゲット層や価格帯を変更するなどを検討しましょう。
どれほど人気が高くロングセラーといわれる商品やサービスでも、売れる時期には期限があります。
販売期間が長くなれば、都度、改良や改善を繰り返さなければ売り続けることはできません。
中長期的な業績向上には欠かせない施策として捉え、すぐにでも実行していくべきです。
5.マーケティング戦略を徹底する
会社の業績を上げるためには、商品やサービスの単価だけでなく、消費者のニーズに合わせたマーケティング戦略も徹底して行いましょう。
消費者ニーズを分析することは、自社で対応せずにマーケティング会社などに委託することもできます。
ただし手数料が発生するため、SNSを活用したり検索エンジンを最適化したりすることで、費用をかけずに自社や競合他社のユーザーの意見を知ることができるでしょう。
6.従業員のスキルアップ制度を導入する
会社の業績を上げるためには、成約率の高い営業スキルを共有するなど、スキルアップ制度を導入しましょう。
商品やサービスを見直すだけでなく、開発や販売に関わる人材のスキルアップを図ることも大切です。
人材の能力が上がれば、それに伴い継続して業績を上げることができるようになるでしょう。
また、営業などのノウハウを社内で共有しておくことで、仮に優秀な人材が退職した場合でも、売上に影響を及ぼすことなく次の社員教育につなげることができます。
7.業務を効率化する
会社の業績を上げるためには、システムやツールの導入などで、現場の業務を効率化していきましょう。
どの業界でも現在、人手が足りていない状況です。
一人ひとりが抱える業務量が多ければ、労働時間が長くなり、疲労の蓄積でモチベーションも低下します。
業務内容や作業の方法などを分析し、無駄な部分を削ることができれば、業務は効率的に進みます。
残業する必要もなくなれば、労働時間も短縮されて従業員のモチベーションが下がることもなく、むしろやる気を高めることができるでしょう。
そこで、業務内容をまずは把握し、優先するべきことを明確にしていきます。
その上で、必要なツールを導入することや、アウトソーシングを活用することを検討していくことが必要です。
自動化や電子化を図るシステムやツールは数多くあるため、どの部分を特に効率化するべきか検討も必要となります。
すべてを自動化すれば、システムやツールを導入する費用も高額になり、慣れない操作に戸惑い運用に手間取る可能性もあります。
従業員の使いこなすことのできないシステムなどの導入は、混乱を招くことになることを踏まえ、現場の声を反映させた上でのシステムやツールの選択・導入が求められます。
まとめ
会社の業績を上げるためには、現場の業務を効率化させるだけでなく、人事評価や人材配置など全体を見直すことが必要です。
具体的な目標を設定し、達成に向けて社内が一丸となり、取り組むことのできる体制や環境を整えていきましょう。
そのためには、従業員のモチベーションや定着率が上がる制度や環境を整備することも必要です。
ツールやシステムなどの導入においては資金がかかるため、銀行融資や助成金または補助金等の活用と、調達資金が入金されるまでファクタリングを併用するといった方法をおすすめします。