ファクタリングとは?意味や仕組み・メリットと注意点をわかりやすく解説

ファクタリング(factoring)は近年中小企業などで資金調達の方法として注目されている言葉ですが、その意味をご存知でしょうか。

多くファクタリング(factoring)が活用されてきたことは知っていても、言葉の意味までは知らないという経営者もいるでしょうし、深く意味まで考えたことはないという方がほとんどでしょう。

そこで、ファクタリング(factoring)という言葉はどのような意味を持つのか、仕組みと名称のつながりや由来についてご説明します。

ファクタリングの意味とは

計算するビジネスマン

ファクタリングの意味を考えたとき、まず英語表記の言葉であると考えられます。

実際、英語にするとファクタリングは「factoring」となりますが、この言葉は「ファクター(factor)」から派生した言葉です。

ファクターとは、因子・要素・要因という意味を持ち、商取引においては仲買人・代理商・問屋といった意味でも使われています。

ファクタリングは、保有する売掛債権を売却し現金化させて資金調達する方法のため、代理商という意味で付けられたと考えられるでしょう。

また、カタカナ英語のファクターとは、ビジネスの場面ではコンサルタントなどが主に使っている言葉です。

たとえばリスク要因となるものをリスクファクター、経済を成り立たせる要素を経済ファクターという言葉に置き換え使っていることが多いといえます。

ファクタリングとは

ファクタリングには買取ファクタリングや保証ファクタリングなど種類がありますが、ファクタリング会社が売掛債権を買取ることで現金化され売却した利用者は資金を調達できる仕組みは買取ファクタリングで行われます。

売掛債権とはまだ回収していない売上代金を相手に請求できる権利であり、自由に第三者に譲渡することが可能である資産です。

日本の商取引では先に商品やサービスを販売・提供し、代金は後で請求して回収するという掛け取引が一般的といえます。

この掛け取引において発生するのが売掛債権であり、売掛債権をもとにして資金に換えてしまう仕組みが買取ファクタリングです。

ファクタリングの仕組み

売掛債権には売掛金や受取手形といった種類がありますが、ファクタリングで資金調達のもととなり買取対象となるのは売掛金です。

売掛債権という言葉よりも、売掛金のほうが会計処理においてもたびたび登場するため馴染みが深いと感じる方も多いことでしょう。

売掛金は売掛債権の1つのため、言葉の意味は同じです。

同じ売掛債権の種類でも受取手形を売却し現金化するために用いられる方法には手形割引などがありますが、こちらはファクタリングとは違って融資という扱いになる点には注意しておきましょう。

ただしいずれにしてもこの売掛債権は、支払いサイトが長めに設定されている場合には後々資金不足に陥りやすいリスクを発生させる可能性があるため注意が必要といえます。

なお、掛け取引で使われる支払いサイトという言葉の意味は、すでにあがった売上分のうち、いつからいつまでの分をいつ支払うのかをあらわします。

ファクタリングの種類

ビジネスマンとお金のイメージ

ファクタリングには、次の2つの種類の契約があります。

  1. 2社間ファクタリング
  2. 3社間ファクタリング

それぞれ説明します。

2社間ファクタリング

「2社間ファクタリング」とは、利用者とファクタリング会社で契約が完結するファクタリングです。

ファクタリング会社へ売掛債権を譲渡することについて、売掛先へ通知をすることも承諾を得ることも行いません。

手続が簡素化されているため、最短で即日現金化が可能になるなど、急な資金ニーズに対応できるファクタリングといえます。

2社間ファクタリングは、以下の流れで手続を行います。

  1. ファクタリング会社にファクタリングを申し込む
  2. 譲渡したい売掛金情報をファクタリング会社に提示する
  3. ファクタリング会社で売掛先の信用調査が実施される
  4. 審査後、売掛金の買取金額など見積もりが提示される
  5. 提示された内容で納得できれば必要書類をファクタリング会社に提出し契約を結ぶ
  6. 契約締結後、買取金額が利用者の指定口座に振り込まれる
  7. 売掛先の支払い期日に売掛金を回収しファクタリング会社に支払う

