計画倒産とは?違法手口と適法の計画的な倒産との違いを解説

計画倒産とは、通常の倒産と異なり、債務などを踏み倒す目的で会社を潰す行為です。

会社が経済的に破綻したときに計画倒産ではないかと疑われることがありますが、債権者を欺く行為は違法とされているため、債務等の支払いを踏み倒す目的で倒産してはいけません。

そこで、どのような行為であれば計画倒産に該当するのか、違法手口と適法とされる計画的な倒産との違いについて解説していきます。

計画倒産とは

「計画倒産」とは、債務や取引先に対する支払いなどを踏み倒す計画を立てた上で会社を潰すことです。

資産の移動や不動産売却などを計画的に進め、金融機関や取引先、従業員などを騙し、害をもたらす倒産手続といえます。

他にも特定の債務者のみに返済するなど、不公平な行動計画による実行後の倒産も含まれます。

計画倒産に適用される罪

計画倒産は違法とされているため、実行すれば以下の2つの罪の対象となります。

  1. 詐欺罪
  2. 詐欺破産罪

それぞれ適用される罪について説明します。

詐欺罪

「詐欺罪」とは、人を欺く意思で相手を錯誤に陥らせて、財産処分などによる利益を得ることです。

計画倒産における詐欺罪の成立は、会社が倒産状態にあることを隠して銀行から融資を受けることや、支払う意思もないのに商品を仕入れることなどが挙げられます。

詐欺罪に罰金刑はなく、起訴されれば無罪にならない限り、10年以下の懲役刑の対象となります。

執行猶予が付かない実刑判決となれば、刑務所に収監されるため行わないようにしてください。

詐欺破産罪

「詐欺破産罪」とは、債権者が財産を回収することを妨害する目的で、財産を隠したり壊したりすることです。

不適切な行為により、債権者に損害を与えることといえますが、破産手続のときだけ成立する罪といえます。

計画倒産における詐欺破産罪は、倒産前に財産を不当に移動・隠匿することなどです。

現金・有価証券の証書・貴金属など財産を隠匿したり損壊したりといったことが該当します。

詐欺破産罪は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金の対象となり、この両方が科されることもあります。

