物流倉庫とは?役割や種類・活用するメリットと注意点をわかりやすく解説

物流倉庫とは、入庫した商品の保管や管理をする施設です。

単に受け入れた商品や荷物を保管するだけでなく、出荷・在庫管理などを行うことも物流倉庫の役割といえます。

近年、最新技術が進化したことで物流倉庫における管理方法もIT化が進む動きはあるものの、役割や作業の流れに大きな変化はありません。

また、物流倉庫にもいろいろな種類があり、それぞれ利用におけるメリットや注意点が異なるため、理解した上での活用を検討することが必要です。

そこで、物流倉庫とは何か、役割やその種類、活用するメリットと注意点をわかりやすく解説していきます。

物流倉庫とは

物流倉庫

「物流倉庫」とは、商品や荷物を保管・管理する施設であり、物流の流れにおいて保管・仕分け・配送を担当する場所です。

サプライチェーンの一部ともいえる物流倉庫は、従来の倉庫のように商品や荷物を保管する業務だけに留まりません。

在庫管理・発送業務・商品梱包・出荷などの物流機能を担う場所が物流倉庫といえます。

物流倉庫について、さらに詳しく以下を説明します。

  1. 役割
  2. 物流センターとの違い

物流とは?目的や必要性・効率化が求められる理由をわかりやすく解説

役割

物流倉庫の「役割」は、商品の保管だけでなく、管理・流通加工・管理・出荷・配送などの物流のプロセスに対応することです。

従来までは、メーカーがそれぞれ自社の倉庫を保有し、製品や商品は自社倉庫で管理することが一般的でした。

そのためあくまでも倉庫は、自社製品を注文が入るまで保管するスペースとして使われていたといえます。

しかし自社倉庫を所有・維持するには、敷地や建物に費用がかかる以外にも、人件費・光熱費・固定資産税などの維持費が発生します。

また、セキュリティ対策も十分対応しておく必要があるため、コスト面が大きな課題とされていました。

近年、物流業務を請け負う物流会社所有の物流倉庫を、アウトソーシングで活用するケースが増えたのはこのような理由です。

外部の物流業務専門の物流倉庫を活用することで、コストを削減し少ない労力で正確に荷物や商品を保管・管理することができます。

物流センターとの違い

物流倉庫と物流センターの違いは、対応できる業務の範囲です。

まず物流倉庫は、出荷するまでの商品や荷物を保管する業務を主に担います。

仕分けやピッキング、流通加工なども行うものの、主に保管が目的です。

対する物流センターは、商品の値付けや梱包などの総合的なサービスを提供することが違いといえるでしょう。

物流倉庫の種類

物流倉庫の作業中の男性

物流倉庫には、いろいろな業種や商品に対応するために様々な種類があります。

主に、以下のとおり温度・機能・用途・運営主体などで分けることができます。

① 温度別

保管商品の性質に応じて、常温・冷蔵・冷凍・定温などの温度に分けた保管条件の倉庫に分類されます。

常温倉庫 一定範囲の温度に保たれている倉庫であり、食品・衣類・家電製品などの一般的な商品保管に適している倉庫です。
冷蔵倉庫 2~10℃程度の温度帯での商品保管が可能な倉庫あり、生鮮食品・医薬品などの品質を維持することに適した倉庫です。
冷凍倉庫 マイナス18℃以下の低温で商品を保管できる倉庫で、冷凍食品・アイスクリームなどの商品に適した倉庫です。
定温倉庫 設定した一定温度を維持できる倉庫で、ワインや化学薬品など特定の温度条件の下、品質を維持したい商品に適した倉庫です。

② 機能別

効率的な物流や付加価値サービスなど、ニーズに応じて提供される物流サービス(機能)ごとで分類されます。

DC(ディストリビューション・センター) 商品の保管・在庫管理を行い、流通や小売業者に出荷する倉庫であり、効率的に製品を配送先まで届けることを目的とします。
TC(トランスファー・センター) 輸送手段の変更場所や複数の出荷元からの商品を一元化し、輸送効率を向上させるためにまとめて輸送するための倉庫です。
PDC(プロセス・ディストリビューション・センター) 商品の加工・組み立て・検品・梱包などの付加価値を提供する倉庫であり、製造業者や小売業者のニーズに応じた加工やカスタマイズを担当します。
FC(フルフィルメント・センター) オンラインショッピングの注文処理・ピッキング・梱包・配送を担当する倉庫であり、商品配送や返品対応などを迅速に行うことで顧客満足度の向上を目指します。

