中小企業が事業を継続できなくなる理由として、取引先の倒産による連鎖倒産が挙げられます。
もしも取引先の与信管理を適切に行っていれば、防げたかもしれない連鎖倒産。
与信管理が甘ければ、未回収の売掛金が多く発生することになり、たとえ帳簿上は黒字でも手形が不渡りになるといったことで倒産してしまいます。
特に現在は、新型コロナウイルス感染症やロシアのウクライナ侵攻などの影響により、取引先からの売掛金が回収できず連鎖倒産してしまう企業も少なくありません。
そこで、企業が連鎖倒産を防ぐために重要となる与信管理を適切に行うためのポイントについて解説していきます。
倒産とは
そもそも「倒産」とはどのような状態のことを示すのでしょう。
実は「倒産」という言葉は法律用語でなく、1952年から調査会社の東京商工リサーチが始めた「全国倒産動向」の集計により、一般的に知られるようになった言葉です。
企業が債務支払不能に陥ることや、経済活動を継続できなくなった状態を示す言葉として使われていますが、経営が破綻したり行き詰まったりという意味で使われることが多いといえます。
連鎖倒産とは
取引先の倒産により不良債権が発生し、その影響により倒産してしまうことを「連鎖倒産」といいます。
元請けである企業が倒産したことにより、下請けなど取引先が連鎖倒産することもあれば、親会社に子会社が連鎖するケースなどもあります。
近年では大手企業の経営破綻が目立ちますが、中核となる企業の破綻で、傾注取引の相手だった企業は倒産してしまう例が多くなっています。
一般的に販売先に傾注していることが多いものの、仕入先の傾注でも代替企業が見つからず、支給の停止により倒産してしまうケースもあるようです。
倒産の種類
企業が債務の支払不能状態となったときや、経済活動を継続できなかったときには「倒産」したとみなされますが、「倒産」には次の2種類があります。
- 法的倒産
- 私的倒産
それぞれどのような手続により「倒産」したとみなされるのか説明していきます。
法的倒産
「法的倒産」とは、裁判所の関与の下、法令に基づき法的整理の手続を行うことによる倒産です。
「法的整理」には、
- 会社更生法に基づく更生手続
- 民事再生法に基づく再生手続
- 破産法に基づく破産手続
- 会社法に基づく特別清算手続
など種類があります。
そこで、
- 会社更生法
- 民事再生法
- 破産法
- 会社法
の4つの法律について詳しく説明します。
会社更生法
企業が事業を継続させながら再建を図る「再建型」の手続であり、会社更生法の手続を申請した時点で倒産したとみなされます。
対象となるのは株式会社であり、更生計画策定などに基づいて裁判所の指名した管財人が更生計画を遂行してしき、再建を目指します。
具体的には、選定されたスポンサーから支援を受けながら経営を続け、債務を弁済していくことになります。
手続には利害関係人すべてを取り込んで再建計画を策定できますが、担保権者の権利行使は制限されます。
会社更生法の手続は従来までであれば非常に複雑であり、再建まで手間や時間がかかってしました。
さらに法的拘束力が強いことはメリットでも、かかる費用が大きいため、会社規模の大きい株式会社が主な対象だったといえます。
そのため要件なども大幅に緩和されており、たとえば役員などのうち経営破綻に責任のない者については、管財人や管財人代理として会社に残ることもできるようになっています。
更生計画案の可決要件も緩和されており、弁済期間は最長20年から15年へと短縮されました。
民事再生法
中小企業が行う「再建型」の法的手続が「民事再生法」で、2000年4月に施行されました。
民事再生法の手続を申請した時点で、倒産したとみなされます。
対象となるのは株式会社や特殊法人以外にも、個人などが挙げられます。
現経営者が引き続き企業を経営することができ、債務超過や支払不能に陥っていない場合でも可能性があるのなら申請できることがメリットです。
債務者が主体となって再生を目指す手続であり、会社更生法よりも要件や手続が簡易的であるといえるでしょう。
再生計画の認可を受けるための条件として、債権者集会に出席した再生債権者などの過半数で債権総額の2分の1以上の同意を得ることが挙げられます。
再生計画案を決議し認可されれば、裁判所が選んだ監督委員が3年に渡り、弁済の履行状況を確認していきます。
再生計画の弁済を3年以内に終えたときには民事再生も終結しますが、たとえ分割弁済中でも認可が決定してから3年を経過すれば民事再生は終結します。
また、民事再生法による手続を申請したものの、裁判所から棄却されたときには職権で破産手続へと移行することになります。
破産法
企業や個人が財産を清算し消滅させる「清算型」の法的手続であり、今の倒産形態の8割程度は「破産法」によるものです。
