融資期間とは?創業時の適切な返済期間と据置期間についてわかりやすく解説

融資期間とは、融資を受けることができる期間のことです。

できるだけ融資期間は長いほうが安定経営につながるともいえますが、長期で設定しすぎると完済まで時間がかかり、負債を増やす原因になりかねません。

創業時は売上や利益などの実績がないため、初期投資や運転資金でお金を借りるとき、融資期間をどのくらいで設定すれば良いか判断がつきにくいといえます。

そこで、融資期間とは具体的にどのような期間なのか、創業時の適切な返済期間と据置期間についてわかりやすく解説していきます。

融資期間とは

「融資期間」とは、銀行など金融機関からお金を借りて、融資を受けることができる期間のことです。

安定した経営を目指すなら、融資期間を長く設定し、毎月の返済額を抑えたほうがよいといえるでしょう。

融資期間は主に次の2つの期間で設定されます。

  1. 返済期間
  2. 据置期間

それぞれの期間について説明します。

返済期間

「返済期間」とは、お金を借入れてから完済するまでの期間であり、借入残高が0円になるまでの期間です。

カードローンなどの場合、借入れた金額に対して月々の返済で必要とされる最低金額(約定返済金額)のみで完済した場合が、最長の返済期間となります。

据置期間

「据置期間」とは、元金返済が猶予され、利息のみ支払う期間です。

返済期間が延長されるわけではなく、据置期間が終了した後はそれまで発生しなかった元本と、通常の元本+利息を支払うことになります。

据置期間も返済期間に含まれることになり、元本返済が猶予された期間が存在することで、最終的に支払う利息総額は増えます。

そのため据置期間を設ける場合には、事業の資金繰りを考慮した上での検討が必要です。

事業融資の資金使途

事業資金の融資期間は、

  • 短期で返済できる1年未満の短期借入
  • 返済期間が1年以上となる借入金を長期借入金

に分けることができます。

さらに事業に必要な資金を借入れる事業融資の場合、資金使途には次の2つが挙げられます。

  1. 運転資金
  2. 設備資金

それぞれの資金使途について説明していきます。

運転資金

「運転資金」とは、事業を運営するためのお金で、主に次の4つに分けることができます。

  1. 経常運転資金
  2. 増加運転資金
  3. 減少運転資金
  4. 季節運転資金

それぞれの運転資金について説明していきます。

経常運転資金

「経常運転資金」とは、事業運営のために通常必要となる資金です。

一般的に「運転資金」とは、この経常運転資金を指すことが多いといえます。

たとえば仕入れや人件費などが経常運転資金として挙げられますが、次の計算式で算出できます。

経常運転資金=売上債権+棚卸資産-買入債務

売上債務とは、すでに売上として計上されているものの、まだ現金化されていない売掛金や受取手形などです。

棚卸資産とは、仕入れたものの在庫として残っている商品を指しています。

買入債務は、すでに仕入で計上しているものの、まだ支払っていない買掛金や支払手形などです。

売上は月ごとに変動するため、事業の状況を長期的に考慮しつつ、必要な経常運転資金を分析することが必要といえます。

増加運転資金

「増加運転資金」とは、事業が成長・拡大する上で必要となる資金です。

売上が計上されてから入金されるまでのタイムラグの期間中、売上増加を見込むのなら仕入れや人件費なども増やすことが必要となります。

この増加分を補うため必要となる資金が増加運転資金です。

売上が伸びているとき、十分な増加運転資金が用意できなければ、利益が出ていて黒字でも倒産するリスクを高めます。

また、売上債権回転期間や棚卸資産回転期間の長期化、買入債務回転期間の短縮化などでも増加運転資金が必要となるため、取引に変化が見られたときには必要な金額を把握しておくことが必要です。

