トラックの耐用年数とは?減価償却の計算方法と仕訳処理をわかりやすく解説

トラックを購入したときには、耐用年数に合わせた減価償却が必要です。

購入時にトラック代金すべてを経費とするのではなく、それぞれの資産に決められた耐用年数で割って、少しずつ減価償却費として計上します。

ただ、トラックの耐用年数は自家用か業務用なのかで異なり、中古の場合には耐用年数を算出したのちに減価償却費を計算しなければなりません。

そこで、トラックの耐用年数や、減価償却の計算方法と仕訳処理をわかりやすく解説していきます。

耐用年数とは

「耐用年数」とは、固定資産を通常の使い方で使用したとき、期待する役割を果たすことができるとみなした期間です。

固定資産は時間の経過とともに劣化し、使用により損耗していくため、次第に価値は低下しいずれ喪失します。

時間の経過により価値が減少していく固定資産を「減価償却資産」といい、使用可能な期間ともいえるのが「耐用年数」です。

耐用年数は、期ごとの費用計上分である減価償却費を計算するときに必要であり、資産の種類や用途などで異なります。

トラックも減価償却資産の1つですが、長期間に渡る使用が一般的です。

ただ、長く乗り続ければ老朽化や損耗していくことになり、メーカー側がモデルチェンジすることで古いタイプは価値が低下してしまいます。

そのためトラックも耐用年数に合わせた減価償却が必要であり、低下した価値分を費用として計上する手続が必要になります。

なお、トラック使用においては耐用年数ではなく「耐久年数」が気になることもありますが、違いを理解しておきましょう。

耐用年数と耐久年数の違い

耐久年数とは、製造元であるメーカーが調査や実験などを行い、その結果をもとに公表した問題なく使用できる期間です。

そのため耐久年数で示された期間は、機能上問題なく使用できるとされる期間であるものの、過ぎたから何か問題が発生するわけでもありません。

また、法律で定められている期間ではなく、使用状況や環境によって前後することもあります。

それに対し耐用年数は、先にも述べたとおり資産を通常使用した場合の使用可能期間です。

あくまでも会計処理を行う上で必要とされる年数であるため、耐久年数を過ぎたから使用してはいけないわけではなく、減価償却する上で目安となる年数といえます。

新車トラックの法定耐用年数とは

新車トラックの法定耐用年数は、自家用と業務用のどちらなのか、車両の種類で以下のとおり異なります。

自家用トラック
自動車の種類 法定耐用年数
ダンプ式トラック 4年
その他トラック 5年
事業用トラック
自動車の種類 法定耐用年数
小型の貨物自動車(積載量2トン以下) 3年
大型乗用車(総排気量が3L以上) 5年
その他の自動車 4年
被けん引車 4年

