トラックの自動車保険とは?契約方法や種類・補償内容をわかりやすく紹介

トラックは常に公道を走り続けるため、自動車保険への加入は必須といえます。

自家用でも事業用でも、自動車を運転する限りは誰でも事故を起こす可能性があり、巻き込まれるリスクもあります。

そのような万一の事態に備えるために加入しておくのが自動車保険ですが、事業用トラックと一般の自家用車では、加入すべき保険にも違いが見られます。

そこで、トラックの自動車保険について、契約方法や種類・補償内容についてわかりやすく紹介していきます。

トラックの自動車保険の種類

運送業を運営する上で欠かせないトラックは、万一に備えて自動車保険に加入しておくことが必要です。

加入する自動車保険は、主に次の2種類に分けることができます。

  1. 自賠責保険
  2. 任意保険

「自賠責保険」+「任意保険」という2つの保険の組み合わせは、トラックと乗用車のどちらであっても同じといえますが、それぞれの保険について説明していきます。

自賠責保険

「自賠責保険」とは正式名称を「自動車損害賠償責任保険」といい、法律で加入が義務付けられている保険です。

人身事故の被害者救済を目的とした保険制度であり、強制加入の保険であるため「強制保険」とも呼ばれます。

自賠責保険に加入していない自動車は公道を走ることはできないため、トラックを購入したときに加入することになり、車検の際に継続します。

任意保険

「任意保険」とは、強制保険である自賠責保険にプラスして、それぞれの意思で加入を決めることができる保険です。

一般的に「自動車保険」と呼ぶのはこの任意保険のことであり、交通事故による加害者側のケガや車の修理代など、自賠責保険で補償されない部分を補填できます。

トラックの自賠責保険とは

「自賠責保険」は、トラックに限らずすべての自動車に加入が義務付けられている保険です。

人身事故の被害者救済を目的としている強制加入の保険であるため、未加入のまま自動車を運転すれば、以下の刑事罰や行政処分の対象となります。

  • 未加入の自動車を運転した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金・免許停止処分となる
  • 自賠責保険証明書を所持していない自動車を運転した場合、30万円以下の罰金が科せられる
  • 未加入の自動車で人身事故を起こした場合、任意保険に加入している場合でも自賠責保険の補償限度額を超えた金額のみの支払いとなる

また、トラックで自賠責保険に加入する際には、次の2つを理解しておく必要があります。

  1. 保険料
  2. 補償内容

それぞれ説明していきます。

なお、トラックリースに関する自賠責保険等の扱いについては以下の記事を参考にしてください。

トラックリースの料金相場はいくら?購入やレンタルした場合の費用と比較

保険料

自賠責保険は、社会政策の側面を持つ強制加入の保険です。

そのため保険料を決める保険料率は、能率的な経営下で適正な原価を償う範囲内であり、できる限り低くなければならないとされています。

公平性の高い保険でなければならないため、以下の違いで異なる保険料となります。

  • 利用する目的(自家用と事業用のどちらか)
  • 車種(乗用・軽・小型貨物・普通貨物・小型二輪・原付など)
  • 地域(本土か離島かなど)

特殊車両などは保険料が区分されますが、トラックの場合は積載量や用途で特に保険料が変わりやすいです。

自家用よりも事業用のほうが行動を走る頻度や交通事故リスクが高いため、保険料負担も重くなると理解しておきましょう。

補償内容

自賠責保険は、被害者救済を目的としているため、交通事故でケガを負ったり亡くなったりした被害者の以下の損害を補償します。

損害の内容 補償範囲 補償限度額
傷害または死亡に至るまでの傷害 治療関係費・文書料・休業損害・慰謝料 120万円
後遺障害 ・逸失利益・慰謝料等 障害の程度による 75~4,000万円
死亡 葬儀費・逸失利益・慰謝料(被害者と遺族) 3,000万円