減少運転資金

「減少運転資金」とは、事業の縮小において必要となる資金です。

売上減少などにより、それまで負担できていた仕入れや人件費などの支払いが厳しくなったため、必要となる資金といえます。

季節運転資金

「季節運転資金」とは、毎年決まったタイミングで発生する追加の運転資金です。

賞与や季節商品の仕入れなど、季節性の要因が関係することで増える運転資金であり、一時的な支払いに充てるためのお金といえます。

設備資金

「設備資金」とは、事業の維持や効率化のために設備を購入するための資金です。

たとえば次の購入費用が設備資金として挙げられます。

  • 不動産
  • 事務所・店舗の内外装費用
  • 事務所賃貸の保証金
  • 什器類(椅子・テーブル・キャビネットなど)
  • 営業車両
  • パソコン
  • システム導入

基本的に会計処理上で資産計上するものは、設備資金として扱われます。

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銀行融資の返済期間

銀行融資の返済期間は、資金使途が運転資金と設備資金のどちらかによって以下の通り分かれます。

  1. 短期融資
  2. 長期融資

それぞれ説明していきます。

短期融資

運転資金の借入れにおいては、最長5年以内の短期融資が一般的です。

資金使途が運転資金であるため、短期借入れで対応すると決める必要はないものの、無理のない資金や返済計画に合わせて検討するとよいでしょう。

長期融資

設備資金の借入れにおいては、最長15年以内の長期融資が一般的です。

信用保証協会の保証付きで借入れる場合の設備資金については、10年以内であることが多いといえます。

購入する資産の耐用年数などに合わせて、返済期間を検討するとよいでしょう。

 

日本政策金融公庫の新創業融資の返済期間

新たに事業を開始するときや会社設立後まもない状態の場合、実績が出ていないだけでなく担保や保証人を設定することも難しいため、銀行から融資を受けにくいことも少なくありません。

そのため政府系金融機関である日本政策金融公庫では、創業時でも無担保・無保証で融資を受けることができる「新創業融資制度」を設けています。

創業時に事業資金を調達する場合、利用したい制度といえる新創業融資制度ですが、返済期間は利用する新創業融資制度の種類や、資金使途について以下のとおり異なります。

  1. 新創業融資の返済期間
  2. 新規開業資金の返済期間
  3. 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)の返済期間

それぞれの返済期間について説明していきます。

新創業融資の返済期間

創業期やスタートアップ期に、無担保・無保証人で事業資金を借りることができる制度が「新創業融資」です。

融資限度額は、併用する制度の定めに関わらず3,000万円(運転資金1,500万円)となっており、返済期間については制度に定める期間以内で決まります。

新規開業資金の返済期間

新しく事業を始める方や、事業を開始しておおむね7年以内の方が対象となる制度が「新規開業資金」です。

一定の要件を満たす場合には金利優遇があり、融資限度額は7,200万円(運転資金4,800万円)となっています。

返済期間は、設備資金は20年以内(据置期間2年以内)、運転資金は7年以内(据置期間2年以内)で設定できます。

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)の返済期間

新しく事業を始める方や、事業を開始しておおむね7年以内の方で、廃業歴など有する個人または経営者の営む法人が利用できる制度が「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」です。

