創業融資は、開業資金を目的とした借入れですが、自己資金が足らないのではといった不安に感じている方もいるようです。
自力でお金を用意していたものの、創業融資における自己資金として認められるか判断がつかないという場合もあるでしょう。
創業融資における自己資金は、自己が所有し自由に動かすことのできるお金でなければならず、借りたお金などは認められません。
そこで、創業融資の自己資金について、その目安や認められるお金の種類について解説していきます。
目次
創業融資における自己資金とは
創業融資のおける自己資金とは、創業者となる本人自らが保有するお金であり、出どころが明確であることが必要です。
金融機関の審査では、自己資金とされるお金が開業準備によるものなのか、どのような経緯で用意されたのか確認します。
ただ、手元にあるお金でなくても自己資金として認められるケースもあるため、金融機関から創業融資を受けるときには、自己資金として認められるお金の種類を把握しておくと安心です。
そして自己資金は、当然ながら事業に使用する予定の資金でなければなりません。
たとえ1千万円貯蓄がある場合でも、半分は事業用で残り半分は旅行資金という場合、500万円しか自己資金として認められません。
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自己資金と資本金の関係
資本金とは、会社運営において元手となるお金ですが、自己資金と必ずしも一致するとは限りません。
なぜなら資本金は、創業者本人が事業用資金として準備した自己資金以外にも、出資者から受けた出資分も含まれるからです。
なお、出資者から受け取ったお金は返済義務がなく、使い道も限定されていないため、会社のお金として運転資金や設備投資などに活用できます。
受け取った出資金も最終的には自己資本として自由に使うことができるものの、自己資金ではないことは理解しておいてください。
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創業融資での自己資金の目安
金融機関から創業融資を受けるときには、自己資金として創業資金の3割程度を用意しておくことが多いようです。
日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金の要件として創業資金総額の10分の1以上必要としています。
自己資金の最低ラインは創業資金の1割といえるものの、準備した自己資金の10倍のお金を貸してもらえることは稀です。
実際には自己資金の2~3倍程度が融資額となるため、最低でも借りたい金額の3割程度の自己資金は準備しておくべきといえます。
ただし自己資金を用意すれば必ず審査に通るわけでもありません。
自己資金以外にも創業者の経験や実績、創業計画の内容など様々な項目を総合的に審査します。
あくまでも自己資金は審査項目の1つに過ぎないと留意しておくべきです。
反対に自己資金が創業資金の3割に満たない場合でも、創業計画の内容などが認められれば審査に通る可能性はあるといえます。
自己資金ゼロで創業融資の審査に通った場合でも、最終的に融資額を減額される可能性はあります。
自己資金は多いほうが審査では有利になるため、創業に向けてコツコツ貯めておくことが大切です。
創業融資で自己資金と認められるお金の種類
創業融資で自己資金として認められるのは、出どころが確認できる自己の所有するお金です。
金融機関の審査では、創業する本人名義の預金口座の通帳履歴について、最低でも半年分は提示することを求められます。
預金口座に自己資金とされるお金が入金されていればよいのではなく、そのお金の出どころが重要であり、どこからのお金か確認できなれば本人所有と認められない場合もあるため注意が必要です。
以上を踏まえて、主に自己資金として認められるお金は次の7つといえます。
- 本人の預貯金
- 資産売却による代金
- 退職金
- 配偶者名義の預貯金
- 親からの贈与資金
- 現物出資
- 保険の解約返戻金
それぞれどのようなお金が創業融資で自己資金として認められるのか説明していきます。
本人の預貯金
民間銀行など金融機関の本人名義口座の預貯金は、自己資金として認められます。
預金口座の通帳で入金の履歴など、出どころも確認できるからです。
普通預金以外に、定期預金や積立預金なども自己資金として認められます。
たとえば創業予定の半年前から少しずつ貯めていた経緯が確認できれば、創業のための自己資金と認めてもらいやすいでしょう。
反対に創業直前にまとめて入金された預金の場合、出どころが確認できなければ自己資金として認められない可能性があります。
資産売却による代金
創業者本人が所有していた資産を売ったことによる代金は、自己資金として認められます。
対象となる資産は、不動産や自動車、株式など有価証券といろいろあります。
不動産や自動車であれば、売却する際の契約書や領収書を保管しておきましょう。
株式など有価証券の場合は、証券会社発行の書類または保有状況が確認できる資料など証拠として提出できるように準備が必要です。
退職金
勤務先を退職したことで支給された退職金も自己資金として認められます。
リタイア年齢となり定年退職したのか、創業に向けて早期退職したのか事情は様々ですが、いずれにしてもまとまったお金が支給されることになります。
退職金は給与振り込みの口座に振り込まれることが多いため、創業用口座に入金した際の出どころの証明として、源泉徴収票を用意しておくとよいでしょう。
配偶者名義の預貯金
創業者の配偶者名義の預金口座にある預貯金も、実は自己資金として認められます。
ただし配偶者名義の預金を自己資金とするには、配偶者の同意が必要です。
同意を得た上で預金口座の通帳の原本を金融機関の担当者に提示することで、創業者本人名義の預金でなくても自己資金とすることができます。
親からの贈与資金
創業における状況や、創業融資の資金を貸し付ける金融機関によって判断は異なるものの、親から贈与された資金も自己資金として認められることがあります。
