売上高とは?利益との違いや最低必要額の損益分岐点をわかりやすく解説

売上高とは、商品やサービスを販売・提供することで稼いだ売上金額の合計です。

社会的な評価において、売上高を伸ばすことは大切なことといえます。

しかし中小企業の多くは赤字経営ともいわれているため、黒字から赤字へ転落しないためには、最低限満たすべき売上高も把握しておくことが必要です。

そこで、売上高について、利益との違いや最低必要額の損益分岐点をわかりやすく解説します。

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売上高とは

売上高とは、商品やサービスを販売・提供することで稼いだ売上金額の合計です。

一定期間の収益が「売上高」で、そのもとになるのが取引との「売上」といえます。

会社の営業活動から発生する収益であり、損益計算書では一番上に表示されます。

決算書を構成するのは、以下の財務諸表です。

  • 1年間でどのくらい利益が出たか確認できる損益計算書
  • 会社が保有する財産や抱える借金の確認ができる貸借対照表

売上高は損益計算書に表示され、企業がその年度でどのくらいの利益を出すことができたのか算出する源泉になります。

商品の販売やサービスの提供など、本業で稼いだ売上金額の総額が売上高であり、その数値が大きければ大きいほど業績が伸びていると判断されます。

利益とは

「利益」とは、事業活動による収益から費用を差し引いた数値でり、企業の儲けです。

経営状態を知るためには、売上高だけでなく「利益」も重要な指標として確認しましょう。

利益は売上高から費用を差し引いて算出します。

損益計算書では売上高からさまざまな費用を差し引き、段階的に計算されますが、どの費用を差し引くかによって利益の種類は以下に分かれます。

  1. 粗利益(売上総利益)
  2. 営業利益
  3. 経常利益
  4. 税引前当期純利益
  5. 当期純利益

それぞれの利益について説明します。

粗利益(売上総利益)

「粗利益(売上総利益)」とは売上高から売上原価を差し引いた後の利益で、本業での利益をあらわします。

本業でどのくらい利益を出しているのか知ることができ、次の計算式で算出できます。

 

粗利益(売上総利益) = 売上高 - 売上原価(製造原価)

 

たとえば売上原価400円の商品を500円で販売した場合の粗利益は100円です。

ただし小売業なら人件費を売上原価に含むことはありません。

製造業は人件費を製造原価として含むため、人件費の分だけ製造業では粗利益が低く出ます。

また、「売上総利益率」とは売上高に占める商品力で稼いだ利益の割合であり、割合が高ければ収益性の高い商品であると判断できます。

売上総利益率は、次の計算式で算出できます。

 

売上総利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高

 

営業利益

「営業利益」とは粗利益(売上総利益)から売上原価を除いた販売費および一般管理費を差し引いた利益で、次の計算式から算出できます。

 

営業利益 = 粗利益 - (販売費+一般管理費)

 

売上原価以外の販売費および一般管理費は、人件費・賃料・水道光熱費・消耗品費などが挙げられます。

粗利益から商品を販売するための活動費用や、会社の業務管理費用を考慮した利益です。

売上高から仕入れ分を差し引いただけの売上総利益(粗利)では、本業自体から儲けがでているのか判断できません。

単に商品を仕入れても売れないからです。

営業利益が大きければ本業で儲かっていると判断できるのに対し、営業利益がマイナスなら本業が厳しい状態といえます。

経常利益

「経常利益」とは事業全体で経常的に得た利益のことです。

企業が毎期稼いでいる利益であり、損益の実態評価を知る上で重要といえます。

本業で稼いだ営業利益とそれ以外の業務による営業外利益を足すと算出できますが、計算式は次のとおりです。

 

経常利益 = 営業利益 + 営業外利益 - 営業外費用

 

たとえば製造業が本業の企業が、本業以外で株などの金融商品を運用している場合、株の売買で儲けがでれば会社の利益になります。

海外と貿易する会社の場合、為替の変動で利益や損失がでるものの、利益や損失は営業外の収益・費用です。

株や為替取引は継続して行う活動のため、会社の実力が最も反映される利益が「経常利益」といえます。

税引前当期純利益・当期純利益

「当期純利益」とは当期の企業活動で得た利益です。

税金を差し引く前の税引前当期純利益から、法人税・法人住民税・法人事業税などの税金を差し引いて求めます。

計算式は以下のとおりです。

 

当期純利益 = 税引前当期純利益(経常利益+特別利益-特別損失) - 法人税 - 法人住民税 - 法人事業税

 

売上高から経費や税金などの出費をすべて差し引き、最終的に稼いだ利益とも言い換えることができます。

最低限必要な売上高を知る方法

企業経営を続ける上で、最低でもどのくらいの売上高が必要になるのか、その目安を知っておくことが必要です。

その指標として用いることができるのが「損益分岐点」で、事業にかかる費用をすべて売上で回収できる売上高と費用が等しくなる売上高といえます。

そこで、以下の2つを説明します。

  1. 損益分岐点とは
  2. 損益分岐点に関係する費用

損益分岐点とは

「損益分岐点」とは、売上高とかかった費用がちょうど同じになる売上高と販売数量を意味します。

企業の事業活動で発生する費用に、以下の2つが挙げられます。

  • 販売量に応じて増減する費用である変動費
  • 販売量に関係なく一定金額負担が必要な固定費

かかった費用を変動費と固定費に分けて、売上規模に応じた売上高と総費用の変化を数式にあてはめれば、損益分岐点を計算できます。

損益分岐点は、利益ゼロになる売上規模であり、それを売上高の金額であらわすと「損益分岐点売上高」になります。

売上高が損益分岐点に達しなければ赤字となり、損益分岐点を超えた売上高を出すことができれば黒字になります。

収支がプラスマイナスゼロになる損益分岐点は、以下の式で計算できます。

 

