融資と投資は、どちらも資金調達に関係する言葉ではあるものの、意味は大きく違います。
まず融資は銀行など金融機関からお金を借りることであるのに対し、投資は株式発行により資金を調達することです。
融資と投資はそれぞれ色々な方法があるため、資金調達に活用するときには種類ごとのメリットやデメリットなどを理解した上で選ぶ必要があります。
そこで、融資と投資の違いや種類、それぞれのメリット・デメリットについてわかりやすく解説していきます。
目次
融資とは
「融資」とは、銀行など金融機関からお金を借りたり社債を発行したりなど、負債を増やす方法で資金を融通してもらうことです。
主に銀行からの借入れを「融資」と呼ぶのに対し、消費者金融などから借りたときは「ローン」、クレジットカードの小額融資は「キャッシング」と呼ぶことが多いといえます。
「融資」について、次の3つについて理解を深めていきましょう。
- 融資の種類
- 融資のメリット
- 融資のデメリット
それぞれ説明します。
デットファイナンスとは?メリット・デメリットや種類ごとの違いを解説
融資の種類
「融資」とは負債を増加させるデットファイナンスといわれる資金調達の方法といえますが、主に次の8つの種類があります。
- 公的融資
- 銀行融資
- 制度融資
- ビジネスローン
- 公募債
- 私募債
- コマーシャルペーパー
- 手形割引
それぞれどのような方法か説明していきます。
公的融資
「公的融資」とは、政府系金融機関である日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などからお金を借りて資金を調達することです。
国が100%出資・運営している政府系金融機関は、預金機能は持っていないものの、中小企業などに積極的に資金の貸し付けを行っています。
そのため民間銀行から融資を受けにくい創業期のスタートアップ企業や中小企業などが利用しやすい借入れ制度といえるでしょう。
銀行融資
「銀行融資」とは、民間銀行である都市銀行・地方銀行・信用金庫などから資金を借入れる方法です。
中小企業の場合、融資を受ける条件として、不動産を担保として差し入れることや代表者の人的保証を求められることが多いといえます。
ただし民間銀行からの信頼を獲得し、銀行独自の責任で資金を貸し付けるプロパー融資を受けることができるようになれば、好条件での資金調達が可能となります。
制度融資
「制度融資」とは、地方自治体・金融機関・信用保証協会の3つの機関が協力して実施する融資です。
地方自治体と信用保証協会の協力を得ることにより、お金を借りやすくなることが特徴といえます。
なお、利用条件は自治体ごとに若干違いがあるため、事前の確認が必要です。
ビジネスローン
「ビジネスローン」とは、一般的な銀行融資では審査に通りにくい事業者を対象として用意された「事業者向けローン」です。
申し込みでるのは個人事業主または法人経営者であり、買い物や旅行などを目的とした個人が利用することはできません。
審査基準も低めで、申し込みから即日または数日程度で借入れが可能になるものの、金利は高めに設定されるため利用し過ぎないように注意しましょう。
公募債
「公募債」とは、債権を購入してくれた方に満期まで利子を支払い、満期到来のときに一括返済する方法です。
社債の1つではあるものの、公募債では有価証券届出書または有価証券通知書の提出がが必要となります。
私募債
「私募債」とは、公募の手続以外の方法で債権購入を勧誘する社債です。
50人未満の縁故者や会社関係者などに購入を呼び掛ける方法であり、有価証券届出書や有価証券通知書の提出はありません。
ただし私募債の発行金額は1億円までとされています。
コマーシャルペーパー
「コマーシャルペーパー」とは、金融会社や証券会社を通じた公開市場の割引形式で、発行した担保なしの約束手形を購入してもらう方法です。
担保なしの手形であるため財務状況が良く、信用力の高い企業でなければ発行はできません。
返済までの償還期間は1年未満など短期で、額面金額は1億円以上であることが多く、発行企業の優良性や信用力で金利が決まります。
手形割引
「手形割引」とは、銀行または手形割引業者に手形を売却し、現金化する方法です。
本来、手形は記載されている期日まで決済されないものの、手形割引を使えば前倒しで現金化できます。
なお位置づけは手形の売買ではあるものの、融資とみなされている方法であり、期日に振出人が決済しなければ割り引いた手形を買い戻すことが必要になります。
融資のメリット
融資は負債を増加させる資金調達の方法であるため、借金が増えることに抵抗を感じる方もいることでしょう。
しかし融資を受けて資金を調達することには、次の4つのメリットがあります。
- 経営に関与されない
- 金融機関と信頼関係を築ける
- 節税効果が見込める
- 資金計画を立てやすい
それぞれのメリットについて説明します。
経営に関与されない