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中古トラックの耐用年数とは

中古トラックの耐用年数は「簡便法」で算出し、その年数を用いて減価償却していきます。

すでに使用している状態のトラックは、あとどのくらい使用できるのか、残存年数を見積もることが難しいといえます。

そこで、残存年数は簡易的に計算することが現実的といえるため、簡便法による耐用年数の算出が用いられています。

簡便法による耐用年数の計算は、以下の2つにより方法が異なります。

  1. 法定耐用年数を過ぎている場合
  2. 法定耐用年数が残っている場合

それぞれの計算方法について説明していきます。

法定耐用年数を過ぎている場合

簡便法では、法定耐用年数が残っていない資産について、法定耐用年数の20パーセント相当年数を残存年数とします。

耐用年数=法定耐用年数×20%

法定耐用年数をたとえば数年過ぎており、残存年数がゼロになったとしても耐用年数はゼロになりません。

たとえば法定耐用年数5年のトラックは、

耐用年数1年=法定耐用年数5年×20%

となりますが、2年未満は耐用年数2年で扱います。

法定耐用年数が残っている場合

法定耐用年数の一部を経過している資産については、法定耐用年数から経過年数を差し引き、経過年数の20パーセント相当年数を加えた年数が残存年数になります。

1年未満の端数については切り捨てとなり、切り捨てたことで年数が2年に満たなければ、残存年数2年とみなすことが必要です。

耐用年数=(法定耐用年数–経過年数)+経過年数×20%

製造から2年経過した中古トラック(法定耐用年数5年)を購入した場合、上記の計算式にあてはめると耐用年数は以下となります。

耐用年数3.4年=(法定耐用年数5年-経過年数2年)+経過年数2年×20%

小数点以下は切り捨てとなるため、この中古トラックの耐用年数は3年で扱います。

減価償却とは

「減価償却」とは、時間の経過とともに資産価値が減少していくことを前提に、耐用年数に応じた購入費の振り分け分を費用計上する会計処理です。

一定以上の高額なものを購入したとき、支払った代金を一括ではなく、何年かに分けて経費計上することといえます。

お金が出ていった時点ですべてを費用とせず、使用する数に応じて少しずつ費用として扱うという考え方です。

これは、収益に対応する分の費用を経費計上する「費用収益対応の原則」に基づいています。

耐用年数1年以上で取得価額10万円以上の資産のうち、事業活動で使用する建物・機械・備品・車両運搬具などの固定資産が減価償却資産とされています。

その一方で、土地や骨とう品など、時間の経過で価値が低下することのない資産は減価償却資産に含みません。

トラックの減価償却とは?新車・中古の法定耐用年数と計算・仕訳方法を解説

減価償却の計算方法

減価償却の計算方法は、次の2種類です。

  • 定額法
  • 定率法

個人事業主は定額法・法人は定率法が原則となっています。

また、資産に対する減価償却を義務付けられているのは個人事業主で、法人は任意です。

以上を踏まえて、次の3つを説明していきます。

  1. 定額法
  2. 定率法
  3. 法人の減価償却費の調整

定額法

「定額法」は、毎年同じ額を減価償却費として計上する計算方法です。

減価償却資産の金額に、一定割合を掛けて減価償却費を算出しますが、掛ける割合は耐用年数ごとに定められています。

個人事業主と法人のどちらでも、税務署に届出を出すことで、計算方法を変更することはできます。

ただし鉱業用を除く建物・建物附属設備・構築物、およびソフトウェアについては、定額法のみ適用されます。

定額法による減価償却費の計算方法は以下のとおりです。

減価償却費=取得価額×定額法の償却率

毎年同額を償却するため、前もって計上する減価償却費を把握しやすいことがメリットといえます。

しかし初期の節税効果はそれほど期待できるとはいえないため、初期に多く減価償却費を計上したければ次に説明する定率法を選んだほうがよいでしょう。

定率法

「定率法」とは、未償却残高に対して一定割合を掛けて、減価償却費を算出する方法です。

償却期間が開始してから終了まで、少しずつ減価償却費が減少していき、一定額を下回った後は毎年同額となります。

個人事業主は定額法、法人は定額法のみが適用される一部の資産(建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェア)を除いて定率法が原則とされます。

定率法による減価償却費は、以下の計算式で算出できます。

減価償却費=未償却残高×定率法の償却率

上記計算式で算出した減価償却費償却費が、年数経過により償却保障額に満たなくなることがあります。

基準となる償却保証額は以下のとおりです。

償却補償額=取得価額×耐用年数の保証率

償却補償額に満たなくなった場合には、以下の計算式に変更して減価償却費を算出します。

減価償却費=改定取得価額×改定償却率

定率法は初年度の計上額が多いことで、直近の節税効果が期待できることがメリットです。

ただし減価償却費の算出方法が途中で変わるなど、計算が複雑であることはデメリットといえるでしょう。

法人の減価償却費の調整

資産に対する減価償却計上の義務は個人事業主のみであるため、法人はまとめて資産取得価額を計上しても問題ないとされています。

ただし税務上は減価償却費の限度額もあるため、限度額を超えれば経費として認められません。

定額法と定率法で計算された減価償却費は、割増償却・増加償却を除いて税法上、費用として認められる減価償却費の上限額です。

費用として認められる減価償却費の上限額を「償却限度額」といいます。

個人事業主は減価償却費の限度額を経費計上することが義務付けられているのに対し、法人であれば償却限度額の範囲内でゼロから限度額円まで任意計上が可能であるという違いがあります。

