契約書の訂正印とは?使用する印鑑や訂正方法・注意点をわかりやすく解説

契約書の訂正印とは、書面上の誤字や脱字など、記載ミスの書き直しの際に押す印鑑です。

すでに契約交渉の終盤段階のときや、契約当事者が契約書に署名・押印をした後で書き直したい間違いを見つけたとき、手書きで対処するときには訂正印を押す方法を用います。

契約書を作成する上で、不正や改ざんを防ぐためにも訂正印の使い方は理解しておいてほうがよいでしょう。

そこで、契約書の訂正印について、使用する印鑑や訂正方法、注意点をわかりやすく解説します。

契約書の訂正印とは

記名押印

契約書の訂正印とは、契約書の一部を書きなおしたいときに押す印鑑です。

訂正印について以下の2つを説明します。

  1. 使用する印鑑
  2. 文字のカウント方法

使用する印鑑

契約書を書き直すときの訂正印として使用する印鑑は、契約締結の際に使った印鑑です。

署名・押印の際に使った印鑑が認印の場合は、訂正印も同じ認印を使います。

また、会社の実印である代表者を使っているときの訂正印は代表者印を使いますが、法人の契約書で訂正印として使用できる印鑑は、以下のとおりです。

  • 実印(代表者印)
  • 認印(角印)
  • 銀行印

文字のカウント方法

契約書を訂正するときには、削除または追記した文字を数えて記します。

このときの文字数のカウント方法は、文字の種別(ひらがな・カタカナ・漢字・英数字・記号など)には関係なく、1文字ずつ数えるようにしてください。

仮に数字などが半角のときも、全角同様に1文字としてカウントします。

契約書の訂正方法

 