融資を受けて資金調達すれば、誰にも経営に関与されることはなく、自由な経営が可能です。
金融機関などが経営に意見することや干渉することはなく、経営に関する外部からの制限なども特にないため、経営者の目指す会社経営をしやすいといえるでしょう。
金融機関と信頼関係を築ける
融資を受けて資金調達し、返済期日に遅れることなく毎月返し続けることで、金融機関との信頼関係を築くことができます。
取引の実績を積み、評価を上げることができれば、好条件で追加融資などを受けることも期待しやすくなります。
節税効果が見込める
融資を受けて資金調達したとき、負担する利子はと税務上「損金」として扱うことができるため、節税効果が見込めます。
資金計画を立てやすい
融資を受けて資金調達することで、資金計画を立てやすくなります。
銀行など金融機関からお金を借りたとき、毎月支払うのは元金と利子です。
配当金などの支払いは不要であるため、利率が一定であれば返済金額が明確になり、資金面での計画が立てやすくなると考えられるでしょう。
融資のデメリット
融資を受けて資金調達することには色々なメリットがあるといえるものの、借金を増やす方法である以上は、次の5つのデメリットに注意することが必要です。
- 返済義務が発生する
- 利子の支払いが必要になる
- 負債が増える
- 自己資本比率が低下する
- 利用しにくい場合がある
それぞれどのようなデメリットがあるか説明します。
返済義務が発生する
融資を受けて資金調達するデメリットとして、借入れである以上は返済義務が発生することが挙げられます。
借りたお金だけでなく、設定された金利による利子を期日までに遅れず支払うことが必要となるため、融資を受けすぎれば返済負担に追われて資金繰りが悪化します。
利子の支払いが必要になる
融資を受けて資金調達のデメリットは、所定の金利に沿った利子の支払いが必要になることが挙げられます。
負担した利子は損益計算書上の費用として扱うことができるため、節税対策につながることは期待できるものの、損益を圧迫することにもなると留意しておくべきです。
負債が増える
融資を受けて資金調達するデメリットとして、借金が増えてしまうことが挙げられます。
貸借対照表上の負債が増加すれば、財務指標に悪影響を及ぼし、銀行や取引先からの評価を下げます。
資産・負債・資本の財務バランスを意識した上で、融資を受けることを選択しましょう。
自己資本比率が低下する
融資を受けて資金調達することは、「自己資本比率」を低下させることにもつながります。
「自己資本比率」とは、総資本にうち純資産の占める割合であり、率が高いほど倒産しにくい会社であることを意味します。
自己資本比率=自己資本/総資本×100 |
負債が増えれば自己資本比率は下がるため、健全性を低下させてしまうことは留意しておきましょう。
利用しにくい場合がある
融資を受けて資金調達する方法は、中小企業の場合、利用しにくいことがあります。
中小企業は経営体制が脆弱で、資本金が少ないなど財務基盤が弱めです。
また、経営判断は代表者に決定権があり、経営者と会社の所有分離ができていないケースなども少なくありません。
大手企業や上場企業などのように銀行から信用を得にくいため、不動産を担保として差し入れることや代表者の人的保証を求められやすく、利用しにくいといえるでしょう。
投資とは
「投資」とは、事業に資金を投入することです。
将来的な生産能力の向上などに向けた資本を投じる活動であり、主にお金を出す側から見た行動を意味します。
投資家に「出資」してもらうことといえますが、投資について次の3つを理解しておきましょう。
- 投資の種類
- 投資のメリット
- 投資のデメリット
それぞれ説明していきます。
エクイティとは?デッドファイナンスとの違いやメリット・デメリットを解説
投資の種類
エクイティファイナンスで資金調達する場合、主に次の4つから選ぶことになります。
- 公募(時価発行増資)
- 株主割当増資
- 第三者割当増資
- 転換社債型新株予約権付社債
それぞれのエクイティファイナンスについて説明していきます。
公募(時価発行増資)
「公募(時価発行増資)」とは、新株を時価(または時価に近い価格)で発行する方法です。
「時価」が高いほど少ない発行株式数で多く資金を調達できます。
株主割当増資
「株主割当増資」とは、発行した新株の割り当ての権利を既存の株主に与える増資方法です。
株主は持ち株数に応じた有償による新株割り当ての権利を得ることができるため、株主構成を大きく変化させないことがメリットといえます。
ただし割り当てを受けた株主に申し込みや払い込みの義務はなく、申し込みがなければ権利はなくなります。
第三者割当増資
「第三者割当増資」とは、特定の第三者を対象として有償で新株を発行する方法です。
取引先などとの提携を強化させたいときや、低い株価で他の増資方法での資金調達が期待できないときに利用するとよい方法といえます。
転換社債型新株予約権付社債