③ 用途別

異なるニーズなど、主要な用途によって分類されます。

一般倉庫 温度や湿度は通常範囲内で管理されている倉庫であり、日用品・雑貨・家具など一般的な商品保管に適しています。
冷蔵・冷凍倉庫 温度や湿度を厳密に管理することが必要な商品保管に特化した倉庫であり、食品・医薬品など温度によって品質が変わる商品に適しています。一般的に冷蔵倉庫は2~10℃、冷凍倉庫はマイナス18℃以下で管理されます。
危険物倉庫 可燃性・爆発性・毒性など、危険物を安全に保管する特殊設計の施された倉庫であり、法令や規制に従って火災や事故リスクを最小限に抑える対策が講じられています。
保税倉庫 海外貨物の関税徴収を一時的に保留して蔵置できる倉庫であり、税関の監視下で運営されます。
自動化倉庫 ロボットやコンピュータ制御システムなどを活用し、商品の保管・取り出しなどを自動で行う倉庫です。
野積倉庫 屋外で商品保管ができる倉庫であり、耐候性や耐久性に優れているため、建設機械や輸送機器などが対象です。
貯蔵槽倉庫 液体や気体の原料・製品などの保管ができる特殊設計が施された倉庫で、石油・ガス・化学薬品などの流体物質の保管に適しています。
水面倉庫 河川や港湾などの水上で、船舶や浮体を利用して保管できる倉庫であり、水上輸送が必要な商品などに適しています。
トランクルーム 一般消費者や企業が短期または長期で荷物を保管したときのレンタル倉庫であり、在庫や資材など色々なものを預けることができます。

④ 運営主体別

メーカーの自社運営または物流サービスを専門とする業者運営の倉庫など、運営主体によって分類されます。

自家倉庫 自社の製品や資材などの保管し、物流業務を行うための倉庫であり、企業が直接倉庫の管理や物流業務を行います。
営業倉庫 物流サービス提供の専門業者運営の倉庫であり、複数の企業や個人などの商品を保管・管理・運送しています。一般に第三者物流(3PL)と呼ばれる業者運営の倉庫で、顧客企業に物流のアウトソーシングサービスを提供します。

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物流作業の流れ

ダンボールを受け取る男性

物流倉庫ではさまざまな作業が行われますが、主に以下の流れで業務が進みます。

  1. 入荷
  2. 検品
  3. 保管
  4. 流通加工
  5. ピッキング
  6. 仕分け
  7. 梱包
  8. 出庫

それぞれ説明します。

1.入庫

入荷済の商品を指定の保管場所へ入れる作業が「入庫」です。

在庫数を正確に把握・管理するために、倉庫管理システム(WMS)を活用するケースが増えています。

2.検品

商品の入庫後、初期不良(破損・傷など)を確認する「検品」作業が行われます。

欠陥や破損の有無をチェックすることだけでなく、注文書や納品書と照らし合わせて届いた商品と合っているか確認します。

3.保管

検品した商品は、特性や条件などに合わせて柵や区画で割り当てた適切な場所へ移動させ、「保管」します。

在庫管理システムで、在庫状況や保管期間の管理も行います。

4.流通加工

商品へ加工・組み立て・ラベル貼り・値札付けなどの「流通加工」を行います。

付加価値をつけることや、要望に合わせたカスタマイズを施す作業です。

主にオプションとして扱う作業フローが「流通加工」であり、ギフト用ラッピング加工や複数商品をまとめて梱包するなどの対応を行います。

5.ピッキング

出荷指示後に、倉庫から該当する商品を取り出すことを「ピッキング」といいます。

出荷指示に従って、正確に指定商品を選び取り出す作業です。

6.仕分け

ピッキングにより選んだ商品は、送り先ごとに分ける「仕分け」作業も行います。

物流倉庫の規模や種類によって、手で分けるだけでなく自動の仕分けを使うケースもあります。

7.梱包

仕分け後に、商品を梱包して出庫します。

商品に合わせた適切な緩衝材を使い、輸送中に破損しないように包む作業です。

8.出庫

商品の梱包後は、顧客のもとへ配送されます。

梱包作業の完了後に出荷前の最終確認(検品)を行い、問題がなければトラックへと積み込んで倉庫内作業のプロセスは完了です。

なお、出荷する商品には、配送伝票や納品書などの書類が同梱されます。

物流倉庫活用のメリット

メリットとデメリット

物流倉庫を活用することには、主に以下のメリットがあると考えられます。

  1. リソース不足を解消できる
  2. 業務効率化を図れる
  3. コスト削減につながる
  4. リードタイムを短縮できる
  5. 柔軟性・専門性が高まる
  6. 最新システムが利用できる