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計画倒産で違法とされる手口

計画倒産が違法となるのは、合法的な倒産を装いながら、実際には不当に資産を保護するなど債権者を害する行為だからです。

違法な計画倒産とされる手口として、以下の3つが挙げられます。

  1. 倒産予定での新規借入れ
  2. 支払う意思のない大量商品の仕入れ
  3. 倒産直前での資産の移転

それぞれどのような手口か説明します。

倒産予定での新規借入れ

計画倒産とされる手口として、倒産予定であるのにもかかわらず、銀行など金融機関から新規で借入れすることが挙げられます。

経営状況が悪化してきたとき、経営を立て直すために銀行など金融機関から追加融資を依頼したくなるものです。

しかし会社経営を続ける意思がないのにもかかわらず、追加融資を受けて借りたお金を個人で使ったり隠蔽したりといった行為は、破産法上の詐害行為に該当します。

融資の審査に通るために、決算書偽造や倒産意図を隠した説明など、金融機関を欺く行動を取れば詐欺が成立すると留意しておきましょう。

支払う意思のない大量商品の仕入れ

計画倒産とされる手口として、代金を支払う意思もないのに商品を大量に仕入れることなどが挙げられます。

倒産を予定しており、後事業を継続する予定がないのに仕入れた商品を廉価で販売する行為も、違法な計画倒産の1つです。

手元に残った現金を経営者個人のお金にした上で、会社は倒産します。

仕入代金を取引先に支払う意思は当初からないため、仕入業者に対する詐欺が成立するといえるでしょう。

倒産直前での資産の移転

計画倒産とされる手口として、会社を倒産する直前に資産を移転したり処分したりすることが挙げられます。

会社が倒産すると、所有する財産はすべて処分し、債権者へ分配されます。

そのため財産が弁済に充てられることを回避しようと、別会社に無償または著しく安い価額で移転することは、違法な計画倒産に該当します。

別会社へ資産を移転させて既存会社を倒産し、資産を移した別会社で事業を行うことも可能であるため、悪質な計画倒産と判断できます。

計画的な倒産との違い

「計画的な倒産」とは、債務や取引先に対する支払いなど済ませた上で、できる限り迷惑をかけることなく事業継続を断念することです。

従業員や取引先には前もって倒産することを通知し、影響を最小限に留めて倒産します。

再起に向けて円滑に行動できるように、債務不履行は避けて身辺整理を行い、利害関係者に対する責任を果たします

会社倒産は、裁判所への申立てをいつ行うのか、誰が清算人となるのかなど決めることは多々あります。

その上で、債権者や債務額などを調査し、事実が表に出ないように準備を進めていかなければなりません。

倒産準備は違法な行為ではなく、事前に始めなければスムーズに手続できないため、重要なことともいえます。

そのため「計画倒産」と「計画的に倒産」は同じではなく、倒産に向けて計画を立てることが計画倒産に該当すると勘違いしないことも大切です。

たとえば現金が多い日などを「Xデー」とし、手続や支払いを適切に行うことで、取引先や従業員に及ぶ被害を最小限に抑えることができるでしょう。

計画的な倒産におけるXデーの決め方と流れ

計画的な倒産における「Xデー」を決めるときは、現金が多い日を選ぶとよいでしょう。

手元のお金が多いほど、従業員に支払う給与や弁護士費用などに充てる資金の準備ができるからです。

計画的に倒産するXデーを決めた後は、以下の手続を進めておきましょう。

  1. 専門家へ相談する
  2. 事務手続を行う
  3. 挨拶を済ませる

それぞれ説明します。

専門家へ相談する

計画的に倒産するXデーを決めた後は、弁護士や税理士など専門家に計画的な倒産について相談しましょう。

現状を専門家に伝えて、本当に計画的な倒産が最適な選択なのかアドバイスを受けた上での判断が求められます

倒産しなくても方法がある場合には、一旦踏み留まることも検討できます。

事務手続を行う

計画的に倒産するXデーを決めた後は、倒産に関する事務手続を行います。

確実に身辺整理を行うことが必要となるため、各作業や手続をいつ行うのかスケジュールを確認し、計画を立てることも大切です。

挨拶を済ませる

計画的に倒産するXデーを決めた後は、取引先や従業員などに挨拶を済ませましょう。

取引先の発展を祈るメッセージを送ることや、従業員に感謝の気持ちを述べるなど、これまで付き合いのあったステークホルダーに対する気持ちの整理をつけることも必要です。

会社倒産を回避する方法

会社が倒産しなければならない状況を回避するためには、事業を断念しなければならない状態になる前の対応が重要です。

そのため倒産を回避するために、以下の5つの方法を検討しましょう。

  1. 資金繰りを改善する
  2. 事業の再編成を検討する
  3. 金融機関にリスケジュールを交渉する
  4. 事業再生する
  5. 助成金・補助金を活用する

それぞれ説明します。

資金繰りを改善する

倒産を回避するために、資金繰りを改善しましょう。

資金繰りを改善するための方法として以下が挙げられます。

  • 売掛債権を早期回収する
  • 不要在庫を処分する
  • 投資は営業キャッシュフロー内で実施する
  • 回収期限や支払期日などの条件を見直す交渉をする
  • 借入金の金利・返済方法を交渉する
  • 貸付金・仮払金を一掃する
  • 少人数私募債を発行する

なお、資金繰り改善にはファクタリングも有効といえるため、改善策として活用することをおすすめします。

ファクタリングの利用方法とは?仕組みと注意点について簡単に解説

事業の再編成を検討する

倒産を回避するために、時代の変化に合わせて事業の再編成を検討しましょう。

新たなビジネスモデルにサービスを導入することや、ITなど最新技術を活用するなど、時代に即した戦略も必要です。

経費をできるだけ抑え、売上が上がる変革を実施することが大切といえるでしょう。

金融機関にリスケジュールを交渉する

倒産を回避するために、金融機関に返済期限の延期などリスケジュールを交渉しましょう。

借入金の返済額を減額してもらうことや、据置期間を設定してもらうなど、返済の繰り延べを行うことがリスケジュールです。

返済負担が重い場合、一時的に返済を待ってもらうことにより、資金繰り改善を図ることができます。

事業再生する

倒産を回避するために、私的整理または法的整理による事業再生を検討しましょう。

私的整理による事業再生は、厳密な手続を要求されるわけではないため、取引先などに知られず手続できます。

しかし債権者の協力と理解が欠かせないため、どのようなケースでも可能とする方法ではありません

これに対し法的整理は、裁判所を介して手続を行います。

たとえば民事再生では、債務の一部免除や弁済猶予を受けることで事業を継続できますが、申立てをしたことを取引先や顧客などに知られます

信用力が低下し、その後の事業に影響が及ぶ恐れがあることは理解した上での手続が必要です。

助成金・補助金を活用する

倒産を回避するために、助成金や補助金を活用しましょう。

活用できる制度はいろいろありますが、中小企業が利用できる補助金の例は以下のとおりです。

小規模事業者持続化補助金 小規模事業者などが新たに販路を開拓し、売上を改善するための補助金制度で、補助上限額は50万円(かかった費用の2/3まで)
事業再構築補助金 新分野展開や事業転換などが目的の取り組みに対する補助制度で、補助上限額は従業員数などによって異なる(かかった費用の2/3まで)
ものづくり補助金 新製品やサービス開発、生産プロセスの改善などで必要な設備投資を支援する補助制度で、補助上限額は従業員750~1,250万円(従業員規模によって異なる)・中小企業はかかった費用の1/2まで

助成金や補助金は種類が多く、申請前の書類準備なども複雑であるため、経営コンサルタントなど資金調達に詳しい専門家に相談するとスムーズです。

まとめ

計画倒産は、債権者に害する行為であり、違法であるため重い罰則の対象となります。

会社が倒産するときには、法律で手続の種類や期限などが定められていますが、計画倒産では法律の定めを無視する債権者に多大な損失を与える行為とされます。

そのため事業を継続できず倒産することを選ぶなら、計画倒産と疑われない行動を行いましょう。

計画的な倒産であれば、銀行や取引先、従業員にかかる迷惑を最小限に抑えることができます。

大切なのは、会社が倒産する前に状況を改善することです。

経営再建や事業立て直しなどに悩んでいるのなら、経営コンサルタントなど専門家へ相談してみることをおすすめします。