今日のPMG

2021.06.17 / 最終更新日:2021.07.12

ファクタリング利用会社が当社を訴えて請求が認められなかった裁判例

【東京地方裁判所 令和2年(ワ)第19565号 不当利得返還請求事件】

 

弊社は中小企業へ向けたコンサルティング業務の傍ら、資金調達の支援として「ファクタリング」を行っています。

多くの企業は当社のファクタリングを利用してキャッシュフローを向上させることができ、

会社の資金繰りに役立てていただいている状況です。

 

ただ、ファクタリングを利用した企業の中には稀ではありますが、

当社に対し「ファクタリングは実質的に金銭消費貸借契約(貸金契約)に該当する」「公序良俗に違反する」などと

主張しはじめるものがあります。

背景には、ファクタリングを利用した中小企業から依頼を受けて訴訟提起し、

着手金等の利益を得ようとする弁護士の存在も見え隠れします。

 

令和3年5月27日、とある土木物流関係事業を行っている中小業者が当社を訴えた訴訟において、「請求を棄却する判決」が下されました。

今回はその事件の概要や流れ、判決の内容について詳しく説明いたします。

企業の資金調達やファクタリングをとりまく状況、事業者向けファクタリングについての法的な理解などを正確に把握していただける

内容となっていますので、ぜひ今後の参考にしてみてください。

 

1. 事案の概要

本件は、土木物流等を主要事業とするA社が当社を訴えたケースです。

 

A社と当社のファクタリング契約の内容

A社はかつて、資金調達のために6回にわたって当社におけるファクタリングサービスを利用しました。

A社が当社へ譲渡した債権の額面額は合計4245万円、当社の手数料が642万円分差し引かれたため、

A社が受け取った譲渡金額は合計3603万円です。

これは事業者ファクタリングの一般的な相場です。

また当該ファクタリング契約においては、債権の譲受人である当社ではなく譲渡会社であるA社が自ら債権回収を行い、

回収した金額を当社へ支払う内容となっていました。いわゆる「2社間ファクタリング」の事例です。

 

A社による当社への不当利得返還請求

A社は上記の通りファクタリングを利用して資金調達を行ったのですが、後に当社に対し、

弁護士をつけて「ファクタリング契約は実質的に貸金契約であり、手数料が高額過ぎるために過払い金が発生する」と主張してきました。

本来、ファクタリングは「債権譲渡契約」です。

債権譲渡契約には利息制限法は適用されません。

それより超過する手数料の設定も認められますし、ファクタリング業者が貸金業者として登録する必要もありません。

そもそもファクタリング業者は金融機関よりも高いリスクを被っている以上、銀行と同じ利率ではビジネスが成り立たないのです。

金融機関で融資を受けられない状況の中小企業がファクタリングを頼って資金調達を行い、生きながらえているケースも多々あります。

ところがファクタリング契約が貸金契約となると「利息制限法」や「貸金業法」が適用されるので、

高額なファクタリングの手数料は「利息制限法違反」となってしまいます。

するとファクタリング利用企業はファクタリング会社に対し、払いすぎた「利息」の返還請求ができるのです。

いわゆる「過払い金請求」です。

 

A社は上記のような理屈を展開し、当社との間の2社間ファクタリングは「実質的に貸金契約」であり、

利息制限法に引き直して計算すると597万4309円の「払いすぎ利息」が発生している、と主張しました。

 

その上で訴訟においては597万4309円のうち「180万円」の返還を求めて提訴してきたのです。

 

2. 裁判の経緯

本件裁判の経緯について、順を追ってご説明します。

 

A社の提訴内容

まずはA社が当社を提訴しました。

A社の主張内容は以下のようなものとなっています。

 

「A社はPMG社とファクタリング契約を締結したが、これは実質的には債権譲渡契約ではなく貸金契約である」

理由として挙げられた事情は以下の通りです。

 

