会社倒産と会社破産の違いとは?方法や手続の流れをわかりやすく解説

会社倒産と会社破産は、どちらも同じ意味として捉えられていることがあるものの、厳密には違います。

経営不振で資金繰りが悪化し、行き詰まってしまったときは会社倒産を検討する経営者も少なくありません。

しかし会社倒産は、目的などによって選択する種類が異なるため、会社破産を選ぶときは手続の流れなど把握しておくことが必要です。

そこで、会社倒産と会社破産の違いや、手続の方法・流れについてわかりやすく解説していきます。

会社倒産とは

会社倒産とは、業績悪化などで債務の返済ができず、事業を継続できなくなった状態で行う手続です。

会社の経営状況が破たんし、会社をたたむのか、それとも再建させるのか選択肢を強いられている状態と考えられます。

資金繰りに窮し、財産を使いつくして企業がつぶれてしまうことともいえますが、中小企業倒産防止共済法では以下のとおり定義されています。

  1. 破産手続開始・再生手続開始・更生手続開始・特別清算開始の申立てがなされること
  2. 手形交換所で手形交換を行っている金融機関が金融取引停止の原因事実について公表すること

1は、法的な清算または再建手続の申立てを行うことであり、2は半年以内に2回不渡りを出してしまったことで銀行取引停止処分を受けることです。

上記を踏まえ、以下に挙げるケースのいずれかに該当するときと考えられます。

  1. 銀行取引停止処分を受けたとき
  2. 代表が倒産を認め内整理したとき
  3. 裁判所に会社更生手続開始を申請したとき
  4. 裁判所に民事再生手続開始を申請したとき
  5. 裁判所に破産手続開始を申請したとき
  6. 裁判所に特別清算開始を申請したとき

そのため会社倒産は、事業継続を断念し会社をたたむといった意味だけでなく、経営改善計画のもとで破綻した経営を再建し、存続させる選択肢も含まれます。

何を目指していくのか、どの方法を選ぶのかによって、会社の将来的な状況も変わるといえるでしょう。

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会社破産とは

会社破産は、会社倒産の種類の1つであり、事業を終了することです。

会社の運営事業や保有または所有する財産を清算し、債務を免除する手続といえます。

債務超過に陥り借金等を返せなくなった状態において、すべての財産を弁済に充てても返しきることができなければ、債務を帳消しにしてもらうために会社を消滅させることです。

破産手続は裁判所で開始することが必要であるため、実態のない会社で手続がなされていなければ、破産したことにはなりません。

会社倒産と会社破産の違い

会社倒産にはいろいろな種類があり、会社破産もその方法の1つです。

倒産と破産は似た意味を持つ言葉といえるものの、厳密には意味が異なる点に注意しましょう。

まず倒産は、会社が経済的に持続できなくなった状態であり、破産は裁判所を通じて法的に債務を整理する手続です。

また、会社倒産の方法は、主に次の2つに分けることができます。

  1. 清算型
  2. 再建型

それぞれの方法と、会社破産との違いについて解説していきます。

清算型

会社倒産のうち、清算型では営業活動を停止し、有するすべての財産を換価するなどの方法で、債務弁済に充てます。

清算型の種類は主に次の2つです。

  1. 破産
  2. 特別清算

それぞれ簡単に説明していきます。

破産

破産とは、会社所有の財産すべてを換価し、債権者の優先順位と債権額に応じた配当を行う法的手続であり、次の3つの種類があります。

  • 自己破産(会社が裁判所に申立てる)
  • 準自己破産(会社所属の役員が申立てる)
  • 第三者破産(債権者(第三者)が申立てる)

