法人税の中間納付とは、事業年度の半分の期間で行う申告と納付の手続です。
税金を前払いする制度であり、前期の法人税額が一定金額を超えたときには中間申告が必要となります。
そこで、法人税の中間納付について、仕組みや計算方法、対象となる会社をわかりやすく解説します。
目次
法人税の中間納付とは
法人税の「中間納付」とは、事業年度の中間点で申告・納付の手続を義務付けている制度であり、以下の2つに基づいて行われます。
- 予定申告
- 仮決算
それぞれ説明します。
予定申告
「予定申告」とは、前期の実績を基準とした中間申告です。
前事業年度に納めた法人税額の半分程度を中間納付額として、先に納税します。
仮の申告といえるため、簡易的な手続で申告・納税できます。
なお、前期基準額は以下の計算式で算出します。
前期基準額 = 前事業年度の確定法人税額/前事業年度の月数×6か月 |
仮決算
「仮決算」とは、事業年度開始から6か月間を1つの事業年度とみなした中間決算です。
算出された課税所得に法人税率を掛け、中間納付額を確定させます。
前期より経営が悪化したことで前期法人税の半分の支払いができないときには有効な方法です。
しかし事業年度の途中での決算手続は事務処理に手間がかかることと、算出した納付額が10万円以下のときや、予定申告の納付額より仮決算の納付額が高いときは利用できません。
また、源泉所得税の還付は確定申告時以外ではできないことも注意しておきましょう。
法人税の中間納付の仕組み
法人税の中間納付は、事業年度の中間地点で仮の申告と納付を済ませる仕組みです。
課税期間内の確定申告で決まった年間税額の前払いであるため、中間納付した額は確定申告の税額から控除されます。
確定申告で控除しきれなかった中間納付分は、払い過ぎた税額であるため還付されます。
法人税の中間納付の期間
法人税の中間納付とは、事業年度が開始されて6か月経過した時点までの法人税を前払いすることです。
中間納付する期間は、事業年度開始日以後6か月を経過した日から2か月以内に、中間申告書を税務署へ提出・納税しなければならないとされています。
納付期限は事業年度の中間時点から2か月以内です。
ただし事業年度内で創業した会社や、前の事業年度の法人税額が20万円以下の会社は中間納付不要とされています。
たとえば3月末が決算時期の会社の場合、新たな事業年度の開始日は4月1日です。
事業年度開始日から6か月経過した中間時点は10月1日となるため、中間納付の期限は12月31日までとなります。
中間納付税額額の計算方法
中間納付の納税額は、確定申告で一気に多額の法人税を納める負担を軽減する制度です。
納付税額は、以下の2つにより計算方法が異なります。
- 予定申告
- 仮決算
それぞれ説明します。
予定申告
先にも紹介したとおり、予定申告における法人税の中間納付額は以下の計算式を用います。
前期基準額 = 前事業年度の確定法人税額/前事業年度の月数×6か月 ※計算過程における1円未満の端数はすべて切り捨て ※計算結果の100円未満の端数はすべて切り捨て |
前期の法人税の半分を前払いする申告方法であり、基本的な中間申告の方法です。
仮決算
仮決算における法人税の中間納付額は、事業年度を開始月から6か月間を計算期間とするため、以下の計算式で算出します。
課税所得=益金(収益)-損金(経費) 法人税額=課税所得×税率 |
仮決算に基づいて納める消費税や地方消費税の計算では、消費税率を8%対象と10%対象に分けて計算しなければならない点に注意しましょう。
また、仮決算で税額がマイナスになっても還付金は戻ってこないことと、損益計算書・貸借対照表・勘定科目仕訳書などの書類提出も必要になることは理解しておく必要があります。
中間納付のメリット
中間納付は、法人の資金繰り負担が軽減できることがメリットです。
法人税の納付負担額が大きくなることを懸念し、前もって納めておこうという制度であるため、事業年度の決算で多額な納税額に頭を悩ますことを軽減できます。
税金滞納や、納税できずに倒産してしまうことへの対策になります。
国も税収がなければ予算を立てにくくなるため、中間納付により法人のかかる納税に関するリスクを防ぎ、安定した税収を見込めるようになることはメリットといえるでしょう。
法人税の中間納付の対象
法人税の中間納付の対象は、前事業年度の法人税額が20万円を超えている会社です。
株式会社や合同会社などの普通法人が対象であり、NPO法人や公益法人などは不要とされています。
税務署から中間申告書が届いたら、必要事項を記載・押印の上、提出しましょう。
前年度の法人税をe-Taxで確定申告していると、中間申告書用紙の送付はなく、メッセージボックスに「法人税予定申告のお知らせ」が送信されます。