 譲渡されたのが債権の一部であった

本件でA社から当社へ譲渡されたのは債権全体ではなく一部であったことから、当社が未回収の危険を負わないとして

「ファクタリング  契約より貸金契約に近い」と主張されました。

 A社が債権回収を行う業務委託契約が締結されていた

譲受会社である当社ではなく譲渡会社であるA社が債権回収を行うとする業務委託契約が締結されており、

いわゆる2社間ファクタリング が行われたため、当社は債権未回収の危険を負わないものとして「本件契約は実質的に貸金契約」

と主張されました。

 A社は「債権の買戻し」を行わねばならない立場であった

本件ファクタリング契約には「買戻し特約」はついていませんでしたが、A社は「本件においてA社は買戻しを行わねばならない

立場であった」と主張しました。

理由としては「債権未回収となってPMG社が取引先に債権の督促状を発送すると取引先による信用を失うため、

A社としては直接回収を防止するため買い戻しせざるをえない」というA社の内部事情が挙げられていました。

上記の通り、本件でA社と当社との間で締結されたファクタリング契約は実質的に貸金契約なので利息制限法が適用され、

払いすぎた利息である597万4309円のうち180万円の請求を求める、というのがそもそものA社による主な主張となります。

 

当社の反論

上記のA社による主張に対し、当社は以下のように反論しました。

 

「ファクタリング契約は債権譲渡契約である」
「債権譲渡契約である以上、利息制限法の適用はない」

 

以下で詳しく解説します。

 

そもそもファクタリング契約は債権譲渡契約である

ファクタリング契約は、本来的な性質上「債権譲渡契約」です。

事業者がファクタリング会社へ売掛金を譲渡して早期に資金を調達し、

ファクタリング会社が手数料を受け取って利益を得るビジネスモデルであり、世界でも広く普及しています。

近年ではみずほフィナンシャルグループやHISなどのコンプライアンスを重視する大手金融会社や旅行会社なども

ファクタリング業へ参入しており、明らかに合法ですし世界でも広く認められているビジネスの一形態です。

ファクタリングが貸金業ではなく債権譲渡であることについては東京地裁における他の判決によっても明らかにされており、

すでに確立された実務となっていると言っても過言ではない、と主張しました。

 

債権の一部譲渡であることと債権譲渡契約であることは矛盾しない

A社は本件において債権の一部譲渡が行われたことにより本件ファクタリング契約が貸金契約である、という主張を展開していました。

しかし債権の一部譲渡契約は法律上有効であり、一部譲渡だからといって貸金契約になるという理屈は成り立ちません。

そもそも企業の資金調達は「必要な範囲」で行うべきものであり、常に債権の全額を譲渡しなければならないとすると

利用企業にとっても不利益が及びます。

債権の一部譲渡であるから貸金契約であるという乱暴な理屈が成り立たないことは明らかと主張しました。

 

買戻特約はついていない

本件ファクタリング契約に買戻特約はついていませんでしたが、訴訟になるとA社は突然

「事実上買い戻しをせざるを得ない立場であった」などと主張してきました。

「債権が未払いになったとき、A社が買戻しをしなければPMG社が取引先に督促してしまい、A社への信用が損なわれる。

それを防止するために買い戻しをせざるを得ない」というのです。

しかしそのような事情はA社の内部事情であり、買戻特約とは異なります。

契約上は、A社は自社で回収できるだけの債権を当社へ引き渡せばそれ以上の責任を負わないのですから、

買戻し義務がないことは明らかといえるでしょう。

契約上も「売主(A社)は集金した金額の限りで指定された期日までに買主(当社)に引き渡せば足りる」と明示されており、

A社に「買戻義務」や「回収不能となった場合の全額支払い義務」がないことが明文化されています。

このような契約上明らかな事項について、無理やり「買戻し特約がついている」というA社の主張に全く根拠はない、と主張しました。

 

ノンリコース型のファクタリング契約である

当社が実施しているファクタリング契約は、完全に「ノンリコース型」です。

ノンリコース型とは、取引先(第三債務者)の倒産等の事情によって債権が未回収となった場合において、

ファクタリング会社が利用会社に対し、別の資金によって補填するよう請求できないタイプの契約です。

つまり取引先に債務不履行があってもファクタリング会社は利用企業へ買戻しやその他の請求をできない構造となっており、

不払いの最終的な危険はファクタリング会社が負います。

これまでの裁判例により、ノンリコース型のファクタリング契約の場合には「債権譲渡」とみなされ、

そうでない契約(取引先による不払いがあったときに買戻しやその他の方法によって

利用企業へリスクを転嫁させる内容)の場合にはファクタリング契約が「貸金契約」と認定される実務が定着しつつあります。

 

本件において、当社は「ノンリコース型」を貫いているので、ファクタリング契約は債権譲渡契約としかいいようがなく

A社の主張に理由はない、と反論しました。

 