経済的に破綻し、支払不能状態になったとき、裁判所が破産手続開始を決定して、保有する債務者の財産を換価し債権者へと分配します。
債務者自らが裁判所に破産手続を申請した時点で「倒産」とみなされます。
お金を貸していた債務者が破産したことにより、債権者も支払不能状態になったときなどは、破産を申請することもできます。
なおこのようなケースでは、破産手続開始決定を受けた時点で「倒産」したとみなされることになります。
裁判所が選んだ破産管財人が保有する資産などを整理・換価し、裁判所の認可に基づいて債権者への公告・配当されます。
特別清算
債務超過に陥ってしまった会社が行う「清算型」の法的手続が「特別清算」です。
破産手続よりも厳格な手続は求められず、会社の選んだ清算人が財産を処分することができるため、簡易・迅速に会社を清算できることがメリットといえます。
特別清算を申請した時点で倒産したとみなされますが、株式会社の解散を前提とします。
申請した後は清算人により特別清算協定案が作成されますが、債権者集会で債権者の過半数および議決権総額の3分の2以上の同意を得ることで協定案可決となります。
清算人は可決された協定案に沿って弁済することになるため、大株主や大口債権者から協力を得ることがポイントといえるでしょう。
たとえば親会社が業績不振に陥ったことを理由に子会社を清算するときには、債権免除分を損金算入するなど課税上の利益を得るため、特別清算を利用するといったケースも見られます。
私的倒産
「私的倒産」とは、主に裁判所が関与する法的倒産手続を行わず債務を整理することです。
また、手形や小切手の不渡りによる制裁処分である「取引停止処分」を受けたときも私的倒産とみなされます。
そのため「私的倒産」に該当するのは、
- 取引停止処分
- 内整理
の2つです。
それぞれ詳しく説明していきます。
取引停止処分
手元に資金がなく、手形や小切手に指定された期日に決済ができなければ「不渡り」となります。
同じ手形交換所管内で6か月以内に2度、不渡りを起こしてしまった場合の制裁処分が「取引停止処分」であり、処分を受けたときには「倒産」したとみなされます。
取引停止処分を受けることで、手形交換所の加盟する金融機関で2年間は、当座取引や貸出取引は不可となります。
中小や零細規模の企業で多く見られる倒産形態です。
内整理
借金を整理するとき、裁判所を通さずに債権者と任意で話し合いを行って解決を目指す「任意整理」のことを「私的整理」や「内整理」といいます。
支払不能または債務超過に陥ったとき、金融機関など債権者と話し合いを行い、債務や利息の一部免除や返済条件の見直しなど対応してもらう方法です。
法人の債務整理の注意点
企業が倒産したとみなされるのは、裁判所が関与する再生手続をとったときもあれば、裁判所が関与せずに債権者と交渉をする負債の整理を行ったときでもあります。
ただ、破産した場合でも、小規模な事業で処分可能な事業用資産を保有していないなど、事情により事業継続が可能のなる場合も見られます。
また、任意整理を行った場合でも、債権者である金融機関との返済条件の交渉内容によっては、従業員や取引先に対する支払いを継続できることもあるようです。
ただし裁判所が関与することになる民事再生法や会社更生法などの法的手続では、債権者として扱うのは金融機関だけでなく、従業員や取引先も含まれます。
従業員に対する給与の支払いや、手続が開始された後で発生した取引先に対する支払いはできるものの、手続が開始されるよりも前に発生していた取引先に対する支払い(未払金)は減額の対象となるので注意してください。
法人が債務整理したことで、返済されなくなった借入金などは連帯保証人が請求されることになります。
中小企業では代表者が借入金の人的保証を行い、連帯保証人となっているケースが多いですが、この場合には代表者も債務整理が必要となる可能性が高いといえます。
必ずしも破産しなければいけないとは限らず、任意整理や個人再生などの方法を行うことで、自宅を処分せず残すことができる場合もあります。
連鎖倒産の原因
中小企業が倒産してしまう原因を分析したところ、やはり取引先の与信管理が十分にできておらず、売上金が回収できない状態になってしまい倒産に繋がることが少なくないようです。
中小企業同士の取引などは、商慣習や一定回数の取引などによる安心感で、与信管理を行わず取引を継続してしまうケースが多く見られます。
長く取引をしている相手だから与信管理は必要ないと考えず、新型コロナウイルス感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などの影響により、想定していなかった事態も起こりうると考えるべきです。
与信管理を軽視している経営者が会社を倒産させてしまう可能性も否定できないため、多くの企業が打撃を受けている今だからこそ、適切な与信管理を行うことを心掛けるようにしてください。