2社間ファクタリングとは?手数料・メリット・違法性について徹底解説

3社間ファクタリング

「3社間ファクタリング」とは、利用者とファクタリング会社だけでなく、売掛先も契約に関与するファクタリングです。

2社間ファクタリングと異なり、売掛債権を譲渡することについて、売掛先へ通知して承諾を得ることが必要になります。

間に売掛先を挟む契約となるため、回収した売掛金を利用者に使い込まれるリスクがないため、売買手数料は低めに設定されます。

3社間ファクタリングは、以下の流れで手続を行います。

  1. ファクタリング会社にファクタリングを申し込む
  2. 譲渡したい売掛金情報をファクタリング会社に提示する
  3. ファクタリング会社で売掛先の信用調査が実施される
  4. 審査後、売掛金の買取金額など見積もりが提示される
  5. 売掛先に対し売掛債権譲渡の通知と承諾を得る手続を行う
  6. 3者間でファクタリング契約を結ぶ
  7. 契約締結後、買取金額が利用者の指定口座に振り込まれる
  8. 売掛金の支払い期日に売掛先からファクタリング会社へ支払われる

ファクタリングとは?種類や仕組み・選ぶときの注意点をわかりやすく解説

ファクタリングの必要書類

ファクタリングの必要書類は、契約するファクタリング会社によって異なるものの、以下の書類を求められることが多いといえます。

  1. 決算書(確定申告書)
  2. 請求書
  3. 基本契約書
  4. 身分証明書
  5. 商業登記簿謄本
  6. 印鑑証明書

それぞれ説明します。

決算書(確定申告書)

法人であれば直近2~3期分の決算書、個人事業主は同期間の確定申告書が必要です。

決算月が半年程度前であれば、直近の試算表も準備しておきましょう。

決算書や確定申告書の提出を求められるのは、売掛債権の保有や売掛先の事業規模などを確認するためです。

また、2社間ファクタリングでは利用者が回収した売掛金を使い込む恐れはないか、財務状況を確認する上でも提出を求められます。

請求書

売掛金が存在していることを証明する請求書が必要です。

請求書はファクタリングにおいて必ず求められることになる成因資料といえます。

ただしファクタリングで使える売掛金は、売掛先に請求済で、支払額や支払期日が確定している確定債権に限定されます。

また、ファクタリング会社によっては、請求に付随する注文書・発注書・納品書などの提出を求められることもあります。

基本契約書

売掛先との基本契約書は、利用者と売掛先との間で取引が存在することや、その実態を証明するために必要な書類です。

いつからどのような取引が行われているのか伝えるために必要であり、請求書と照合すれば請求内容の整合性も証明できます。

身分証明書

個人事業主と法人のどちらが申し込む場合でも、代表者の免許証・パスポート・マイナンバーカード・住民基本台帳カードなどの本人確認書類が必要です。

第三者が代表者になりすまして契約した場合、ファクタリング会社が売掛金を回収できないリスクが高まるため、身分証明書も求められると理解しておきましょう。

商業登記簿謄本

商業登記簿謄本は、会社の所在地や資本金など、法人の基本情報が記載されています。

申し込みで申告した内容に誤りがないか、確認するためにも提出を求められることがあります。

個人事業主では受領印のある開業届の控えなどを求められるため、事前に準備しておきましょう。

印鑑証明書

ファクタリング契約を結ぶとき、実印を押すときには印鑑証明書も提出します。

印鑑証明書は印鑑が実印であることを証明する書類であり、実印を押すときには必ず印鑑証明書もワンセットで求められると理解しておきましょう。

ファクタリングのメリット

メリットとデメリット

ファクタリングのメリットは以下のとおりです。

  1. 最短即日に資金調達できる
  2. 業績が悪くても利用できる
  3. 貸し倒れリスクを回避できる
  4. 信用情報に影響しない
  5. 担保や保証人はいらない
  6. 節税効果が見込める
  7. オフバランス化できる

それぞれのメリットを説明します。

最短即日に資金調達できる

2社間ファクタリングであれば、手続が簡素化されているため、最短即日で資金調達できます。

大型案件を受注したいものの手元にお金がなく材料の仕入れができないときなど、素早く手元の資金を増やせる2社間ファクタリングを活用すれば、ビジネスチャンスを逃すことはありません。

