法人の確定申告において、青色申告を選択することで納税負担を軽減することにもつながります。
法人税の確定申告で、青色申告を選ぶことによるメリットは大きいといえますが、前もって青色申告の承認申請書を提出するなど手続も必要です。
そこで、法人の青色申告について、メリット・デメリットや必要な手続をわかりやすく解説していきます。
なお、この記事では法人の青色申告について解説するため、個人の確定申告に関する青色申告は以下の記事を参考にしてください。
青色申告とは?白色申告との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説
目次
法人も青色申告できる
法人も、個人事業者の確定申告と同様に、「青色申告」を選択することができます。
会社経営において、決算期になれば1年間の所得に応じた「法人税」を納めるための確定申告を行います。
個人事業者も所得税を納めなければならないのに対し、法人も事業によって得た所得に対する法人税を納めます。
事業年度ごとに行った決算を確定させ、その内容に基づき計算された税金が「法人税」です。
法人税を納める手続が確定申告であり、「青色申告」と「白色申告」の2つから選択できますが、法人では青色申告が一般的ともいえます。
青色申告には白色申告にはない節税におけるメリットがあるため、会社経営における税金負担を軽減させるためにも、選択したい申告方法です。
法人の青色申告方法
法人の青色申告は、対象の事業年度における法人税を申告する方法の1つですが、青色の用紙で手続されていたため青色申告と呼ばれるようになりました。
そこで、青色申告の方法について以下の3つを説明します。
- 手続の流れ
- 手続の期限
- 必要書類の提出先
手続の流れ
法人が青色申告を選択するのであれば、前もって税務署から承認を受けておくことが必要といえます。
そのための書面が「青色申告の承認申請書」といえますが、手続の流れは次の2つです。
- 青色申告の承認申請書を作成する
- 青色申告の承認申請書を提出する
それぞれ説明します。
①青色申告の承認申請書を作成する
青色申告を行う法人は、事前に税務署へ提出する「青色申告の承認申請書」を作成します。
書式は、国税庁のWebサイト「青色申告書の承認の申請」の「青色申告の承認申請書」からダウンロードできます。
②青色申告の承認申請書を提出する
作成した「青色申告の承認申請書」は、納税地管轄の税務署に提出します。
提出方法は、持参・郵送・e-Taxのいずれかです。
手数料などはかかりませんが、期限は青色申告で確定申告する事業年度開始日の前日までとされています。
たとえば3月31日を決算日とする法人が翌事業年度から青色申告で確定申告するのなら、提出期限は当課税期間の3月31日となるため注意しましょう。
なお、新会社設立において、1期目から青色申告による確定申告を希望する場合は、設立日から3か月経過日の前日までに提出してください。
手続の期限
法人が行う法人税の確定申告は、青色申告と白色申告、どちらの場合でも事業年度終了日の翌日から2か月以内が期限です。
会社の事業年度は自由に決めることができるため、個人事業者のように一律3月15日が期限になるわけではありません。
決算日の翌日から2か月以内に手続することが必要であると認識しておき、個人事業者から法人成りした場合などは特に注意しておきましょう。
必要書類の提出先
法人が青色申告を行う際に、必要書類を提出するのは、納税地を所轄する税務署です。
税務署窓口に直接持参する方法もあれば、郵送または信書便で提出することもでき、近年ではe-Taxを使用した方法の活用も増えています。
青色申告をしている法人が2期連続で期限内に申告しなかった場合、青色申告の承認が取り消されるため注意しましょう。
税務手続に関する書類の提出日は、原則、税務官庁に書類が到達した日です。
しかし納税申告書や提出時期に具体的な制約がある書類は、郵便や信書便の通信日付印による表示日が提出日とみなされるため、消印の日付が提出日として扱われます。
いずれにしても余裕をもって手続することが必要といえます。
詳しくは国税庁の公式サイト「税務手続に関する書類の提出時期」を参考にしてください。
青色申告の承認申請書の書き方
法人が行う事業年度ごとの確定申告において、青色申告を選択するのであれば、事前に税務署で「青色申告の承認申請書」を提出しておくことが必要です。
「青色申告の承認申請書」の書き方について、下記の項目ごとに説明していきます。
- 提出年月日
- 納税地
- 法人名等・法人番号
- 代表者氏名・代表者住所
- 事業種目・資本金又は出資金額
- 自年月日・至年月日
- 該当チェック欄
- 参考事項(帳簿組織の状況)
- 参考事項(特別な記帳方法の採用の有無)
- 参考事項(税理士が関与している場合における関与度合)
- 税理士署名
提出年月日
「青色申告の承認申請書」の「提出年月日」には、申請を提出する日を記載します。
税務署の窓口で提出する場合には訪問する日、郵送なら発送する日で問題ありません。
納税地
「青色申告の承認申請書」の「納税地」の欄には、会社の本店所在地の所在地と電話番号を記入します。
固定電話を設置していなければ携帯電話を記載しましょう。
法人名等・法人番号
「青色申告の承認申請書」の「法人名等」には法人の名称、「法人番号」の欄は指定を受けていなければ空白で問題ありません。
なお、法人番号は国税庁の「法人番号公表サイト」でも確認できます。
代表者氏名・代表者住所
「青色申告の承認申請書」の「代表者氏名」と「代表者住所」の欄には、代表者の氏名と住所をそれぞれ記載し、「印」の箇所に会社の実印を押印します。
事業種目・資本金又は出資金額
「青色申告の承認申請書」の「事業種目」の欄には、定款記載の事業目的のうち、主な業種を記載します。