与信管理の基準
取引先の与信管理を行う場合、取引する金額には上限を設けることが必要です。
この取引金額の上限を「与信枠」といいますが、何を基準に設定するのか、明確な規定を定めるようにしましょう。
与信枠を定める基準として考えられるのは、主に次の2つです。
- 自社の財務基準
- 取引先の財務基準
それぞれ説明していきます。
自社の財務基準
与信枠を自社の財務基準を参考にするときには、複数の取引先に対して一定のルールをあてはめることができます。
ただし、それぞれの取引先に対し、柔軟な与信枠を設定したいときには適さない基準といえます。
取引先の財務基準
取引先の財務基準を参考に与信枠を決めるケースでは、それぞれの取引先に個別の与信枠を設定することができます。
ただし都度、取引先の財務基準について新たな情報を入手し続けることが必要であり、悪化したときにはただちに見直しが必要となるでしょう。
与信承認の流れ
取引先の与信管理では、新規の取引先(候補となる会社)と、与信を設定して取引を進めていく過程「与信承認」が重要です。
「与信承認」では、
- 商談の開始
- 情報の収集
- 情報の評価
- 与信限度額の決済
- 契約の交渉
の5つの流れで行います。
それぞれのプロセスについて説明していきます。
①商談の開始
これから取引を行う相手として妥当か、実際に取引先を訪問して調査を行います。
②情報の収集
- 取引先への訪問調査の情報
- 信用調査会社などを利用したことで得た情報
- 社内調査の情報
などを収集していきます。
③情報の評価
収集した情報をもとにして、取引先として妥当か評価・審査します。
④与信限度額の決済
審査で問題がないとされれば、与信限度額を決めて取引開始を決裁します。
⑤契約の交渉
決裁後、取引先と決裁内容に従って契約交渉を行います。
与信承認後の管理
与信承認による流れを経て取引が開始されますが、取引開始後も取引先の情報は常に最新のものを収集し、しっかりと管理していきましょう。
なぜなら取引先の経営状況はいつも同じではなく、常に変化するものだからです。
数年前まで順調に売上を伸ばし、業績も良好だった企業でも、たとえば新型コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナの戦争などで業績が悪化している場合もあります。
他にも様々な要因で売上が低迷しているケースや、黒字から赤字経営に転落したケースなどもあり、新しい情報は常に集中し続けることが必要です。
取引先の経営状態が悪化したことを見逃せば、倒産リスクを高めることに繋がってしまうため、定期的に管理するようにしてください。
なお、与信承認の後で必要となるのは次の3つの管理です。
- 債権の管理
- 取引先情報の管理
- 問題案件の管理
それぞれの管理について説明します。
債権の管理
取引先の売掛金は、期日に遅れることなく回収できているか、未収金の有無など状況を確認しましょう。もしも売掛金の支払いが遅れている取引先があるときには注意が必要です。
与信枠を超過していないかなど、確認しておくことも必要となります。
取引先情報の管理
取引先の経営状況がいつも良好な状態とは限らないため、定期的に取引先の最新情報を入手し、取引条件など見直しを行うことが必要です。
自社のみで独自に情報を収集する以外にも、多方面で情報を収集し倒産リスクに備えるようにしてください。
問題案件の管理
売掛金の支払いが遅れている取引先や、未払いになっている金額が大きい取引先など、先行きが不安でリスクが高いと判断できる相手が万一倒産したときでも、被害を最小限に抑える早めの対策を講じるようにしましょう。
連鎖倒産を防ぐ与信管理のポイント
取引先が倒産してしまったことにより、回収不能となった売掛金など、不良債権が発生したときにはそのことを理由に自社も連鎖倒産してしまう可能性があります。
このような連鎖倒産を防ぐため、重要となるのは「与信管理」です。
与信管理の対象となる企業が、販売先や仕入先について傾注取引しているときには、傾注している企業の相関的な与信管理も必要になります。
複数の与信管理が必要となることは面倒に感じるかもしれませんが、販売先や仕入先の取引が多様化している場合は注意が必要です。
そこで、
- 意味を理解する
- 恒常的にルールを見直す
- 取引先を見極める
の3つについて説明していきます。
意味を理解する
そもそも「与信」とは、取引先に信用を供与することです。
取引先と取引を行う上で、
- 財政状態
- 営業内容
- 取引実績
などを総合的に判断し、取引を行う与信限度額を設けることが「与信管理」といえます。
取引が開始された後も、取り決めた支払期日などに、取引先が約束通り代金を支払ってくれるかが重要です。