変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1-変動費率)

 

で計算できます。

たとえば固定費600万円、変動費率が40%の企業の場合、損益分岐点売上高は次のとおりです。

600万円÷(1-0.4)=損益分岐点売上高1,000万円

この会社の場合、1,000万円が損益分岐点となり、1,000万円を超える売上が計上できれば黒字となり利益が出ます。

しかし1,000万円を下回る売上では、赤字でマイナスになってしまいます。

また、損益分岐点売上高と実際の売上高を比べる上で、安全性を評価するときの指標として以下の「安全余裕率」を使うこともできます。

 

安全余裕率 = 売上高分の売上高 - 損益分岐点売上高 × 100%

 

安全余裕率は、売上高が減少してもどのくらいであれば損失にならないか示す比率であり、損益分岐点が低く売上高が高い企業ほど高くなる指標です。

反対に損益分岐点が高く売上高が損益分岐点を下回っていれば、損失の発生により安全余裕率もマイナスをあらわします。

安全余裕率が低い場合には、収益力を高め業績を改善するための対策が必要といえます。

損益分岐点に関係する費用

損益分岐点は、売上高と費用が等しくなる売上高や販売数量といえます。

費用は先に述べたとおり、変動費と固定費に分けることができます。

「変動費」は、商品の仕入れやアルバイトの給与など、売上高が増減することで変動する費用です。

仕入原価・原材料費・消耗品費・支払い手数料なども、変動費に含まれます。

「固定費」は、正社員の人件費・家賃・水道光熱費・広告宣伝費・減価償却費など、売上高の変動に影響せず、必ず発生する費用です。

仮に売上がゼロだとしても、固定費の支払いは発生します。

損益分岐点に達するために必要な売上高は、固定費と変動費率で算出できますが、計算式は以下のとおりです。

 

損益分岐点に達するのに必要な売上高 = 固定費 /  (1-変動費率)

 

変動費と固定費を厳密に区分することは容易ではありません。

人件費は通常なら毎月の売上に関係なく一定額発生します。

しかし繁忙期などで残業が多く発生すれば、変動費としての要素も持つことになります。

変動費と固定費の分類方法はいくつかあるため、中小企業庁が示す「勘定科目」で分けるとよいでしょう。

なお、「勘定科目」については中小企業庁の公式サイトにある「損益計算書の内訳」を参考にしてください。

目標利益に必要な売上高

損益分岐点の売上高では儲けは出ないため、まずは次の計算式により達成したい「目標利益」を算出してみましょう。

 

目標利益 = 売上高(販売量×販売価格) -変動費率(変動費率×販売数量) + 固定費

 

「変動費率」とは、売上高に対する変動費の割合です。

 

変動費 = 売上高 × 変動費率

 

変動比率が低いほど利益は増えるため、達成した利益を検討し、その後、「変動費」と「固定費」から利益達成に必要な売上高を求めます。

目標利益に必要な売上高は、「固定費+変動費+目標利益」です。

費用と利益のすべてを売上で賄うことが必要となるため、次の計算式で算出します。

 

目標利益に必要な売上高 = (固定費+目標利益) ÷ (1-変動費率)

 

たとえば固定費600万円、変動費率が40%で300万円の利益達成を目指すときに必要な売上高は、以下のとおりです。

(600万円+300万円)÷(1-0.4)=1,500万円

300万円利益を出したければ1,500万円の売上高が必要となります。

変動費率や固定費を減らせば、必要な売上高も少なく抑えられます。

目標の売上高に届かない場合は、変動費や固定費の見直しも含めて検討することが必要です。

目標達成に向けた改善策

目標達成の向けた改善策として考えられるのは次の2つです。

  1. 損益分岐点数量を上回る販売数の達成
  2. 損益分岐点を引き下げる

それぞれ説明します。

損益分岐点数量を上回る販売数の達成

損益分岐点数量を上回る販売数を達成するには、次の計算式で目標販売数量を算出しましょう。

 

目標販売数量 = (固定費+目標利益) / 1個あたりの限界利益

 

損益分岐点を引き下げる

損益分岐点を引き下げるには、以下の対応が必要です。

  • 販売価格の引き上げ
  • 単位あたりの変動費(変動費率)の引き下げ
  • 固定費の削減

目標利益達成に向けて、販売価格の引き下げの範囲や、単位あたりの変動費(変動費率)の増減の範囲、固定費などコスト削減対策などのシミュレーションが大切といえます。

売上高と利益より重要な資金

会社経営において、利益を生み出すことは大切です。

利益を生むためには売上高を上げることが必要であり、そのための戦略や企業努力なども求められます。

さらに損失を出さないための売上高を把握することも必要ですが、手元の資金を枯渇させないことがより重要です。

仮に売上が上がらずに、利益を生むことなく単に赤字だとしても、会社は倒産しません。

しかし売掛金の入金遅れや急な出費などがかさんだことで手元の資金が不足し、ショートすれば会社は倒産します。

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