「赤字経営」とは、売上よりも支払いが多い状態で、利益が発生しない状態で続けている経営です。
しかし赤字経営でも、すぐに会社が倒産するわけではない反面、黒字でも潰れてしまうことがあります。
そこで、赤字経営とはどのような状況なのか、赤字でも倒産しないのに黒字でも倒産する理由や、黒字転換するための方法について解説していきます。
目次
赤字経営とは
「赤字経営」とは損失が発生した状態で経営を続けることであり、事業で利益が生まれていない経営状況を意味します。
支出が収入を上回った状態のままで決算を迎えれば、その期は「赤字決算」となってしまいます。
売上高から仕入れ代金や人件費などの固定費、借入金返済など差し引いた「純利益」がマイナスであれば赤字経営であるといえます。
赤字経営をより詳しく理解するため、次の2つを説明します。
- 赤字経営でもなぜ潰れないのか
- 黒字経営との違い
赤字経営でもなぜ潰れないのか
「赤字経営」とは利益が出ていない状態で経営していることを意味しますが、国税庁が2021年3月26日に公表した「国税庁統計法人税表(2019年度)」では、赤字法人率は65.4%です。
日本の企業の6割以上が赤字経営といえますが、それでもその6割が倒産しているわけではありません。
会社が倒産するのは、損失が発生したからではなく、手元の現金がなくなるからです。
損益計算書上は赤字でも、現金や預貯金が十分あるときや、銀行などからの借入れなどで手元の資金を枯渇させなければ倒産しません。
そのため会社がつぶれるのは、決算の結果よりも、資金繰りが影響するといえます。
黒字経営との違い
「黒字経営」とは、収入が支出を上回っている状態であり、純利益がプラスであることを意味します。
利益を生むことができている状態なので、会社としては安心してしまいがちですが、黒字経営でも会社が潰れてしまう黒字倒産には注意が必要です。
黒字倒産とは、決算は利益が出ている状態なのにも関わらず倒産してしまうことであり、売掛金の回収遅れや売掛先の倒産で回収不能となったときに起きやすいといえます。
手元に資金があれば、売掛金の回収が遅れても支払いに充てるお金を準備できるでしょう。
しかし手元の資金に余裕がなければ、仕入れ代金や従業員の給料、借入金の返済などに充てるお金がなく倒産してしまいます。
特に銀行からの借入金返済や手形の決済ができなくなれば、銀行取引が停止されるため注意が必要です。
赤字の種類
損益計算書に表示される利益には種類があり、どの利益でマイナスになっているかによって改善・見直しが必要になる部分は異なります。
そこで、次の4つの赤字の種類について説明します。
- 営業損失
- 経常損失
- 当期純損失
- 現金収支の赤字
それぞれどのような状態であるのか、改善・見直しに必要なことを理解していきましょう。
営業損失
「営業損失」とは、本業による収益とそのためにかかった費用(売上原価+販売費及び一般管理費)の収支がマイナスの状態を意味します。
損益計算書の「営業損益の部」の合計がマイナスであり、本業の見直しや事業の方向転換などが必要になると考えられます。
経常損失
「経常損失」とは、本業以外の収支で事業全体の収支がマイナスに陥っている状態であり、為替や株式相場の変動や不動産価値下落などが要因として考えられます。
本業は黒字なのに本業以外の事業が足を引っ張っている状態であるのなら、不調の事業は整理し業績回復を図ることが必要です。
当期純損失
「当期純損失」とは、経常損益に特別利益をプラスし、特別損失を差し引いたときマイナスの状態を意味します。
営業利益と経常利益が黒字でも、特別損失でマイナスが出てしまうときは一時的な赤字と考えられますが、経常利益も赤字のときは倒産リスクが高い状態と判断できます。
現金収支の赤字
現金収支の赤字とは、損益計算書では黒字なのに、手元の現金がショートしている状態です。
売上は好調で伸びているのに、売掛金ばかり増えて代金は未回収の状態が続いている場合、手元の資金が不足する可能性が高くなります。
運転資金を捻出できず、支払いに充てるお金が足らなくなれば倒産してしまうリスクが大きくなるため注意してください。
赤字経営のメリット
赤字経営は、利益を生み出すことができていない状態であり、会社にとってネガティブな状態でしかないと感じるかもしれません。
確かに赤字経営を長く続ければ、いずれ会社は倒産してしまうリスクを高めますが、赤字経営には次のような2つのメリットもあります。
- 税負担が軽減される
- 損失を繰り延べできる
それぞれどのようなメリットか説明していきます。
税負担が軽減される
赤字経営の最大のメリットともいえるのが、税負担が軽減されることです。
利益が1円でも発生していれば法人税が課税されますが、利益を生み出すことができていない赤字経営では、均等割りの金額まで抑えることができます。
ただしすべての税金が軽減されるわけではなく、法人税も均等割りは納めなければなりません。