設定した条件の通りに支払いされるか確認しておかなければ、自社の支払いに充てる資金が不足してしまい再作の場合には倒産してしまいます。
恒常的にルールを見直す
与信管理を行うときには、取引先とのルールを取り決めてから運用する一方、次のことを継続して確認し、状況によっては改善させることが重要となります。
- 策定したルールが本当に正しいのか
- 回収できない債権があったときにはその額
- どのくらい誤差が発生したのか
上記について期間ごとに確認し、継続して改善させていく見直し業務が最も大切といえます。
審査を専任で行う担当者などがいる企業だとしても、通常業務の傍らで経営者が判断する場合でも、与信管理を怠らず恒常的にルールを見直すことが重要と理解しておいてください。
取引先を見極める
掛取引を行うときには、商品やサービスと引き換えに代金を支払ってもらうのではなく、後払いとなります。
そのため取引先に支払能力が十分あるか見極めることが必要であり、どのくらいの金額や量であれば取引できるのか、上限を定めることが必要です。
取引が開始された後にも、定期的に取引先の支払能力を確認するようにしてください。
取引先を確認する流れは以下のとおりです。
- 新規の取引先の支払能力の有無を確認する
- どのくらいの金額や量であれば取引してよいか確認する
- 取引を開始した後に定期的な支払能力を判断するため、経営状況を確認する
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは
取引先が突然倒産してしまったら?そのようなもしもに備えるための安心のセーフティネットが「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」です。
「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」では、取引先が倒産したときにそれに続いて中小企業が連鎖的に倒産してしまうことや、経営難に陥ってしまうことを防ぐために設けられています。
中小企業倒産防止共済法に基づく共済制度であり、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営し、資金の調達を迅速に行うためのツールとして利用されていることが特徴です。
共済に加入できるのは、1年以上継続し事業を行っている中小企業で、他の加入条件も満たさなければなりません。
加入後は掛金を毎月積み立て、万一取引先が倒産してしまったときには、次のいずれか少ない額を無担保・無保証人で借りることができます。
- 回収困難となった売掛債権などの額
- 掛金総額の10倍(最高8,000万円)
対象になる取引先の倒産
共済金の借入れが可能となる取引先の倒産の種類は以下のとおりです。
- 法的整理
- 取引停止処分
- でんさいネットの取引停止処分
- 私的整理
- 災害による不渡り
- 災害によるでんさいの支払不能
- 特定非常災害による支払不能
なお、夜逃げによる倒産などの場合には、共済金の借入れを受けることはできないため注意してください。
経営セーフティ共済のメリット
取引先が倒産したことで、自社まで連鎖倒産しないためのツールとして活用できることが「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」の大きな特徴ですが、主に次の4つのメリットがあります。
- 無担保・無保証人で掛金10倍までの借入れが可能
- 取引先が倒産した後はすぐ借入れが可能
- 毎月の掛金は税制優遇措置の対象
- 解約手当金の受け取りも可能
それぞれのメリットについて説明していきます。
無担保・無保証人で掛金10倍までの借入れが可能
お金を借りるときには、担保として差し入れる不動産を保有していないことや、経営者の人的担保が必要になることなどに不安を感じることもあるでしょう。
しかし経営セーフティ共済では、無担保・無保証人で掛金10倍までの借入れが可能です。
また、共済金から資金を借入れたときには、貸付額の10分の1相当額が積み立てた掛金総額から控除されます。
取引先が倒産した後はすぐ借入れが可能
取引先が倒産したことにより売掛金などを回収することが難しくなったときには、対象となる事業者との取引確認が済み次第すぐ資金を借りることができます。
支払いに充てる資金が足らず資金繰りに慌てる必要がありません。
毎月の掛金は税制優遇措置の対象
毎月支払う掛金は5千円から20万円まで自由に選ぶことができ、増額や減額も可能です。
さらに支払った掛け金は、確定申告のときに法人であれば損金、個人事業主であれば必要経費に算入できる税制優遇措置の対象であることもメリットといえます。
解約手当金の受け取りも可能
共済契約を解約したときには、その理由が自己都合であった場合でも、12か月以上の掛金を納めていることで掛金総額8割以上の解約手当金を受け取ることができます。
