在庫ファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

在庫ファクタリングとは、売掛債権を売却して現金化するのではなく、商品在庫をファクタリング会社に買い取ってもらうサービスです。

保有する在庫商品を売って換金することにより、手元の資金を増やすことができます。

資金調達したいときはもちろんのこと、在庫処分にも活用できるサービスといえますが、その仕組みなど理解した上で利用することが大切です。

そこで、在庫ファクタリングとはどのようなサービスなのか、仕組みやメリット・デメリットについて解説していきます。

在庫ファクタリングとは

「在庫ファクタリング」は、保有する在庫をファクタリング会社に売却し、現金化するサービスです。

販売する予定で保管した商品や、すでに売れなくなった商品も対象とすることができます。

手元の資金を増やす目的だけでなく、売れ残り販売予定のない商品を処分する目的でも活用できることが特徴です。

そこで、在庫ファクタリングについて次の3つを説明していきます。

  1. 仕組み
  2. 手続の流れ
  3. 通常のファクタリングとの違い

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仕組み

在庫ファクタリングは、在庫として抱えている商品をファクタリング会社に売ることで、買取代金を受け取ることができる仕組みです。

ブランド品や書籍、ゲームなどをリサイクルショップに売ってお金に換えることと同じ仕組みであり、古物の売却と同じ手法です。

通常のファクタリングは売掛債権を現金化するのに対し、在庫ファクタリングでは在庫商品があれば資金調達に活用できます。

在庫商品は今後も販売できる商品でなくても、売れ残り不良在庫化している商品でも対象です。

現金化する対象が商品であるため、在庫ファクタリングを利用できるのは「小売業」や「卸売業」といえます。

手続の流れ

在庫ファクタリングは、在庫として抱えている商品を現金化するサービスであるため、利用者とファクタリング会社のみで手続は完結します。

リサイクルショップで中古品を売るときと同じ、次の4つの流れで手続を進めます。

  1. 在庫ファクタリングの利用を申し込む
  2. ファクタリング会社が売却対象の商品を査定し、買取価格の見積もりが提示される
  3. ファクタリング会社に在庫を売却する
  4. ファクタリング会社から買取代金を受け取る

通常のファクタリングとの違い

在庫ファクタリングと通常のファクタリングの違いは、売却の対象となる「資産」といえます。

まず、在庫ファクタリングは在庫として管理している「商品」ですが、通常のファクタリングは「売掛債権」です。

そのため在庫ファクタリングの審査は、売却する商品の査定を行い、買い取る価値の有無や金額を判断します。

しかし通常のファクタリングでは、期日に売掛先から確実に入金されるか、信用力を重視した審査が行われます。

そのため財務状況が悪化している事業者でも、信用力の高い売掛先の債権を保有していれば、資金調達に活用できます。

在庫ファクタリングは、ファクタリング会社から見たとき、買い取る価値がある商品と判断されなければ利用できません。

在庫ファクタリングのメリット

在庫ファクタリングは、通常のファクタリングと異なり、売掛債権ではなく在庫として保管・管理している商品を現金化の対象とします。

一般的なファクタリングよりも知名度が低いサービスといえますが、利用することには次の5つのメリットがあると考えられます。

  1. 資金調達できる
  2. 融資審査に通らなくても利用できる
  3. 商品価値低下や劣化を防ぐことができる
  4. 不動在庫を整理できる
  5. 管理コストを削減できる