破産手続開始決定が出されると、裁判所は破産管財人を選任します。

破産管財人は、財産管理や資産売却、売掛金回収などで財産を換価し、債権者への配当に充てていきます。

特別清算

特別清算とは、債務超過などで通常の清算ができないときに、裁判所が主体となって行う清算手続です。

会社法に規定されている倒産手続であり、債権調査や確定手続もないなど、破産より簡易・迅速・低コストで清算することができます。

ただし、特別清算の選択は株式会社に限定されており、他の法人格や個人が利用することはできません。

破産と特別清算の違いは、特別清算人が手続を進めることといえます。

破産は裁判所が選んだ破産管財人が管理を行うため、法人代表者が手続に介入することはできません。

しかし特別清算では、債権者の同意を得ることができれば、法人代表者が特別清算人になることができます

再建型

企業倒産のうち再建型では、債務額の減免など、債権者の権利を変更した上で弁済を図っていきます。

再建型には、以下の種類があります。

  1. 民事再生
  2. 会社更生

それぞれ簡単に説明します。

民事再生

民事再生とは、裁判所に申立てを行って債務の一部を債権者同意のもと、圧縮して完済を目指す手続です。

株式会社・有限会社・医療法人・学校法人など、すべての法人や個人に適用されます。

債務者だけでなく、債権者による申立ても可能であり、経営権は原則、旧経営陣に残ります。

破産と民事再生の違いは、会社の存続を前提とする手続かどうかです。

民事再生では会社は残し、債務を圧縮して返済できる状態にし、事業も継続して完済を目指します。

そのため計画どおりに債務返済ができれば、通常どおり会社を存続させることができ、代表者もそのまま会社に残ることができます。

破産では会社をたたむ代わりに債務返済が免除されるため、民事再生の手続とは異なります。

会社更生

会社更生とは、裁判所が選任した会社更生人を中心として、会社更生法に従い債務の免除や支払猶予を受けつつ会社を再建します。

債権者など、利害関係者多数の同意のもと、更正計画を策定・遂行し、事業再建を図ります。

手続できるのは株式会社のみであり、多くは消滅すれば社会的影響の大きい上場企業や大企業の倒産で適用されます。

経営陣は退任が強要されていないため、引き続き経営に参画できることや、無担保債権者だけでなく担保権者や株主の権利も制約して、更生計画でカットできることがメリットです。

しかし発行株式の価値はゼロとなり、新たな株主となるスポンサーの出現を待つことになります。

多くは経営者の交代が必要になる手続であり、単独オーナーや同族経営の多い中小企業では対象外になることがほとんどでしょう。

そのため破産と会社更生の違いは、会社更生は大企業が会社存続を目指すための手続であるのに対し、破産は株式会社を含むすべての法人が会社を存続断念に代わり債務弁済を免除してもらう手続であることといえます。

破産手続の流れ

会社倒産のうち、破産を選択するときには、手続の流れを把握しておきましょう。

破産は、以下の6つの流れで手続が進みます。

  1. 申立ての準備
  2. 破産手続開始の申立て
  3. 債務者審尋による調査
  4. 破産手続開始決定
  5. 債権者集会の開催
  6. 財産換価・配当

それぞれの流れについて説明します。

1申立ての準備

会社が破産するときは、まず裁判所への申立て準備が必要です。

弁護士など専門家に相談した結果、破産するべきと結論に至った場合には、裁判所に破産申立てを行います。

破産申立てには複数の書類が必要となるため、専門家に手続を依頼する場合でも、作成準備として以下の資料を揃えておきましょう。

法人の全部事項証明書(商業登記簿謄本)
貸借対照表・損益計算書(2年分)
破産申立日時点の清算貸借対照表
確定申告書(2年分)
従業員名簿
賃金台帳
不動産の全部事項証明書(土地・建物の登記簿謄本)
賃貸借契約書
預金通帳・取引明細書(2年分)
車検証
売掛金・未収入金の明細書
自動車の価格査定書
株式・投資信託等の明細書
保険証書
生命保険の解約返戻金証明書