損失を繰り延べできる
赤字経営の場合、発生した損失を「繰越欠損金」として一定期間繰り越すことができます。
次年度以降に発生した黒字と相殺することができるため、税負担の軽減につなげることが可能です。
赤字経営のデメリット
赤字経営だとしても税負担が軽減されることや損失を繰り越しできることはメリットです。
しかし赤字経営を続けることは、次の3つのデメリットを深刻化させる可能性もあります。
- 資金調達困難に陥りやすい
- 税務調査の対象になりやすい
- 倒産リスクが上がる
それぞれのデメリットについて説明していきます。
資金調達困難に陥りやすい
赤字経営のデメリットとして、資金調達が困難な状態に陥りやすいことが挙げられます。
銀行など金融機関から融資を受けたくても、赤字経営では審査が通りにくくなってしまいます。
融資が受けられなければ資金調達の方法を失うこととなり、運転資金不足で資金繰りが回らず、倒産してしまうリスクが高まります。
税務調査の対象になりやすい
赤字経営が続けば、税務調査の対象になりやすいこともデメリットです。
本当は黒字経営なのにわざと赤字にして申告していないか税務調査が入り、細かな部分までチェックされれば余計な税金を納めなければならなくなる可能性も否定できません。
倒産リスクが上がる
赤字経営が続けば、長年損失が発生している状態なので、倒産リスクは上がります。
会社の体力といえる資金もだんだんと少なくなり、仕入れ代金や従業員の給料、借入金の返済などに充てるお金もなくなっていくでしょう。
赤字から黒字転換する方法
赤字経営を続けていれば、いずれ会社が倒産してしまうリスクを高めます。
そもそも会社を経営し事業を続けるなら利益を出すことが必要となるため、赤字から黒字転換することが必要となります。
特に中小企業では黒字化に向けて早急に取り組んでいくべきですが、その方法として考えられるのは次の つです。
- キャッシュフローを管理する
- コストを見直す
- 過剰在庫を処分する
それぞれどのような方法か説明します。
キャッシュフローを管理する
赤字経営から黒字へ転換するためにも、キャッシュフローの管理が重要です。
キャッシュフローとは入金されるお金と出ていくお金など、資金の流れを意味します。
会社経営における「現金」は、人の体でたとえる「血液」と同じです。
血液の流れが止まれば人は死亡するリスクが高まりますが、会社経営においてもお金の流れが停止すれば倒産に追い込まれることとなります。
資金繰り表を作成し、現金の入出金の予定を半年先まで記載しておき、資金不足に陥りそうなタイミングで資金調達することが必要です。
資金状態を常に把握できる状態を作っておくことで、異変があったときにスピーディに対応することができます。
コストを見直す
赤字経営から黒字転換するために、売上を伸ばすことはもちろん必要ですが、それと同時に不要なコストも見直しましょう。
不要なコストが積み重なることを原因とした赤字もあるため、仕入れ代金や製造原価など原材料費についても見直しが必要です。
仕入れ代金は調達ルートや方法の工夫で改善できる場合があり、製造原価も製造方法や組み合わせ、人員配置の見直しなどでコストが削減できる場合があります。
ただしコストを抑えたいあまり、品質まで低下させないように注意は必要です。
販売費及び一般管理費にも無駄が発生していないか、消耗品費や広告宣伝費にお金をかけすぎていないか、営業・配送ルートは適切か確認してみることをおススメします。
削減できる金額は小さくても、積み重ねで大きなコスト削減につながることもあるため、コツコツとできる部分からコストを見直すことが大切といえます。
過剰在庫を処分する
赤字経営の場合、過剰な在庫は早期に処分することも実践していきましょう。
保管していても、利益を生むことなく価値が低下している在庫は、抱えているだけで管理コストがかかります。
余剰在庫の主な処分方法として、
- セールで販売する
- アウトレットで販売する
- 業者に依頼する
などの方法があります。
不良在庫をためこめば、企業は余分に税金を払うことになるため、早めの処分を検討しましょう。
まとめ
赤字経営を続けていれば、いずれ倒産するリスクを高めるだけです。
会社を立て直し黒字化するのなら、売上を向上させるだけでなくコスト削減も検討していきましょう。
大切なのは手元の資金を枯渇させないことであり、キャッシュフローの管理が重要です。
売掛金の発生と回収の状況をすぐに把握することができる管理や、回収遅れの代金は催促するといった対応も必要となるでしょう。
また、黒字化できる見込みがあっても、手元のお金がないことを理由に倒産してしまうことはもったいないことです。
手元のお金を増やしたくても赤字続きでは銀行から融資を受けることはできないため、売掛金を現金化するファクタリングも検討してみることをおススメします。