それぞれどのようなメリットがあるか説明します。

資金調達できる

在庫ファクタリングは、保有する在庫商品を現金化して、資金を調達できるメリットがあります。

ファクタリング会社が買い取りたいと希望する商品を保有していれば、スムーズに現金を調達できます。

消費者向けの小売業や飲食業の場合、現金商売で売掛債権を保有することは少ないといえます。

しかし在庫ファクタリングなら、売掛債権を保有しておらず通常のファクタリングは活用しにくい小売業でも、確保している一定の在庫を使って資金調達することができます

融資審査に通らなくても利用できる

在庫ファクタリングは、融資審査に通らなくても利用できることがメリットです。

銀行などから融資を受けようとする場合、業績や財務状況などが悪化しており、返済能力が認められなければ利用できません。

しかし在庫ファクタリングの審査では商品の価値を判断するため、融資審査に通らなかった事業者でも、在庫商品を抱えていれば利用できます

商品価値低下や劣化を防ぐことができる

在庫ファクタリングは、商品価値の低下や劣化を防ぐことができます。

在庫調整を意図的に行うことができるため、商品価値が低下したり劣化したりする前に、廃棄ではなく売ってお金に換えることができます。

シーズンを過ぎて流行を見込めない在庫商品などは、積極的に在庫ファクタリングで現金化するとよいでしょう。

不動在庫を整理できる

在庫ファクタリングは、不動在庫を整理できることがメリットです。

商品は販売できなければ仕入れにかかったお金を回収できないため、早めに販売することが望まれます。

多く在庫を抱えすぎれば、保管コストが増えるだけでなく、商品自体も型落ちや陳腐化し価値が低下します。

在庫ファクタリングを使えば、売れ残る前に不要な在庫を現金化できるため、価値の低下や保管コスト増加を抑えることができます。

管理コストを削減できる

在庫ファクタリングは、在庫商品の管理コストを削減できることがメリットです。

商品を在庫として保管するためには、保管用のスペースや人員などが必要になります。

商品によって冷蔵庫や冷凍庫が必要になり、電気代が多額に発生する場合もあるでしょう。

空調や除湿などを適切に行い、温度や湿度の管理を徹底して行う必要のある商品なら、設備費もかかります。

しかし在庫ファクタリングで在庫商品を処分できれば、管理にかかる費用を節約できます

在庫ファクタリングのデメリット

在庫ファクタリングは、資金を調達すること以外にも、不動在庫の処分や管理コストの削減などいろいろなメリットがあります。

しかし次の3つのデメリットには留意した上で利用を検討することが必要です。

  1. 現金化まで時間がかかる
  2. 調達金額が低め
  3. 対応業者が少ない

それぞれどのようなデメリットがあるのか説明します。

現金化まで時間がかかる

在庫ファクタリングは、商品をファクタリング会社に買い取ってもらい、現金化するまである程度の時間がかかることがデメリットです。

通常のファクタリングであれば、近年ではオンラインによる手続が可能であるため、申し込みから最短即日で資金調達できます。

しかし在庫ファクタリングの場合、商品価値などを判断しながら買取代金の見積もりを出すため、現金化するまで1〜3週間ほどかかります。

早期に保有する資産を現金化したいなら、売掛債権を売却する通常のファクタリングがおすすめです。

調達金額が低め

在庫ファクタリングは、調達できる金額が低めであり、希望する調達額に達しない可能性があることがデメリットです。

売却する商品の価値によって買取価格が変動するものの、相場は商品価格の10〜50%となっています。

市場価値の高い商品であれば高額の買取が期待できるものの、卸売り価格を下回ってしまうことになるでしょう。

在庫をすべて販売したほうが利益は多くなると考えられるものの、売れるまでの管理コストなどを踏まえれば、在庫ファクタリングを利用したほうがよいでしょう。

対応業者が少ない

在庫ファクタリングは、商品の買い取りに対応している業者が少ないことがデメリットです。

まず、在庫ファクタリングに対応している業者が少ないのは、サービス提供事業者が公安委員会から古物商の許可を取得しなければならないからといえます。

また、通常のファクタリングと異なり、買取対象が在庫品となるため、流通ルートを確保することが難しくニーズもそれほど高くありません

そもそもファクタリング会社が買い取った商品の販売も難しく、競合なども存在しにくいことも関係しています。

在庫ファクタリングを請け負うファクタリング会社が少ないため、利用を希望していても買取価格の相見積もりなどで適正な価格など判断しにくいことがデメリットです。

在庫ファクタリングがおすすめのケース

在庫ファクタリングは、通常のファクタリングとは異なる特徴のあるサービスです。

そのため、在庫ファクタリングがおすすめなのは、次の3つに該当するケースといえます。

  1. 資金を調達したい
  2. 在庫管理コストを軽減したい
  3. 過剰在庫や不動在庫をなくしたい

それぞれどのようなケースか説明していきます。

資金を調達したい

在庫ファクタリングは、借入れ以外の方法で資金を調達したいときにおすすめです。

資金繰りが厳しい中、銀行から融資を受けて資金を調達したくても、審査に通らず借入れできない場合もあるでしょう。

小売業などが通常のファクタリングを利用したくても、売掛債権を保有しておらず、資金調達につながらないこともあります。

このような場合でも、在庫ファクタリングで在庫品を現金化すれば、手元の資産を使って資金調達できます。

在庫管理コストを軽減したい

在庫ファクタリングは、保有する商品などの在庫管理コストを削減したいときにおすすめです。

多く商品を在庫として抱えていれば、管理にかかる費用を準備しなければなりません。

仮に在庫商品が食品の場合、冷蔵庫や冷凍庫で管理することになるため、電気代が多くかかります。

衣料品などはカビなどが発生しないように、除湿を適切に行うための空調設備費などもかかることになるでしょう。

在庫ファクタリングで在庫品を処分できれば、商品の管理費を削減できます。

過剰在庫や不動在庫をなくしたい

在庫ファクタリングは、過剰在庫や不動在庫をなくしたいときにおすすめです。

商品を在庫として抱えた状態のままでは、商品価値が低下したり劣化したりするため、ますます売れなくなってしまいます。

また、新たな商品を入荷するためにも、増えすぎた在庫を処分して管理スペースを確保しなければなりません。

このような場合、在庫ファクタリングを活用すれば、過剰に抱えた在庫や売れずに管理したままの商品を処分できます。

商品の現金化だけでなく、管理スペースを確保できるため、次の在庫品をストックしやすくなるでしょう。

在庫ファクタリングの注意点

在庫ファクタリングは、都道府県の公安委員会で古物商許可を取得している業者しか扱うことができません。

そのため古物商許可を取得していない業者が在庫ファクタリングをサービスとして提供している場合、違法業者であるため契約しないでください。

そのため在庫ファクタリングを利用するときには、商品を売却する予定のファクタリング会社の公式サイト内に、古物営業許可証または番号が掲示されているか確認しましょう。

まとめ

在庫ファクタリングは、通常のファクタリングと異なり、在庫として保管している商品を現金化するサービスです。

たとえば個人を相手とする小売業などが資金調達に利用しやすいサービスであるといえるでしょう。

また、不良在庫化している商品を多く抱えている場合の在庫処分にも活用できますが、換金率が悪く希望額を調達できない可能性もあります。

掛取引で売掛債権を保有している事業者などは、通常のファクタリングも同時に検討することで、必要な資金を調達することにつながるでしょう。