以上よりA社の主張には理由がなく棄却されるべき、と結論づけました。

 

A社の再反論

上記に対し、A社は以下のように反論してきました。

 

PMG社が売買対象債権についての調査をしていない

A社は本件ファクタリング契約設定の際、「PMG社が売買対象債権について詳細な調査を行っていない」と指摘しました。

債権譲渡を受けるなら「第三債務者の資力や信用」が重要なファクターとなるはずなのに、

その調査を行っていないのであれば「貸金契約」に近いのではないか、という主張です。

 

A社は2社間ファクタリングを希望していない

本件ファクタリング契約は、A社に債権回収事務を任せる「2社間ファクタリング」です。

ただ契約締結時においてA社がこれを望んだわけではなく、当然のように債権譲渡契約書と事務委任の業務委託契約書に

署名押印を求められ、自然な流れで契約が締結された、と主張しました。

つまりA社は2社間ファクタリングを希望していないのに、当社の都合で2社間ファクタリングが選択された、という主張です。

 

契約内容からしてPMG社は債権未回収の危険を負わない

A社は以下のように主張して、当社が債権未回収の危険を負っていないとしました。

本件ファクタリング契約において、A社はPMG社に対し「第三債務者に支払拒絶する事情がないこと、

信用力の問題がないこと」を保証し、またA社が債権を二重譲渡することも禁じられていました。

こういった事情からすると「将来取引先から抗弁を主張されるなどして回収不能となれば、

PMG社は契約を解除してA社へ損害賠償請求ができることになる」という理屈を展開。

PMG社は債権未回収のリスクを負っていないので、本件ファクタリング契約は「貸金契約と認定すべき」と主張しました。

 

買戻特約について

本件において、債権が未回収となって当社がA社の売掛先に直接督促すると、

A社がファクタリングを利用した事実を取引先に知られて信用毀損リスクが発生します。

今後の取引に支障が及ぶのを避けるには、A社としてはなんとしても(他から資金を捻出してでも)PMG社へ支払いをせざるを得ない、

そこで本件では「事実上の買戻し義務がある」と主張しました。

 

A社の経営状況が悪化する

本件ファクタリングのように、ファクタリング会社が高額な手数料を徴収するビジネスが合法的に通用するのであれば、

A社のような中小企業の経営状況が確実に悪化してしまう、このような不当な状況を阻止するためにも

PMG社のような暴利をむさぼるファクタリング業者を厳しく取り締まらねばならない、と主張しました。

 

裁判例について

当社が提出したファクタリング会社が勝訴した裁判例については「本件と事情が異なる」と主張するとともに、

ファクタリング会社が敗訴した裁判例を持ち出し、「本件においてもファクタリング契約は貸金契約に該当する」と主張しました。

 

当社が和解を拒絶

その後、裁判所は両当事者に対し「このままではA社の主張を認めるわけにはいかない、

請求を棄却する見込みである」という心証が開示されました。

つまり「訴訟を進めて判決を下すと、PMG社が勝訴する可能性が高い」ということです。

「判決前に一度話し合いをしてはどうか」という裁判所からの勧告もあり和解協議が行われました。

そこでは当社がA社へ「10万円」を支払って和解する内容が提示されました。

 

結論として、当社は和解案を拒絶しました。

当社がA社や代理人弁護士による不当な請求に対して「少額でも和解金を支払った」という前例を作らないためです。

 

実はA社の代理人に就任している弁護士は、事業者支援団体などから事件の紹介を受けているらしき気配があります。

そういった組織は相談してきた事業者に対し

「ファクタリングを利用したならお金を取り戻せる可能性があるので、訴訟を起こすと良い」とアドバイスを行い、

原告代理人弁護士を紹介しているようです。

こういった事情を背景に、本来なら認められないようなファクタリング会社相手の訴訟が近年数多く発生しているのではないかと

考えられます。

もしも当社がここで和解に応じてしまったら、上記のような団体や原告代理人弁護士のような方が

さらに多くの中小事業者に声をかけて無益な訴訟を起こさせ、中小事業者の利益が害されてしまうおそれが懸念されるでしょう。

 

そういった前例を作らないため、当社はたとえ少額であっても和解金の支払いを拒否しました。

 

本件は判決に持ち越されることとなりました。

 

3. 判決の内容

令和3年5月27日、東京地方裁判所は判決を下し、以下のように判断しました。

 