業績が悪くても利用できる

ファクタリングの審査は、売掛先の信用力を重視するため、業績が悪くても利用できます。

銀行融資では申込者の返済能力を重視するため、業績が悪化していれば信用力が低いと見なされ、審査に通らないことがほとんどです。

しかしファクタリングでは、赤字決算や税金滞納、債務超過で銀行審査に通らない場合でも、信用力の高い売掛先の債権があれば利用できる可能性はあります。

貸し倒れリスクを回避できる

ファクタリングで売掛金の回収を前倒しすれば、売掛先が倒産して回収できなくなるなど、、貸し倒れリスクを回避できます。

売掛先が倒産したために、売掛債権が回収不能になった場合でも、ファクタリング会社へ譲渡した売掛金を買い戻す必要はありません。

売掛金をファクタリング会社へ譲渡すると同時に、貸し倒れリスクも移転されることは大きなメリットといえます。

信用情報に影響しない

ファクタリングはお金を借りる資金調達の方法ではないため、信用情報に影響はしません。

そのため銀行融資で資金調達する予定があるときに、ファクタリング利用が融資審査に影響を及ぼす心配はないといえます。

担保や保証人はいらない

ファクタリングは先にも述べたとおりお金を借りる方法ではないため、担保や保証人は必要ありません。

仮に担保を差し入れることも保証人を付けることを求められた場合、ファクタリングを装い金銭を貸し付けようとする違法業者のため、契約しないようにしてください。

節税効果が見込める

ファクタリングを利用すると、ファクタリング会社に支払う「売買手数料」を「売掛債権売却損」で計上できるため、節税効果が見込めます。

売掛債権売却損は、売掛債権を売却したことで発生した損失です。

オフバランス化できる

ファクタリングで売掛金を現金化すれば、オフバランス化が可能です。

売掛金を前倒しで現金化したお金を、借入金の返済などに充てれば、貸借対照表がスリム化されます。

貸借対照表の負債を減らすことができれば、企業の業績に高評価をもたらし、銀行融資なども受けやすくなるでしょう。

ファクタリングの注意点

ファクタリングのデメリットは以下のとおりです。

  1. 売買手数料が掛かる
  2. 業績によって利用できない
  3. 額面を超える額は調達できない
  4. 債権譲渡登記を求められることがある
  5. 悪徳業者が横行している

それぞれのデメリットを説明します。

売買手数料が発生する

ファクタリングを利用するときには、ファクタリング会社に売買手数料を支払うことが必要になります。

売買手数料の相場は以下のとおりです。

  • 2社間ファクタリング 10~20%
  • 3社間ファクタリング 1~9%

民間銀行から融資を受けると2〜9%程度の年利であり、政府系金融機関なら1〜3%であるため、調達コストが高いことはファクタリングのデメリットの1つといえます。

業績によって利用できない

ファクタリングの審査では、売掛先の信用力を重視するため、業績の悪い売掛先の債権では断られる恐れがあります。

仮に審査に通ったとしても、ファクタリング会社の抱えるリスクの大きさ分、売買手数料も高く設定されます。

額面を超える額は調達できない

ファクタリングは売掛金を現金化する資金調達方法のため、債権の額面を超える額を調達することはできません。

資金調達できる範囲は、売掛金額に留まると理解しておきましょう。

債権譲渡登記を求められることがある

ファクタリングのうち、2社間ファクタリングで契約するときには、債権譲渡登記を求められることがあります。

債権譲渡登記とは、債権譲渡による権利者を公示する登記制度であり、登記が必要な場合の費用は利用者が負担します。

余計な費用がかかれば調達額も少なくなるため、留保や未登記で対応可能なファクタリング会社を選びましょう。

悪徳業者が横行している

ファクタリング業界は、法整備が不十分のため、悪徳業者が横行しやすい環境です。

そのため表向きはファクタリングを装い、金銭を貸し付けようとする違法業者が潜んでいます。

悪質な取り立て行為の被害を受ける恐れもあるため、騙されないようにしてください。

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まとめ

ファクタリングの意味を理解しておき、資金調達の方法として活用することは、手段の多様化においても重要です。

売掛債権を前倒しで入金させたいという場合に利用する資金調達の方法であり、急な資金ニーズにも対応できる方法といえます。

掛け取引で発生した売掛債権を早期に回収する方法を意味する手法でもあり、資金ショートのリスクを回避できる点が大きなメリットです。

ファクタリング会社に対して保有する売掛債権を売却し、早期に現金化させて資金繰りを改善させてみてはいかがでしょう。