補償内容は、車種が変わっても同じです。

被害者に後遺障害が残ったり亡くなったりなどのケースでは、補償限度額をはるかに超える損害額が認定されることもあります。

また、自賠責保険では示談交渉のサービスや加害者のケガの治療代や自動車の修理代などは補償されないため、不足する部分は任意保険で補填することが必要といえます。

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トラックの任意保険とは

自賠責保険に加入していても、補償されるのは対人賠償に限定されることや、補償される金額にも限度額があることは留意が必要です。

特に日々公道を走るトラックなどは交通事故リスクも高いため、自賠責保険だけで賠償金を賄えないケースに備えて任意保険への加入が必須といえます。

トラックの任意保険については、以下の2つについて理解を深めておきましょう。

  1. 契約方法
  2. 保険の種類

それぞれ説明していきます。

契約方法

運送業でトラックを使用する場合、1台のみではなく複数台の所有・使用自動車があることもめずらしくありません。

任意保険における所有・使用自動車とは、以下の自動車などが該当します。

  • 契約者が所有権を持ち自ら使用する自動車
  • 契約者が所有権留保条項付売買契約で購入し自ら使用する自動車
  • 契約者がリース業者から1年以上の貸借契約で有償により借入れ自ら使用するリースカー
  • 契約者が国または地方公共団体から賃借契約で借入れ自ら使用する自動車

特に法人の運送企業などでは複数台のトラックを所有・使用することが一般的ですが、台数によって以下のいずれかの契約が適用されます。

  1. フリート契約
  2. ノンフリート契約

それぞれ説明していきます。

フリート契約

「フリート契約」とは、所有車両が10台以上の場合、会社単位で一括契約する契約方法です。

  • 1枚の保険証券で管理できる
  • 1台ごとの保険料が割安になる
  • 契約車両が新しく追加された場合でも他車両と同じ割引率になる

など、管理や手続が軽減されることがメリットといえます。

ただし、1回の事故でも受け取った保険金が大きければ翌年度の保険料率が大幅に上がります。

契約車両中の1台の事故がすべての車両の損害率に影響するというデメリットについては注意が必要です。

ノンフリート契約

「ノンフリート契約」とは、所有車両が9台以下の場合の契約方法です。

自動車1台単位で契約を結ぶため、保険料の割引率も車両ごとに異なります。

1台ごとの保険料はフリート契約であれば最大70~80%であるのに対し、ノンフリート契約の最大割引率は63%です。

年齢条件や運転者限定特約など付帯することも可能ではあるものの、1台ごとに契約することが必要となるため、契約手続や管理に手間がかかります。

保険の種類

任意保険にもいろいろな種類があり、補償範囲や内容などに応じて選ぶことが必要です。

運送業で使用するトラックの任意保険については、主に以下の7つの補償を検討することをおすすめします。

  1. 対人賠償保険
  2. 対物賠償保険
  3. 人身傷害保険
  4. 搭乗者傷害保険
  5. 車両保険
  6. 無保険車傷害保険
  7. 運送業者貨物賠償責任保険