結論

結論として裁判所はA社による主張を全面的に棄却し、一切の請求が認められませんでした。

事前の心証開示のとおり、当社の全面勝訴となりました。

 

理由は以下の通りです。

A社が債権全額の支払いを保証したとはいえない

本件ファクタリング契約において、A社は「契約において支払いの保証をさせられたので、

未回収が発生したらA社が自己資金で填補しなければならない」といった主張をしています。

しかし本件の契約書を見ても、そのような保証義務を定める条項はありません。

むしろ本件ファクタリング契約書には

「売主(A社)が買主(当社)に対し、現在及び将来にわたる第三債務者の資力を担保するものではない」

「債権の完全な履行を保証するものではない」

「債権の全部または一部が履行不能となった場合でも買主は売主に売買代金の返還を求めることはできない」

と明確に定められています。

つまり債権が回収不能となったときには買主である当社がリスクを被る内容となっているのです。

このことからすると「A社がPMG社へ債権全額の支払いを約束(保証)した」というA社の主張に理由はないと判断されました。

 

2社間ファクタリングも債権譲渡契約として有効

本件では、債権譲渡契約と同時に債権回収に関する業務委託契約が締結され、

当社ではなくA社が債権回収を行う内容(いわゆる2社間ファクタリング)となっていました。

A社はこのことを理由に「本件ファクタリング契約は貸金契約に性質が近い」と主張していましたが、

裁判所は「債権回収に関する業務委託契約が締結されているとしても、

契約の性質が債権譲渡契約であることに影響しない」としてA社の主張を排斥しました。

譲渡禁止特約がついていない保証について

本件ファクタリング契約において、A社は「売買対象債権に譲渡禁止特約はついていない」と保証していました。

これについても通常の売買契約における商品の品質保証と何ら変わる点はなく、

金銭消費貸借契約に該当する理由にはならないと判断されました。

 

買戻し義務は設定されていない

A社は、本件ファクタリング契約ではA社に実質的な買戻し義務があったという主張をしていました。

裁判所は以下のように判示し、A社の買い戻し義務を明確に否定しました。

 契約書において買戻義務は規定されていない
 債権が回収不能となったときにPMG社はA社へ売買代金の返還を求めることはできない、とはっきり規定されている

 

買戻し特約がついていないならば本件は「ノンリコース型のファクタリング契約」であり、

債権譲渡契約としての性質が認められることになります。

 

その他の原告の主張も認められない

A社は上記以外にも

「債権の一部譲渡が行われたので貸金契約である」

「2社間ファクタリングはA社が望んだものではない」

など、諸々の主張を行っていましたが、裁判所はすべて否定しました。

「原告(A社)はさまざまな主張を行っているものの、いずれも上記認定を覆すものではなく採用できない」と明確に判示しています。

以上より、裁判所はA社による当社への不当利得返還請求を全面的に排斥し、請求を棄却しました。

本件判決から学べること

本件判決はファクタリング利用会社によるファクタリング会社への

「不当利息返還請求(過払い金請求)」を全面的に棄却するものです。

実は今、東京を中心にA社のようなファクタリング利用会社からファクタリング会社へ対する

不当利得返還請求訴訟(過払い金請求訴訟)が数多く提起されています。

一つには、上記にも記載したように事業者支援団体や一定の弁護士が中小事業者へ

「ファクタリングを利用した場合にはお金を取り戻せる」などとアドバイスを行っている事情があるためです。

 

しかしファクタリングを利用したからといって過払い金が発生するわけではありません。

「ノンリコース型」のファクタリング契約の場合には、訴訟を起こしてもほとんどの場合に請求棄却されてしまいます。

2社間ファクタリングであっても貸金契約になるとは限らないので、誤解しないように注意しましょう。

 

無益な訴訟を起こせば弁護士費用も労力も時間も、すべてが無駄になってしまいます。

中小事業者が弁護士や事業者支援団体によってファクタリング会社に対する訴訟提起を勧められたときには、

不当な不利益を受けないようくれぐれも慎重に判断してください。

 

弁護士の先生方におかれましても「ファクタリング契約は悪、ファクタリングが行われたら過払い金請求できる」

というのは誤解ですので、本件判決をご覧になって正しい理解を得ていただけますと幸いです。

 

ピーエムジー株式会社

代表取締役 佐藤 貢