それぞれ説明します。

リソース不足を解消できる

物流倉庫活用のメリットとして、業務のリソースを外注し、不足を解消できることが挙げられます。

倉庫業務のすべてを自社で賄うためには、多くのリソースを割かなければなりません。

しかし物流倉庫を利用すれば、限られたリソースを重要性の高い業務へと充てることができ、人手不足で対応できないトラブルなども防ぎやすくなるでしょう。

外部の物流倉庫を活用すれば、リソース不足を大幅に改善できます。

業務効率化を図れる

物流倉庫活用のメリットとして、一元的な管理システム導入などで、管理などの業務効率化を図れることが挙げられます。

最新技術や自動化システムなどを導入することで、作業負担を軽減し業務スピードと質を高めることもできます。

コスト削減につながる

物流倉庫活用のメリットとして、輸送や人件費などのコスト削減につながることが挙げられます。

自社倉庫の場合、敷地や建物にかかる費用や光熱費、システムを構築するための設備や人件費など多岐に渡る費用が発生します。

さらに物流量が変わるたびに容量を変更することはできないため、繁忙期に合わせた倉庫づくりは閑散期に無駄を発生させます。

外部の物流倉庫なら、物流量の変化に柔軟な対応が可能となるため、結果的に無駄な費用を削減することにつながります。

リードタイムを短縮できる

物流倉庫活用のメリットとして、リードタイムを短縮できることが挙げられます。

効率的なピッキング・梱包作業・配送スケジュール策定などで顧客へ商品を配達するまでの時間を短縮できれば、顧客満足度も向上し、追加や新規の契約につながるとも考えられるでしょう。

合理性が高まる

物流倉庫活用のメリットとして、合理性が高まることが挙げられます。

需要の増減で簡単に在庫や作業のスペースを調整できるため、市場の変動にも素早く対応できます。

それに加え、専門的な物流サービスを提供してもらえれば、煩雑な業務から解放され本業に専念できるため、合理性が高まるといえるでしょう。

最新システムが利用できる

物流倉庫活用のメリットとして、最新システムの利用が可能であることが挙げられます。

業務効率化を図るシステムを備えた外部の物流倉庫と契約すれば、わざわざシステムを導入する必要なく正確性の高い物流を確保できます。

導入が難しい高額な設備などを備えた物流倉庫との契約で、最新システムの利用が可能となるのはメリットといえます。

物流倉庫活用の注意点

物流倉庫活用にはたくさんのメリットがある反面、以下の3つには注意が必要です。

  1. 費用がかかる
  2. ノウハウが蓄積できない
  3. 情報伝達のタイムラグが発生する

それぞれ説明します。

費用がかかる

物流倉庫活用の注意点として、費用がかかることが挙げられます。

初期費用として、利用料・保管料・ピッキング料・梱包料・出庫料などの利用料が必要ですが、追加サービスなどで追加料金が発生します。

契約する期間・取引条件・立地条件などでも費用は変動します。

ノウハウが蓄積できない

物流倉庫活用の注意点として、ノウハウが蓄積できないことが挙げられます。

将来は自社倉庫で管理をしたいと考えている場合、専門の物流倉庫に委託してもノウハウは得られないため、自社管理に至らない恐れもあるといえるでしょう。

情報伝達のタイムラグが発生する

物流倉庫活用の注意点として、情報伝達におけるタイムラグが発生することが挙げられます。

外部の物流倉庫を利用中にトラブルが発生しても、委託する業者と連携が取れていなければ、情報が伝わってこずにユーザーが不利益を被る恐れがあります。

結果、トラブルを解決できず、顧客満足度が下がり売上や利益に影響を及ぼしてしまいます。

そのため外部の業者に任せきりにするのではなく、情報共有やコミュニケーションなどの問題を克服できる体制を作っておくことも必要です。

まとめ

物流倉庫は、上手に活用することで業務効率化やコスト削減につなげることができます。

最新技術の導入などで進化し続ける物流倉庫を活用すれば、商品の保管や管理以外にも、いろいろなサービスを委託することが可能です。

無駄な手間や時間を削減し、スピーディにサービスを提供できるだけでなく、不足するリソースを補うことができるため本業に専念しやすくなります。

人手が不足している業界だからこそ、在庫管理・仕分け・梱包・発送までを一手に引き受けてくれる物流のアウトソーシングの有効活用を検討するとよいでしょう。