2破産手続開始の申立て

揃えた必要書類をもとに申立書を作成し、裁判所へ破産申立てを行いますが、申立書以外にも以下の書類を作成・提出します。

破産手続開始申立書
債権者一覧表
債務者一覧表
委任状
財産目録・報告書
取締役会議事録
など

上記書類に関しては、専門家に依頼すれば代理で作成してもらえるため、資料として準備を求められた書類を揃えることが大切です。

3債務者審尋による調査

債務者審尋とは、破産手続開始の要件が備わっているか調査するため、裁判官と面談する手続です。

裁判官や破産管財人候補者から、破産申立てに至った経緯などの聞き取り調査が行われます。

免責不許可事由の有無や、裁量により免責すべきかなどの調査・判断において必要な手続といえるでしょう。

4破産手続開始決定

破産手続開始決定とは、破産者の申立てない世に問題がなければ、破産手続を開始する旨の宣言です。

破産手続を進めることで破産管財人が選任され、会社の財産の管理・処分権はすべて破産管財人へ移ります。

そのため会社の財産を勝手に処分することはできなくなり、破産管財人が中心となってお金に換えていきます。

5債権者集会の開催

破産手続開始決定から2~3か月後に、債権者集会が開催されます。

債権者集会には債権者が集まり、会社が破産に至った経緯や財産の状況、今後の手続などの説明や報告を行います。

複数回に渡り開催される場合、最後の債権者集会に引き続いて免責審尋が行われます。

6財産換価・配当

破産管財人により会社の財産がすべて換価された後は、会社の債権者に優先順位や債務額に応じた配当が行われます。

抵当権が設定された債権などの場合、抵当権者である債権者に優先して配当が行われるため、他の債権者は配当を受け取れないケースもあります。

会社破産の期間

会社破産の期間は、以下の2つのどちらで手続が進むかによって異なります。

  1. 少額管財
  2. 普通管財(特定管財)

それぞれの期間について説明します。

少額管財

少額管財とは、管財事件の1つであり、裁判所に納付する予納金を通常の管財事件より抑えた手続です。
以下のいずれかに該当するときに選択できます。

  • 確実に換価可能な財産が存在しない場合
  • 資産総額が50万円以下で、換価容易な財産のみ(預貯金や保険解約返戻金など)の場合

通常の管財事件では50万円程度の予納金が必要であるのに対し、少額管財事件の予納金は20万円程度です。

そして少額管財の債権者集会は、開始から3か月ほどで開催されます。

債権者集会までに、破産管財人は必要な管財業務を終わらせているため、比較的短期間で手続が終了します。

以上のことから、少額管財手続にかかる期間は、3か月から長くても1年程度といえます。

普通管財(特定管財)

普通管財(特定管財)とは、債権者の数が多い場合や債権者同士で争いがある場合や、特殊法人破産や社会的関心が高いケースで適用される手続です。

会社の破産が社会的な事件になるときや複雑な場合などの手続で、債権金額も大きく権利関係が複雑であるときの管財事件といえます。

そのため少額管財は3か月から1年で手続が終了するのに対し、普通管財(特定管財)では1年に1度債権者集会を開催するケースもあるなど、手続終了まで数年かかることもあります。

会社破産の費用

会社破産でかかる費用は、裁判所に納める費用と手続を代理してくれる弁護士に支払う費用ですが、主に次の2つです。

  1. 予納金
  2. 弁護士費用

それぞれの目安の額など紹介していきます。

予納金

裁判所に納める予納金は、破産管財人の報酬や、管財事務費用に充てられるお金です。

予納金額は、破産手続の申立ての際に、裁判所が会社の状況を精査して決めます。

裁判所によっても若干違いがあるため、破産申立ての準備段階ではおおよその額を想定するしかできないといえますが、目安としては以下のとおりです。

  • 少額管財 20万円~
  • 管財事件 50万円~

破産原因である負債金額が大きい場合、予納金額も大きくなると留意しておきましょう。

弁護士報酬

法人破産の手続を弁護士など専門家に依頼すると、相場として100~200万円は必要です。

債権者数や債務総額により変わるため、債権者や負債が多ければかかる金額も高額になると留意しておきましょう。

弁護士にかかる費用は、主に以下の内訳となります。

  • 着手金
  • 報酬
  • 実費(交通費・切手代・遠方宿泊費など)