お知らせの内容から、中間申告書作成画面へと移り、申告書の作成・送信ができます。
反対に対象とならないのは以下の法人です。
- 前事業年度の確定申告が赤字だった法人
- 前事業年度に納付税額が20万円以下の法人
- 会社設立1年目の法人
- 公益性のあるNPO法人
会社設立1年目の法人は、前事業年度が存在しないため納付額も計算できないため申告義務はありません。
法人税の中間納付の方法
法人税の中間納付は、以下の方法で決済できます。
- クレジットカード納付
- ダイレクト納付
- コンビニ納付
- 直接納付
それぞれ説明します。
クレジットカード納付
法人税の中間納付は、事前手続なしで専用のインターネットサイトからクレジットカードで納付できます。
24時間手続できることとや、利用するカードによってカード会社側の分割払いも利用できることがメリットです。
ダイレクト納付
法人税の中間納付は、e-Taxを利用したダイレクト納付も可能です。
即日または指定期日に口座から引き落としされる方法ですが、事前に以下の手続を済ませておく必要があります。
- e-taxの利用開始手続
- 納税用確認番号の登録
- ダイレクト納付利用届出書の提出
コンビニ納付
法人税の中間納付は、税務署から送られてきたコンビニ専用の納付書も利用できます。
バーコード付きの納付書を前もって入手するか、QRコード納付書を作成することは必要となります。
また、利用可能額は30万円以下のため、この額を超える法人税を納めるときは利用できません。
直接納付
法人税の中間納付は、現金と納付書を金融機関または税務署の窓口に持参して支払う直接納付も可能です。
手元に納付書がなければ、税務署の窓口で作成してもらえるため、事前の準備が面倒に感じるときにおすすめといえます。
中間納付の注意点
法人税の中間納付においては、以下の4つに注意しましょう。
- 中間納付しなければ予定申告扱いになる
- 期限を過ぎれば延滞税が付加される
- 消費税も中間申告の対象
- 吸収合併は中間納付額に注意が必要
それぞれ説明します。
中間納付しなければ予定申告扱いになる
法人税の中間納付は提出が必須ではないものの、期限内に仮決算に基づく申告書を提出しなければ予定申告が行われたとみなされます。
税務署が特例で自動処理した予定納税額で中間納付額を納めることが必要であり、その後、修正はできません。
申告を忘れていたにもかかわらず、期限までに申告完了とみなされるため、前事業年度の法人税の年額を基準にした中間納付額として確定されてしまうと留意しておきましょう。
期限を過ぎれば延滞税が付加される
法人税の中間納付は、事業年度開始日から6か月経過した日から、さらに2か月が経過した日を期限とします。
納付し忘れた場合、実際の納付日まで延滞税が付加されるため注意してください。
なお、任意の中間申告制度を利用すれば、中間申告の対象ではない法人も自主的に中間申告制度の活用ができます。
決算後に法人税の納付に充てる資金の不足が予想される場合、自主的に中間申告を利用することで資金繰り対策につなげることができるでしょう。
消費税も中間申告の対象
中間納付は法人税だけでなく、消費税も対象です。
法人で消費税の中間納付は、原則、前事業年度の地方消費税を除いた確定消費税額が48万円を超えているときとされています。
税務署から中間申告書が届きますが、e-Taxで確定申告していれば用紙は送付されず、メッセージボックスに「消費税中間申告のお知らせ」が送信されます。
また、消費税も「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を税務署に提出し、自主的に中間申告できます。
吸収合併は中間納付額に注意が必要
法人税の中間納付は、吸収合併した会社などで適格合併の要件を満たす場合、納付額が変わる可能性があります。
適格合併が年度開始日から6か月以内の場合、納税額が変わるため注意してください。
まとめ
法人税の中間納付は、税金を前払いする制度であり、前期の法人税額が一定金額を超えたときには必要です。
事業年度の中間点で申告・納付の手続を義務付けている制度であり、予定申告と仮決算の2つに基づいて行います。
事業年度の中間地点で仮の申告と納付を済ませる仕組みであり、中間納付した額は確定申告の税額から控除され、控除しきれなければ払い過ぎた税として還付されます。
法人税の中間納付においては、手続しなければ自動的に予定申告扱いになることや、期限を過ぎれば延滞税が付加されることに注意してください。
法人税の納税資金が足らず、会社が倒産の危機に陥る前に、中間納付をしておくことや専門家に相談することは必要なことです。
納税資金に充てる資金が足りておらず、銀行融資以外の資金調達方法を検討しているときは、お気軽にPMGにご相談ください。