それぞれの保険内容について紹介していきます。

対人賠償保険

「対人賠償保険」とは、被害者に損害を与えた場合の、自賠責保険による賠償で賄えない超過部分を補償する保険です。

自賠責保険での補償は3,000万円ですが、対人賠償保険の補償上限額は「無制限」に設定できる保険会社がほとんどであるため、手厚い補償を確保できます。

対物賠償保険

「対物賠償保険」とは、被害者の車や、器物に損害を与えた場合に補償される保険です。

車同士の衝突事故の場合、相手の車両やガードレールなどを破損させてしまう可能性が高いといえます。

しかしモノの損害は自賠責保険では補償されないため、対物賠償保険に加入していると安心です。

対物賠償保険についても、多くの保険会社が補償上限額を「無制限」で設定できます。

人身傷害保険

「人身傷害保険」とは、運転者本人と同乗者に対して補償する保険です。

過失割合に関係なく、約款に定める基準に基づいて、示談交渉を待たず実際の損害額に対する保険金が支払われます。

事故によりケガを負ったときの治療や死亡などの補償以外にも、休業損害・逸失利益・精神的損害(慰謝料)など補償する保険です。

搭乗者傷害保険

「搭乗者傷害保険」も、人身傷害保険と同じく運転者を含む車両の搭乗者に対して補償する保険です。

乗車中の事故で搭乗者が死傷したときに補償する保険であり、翌年の等級に影響が出ないことがメリットといえます。

ただし人身傷害保険と補償内容が重複するため、取り扱っていない保険会社もあることから、事前の確認が必要です。

車両保険

「車両保険」とは、事故による車両の損害を補償する保険です。

車同士の衝突・接触による事故・盗難・いたずら・自然災害(台風・ひょう・火災など)などによる車両の損害が補償されます。

トラックの修理代は高額になることもあるため、急な出費に備える上でも加入しておきたい保険といえますが、次の種類によって保険料は大きく異なります。

  • エコノミー型
  • 一般型

エコノミー型は補償範囲を限定できるため保険料を割安に設定できるものの、一般型で補償される以下の補償は対象に含まれません。

  • あて逃げ
  • 自転車との接触
  • 人・動物との衝突・接触
  • 転覆・墜落
  • 単独事故(電柱への衝突など)

補償不足にならないためにも、普段トラックが走る場所や使い方などで、車両保険の種類を選ぶことが大切といえます。

無保険車傷害保険

「無保険車傷害保険」とは、交通事故の被害者となった場合において、加害者が任意保険に加入していないときや保険による補償が不十分なときに保険金が支払われる保険です。

運転者や同乗者のケガ・後遺障害・死亡に対して補償されることが一般的であるものの、後遺症が残らないケガの治療費や車の修理費などは補償されないなど保険会社によって異なります。

運送業者貨物賠償責任保険

「運送業者貨物賠償責任保険」とは、運搬中の荷物に対する保険です。

受託した貨物が交通事故により損害を受けた場合、貨物の所有者に対する法律上・契約上の損害賠償責任を補償します。

保険金が支払われる主な損害は以下のとおりです。

  • 盗難・紛失
  • 破損・汚損・水濡れ
  • 火災
    など

また、運送中の衝突事故や、保管中の火災・爆発または盗難のみを補償するケースや、オプションにより手厚い補償内容にできる保険会社もあります。

トラックの保険料の特徴

トラックに対する任意保険で支払う保険料は、一般的な自家用車両に対する任意保険よりも高めです。

これはトラックが業務用車両であり、公道を走る頻度の高い分、交通事故に遭うリスクも大きいからといえます。

また、トラックのクラスが上がればその分、保険料は高くなります。

たとえば4ナンバーより1ナンバーのほうが保険料は高く、車両の価格でも保険料が変わります。

任意保険は契約内容で保険料が大きく変わるため、トラックの場合には対物賠償・対人賠償を手厚く確保したほうがよいといえます。

その上で不要な補償やサービスを精査し、保険料を節約しつつ手厚い補償を確保できるような契約内容を検討しましょう。

補償限度額は無制限のほうが安心ではあるものの、その分、保険料は上がります。

トラックはビジネスで使用するため、十分な補償を確保できることで安心はできても、保険料が増えすぎれば収益を圧迫します。

本末転倒にならないためにも、トラックの台数や種類、走り方にあった最適な組み合わせの保険を選ぶようにしてください。

まとめ

トラックが加入する保険は、強制保険といわれる「自賠責保険」と、加入について自由に決めることができる「任意保険」があります。

通常、トラックは自賠責保険と任意保険の2つの保険を組み合わせて、万一の交通事故リスクに備えることが一般的です。

任意保険への加入は自由ではあるものの、自賠責保険では被害者に対する補償のみであり、補償額にも上限があります。

対人賠償の超過分や対物賠償、ドライバーや同乗者のケガや車の損害等に対する補償は自賠責保険では対応できないため、任意保険に加入しておくことでカバーできます。

ただしトラックの任意保険の保険料は、一般的な乗用車よりも高めであるため、補償を手厚くし過ぎると保険料負担が重くなりがちです。

そこで、トラックは普段どこを走行することが多いのか、走行距離や運転頻度など、様々なことを考慮しつつ、備えておきたいリスクを精査した上で無駄のない補償の組み合わせを検討することが必要となります。

毎日、安心してドライバーがトラックを運転できるように、万一に備えることのできる任意保険に加入しておくことはとても重要なことであり、運送事業者の責任であるともいえるでしょう。