ただしこの場合、親から受け取ったお金が贈与なのか、それとも借入れなのか明確に証明しなければなりません。
たとえ親でも将来的に返済する必要のあるお金であれば、自己資金ではなく融資を受けた借入金です。
返済義務のない資金であるのなら、贈与契約書を作成して贈与を受けたことを証明しましょう。
また、資金を譲り渡した親の財務状況が良好でなければ、たとえ贈与契約書が作成されていたとしても形式上と判断され、返済する予定なのではと勘繰られる可能性もあります。
以上のことから、親からの贈与割合が高いときには、審査に通らない場合も少なくないと留意しておきましょう。
現物出資
日本政策金融公庫の創業融資の場合、現金ではなくモノによる現物出資も自己資金として認められます。
この場合、次の要件を満たすことが必要となります。
- 定款の必要事項に記載がある
- 調査報告書や財産引継書がある
- 価格が500万円以下である
その上で、次のものであれば現物出資として認められます。
- 土地
- 建物
- 自動車
- 有価証券
- 特許権
- 知的財産権
など
特許権や知的財産権は目に見えない権利という形の財産ですが、現物出資として認められる場合があります。
現物出資による自己資金の証明については、次の手順で証明書を作成しておきましょう。
- 定款に出資対象のモノの価格・出資者など記載しておく
- 調査報告書と財産引継書を作成しておく
なお、現物出資の価格が500万円を超える場合には、上記に加えて外部調査が必要となります。
保険の解約返戻金
生命保険や損害保険のうち、積立タイプの保険では、解約した際に解約返戻金が払い戻されます。
保険の解約返戻金も自己資金として充てることができますが、解約した際の証明書を発行してもらうことが必要です。
保険会社によっては発行まで時間がかかる場合もあるため、計画的な準備が求められます。
創業融資で自己資金と認められないお金の種類
創業融資で自己資金として認められるには、本人が保有するお金であることに加え、出どころが確認できることも必要です。
そのため創業融資における自己資金として認められないお金は、主に次の3つと考えられるでしょう。
- 借入れにより調達したお金
- 自宅に保管しているタンス預金
- 見せ金と疑われるお金
それぞれどのようなお金が認められないのか説明していきます。
借入れにより調達したお金
借入れにより調達したお金は、返済義務を負うため自己資金として認められません。
民間銀行や消費者金融など金融会社から受けた融資、カードローンやクレジットカードのキャッシング、親や友人などから借りたお金も同様です。
自宅に保管しているタンス預金
自宅に貯めているタンス預金も、実は自己資金として認められません。
創業者本人が貯めたお金であったとしても、いつから自宅に保管していたのか、その出どころなどを客観的に確認できないことが理由といえます。
創業に向けて自宅の貯金箱にコツコツ貯めていたお金でも、民間銀行の預金口座への入金分と異なり履歴などを証明することはできません。
創業資金を貯めるときには民間銀行の預金口座に預けるようにしましょう。
見せ金と疑われるお金
創業直前にまとめて民間銀行の預金口座に預け入れたお金は、見せ金と疑われやすく自己資金として認められない可能性があります。
一度にまとめて入金されたお金は、もともと保有していたお金なのか、それとも借りたのかなど出どころを確認することはできません。
そのため創業直前に手元のお金を一気に預金口座に預け入れてしまうと、出どころが確認できない限りは自己資金として認められないと留意しておく必要があります。
自己資金であることを証明する方法
創業融資の申し込みにおいては自己資金を保有していることが必要であり、申込先である金融機関にそのお金が自己資金であることを証明しなければなりません。
そのため、自己資金とするお金の出どころを証明するために、次の2つの書類を提出します。
- 通帳原本
- 領収書
それぞれの書類について説明していきます。
通帳原本
創業融資で預金口座に入金されたお金が自己資金であることを証明するためには、通帳原本を金融機関に提出しましょう。
通帳の写しの場合、データを改ざんしたり加工したりできるため、原本を確認してもらうことが必要です。
毎月コツコツと創業資金を口座に入金していた場合には、その流れを通帳の入金履歴で確認してもらうことができます。
また、いつからお金を貯めていたのか確認してもらうこともできるため、計画的に貯蓄していると判断してもらえれば高い評価を得ることにつながるでしょう。
通帳原本は審査の面談で金融機関の担当者に提示すると、その場で写しを取った後に返却してもらえます。
領収書
創業に向けて、すでに事業用投資で支払ったお金がある場合には、その領収書を金融機関に提示しましょう。
事業で必要とする費用に対する支払いは、みなし自己資金として認められます。
事務所や店舗の契約や設備・備品などの購入資金などが該当しますが、すでに事業に投資したことを証明する領収書が必要です。
ただし先払いの事業用投資で自己資金として認められるのは、事業計画書に記載した上で購入し支払った場合に限ります。
まとめ
創業融資における自己資金は、創業者本人が保有しているお金であることはもちろんのこと、その出どころが明確でなければ認められません。
金融機関が創業融資の融資を行う際の審査項目の1つとして、自己資金の準備は欠かすことができませんが、創業資金の3割程度を目安に準備しておく必要があります。
自己資金として認められるのは、本人名義の預金や資産の売却代金、退職金など様々です。
親から贈与されたお金の場合には、借入れではなく贈与であることを証明できるように贈与契約書の作成をしておいてください。
いずれの場合でも、自己資金は出どころがわかる証拠を提示することが必要になるため、準備を怠らないことが成功のポイントとなるでしょう。
加えて創業融資では、創業者の事業経験が重視されます。
経験がない、または浅い業種で創業したくても、審査に通らなかったり融資額を減額されたりする可能性があります。
事業経験を積み、職務経歴書に事業経験の詳細を記載するなどしっかりとアピールすることも大切です。