一定要件を満たす場合には金利優遇があり、融資限度額は7,200万円(運転資金4,800万円)となっています。

返済期間は、設備資金20年以内(据置期間2年以内)、運転資金は15年以内(据置期間2年以内)で設定できます。

創業融資の返済方法の選び方

創業時に事業資金を借入れる際、返済期間は返済方法によっても変わってきます。

返済方法には次の2種類があるため、特徴や違いなど踏まえた上で選択するようにしましょう。

  1. 元利均等
  2. 元金均等

それぞれの返済方法について説明していきます。

元利均等返済

「元利均等返済」とは、完済までの利息を計算して、支払い回数で割って返済する方法です。

1回あたりの返済額は常に同じ額となるため、住宅ローン返済などで採用されています。

毎月の支払い額が一定になるため、資金計画が立てやすく資金繰りが安定しやすいことがメリットです。

ただし元金均等返済よりも、支払い総額が大きくなる傾向が見られます。

元金均等返済

「元金均等返済」とは、元金のみ均等分割した金額に応じた利息を加算する返済方法です。

返済開始当初の支払い負担は大きくなるものの、元利均等返済よりも支払総額は少なくなります。

事業融資では元金均等返済が原則とされているため、事業計画書を作成においては元利均等ではなく元金均等返済で計算した返済計画を立てましょう。

創業融資の据置期間の選び方

「据置期間」とは、借金返済のうち元本の返済が猶予される期間です。

設定した据置期間も返済期間に含まれるため、返済期間全体の内数といえます。

据置期間の有無に関係なく、元金の支払総額に影響はありません。

ただ、据置期間が長ければ1回あたりの元金支払額は大きくなるため、後の返済負担が重くなることは留意しておく必要があるでしょう。

また、据置期間は希望通りに設定できるとは限らず、資力・経験・事業計画書などを総合的に考慮した上で決定されます。

仮に半年据置期間を設けたいと希望した場合でも、審査によって3か月に短縮されることもあれば、据置期間を設けること自体認めてもらえないこともあります。

特に据置期間を長めに設定することを希望した場合、金融機関に認められにくくなると考えられるため、適切な期間を検討しましょう。

創業当初は売上が安定しない状態で、予想外の出費が発生するなど、資金面で不安定です。

事業が軌道に乗り実績を積むまで、ある程度の時間がかかることを踏まえた上で、一定期間は利息のみ負担すればよい状態を作れば資金繰りも安定させることができます。

そのため売上計上した入金はいつからか、事業が軌道に乗るまでどのくらいの期間がかかるか、分析することが必要です。

売上分の入金まで時間がかかる場合でも、資金繰りが悪化しないように半年程度の据置期間が理想といえます。

創業融資の返済期間の選び方のポイント

創業時に融資を受けるときの返済期間については、一般的には5~10年で設定することが多いといえます。

ただし日本政策金融公庫の新創業融資では、運転資金の返済期間は7年以内、設備資金の返済期間は20年以内という範囲で設定が必要です。

そのため上記の範囲で、毎月返済負担が重くならない金額を検討した上で、返済期間を決定しましょう。

借入金額と毎月返済可能な金額から逆算しなければ、返済負担が重くなり資金計画に支障をきたす可能性があります。

無理なく遅れず返済できる現実的な返済期間で計画を立てることが必要です。

また、次の2つのケースで、返済期間を設定するポイントを押さえておきましょう。

  1. 返済負担を軽減したい場合
  2. 追加融資も検討中の場合

上記の期間設定のポイントについて説明していきます。

返済負担を軽減したい場合

創業時に事業融資を受ける上で、毎月の返済負担をできるだけ軽減したいのなら、返済期間は長めに設定したほうがよいでしょう。

返済期間を長く設定できれば、毎月の返済金額を少額に抑えることができるため、売上が十分でない創業時でも返済負担に苦しむことはなくなります。

さらに据置期間を設定することにより、売上が入金されるまでの乏しい手元の資金で、返済に充てなければならないという負担を軽減することができます。

創業時は事業が軌道に乗るまで半年程度はかかると想定しておき、毎月の支払いで頭を抱えることのない状況を保ったほうが、事業に専念しやすくなります。

追加融資も検討中の場合

創業時に事業融資を受ける上で、追加融資も検討しているのなら、返済期間は短めに設定したほうがよいでしょう。

最初の借入れのおおむね3割以上を返済した後であれば、追加融資を受けることが可能になると考えられます。

たとえば返済期間を5年で設定した場合、1年半程度遅れず返済を続ければ、追加融資も受けやすくなるなどです。

2回目以降の追加融資を視野に入れた上で事業資金を借りたいのなら、返済期間はできるだけ短いほうがおすすめではあるものの、毎月の返済負担は大きくなることは留意しておいてください。

まとめ

融資期間は、返済期間や据置期間によりその長さが決まります。

事業資金を借りるときには、事前に事業計画書を作成した上で借入れを申し込むことになるものの、毎月どのくらいの金額であれば無理なく返済できるか分析した上で返済期間を設定しましょう。

返済期間は申込者が希望した通りにならないこともあり、審査の内容によって前後することも考えられます。

創業時に日本政策金融公庫から事業資金を借りるときも、融資担当者と決めることになるため、適切な返済期間や据置期間などしっかり相談するようにしましょう。