40か月以上納めている場合には、12か月未満は掛け捨てになるものの、掛金全額を受け取ることが可能です。
また、共済事由が発生していないときでも「一時貸付金」を利用することで、臨時で必要となった事業資金の準備ができます。
支払った掛金の範囲内で貸付けを利用することになり、貸付限度額などに所定条件があるため事前の確認は必要です。
経営セーフティ共済の利用方法
健全に経営できている場合でも、取引先が倒産してしまうことで連鎖倒産するリスクはゼロではなくなります。
加入申し込みは、商工会・商工会議所・中小企業団体中央会・青色申告会・融資取引のある金融機関の本支店などで手続できますし、中小機構共済相談室でも相談を受け付けています。
電話番号:050-5541-7171
受付時間:平日9:00~18:00
セーフティネット保証制度(1号:連鎖倒産防止)
「セーフティネット保証1号」認定とは、経済産業大臣の指定する民事再生手続開始の申立など行った大型倒産事業者に対して、売掛債権の回収が困難になったことによる資金繰り悪化に陥った中小企業を支援するための措置です。
民事再生手続開始の申立など行った大型倒産事業者に対する売掛債権など有していれば、たちまち資金繰りに支障が生じることになります。
そこで、セーフティネット保証制度により、中小企業信用保険法で定める要因で経営を安定させることができない中小企業に対し、信用保証協会を通じて保証限度額別枠で資金調達円滑化を図ることを目的としています。
保証制度の分類
セーフティネット保証制度は、各種の要因ごとに1号から8号まで分類されています。
連鎖倒産防止の場合には、「1号」が適用されることとなりますが、複数の掛け持ちや複数回適用させることはできないので注意しましょう。
1号:連鎖倒産防止
2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限
3号:突発的災害(事故など)
4号:突発的災害(自然災害など)
5号:業況の悪化している業種(全国)
6号:取引金融機関の破綻
7号:金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整
8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡
このうち、
- 1号:連鎖倒産防止
- 5号:業況の悪化している業種(全国)
の2つについて説明します。
1号:連鎖倒産防止
大型倒産が発生したとき、倒産した事業者と取引していた中小企業が、売掛金を回収できなくなることによる連鎖倒産を防ぐことが目的の制度です。
対象となる中小企業は、売掛債権金額または対象となる事業者との取引規模による要件を満たすことが必要となります。
5号:業況の悪化している業種(全国)
全国的に業況悪化している業種の中小企業を支援するための制度で、すべての業種が対象になっていますが、農林水産業や金融業などは除外されています。
対象となる中小企業は、
- 売上高が減少した割合
- 売上総利益率または営業利益率の減少の割合
- 仕入価格上昇を価格転嫁できない
など要件を満たすことが必要です。
保証制度の保証条件
セーフティネット保証制度では、信用保証協会の一般保証と別枠で保証を受けることができますが、次のような保証条件となります。
- 保証限度額:無担保保証8千万円・普通保証2億円(別枠)
- 保証割合:100%保証
- 保証人:原則第三者保証人不要
保証対象となる中小企業
セーフティネット保証制度で対象となるのは、
- 対象となる事業者に対し50万円以上の売掛債権など保有している
- 対象となる事業者に対し保有している売掛債権は50万円未満であるものの、その事業者との取引規模が20%以上
という条件のいずれかに該当する中小企業です。
対象となる中小企業は、本店(個人事業主は主たる事業所)の所在がある市町村または特別区の商工担当課窓口に、認定申請書を提出して認定を受けることが必要となります。
認定後に希望する金融機関や所在地の信用保証協会に認定書を持参することで、保証付き融資を申し込むことが可能です。
まとめ
取引先が倒産してしまうと、それに伴い自社も連鎖倒産してしまうリスクが高まります。
連ら倒産を防ぐためには与信管理が重要といえますが、与信管理は経営者の重要な業務のひとつであり、怠れば売掛金の未回収などが発生したまま手元の資金が不足し、事業を継続させることが厳しくなってしまうでしょう。
しかしどれほど与信管理が大切とわかっていても、経営者自身だけで行うことは難しい場合もあり、世の中の変化が激しくついていけないという経営者もいます。
このような場合、どのように与信管理を行えばよいのか、専門家などに相談することもおすすめします。