回収できていない売掛債権は放置していると時効により権利を失う?


回収されることなく、保有したままの売掛債権を放置していると時効を迎えてしまいます。

売掛債権が時効を迎えれば売掛先に代金を請求する権利を失うこととなりますので、どのようなタイミングまでに対応すればよいのか把握しておきましょう。

 

売掛債権が時効を迎える期間とは?

商取引で発生する売掛債権とは、簿記上の売掛金のことです。商品などの販売を掛売りで販売したときなど商行為よって発生します。そのため商法による5年の消滅時効の対象となりますが、商法以外の法令で5年よりも短い期間で時効の定めがあれば、消滅時効までの期間は短縮されます。

民法では職業別の短期消滅時効という定めにより、売掛債権の職種により期間が異なります。

たとえば3年で消滅時効を迎える業種として、医師・薬剤師の診療・調剤に関する債権や、施工・工事に関する債権などが挙げられます。

2年で消滅時効を迎えるのは、卸売・小売業で売却した商品の代価に係る債権、デザイナーのデザイン作成料や学習塾や習い事の月謝などが該当します。

そしてたった1年で消滅時効を迎えてしまうのは、旅館・飲食店などの宿泊料や飲食料などです。

ただ、商法による5年の消滅時効と民法による短期消滅時効は2017年民法改正で廃止され、次のどちらか早い方に消滅時効を迎えることに統一されます。

  • 債権者が権利を行使できることを知ったときから5年
  • 債権者が権利を行使できるときから10年

 

「債権者が権利を行使できるとき」とは?

「債権者が権利を行使できるとき」とは客観的起算点と呼ばれ、権利を行使するための障害が法律上なくなったと判断されるときを示します。

たとえば支払期限が定められている債権などのうち、期限が到来していない状態などが該当すると考えられるでしょう。

「債権者が権利を行使できることを知ったとき」

「債権者が権利を行使できることを知ったとき」とは主観的起算点といいますが、上記の状態であることを知ったときです。

ほとんどのケースで、代金を請求できる債権者は、客観的に権利を行使することで可能になったタイミングにおいてその事実は認識していると考えられます。

そのため、状況は様々ですが10年ではなく5年の消滅時効が適用されることが多くなると認識しておきましょう。

新たな時効が適用されるのはいつ?

改正民法の施行日は2020年4月1日ですので、この日よりも前に発生した債権は改正前の民法が適用されますので、売掛債権の業種によっては短期消滅時効に注意が必要です。

 

売掛債権が時効を迎えることを止めるには?

売掛債権の時効が目前!という場合、このままでは売掛先に請求する権利を失ってしまう…と焦ってしまうことでしょう。

このような場合、売掛債権が時効を迎えるまでに時効を中断させる、または時効を更新させるといったことを考えましょう。

売掛債権の時効中断または時効更新で対応できる方法はいくつかありますが、主に次の手段を検討してください。

内容証明なら時効は6か月間延長される

時効までの期限が迫っているとき、ひとまず時効までの期間を伸ばして何らかの対策を検討したいという場合、売掛先に内容証明郵便で催告を行うことにより6か月間時効は延長されます。

ただし催告後は、6か月以内に正式な時効中断措置を講じることが必要となりますので、内容証明郵便を出したことで安心してしまわないようにしてください。

正式な時効中断措置とは、訴訟・支払督促・民事調停申し立て・債務を承認させる・一部を弁済してもらうことなどです。

また、あくまでも時効中断措置であり、それまで経過した時効期間を一旦リセットさせることはできません。

訴訟

裁判所に訴え、権利・義務の法律的な確定を求める手続きのことです。売掛先に対し、通常の民事訴訟を起こします。

支払督促

売掛先に対し裁判所を通じて支払うよう督促してもらう手続きです。

民事調停申し立て

売掛先と話し合いを行い互いが合意できるよう紛争の解決を図る手続きです。裁判所に民事調停の申し立てを行うことが必要になります。

債務を承認させる

売掛先が売掛債権の存在を承認した場合にも時効は中断されます。たとえば売掛先に債務残高確認書を作成してもらい、売掛金債務があることを認めてもらうことによる方法です。

売掛金の一部を弁済してもらう

債務の承認と似ていますが、売掛先に売掛債権の一部を支払ってもらい、売掛金債務があることを認めてもらい時効を中断させることもできます。

どの方法がもっともよい?

債務の承認やの債務の一部弁済は売掛先が協力してくれなければどうにもなりません。

民事調停申し立ては裁判所で話し合いを行った結果、支払ってもらえることを前提とした手続きです。そのため売掛先と話し合いもできず合意される見込みがないのなら意味がないといえます。

そのため、売掛先と話し合いが難しくそもそも協力や支払いへの合意が得られないのなら、訴訟または支払督促のどちらかを実行することが現実的であると考えられるでしょう。

 

民法改正後に実施できる新しい制度

内容証明郵便で催告を行う行為は、時効までの期間を6か月延長させる時効完成猶予措置に該当します。

民法改正でも、この催告以外の方法で時効を延長させる「権利についての協議を行う旨の書面による合意」により、時効完成まで猶予させる効力が認められることとなっています。

もし売掛先との間で発生している売掛債権の金額に互いの認識違いなどがあった場合、売掛債権の債務残高確認書を売掛先に記入してもらうことは難しくなるでしょう。

ただこのようなケースでも、売掛先との間で今後、売掛金債権に対する協議を行うことを記した書面による合意を得ることができれば時効の延長が可能になります。

「権利についての協議を行う旨の書面による合意」により、売掛債権の時効を延長できる期限は次のいずれかもっとも早いときまでとされます。

  • 書面による合意があったときから1年を経過する日
  • 書面による合意の協議期間を1年よりも短い期間で定めたときはその期間が経過する日
  • 当事者のいずれか一方から協議続行を拒絶する通知が書面で行われた場合、通知から6か月が経過する日

 

中断させる方法としてもっともよいのは?

売掛債権の時効到来までの期間を引き延ばすことができたとしても、いずれは正式な時効中断措置が必要となります。

この場合、どの方法で事項を中断すればよいのか迷ってしまうものですが、訴訟による方法を検討してみましょう。

訴訟を申し立てることにより、売掛先から売掛債権の支払いに関して何ら協力を得ることができなかったとしても、独断で措置を講じることが可能です。

また、支払督促の場合は売掛先の住所地の裁判所に申し立てを行わなければなりませんので、もし遠方の場合には移動までの費用や時間・手間がかかってしまいます。

しかし訴訟は自社の住所地の裁判所に申し立てが可能であることがメリットであり、もし売掛債権の支払いを命じる判決が得られれば強制執行による回収が可能となります。

 

まとめ

保有する売掛債権は将来売掛先から入金を得ることで現金化できますが、期日を迎えているのに支払われないまま放置していると時効を迎え請求できなくなる可能性があります。

もし期日になっても支払われることのない売掛債権がある場合には、売掛先になぜ遅れが生じているのか確認し、いつまでに支払ってもらえるのか確認しましょう。

それでも支払いがない場合には、催促を続け回収することが大切です。放置したままでは何も言われないことをいいことに、もし支払いに充てるお金ができたとしても後回しにされる可能性もあります。

売掛債権の支払いが遅れると口うるさくなる取引先だと認識されるほうが、優先して支払ってもらえるようになるはずです。