会社倒産の注意点

業績や資金繰り悪化で事業継続が難しく、会社倒産を検討しているときには次ぐの4つに注意しましょう。

  1. 従業員に丁寧に説明する
  2. 手続の選択は慎重に行う
  3. 債権者平等の原則に反する行為をしない
  4. 専門家に早めに相談する

それぞれの注意点について説明します。

従業員に丁寧に説明する

会社倒産においては、従業員の解雇が必要となるため、事情を丁寧に説明することが必要です。

倒産しなければならない状況や、雇用を継続できない事情など説明し、ハローワークの手続や離職票の交付も必要となります。

また、債権調査・売掛金回収・離職関係の事務処理など、従業員の協力が必要になる場合もあるため、事務処理に対応してくれる人材を確保することも必要です。

以上のことから、従業員への説明は可能な限り早期に行ったほうがよいといえるでしょう。

手続の選択は慎重に行う

会社倒産においては、どの手続を選ぶべきか、慎重に判断しましょう。

経営が苦しくても、不採算部門の見直しなどで再建できる場合もあります。

再建に向けて債務負担が重いときには民事再生などで、負担軽減しながら再建を実現できる可能性もあるといえます。

状況や希望に合う手続の知見が必要であるため、専門家などに相談した上で、慎重な選択が求められます。

債権者平等の原則に反する行為をしない

会社倒産においては、債権者平等の原則に反する行為はしないようにしてください。

長く取引のある債権者などに迷惑をかけたくないと考え、優先的に返済したくなることもあるでしょう。

しかし一部の債権者のみを優先して返済する偏頗弁済は、債権者平等の原則に反する行為です。

破産管財人が否認権を行使すれば、原状回復されて弁済が無効となる恐れもあります。

また、優先弁済した債権者へ破産管財人から訴訟が起こされれば、反対に迷惑をかけることになるでしょう。

悪質なケースは破産法上の破産犯罪に該当することとなり、刑事罰が科されることもあるため、債権者平等の原則に反する行為は行わないでください。

専門家に早めに相談する

会社倒産においては、代表者のみの独断で判断せず、専門家に早めに相談しましょう。

法人の倒産の手続は多くが複雑であるため、専門家に依頼して行うことが一般的です。

裁判所へ支払う予納金や弁護士費用も必要であるため、資産が枯渇した時点で手続したくても、費用を捻出することができず断念せざるを得ない恐れもあります。

経営状況が苦しく、会社や事業の継続が厳しいと感じる時には、早めに相談するようにしましょう。

なお、会社は赤字のみを理由に倒産することはなく、手元の資金が枯渇しなければ継続できます。

会社倒産など検討しなければならない状況に陥る前に、資金ショートを防ぐための資金調達が重要です。

経営不振や赤字決算、債務超過では銀行融資を頼りにくい状況といえるため、この場合には売掛金を現金化するファクタリングなど活用することをおすすめします。

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まとめ

会社倒産と会社破産は、厳密に意味が異なります。

会社破産は会社倒産の手続の1つといえますが、会社倒産には複数の種類が多く、どれを選ぶか慎重な判断が必要です。

経営面だけでなく、法的な観点や将来的な希望なども踏まえて、慎重に検討・判断しなければなりません。

早期に専門家に相談することで、会社破産以外の方法など提案してもらえる可能性があります。

また、会社倒産の状況を防ぎたいなら、手元の資金を増やしましょう。

なお、財務状況が悪化している状態では銀行融資を受けることは厳しいため、赤字決算や債務超過でも申し込みできるファクタリングの活用がおすすめです。