なお、10万円以上20万円未満の資産を購入した場合には、「一括償却資産の特例」を適用することで法定耐用年数に関わらず3年での減価償却が可能です。

さらに青色申告事業者の場合には、30万円未満の資産に「少額減価償却資産の特例」を適用させることで、一括による費用計上もできます。

ただし「少額減価償却資産の特例」は、適用を受ける事業年度の取得価額合計額が300万円までとされているため、超えた場合には適用されることはできない点に注意しましょう。

トラックの減価償却と仕訳処理の方法

トラックは、新車と中古のどちらを購入したかによって、減価償却の方法が異なります。

新車トラックであれば法定耐用年数をそのまま使うことができるのに対し、中古トラックではまず残存年数を計算することが必要です。

計算結果により残存年数がゼロになった場合でも耐用年数2年として扱われるため、法定耐用年数が残っていなければ、減価償却の対象にならないわけではないといえます。

以上を踏まえて、新車トラックと中古トラックを購入したときと、減価償却したときの仕訳処理を以下の2つに分けて解説していきます。

  1. 新車トラックの減価償却と仕訳処理
  2. 中古トラックの減価償却と仕訳処理

新車トラックの減価償却と仕訳処理

新車トラックを購入した場合、減価償却については法定耐用年数に基づいて行います。

例:期首に業務用2トントラック(法定耐用年数3年)を購入し、代金300万円を現金で支払った
借方 貸方 摘要
車両運搬具 3,000,000円 現金 3,000,000円 2トントラック

トラック購入時に全額を資産計上することが必要であり、勘定科目「車両運搬具」を使用します。

例:上記トラックについて期末に減価償却を実施した。
減価償却費100万円=300万円÷3年
借方 貸方 摘要
減価償却費 1,000,000円 車両運搬具 1,000,000円 2トントラック減価償却 1年目/3年

中古トラックの減価償却と仕訳処理

中古トラックを購入した場合には、耐用年数を改めて計算し直す必要があります。計算式は先ほど紹介した事例も参考にしてください。

例:2年使用経過した中古2トントラックを購入し、代金200万円を現金で支払った
借方 貸方 摘要
車両運搬具 2,000,000円 現金 2,000,000円 中古2トントラック

トラック購入時に勘定科目「車両運搬具」で全額を資産計上し、期末に減価償却していきます。

上記トラックの減価償却においては、耐用年数を計算することが必要です。

耐用年数=(法定耐用年数-中古の固定資産の経過年数)+(中古の固定資産の経過年数×20%)

耐用年数2年=(法定耐用年数3年-経過年数2年)+(経過年数2年×20%)=1+0.4=1.4

計算結果が2年未満となったため、耐用年数2年として扱うこととなり、減価償却費は以下となります。

減価償却費100万円=車両運搬具200万円÷耐用年数2年

例:上記トラックについて減価償却を実施した
借方 貸方 摘要
減価償却費 1,000,000円 車両運搬具 1,000,000円 中古2トントラック減価償却1年目/2年

まとめ

トラックの耐用年数は、新車と中古のどちらを購入したかによって適用年数が異なり、減価償却費の計算方法も変わってきます。

新車トラックであれば法定耐用年数をそのまま使用できるものの、積載量・排気量によって法定耐用年数が細かく分かれているため、間違わないように確認しておくことが必要です。

中古トラックは簡便法により耐用年数を計算した上で、減価償却費を計算することが必要となるなど複雑に感じることもあるでしょう。

残存年数ゼロの中古トラックを購入した場合でも、残存年数2年は残るため、減価償却の対象となります。

減価償却する上で計算方法は定額法と定率法がありますが、原則となるルールに合わないときは一定範囲で変更することもできます。

ただし法人は前事業年度までに変更手続しなければならないため、早めに申請しておくことが大切です。