「資本金」の欄には、登記上の資本金額を記載してください。
自年月日・至年月日
「青色申告の承認申請書」の「自」と「至」のそれぞれの年月日は、青色申告を開始したい事業年度開始日と終了日です。
会社設立の1期目から青色申告による確定申告を選ぶなら、事業年度開始日は設立日となります。
該当チェック欄
「青色申告の承認申請書」で用意されている該当する項目に、それぞれチェックを入れていきます。
なお、会社設立の事業年度から青色申告を選択するなら、2つめチェックを入れて会社設立年月日を記載します。
参考事項(帳簿組織の状況)
「青色申告の承認申請書」の参考事項のうち、「帳簿組織の状況」の「伝票又は帳簿名」には、総勘定元帳と仕訳帳を記載します。
その他、現金出納帳・預金出納帳などの帳簿作成がある場合にも記載しておきましょう。
「左の帳簿の形態」の欄には、会計ソフトやエクセル、紙媒体など帳簿付けの実態を記載します。
「記帳の時期」の欄には、「毎年」「四半期毎」「毎月」「毎週」「随時」など、記帳・更新のタイミングを記載します。
これは提出のタイミングにおける予定であるため、業務の都合などでその後変更しても特に問題はありません。
参考事項(特別な記帳方法の採用の有無)
「青色申告の承認申請書」の参考事項の「特別な記帳方法の採用の有無」は、クラウドサービスやソフトウェアの使用があれば「ロ 電子計算機利用」を〇で囲み、その他の場合は空白で問題ありません。
参考事項(税理士が関与している場合における関与度合)
「青色申告の承認申請書」の参考事項の「税理士が関与している場合における関与度合」とは、顧問税理士に会計業務を依頼している場合などの関与の程度です。
たとえば伝票整理から一切の事務を任せているのか、記帳から総勘定元帳作成までの事務なのかなど、その内容を記載します。
税理士署名
「青色申告の承認申請書」の「税理士署名」の欄は、税理士に作成を依頼した場合において、担当税理士が自筆で署名する欄です。
そのため代表者が自ら作成した場合には空白で問題ありません。
法人が青色申告するメリット
法人が青色申告を選択すれば、以下の4つにより節税効果が期待できるといったメリットがあります。
- 欠損金を繰越控除できる
- 欠損金の繰り戻しで還付してもらえる
- 少額減価償却資産を一括で経費計上できる
- 法人税額控除制度を適用できる
それぞれどのようなメリットがあるのか説明します。
なお、申告方法は国税庁の公式サイト「法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)」から確認することもできます。
欠損金を繰越控除できる
法人が青色申告を選択することで、赤字により発生した欠損金を「繰り越し」、翌年度以降の黒字から控除できます。
当期は赤字でも翌期は黒字で、税負担が増えるときでも、欠損金と相殺できれば節税につながります。
繰り越しできる年数は最大で10年間です。
欠損金の繰り戻しで還付してもらえる
法人が青色申告を選択することで、赤字で発生した欠損金を「繰り戻し」、法人税の還付を受けることができます。
資本金1億円以下の中小企業で青色申告による赤字が発生したとき、欠損金を繰り越すのではなく前期の黒字と相殺する繰り戻しを選択すれば、納め過ぎた税金を払い戻してもらえます。
少額減価償却資産を一括で経費計上できる
法人が青色申告を選択すれば、30万円未満の「少額減価償却資産」を一括で経費計上できます。
税法上、取得価額10万円以上したものは固定資産として、設定された法定耐用年数に応じ、減価償却することが必要です。
しかし青色申告している中小企業の場合、年間300万円を限度に取得価額30万円未満の減価償却資産を経費として一括計上できるため、課税所得が多かった年度などは法人税額を抑えることができます。
法人税額控除制度を適用できる
法人が青色申告を選択すれば、「法人税額控除制度」を適用させることができます。
国が中小企業の機械や装置などへ投資することを促すための制度であり、以下の機械設備などを新品で購入した場合に、取得額7%を法人税額から控除することが可能です。
- 70万円以上のソフトウェア
- 160万円以上の機械装置
- 貨物運送用3.5トン以上の普通貨物自動車
など
ただし業種によって適用されない場合もあるため、事前に税務署に確認しておくと安心です。
法人が青色申告するデメリット
法人が青色申告を選ぶことによる節税効果への期待は大きいといえますが、次の2つのデメリットには留意しておきましょう。
- 複式簿記で記帳する必要がある
- 提出書類が増える
それぞれのデメリットについて説明します。
複式簿記で記帳する必要がある
法人が青色申告を選択する場合、「複式簿記」による記帳が必要です。
正規の簿記の原則に従い、正確な会計帳簿の作成とそれに基づく財務諸表作成が必要となります。
白色申告では「単式簿記」による記帳が認められているのに対し、青色申告では簿記の知識がなければ帳簿付けが難しく、手間もかかるといったデメリットがあるといえます。
提出書類が増える
法人が青色申告を選択する場合、確定申告において提出する書類が増えます。
複式簿記で作成した決算書「損益計算書」「貸借対照表」を提出することが必要であり、税理士と顧問契約を結んでいなければ簿記の知識を身につけることが必要です。
まとめ
法人も、個人事業主と同じく確定申告で青色申告を選択することができます。
節税につながるメリットがある反面、事前に青色申告の承認申請書を提出しておくこと亜が必要であるため、必ず期限までに税務署で承認を受けておきましょう。
期限までに申請書を提出しなかった場合は、青色申告は先送りとなり節税対策につながらない白色申告による確定申告となります。
新会社設立したときには、忘れないように青色申告の承認申請書を作成・提出しておくことをおすすめします。