契約書

契約書の訂正は、訂正する前の内容は確認できる状態で残し、契約当事者が承認した証として署名・押印(または記名・押印)したときと同じ印鑑で行います。

訂正が改ざんでないことを証するために押す印鑑が訂正印ですが、手書きによる訂正方法は以下のとおりです。

千代田区 ㊞(5行目、削除3文字、加入4文字)
〒100-0005 東京都中央区丸の内1丁目

上記の訂正方法について、以下の4つに分けて説明します。

  1. 訂正部分を二重線で消す
  2. 文字や数字を書き加える
  3. 削除・加入した行数・文字数を記載する
  4. 訂正印を押印する

①訂正部分を二重線で消す

契約書の中で訂正したい部分に、二重線を引いて消します。

塗りつぶして消すのではなく、もともと何と書かれていたのか見えるように、削除する文字の上に二重に線を引きます。

なお、書き直したい文字が単語のうちの1文字のとき、1文字のみに二重線を引くのではなく、単語ごとに修正してください。

②文字や数字を書き加える

二重で消した部分を新しい内容に書き直すときには、横書文書なら訂正箇所の上側、縦書文書では右側に書き加えます。

新たに記載する余白などがないときには、修正付近の空いている部分に書きましょう。

文字を追加するときには、「V」を記載した上に記入します。

③削除・加入した行数・文字数を記載する

訂正部分の欄外や上段欄外に、訂正した行や削除した字数、書き加えた字数などを以下のとおり記載します。

「○行目、△字削除、□字加入」

なお、以前はこの記載において多角漢数字(伍行目、弐字削除、参字加入など)を使用し、改ざんを防いでいました。

しかし現在は、算用数字(5行目、2字削除、3字加入など)で記載しても問題ありません。

漢数字(一、二、三など)は簡単に改ざんできてしまうため使わないようにしてください。

④訂正印を押印する

欄外に削除と加入の字数を記載したら、その横または下へ契約当事者が署名・ 押印(記名・押印)で使った印鑑を訂正印として押します。

上記の①〜④は、契約書として作成した部数すべてに行うことが必要です。

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契約書への文字の追加・削除方法

契約書に書き抜かった文字を加えたいときには、抜けてしまった箇所を「<」で指定して文字を加えます。

訂正印はその付近に押し、その横に追加した文字数も記載しましょう。

千代田区 ㊞(加入3文字)
<
〒100-0005 東京都丸の内1丁目
※追加した文字数も括弧書きで記載するとより丁寧。

また、余計な文字を削除したいときには、削除する文字に二重取り消し線を引いて、その上に訂正印を押します。

その横に削除した文字数も記載しましょう。

 ㊞(削除1文字)
〒100-0005 東京都千代田区区丸の内1丁目

契約書を訂正するタイミング

契約書を訂正するタイミングは、主に以下の3つです。

  1. 交渉の初期段階
  2. 署名・押印直前
  3. 署名・押印後

それぞれ説明します。

交渉の初期段階

契約書を訂正するタイミングは、契約交渉の初期段階です。

作成した契約書は見直し、正式に契約を締結するときには、当事者間で内容に相違はないか、誤字・脱字・不適切な部分などがないか確認しましょう。

署名・押印直前

契約書を訂正するタイミングは、署名・押印する直前です。

印鑑を押す直前に誤字や脱字などが見つかっても、訂正する箇所がごくわずかであれば、作り直しはせずに訂正印で処理します。

但し、誤字や脱字などの訂正ではなく、契約金額や支払い条件など重要部分を書き直すときには、時間がかかっても作り直しましょう。

署名・押印後

契約書を訂正するタイミングは、署名・押印をした後です。

念入りに確認したつもりでも、署名・押印(記名・押印)後に誤字・脱字が発覚することもあります。

すでに印鑑を押して署名も終えているため、手書きでの訂正と訂正印を押して処理しましょう。

新しく条項を追加するときや、内容を一部変更する場合には、直接訂正するのではなく別途、覚書または合意書を作成します。

契約書を訂正する場合の注意点

記載の説明

契約書を訂正するときには、次の4つに注意してください。

  1. 訂正箇所の覚書を作成する
  2. 再訂正はわかるように記載する
  3. 捨印があれば訂正印はいらない
  4. 訂正後に再締結する

それぞれ説明します。

訂正箇所の覚書を作成する

契約書を訂正するときには、訂正箇所の覚書を作成しましょう。

単なる誤字や脱字ではなく、重要な事項(金額や契約期間)などを変更したいときには、変更部分を契約書と別に文書で取りまとめ合意した覚書を作成します。

覚書には、

「“◯条 ◯◯◯◯”の内容を“△△△△”に変更する」

など訂正内容を記載して、当事者双方の署名・押印を行います。

なお、覚書の内容に契約金額が含まれるときには収入印紙が必要な場合もあるため、必ず確認した上で必要であれば貼付と消印をしましょう。

契約書に貼る収入印紙の金額はいくら?課税文書の種類と貼り忘れの罰則を解説

再訂正はわかるように記載する

契約書を再訂正するときには、どこを何に訂正したのか内容を把握できるようにしておきましょう。

一度訂正した後、再度訂正することも可能できます。

再訂正の場合も二重線を引いて欄外のスペースに、

「○行目、◯字削除、◯字加入」

と記載します。

訂正は何度でも可能であるものの、もとの内容がわかるとおりしておくことが必要です。

捨印があれば訂正印はいらない

契約書を訂正するときに、捨印があれば訂正印は不要です。

欄外に捨印を押しておけば、訂正印がなくても内容の訂正は可能となります。

しかし捨印があると、契約当事者のいずれかに内容を変更される恐れがあるため書き換えられる恐れがあるため、安易に押すことは避けたほうがよいでしょう。

訂正後に再締結する

契約書を訂正するのなら、訂正した後で再度、契約締結しましょう。

内容に致命的な記載ミスを発見したとき、締結済の契約を互いの合意で明示的に終了させます。

その後、契約を再び締結することで修正等を巡るトラブルは避けやすくなります。

まとめ

契約書は、訂正印を使って内容を修正することはできます。

すでに作成した契約書を作り直さなくてもよいことはメリットですが、金額など重要な事項を訂正するときには、再度作成したほうがよいといえます。

訂正印で対応するべきかは、修正部分の重要性などを踏まえて検討することが必要といえますが、ミスがあったときの対応方法の1つとして知っておくと便利です。