「転換社債型新株予約権付社債」とは、株式に転換する権利を持った社債であり、事前に決められた価格で一定期間内に株式転換する債券です。
債券の発行後に株式へ転換するか、転換せずに利金や償還金を受け取るか選択できます。
投資のメリット
投資による資金調達は、主に次の3つのメリットがあるといえます。
- 返済義務のない資金を調達できる
- 経営アドバイスを受けることができる
- 人脈を広げることができる
それぞれのメリットを説明します。
返済義務のない資金を調達できる
投資による資金調達は、返済義務のない方法で手元の資金を増やすことができます。
融資を受けて資金調達すると、元本と利子を返済しなければなりません。
しかし出資金は返済義務のないお金であるため、短期の資金繰りに余裕が出ることがメリットです。
経営アドバイスを受けることができる
投資による資金調達は、投資家から経営アドバイスを受けることができます。
ベンチャー企業などへ投資するエンジェル投資家などは、もともと起業家や経営者だった方が多く、自身の経験をもとにした経営手法や問題解決方法など役立つ知識をアドバイスしてくれます。
人脈を広げることができる
投資による資金調達は、投資家のネットワークを活かして人脈を広げることができます。
投資家から取引先やビジネスパートナーなどを紹介してもらうことにより、人とのつながりを広げることができるため、人脈形成につながるといえるでしょう。
投資のデメリット
返済義務のない出資金を得ることができる投資による資金調達は、メリットが大きい方法といえる反面、次の3つのデメリットに留意しておくことが必要です。
- 経営に関与される
- 経営権を脅かされるリスクがある
- 希望額の調達につながらないことがある
それぞれのデメリットについて解説します。
経営に関与される
投資による資金調達は、投資家が出資してもらうデメリットとして、経営に関与される場合があることが挙げられます。
投資家が資金を投じる目的は、キャピタルゲインによるリターンを得ることです。
積極的に助言やアドバイスをしてくれることはメリットでも、過度に経営に関与してこないとは言い切れません。
経営権を脅かされるリスクがある
投資による資金調達で、発行株式の保有割合が変化すると、経営権を脅かされるリスクがあります。
発行株式の保有割合で経営者の持分比率が減り、投資家の株式保有比率が上がれば、経営の実権を握られてしまう可能性があるため注意しましょう。
希望額の調達につながらないことがある
投資による資金調達の方法は、希望額の調達につながらないことがあります。
たとえばエンジェル投資家に出資してもらう場合、投資会社であるベンチャーキャピタルよりも投じる金額は低いため、目標額に到達しない可能性もあるといえます。
融資と投資の違い
融資と投資は、どちらも資金を調達する手段であることは共通しているものの、次の5つの違いがあるといえます。
- 提供元の違い
- 返済義務の有無の違い
- 経営の自由度の違い
- 提供目的の違い
- バランスシート上の扱いの違い
それぞれどのような違いがあるのか説明していきます。
提供元の違い
融資による資金提供元は銀行や公的機関であるのに対し、投資は個人投資家であるエンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどです。
お金がどこから出るのか、提供元に違いがあります。
返済義務の有無の違い
融資は決められた返済期日に元金と利子を返さなければならないのに対し、投資は返済義務がありません。
事業で利益を生み出し、返済資金を捻出できるのであれば融資、会社を成長させて恩返しするスタンスなら投資を選択するとよいでしょう。
経営の自由度の違い
融資は銀行など資金提供先が会社経営に意見したり干渉したりすることはありません。
しかし投資はキャピタルゲインを得ることを目的とした出資者が経営に干渉したり口をだしたりする可能性があります。
提供目的の違い
融資による資金提供は利子を得て利益を獲得することが目的であるのに対し、投資は資金と引き換えに得た株式を売却してキャピタルゲインを得ることが目的です。
そのため融資では返済の確実性、投資では将来の成長性が重視されます。
バランスシート上の扱いの違い
融資による資金調達では、バランスシート上の負債を増やします。
投資は賃借対照表で純資産の増加として計上され、財務指標の悪化にはつながりません。
まとめ
融資と投資はどちらも資金調達の方法であることは共通しているものの、返済義務や経営の自由度など、その後の経営への影響に違いがあります。
中小企業の資金調達方法は主に銀行融資が中心といえるものの、負債を増やすため財務状況を悪化させるリスクがあるといえます。
投資による資金調達は、将来的な株式の価値などを期待されなければ、投資家に資金を投じてもらうことは難しいといえるでしょう。
もしも融資と投資、どちらの資金調達方法も迷いがあるときには、ファクタリングも方法の1つとして検討することをおすすめします。